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ISSCC 2019の基調講演から見えるトレンドは?

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ISSCC 2019の一般講演の採択が決まった。投稿論文数は609件と例年並みで、採択論文数は193件で採択率は31.7%と例年の33〜34%よりもやや厳しい結果となった。ISSCCは例年、デジタル、ロジック、アナログ、RF、プロセッサなど半導体ICのさまざまな分野の論文を集計するため分野の偏りはあまりない。動向がわかるのは基調講演である。

図ISSCC 2019 Plenary Session

図1 ISSCC 2019の基調講演4件


今回の基調講演は例年同様4件で、そのテーマはAI2件、通信2件であり、共に最先端のトピックスである。AI関係はFacebook AI Research & New York UniversityのYann LeCun氏による「The Next Challenge in AI: Self-Supervised(AIの次の挑戦:自分で管理する学習法)」と、KAISTのHoi-Jun Yoo氏による「Intelligence on Silicon: From DEEP Neural Network Accelerators to Brain-Mimicking AI-SoCs(シリコンの知性:DNNアクセラレータから脳の模倣によるAIチップまで)」である。前者は将来指向のAIのアルゴリズムであり、後者は現実のDNNチップと将来のニューロモーフォックなAIチップである。

前者の概要を読むと、今後10年のAI研究を指向しているので紹介しよう。今のAIブームを作っているディープニューラルネットワーク(DNN)は、画像や音声、テキストなどを認識・理解することで、情報検索やフィルタリング、自動運転車、医療用放射線画像の見分け、リアルタイムの翻訳、AIスピーカーなどの応用を生み出してきた。だが、学習を管理するような人手による前処理・後処理や、試行錯誤が多すぎて現実的ではないような強化学習などでは、人間の手による操作が欠かせない。自分でAI学習を管理できるようにする技術は10年先に向けた挑戦となる。そのためのDNNハードウエアは膨大になり、現実離れしている問題に対するソリューションが求められている。

後者は、DNNがデータセンターからエッジに向かっている動向に沿って、モバイルでのAIを指向するものの、進展がそれほどではない。ニューロンとシナプスのネットワークをモデルにしたDNNニューラルネットワークは脳をまねる技術のはしりであるが、さらに人間の行動パターンや行動特性をまねる技術が次のニューロモーフォックなAI用SoCにつながるだろうという。

通信関係の一つは、オランダEindhoven University of TechnologyのMeint K. Smit氏による「Integration of Photonics and Electronics(フォトニクスとエレクトロニクスの集積)」であり、もう一つはIntel社のVida Ilderem氏による「5G Wireless Communication: An Inflection Point(5Gワイヤレス通信:大きな変曲点)」である。

フォトニクスとエレクトロニクスの集積は、広帯域通信の技術であるが、光は化合物半導体であり、シリコンとは集積化が難しかった。このため、現在のシリコンフォトニクスは、MEMSと同様にシリコン表面を酸化膜・窒化膜などの異なる材料を周りに置くことで屈折率の違いから光の進路を制御するための集積回路技術であり、本当の意味での集積化ではない。Smit氏は、この分野を普及させるために標準化したフォトニック集積プラットフォームを作ろうとしている。具体的にシリコンウェーハにInPの送受信素子を集積する「本当の」光集積回路を目指し、現状と将来見通しについて語る。

IntelのIlderem氏は5G通信のワイヤレス通信技術がアプリケーションで加速され、想定される事例について述べる。5Gネットワークはデータの豊富なサービスを展開し、クラウドのアプリケーションがもっと賢くなり、より高速により低レイテンシを提供するようになる。同氏は、5G以降の通信に必要なアーキテクチャとイノベーションについて語る。

通常のセッションでも4件の招待講演があり、やはりAI、5G通信インフラなどの背景を元にした発表となっている。一つはソニーのAIBOなどのロボットに使われるIC、次がIBMのスーパーコンピュータCORAL、三つ目は次世代クルマ用レーダーの回路とアーキテクチャとアルゴリズム、4件目はNXPによるクルマ用イーサネットの10GBase-Tとトレンド、である。

一般講演でもやはり機械学習に関する発表が多く、これまでにない賑わいを呈している。エッジAIでは、低ビット化が性能と消費電力の削減でどこまでいけるかの検討が花盛りのようだ。

(2018/12/12)

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