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VLSI Symposium、日本技術の存在感

6月13〜17日ハワイで開催される2016 Symposium on VLSI Technology and Circuits(通称、VLSI Symposium)の採択論文が決まった。VLSIのデバイス・プロセスを扱うTechnologyでは、全投稿件数214の内、採択された論文は85件、回路技術を扱うCircuitsでは、375件の投稿に対して97件の採択であった。回路関係の内容はIoT一色である。

図1 回路関係の日本の採択論文数は減少傾向だったが底を打ったか 出典:VLSI Circuits Symposium委員会

図1 回路関係の日本の採択論文数は減少傾向だったが底を打ったか 出典:VLSI Circuits Symposium委員会


図2 日本の論文数は減少傾向にあるが、採択率は平均よりも10ポイント高い50% 出典:VLSI Technology Symposium委員会

図2 日本の論文数は減少傾向にあるが、採択率は平均よりも10ポイント高い50% 出典:VLSI Technology Symposium委員会


Technologyの採択率40%、Circuitsのそれの26%は従来と変わらない。採択論文の地域別な数では、日本からの論文数はCircuitsでは減少傾向にあるが(図1)、Technologyでも同様な傾向にある(図2)。また、産業界、研究機関、大学との比率は、Technologyでは大学の方が少数派だが、Circuitsでは多数派だ。

採択論文数が多い機関は、Technologyでは、ベルギーIMECが10件、IBMが7件、フランスCEA-Letiが5件となっており、Circuitsでは米Michigan大学が8件でトップ、2位はIntelの7件、3位は韓国のKAISTと米UCLAが4件ずつとなっている。

内容に関して、Technology、Circuits共にプレナリーセッションやパネルディスカッションのテーマが時代やトレンドを表していることが多い。プレナリーセッションのテーマは、Technologyでは、センサメーカーのInvenSense社のStephen Lloyd氏によるMEMSセンサの未来、日産自動車の浅見孝雄氏による、VLSIが実現するインテリジェントモビリティ、である。Circuitsでは、GoogleのOliver Termam氏による機械学習の進化、ソニーセミコンダクタソリューションズの野本哲夫氏による映像技術の進化、となっている。

この4つのテーマは、IoTシステムとスマートカーに共通する。IoTでは、MEMSセンサやCMOSイメージセンサは端末に使われ、IoT端末のデータはクラウドに送られ、そこでビッグデータ処理を行うことになるが、その演算処理に威力を発揮するのが機械学習やディープラーニングだ。インテリジェントなクルマというシステムにはIoTも搭載し、自動車庫入れや自動運転などを支援する。インテリジェントなクルマにはMEMSセンサ、CMOSイメジャー、解析するための機械学習やディープラーニングなどの技術を使う。

パネルディスカッションのテーマも時代を反映する。Technologyでは、ムーアの法則以降に関するパネルディスカッションが三つある;「More Moore、More than Moore、or Mo(o)re Slowly」と、「How Moore’s Law, Industry Consolidation, and System Trends are Shaping the Memory Roadmap(ムーアの法則、業界再編、システム動向がどのようにメモリ―ロードマップを形成するのか)」、「Semiconductor Business: Inflection Beyond Scaling(半導体ビジネス:スケーリングの先にある変化の予兆)」。いずれも1チップ上に集積するトランジスタ数は2〜3年ごとに倍増する、というムーアの法則を支えてきた微細化のトレンドから外れることを示している。

Technologyで採択された論文では、第3世代のFinFETやSiGeのpチャンネルFETとのCMOS、Si基板上に形成したInGaAs FinFETなどに加え、FinFETではチャンネル空乏層を3方向から囲んだが、4方向からリーク電流を完全に遮断するSiナノワイヤートランジスタなどの新トランジスタ技術が登場する。さらに電流を使わないスピントロニクスのメモリや相変化メモリ、ReRAMなどの新型メモリに加え、LetiによるTSVを使わない3次元ICであるCoolCubeの発表もある。

Circuitsのパネルディスカッションのテーマは、共通するビジネス以外のテーマとして、ジョイントの「Redefining Moore’s Law in a 3D World(3Dの世界でムーアの法則を再定義する)」に加え、「Top circuit techniques: Life with and without them(先端回路技術:回路技術のインパクト)」、「It’s all a common platform – how do I build a differentiated product?(コモンプラットフォームが全て−差別化をどう図るか?)」がある。

Circuitsで採択された論文で注目されたものは、IoT向けの超低消費電力技術や、4K画像を480fpsという高速で画像を採り込めるCMOSイメジャー、クラウドでの56Gbpsと高速の4値トランシーバ、文字/画像認識用のディープラーニング用プロセッサ、3D心電エコー検査のビームフォーミング用のセンサアレイチップなどがある。

詳細、登録、論文に関しては、VLSI Symposium委員会

(2016/04/28)

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