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ISSCC 2018、機械学習、セキュリティが浮上

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2018年2月11日〜15日米サンフランシスコで開催されるISSCC(International Solid-State Circuits Conference)での講演プログラムが決まった(図1)。半導体のオリンピックと例えられるISSCCは、ITのメガトレンドを示しており、基調講演や招待講演からその大きな流れを読み解くことができる。

図1 ISSCC 2018のプログラム委員会メンバーたち 出典:ISSCC

図1 ISSCC 2018のプログラム委員会メンバーたち 出典:ISSCC


基調講演(Plenary Talks)は4件、半導体産業そのもの、人工知能、クルマ、コンピュータアーキテクチャについての講演である。Analog DevicesのCEOであるVince Roche氏が「半導体イノベーション:このパーティは終わったのか始まったばかりなのか?」、フランスのCEA-Letiの科学&長期研究のディレクタ代理Barbara De Salvo氏は「頭脳に触発された技術:考えるチップへ」、デンソー専務役員の加藤之啓氏は「半導体技術が可能にする未来の移動体社会」、UC Berkeley兼GoogleのDavid Patterson氏は「コンピュータアーキテクチャの50年:メインフレームCPUからニューラルネットワークTPUへ」と題して講演する。

招待講演は5件採択され、それぞれ5G向けミリ波無線技術、機械学習のエッジ応用、コンピュータやスイッチでの光配線、センサネットの食農クラウドサービス、ニューラルコプロセッサによる治療、というテーマである。ITの5大トレンドである、IoT、AI、クラウド、5G、クルマという視点から見ると、基調講演と招待講演のバランスは取れているようだ。さらに最近はこれにセキュリティが加わる。

エレクトロニクス・半導体から少し離れた分野では、ITのトレンドをデジタルトランスフォーメーションあるいはデジタル化と呼ぶ。デジタルと言っても実際のデジタルシステムを実現するにはアナログ技術はマストである。だからISSCCでは、アナログ、パワーマネジメント(電源)、データコンバータ(A-D/D-Aコンバータ)、RF(無線回路)、ワイヤレス通信、ワイヤライン通信、イメージャ/MEMS/医療/ディスプレイ、デジタル回路、デジタルアーキテクチャ、メモリ、テクノロジディレクションという11のサブコミッティが形成されている。

機械学習とセキュリティに注目
AIの中心技術である機械学習は、様々なセッションにまたがり、セッション13の「機械学習と信号処理」とセッション31の「機械学習向けメモリ内演算」だけではない。セッション7でも「ニューロモーフィック、クック技術、セキュリティ回路」やセッション21の「シリコンの拡張とその応用」においても登場する。

機械学習に使われるニューラルネットワークの信号に掛ける重みのビット数は、単精度の32ビットから半精度の16ビットだけではなく、もっと粗く4ビットへ変換することで消費電力を下げるアーキテクチャが活発になっている。この積和演算がニューラルネットワークの特長でもあるが、演算を簡単にすればするほど消費電力は減少する。最終的には1ビットすなわちバイナリでも可能である。バイナリだとメモリにそのまま対応できるため、メモリの新しい応用として注目されている。

もう一つはセキュリティだ。暗号処理プロセッサだけでなく、暗号化のカギを生成したり、それをセキュアに保存したりすることも重要で、多様な脅威に対抗する手段の発表もある。従来のソフトウエアによるセキュリティだけからハードウエアでのセキュリティも加味することで、セキュリティをさらに高める方向にある。


図2 企業からの採用論文数は減少しているように見えるが 出典:ISSCC

図2 企業からの採用論文数は減少しているように見えるが 出典:ISSCC


投稿論文に対して採用論文は約1/3で変わらないが、大学からの採用数に対して企業からの論文が減ってきている。しかし、企業の研究開発活動が活発ではなくなっているという訳ではなさそうだ。産学共同研究はむしろ増えていると論文委員は口をそろえて述べており、論文の数え方を見直す動きが出てきている。これまでは、共同発表の場合、第1著者の所属をベースにしてきた。しかし純粋に大学だけの発表なのか、共同研究なのか、区分けは難しい。共同研究でも企業名を出さない場合があるからだ。複数のプログラム委員は、論文数の数え方を今後検討してみたいと述べている。

(2017/12/01)

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