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ISSCC 2017のテーマは「賢いチップ」

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ISSCC 2017の採択論文が決まった。今年のテーマは、「スマート社会に向けたインテリジェントなチップ」である。先端技術は、パソコンからIoTやAI、5G通信へと向かっており、その流れはよりインテリジェントなシステムに向かっている。

図1 ISSCC2017で採択された論文はワイヤレス通信が多い 出典:IEEE ISSCC

図1 ISSCC2017で採択された論文はワイヤレス通信が多い 出典:IEEE ISSCC


基調講演は4件で、それぞれ以下の通りである;
・「Dynamics of Exponentials in Circuits and Systems」Texas Instruments Ahmad Bahai氏
・「A Smart Design Paradigm for Smart Chips」TSMC Cliff Hou氏
・「Quantum Computing – The next Challenge in Circuit and System Design」TU Delft Lieven Vandersypen氏
・「The Development of High-Speed DNA Sequencing」Yale School of Medicine Jonathan Rothberg氏

すなわち、回路とシステムの大きな変化や、賢い設計技術、量子コンピューティング、DNA高速解読、という4つのテーマはいずれもコンピューティング技術が大きな変革期に来ていることを表している。その背景はずばり、システムをもっと賢くすることにある。IoT、AI、クラウド、モバイル、全て共通することはもっと賢く(スマート)することで、企業や工場の生産性をあげ、商店の売り上げを上げ、さらに快適な生活を送るためにシステムを賢くすることに尽きる。

論文の投稿件数は前年比7.7%増で、この5年間で最も多い641件となったが、反面、採択率は32.0%とやや下がった。それらの分野は採択論文の多い順からワイヤレス通信14%、アナログ13%、IMMD(イメジャー、MEMS、医療、ディスプレイ)13%、RF12%、将来技術10%、デジタル回路9%、メモリ8%、デジタルアーキテクチャとシステム8%、データコンバータ7%、有線通信7%となっており、ワイヤレス通信が増え、有線通信が減少した(図1)。ワイヤレス通信にはトランシーバやアンテナなどシステムとして応用が多く、RFは文字通り高周波回路と、区別している。

最近の傾向であるが、全ての論文とも消費電力を下げることが大前提になっており、かつてのように性能最優先という論文は見られなくなっている。しかも低コストも前提になっており、チップ面積当たりの性能を謳う論文も多い。すなわち、消費電力当たりの性能、面積当たりの性能といった指数がたくさん並ぶようになっている。

このために微細化技術がアナログでも推進されており、16nmFinFETを使ったデータコンバータは、14ビットの分解能で6.8Gサンプル/秒という非常に高速ながら330mWという低電力で実現している。トランシーバではデジタルアンプやエンベロープ技術による消費電力の削減といった論文が相次ぎ、メモリでは4Gビットという高集積のMRAMが登場する。ディープラーニングやCNN(畳み込みニューラルネットワーク)を使ったニューロコンピューティングICも登場する。医療では、手術中の麻酔の深度をモニター・計測するICや3次元超音波画像作成用の3072チャンネルの2次元アレイチップも登場する。

会議は例年同様、米国サンフランシスコのマリオットホテルで、2017年2月5〜9日開催される。Advanced Programは11月末までにウェブ上に掲載される予定だという。

(2016/11/15)

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