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ISSCC 2016、全体の共通キーワードはIoT、日本が高採択率

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ISSCC2016は、IoT一色といえそうだ。産業界からの講演が増え(図1)、しかも日本からの発表が米国に次ぐ件数となっている。参加者も60%が産業界から。ISSCCは常に時代の新しいトレンドを採り込み、基調講演はそのトレンドを反映している。アナログ、パワー、ロジック、メモリ、RF、通信回路、プロセッサなどテクノロジーの進化を見ることができる。

図1 ISSCC 2016は企業が盛り返した 出典:IEEE ISSCC


この会議全体のテーマは「Silicon Systems for the Internet of Everything(IoT向けのシリコンシステム)」である。基調講演は4件あり、それを見越したテーマが多い。テーマと講演者は次の通り;
・Moore’s Law: A Path Forward−IntelのWilliam Holt氏
・5G Mobile Technology Evolution Toward 2020 and Beyond−NTTドコモの尾上誠蔵氏
・The Road Ahead for Security Connected Cars−NXP SemiconductorのLars Reger氏
・Three Pillars Enabling the Internet of Everything−XeroxのSophie Vandebroek氏

Intelのムーアの法則の進展は、IoTのクラウドやエッジコンピューティング(IoT端末側での演算機能)で使われる。5Gは10Gbpsという高速データレートだけではなく、エネルギー効率の大幅な向上や、レイテンシ1ms以下という仕様もあり、IoTの通信にも大きな影響を与える。クルマのセキュリティに関してもクルマがインターネットとつながるために欠かせない。最後のXeroxのCTOの講演はIoTそのものである(編集室注)。

発表件数に関して、国別では米国の83件がトップで、2位の日本が24件、韓国22件、ベルギー12件、台湾11件となっている。あとは9件以下となっている。発表機関別では、トップがベルギーIMECの10件、韓国Samsung9件、IntelとMichigan大学が8件、KAISTとUCLAが7件、MediaTek6件、Broadcomと東芝、MIT、Texas大学が5件と続いている。日本からの発表は、東芝以外はルネサスエレクトロニクスとパナソニックが3件、ソニーと東京工業大学が2件、となっている。久々に日本の検討が目立つ。

採択率では、ベルギーの80%が群を抜いているが、次が日本の50%、米国は38%、韓国33%となっている。日本からは質の高い論文発表が期待されている。

IoTに不可欠な技術として通信技術がある。通信周波数の高周波化は従来のミリ波からTHz(テラヘルツ)へと進んできた。GHzの上のTHzを実現するPLL周波数シンセサイザが登場する。0.56THzをはじめ、0.55THz、0.35THzを利用するセンシング技術への応用は、X線を使わずに透過するテラヘルツの能力を利用できるようになる。

アナログでも16nmFinFET
アナログにも微細なプロセスが導入される時代になってきた。周波数帯域が160MHzと広く消費電力が40mWのΣ変調器をMediaTekが16nm FinFETプロセスで設計、Analog Devicesも28nmプロセスで帯域465MHzのA-Dコンバータを設計、その成果を発表する。電源ではシステムLSIへのオンチップ集積を狙ったスイッチトキャパシタ方式のDC-DCコンバータが続出している。スイッチトキャパシタ方式はこれまで効率が悪かったが、東芝が95.8%、Leuven大学が94/8%と効率を上げた。

IoTの端末向けには低消費電力が不可欠だが、135〜175µWという超低消費電力のレシーバ(Twente大学)や1.5〜2.3mWのGNSSレシーバ(ソニー)などの発表がある。有線通信では光伝送技術としてシリコンフォトニクスで56Gbps/300mWのトランスミッタ(STMicro、Pavia大学)や、32Gbpsで4チャンネルのトランスミッタ(Intel)などが発表される。Intelは14nm FinFETプロセスを使用。

プロセッサではサーバー用のハイエンドではなく、モバイルプロセッサが多い。また、非ノイマン型のディープラーニングなどのアーキテクチャの発表もある。モバイルプロセッサでは、ARMのbig.LITTLEの2クラスタ構成に加え、その中間も含めた3クラスタ構成のARMv8アーキテクチャで10コアのモバイルプロセッサをMediaTekが発表する。ルネサスは、クルマのインフォテインメント向けにレイテンシが70msと小さく12チャンネルのフルHDのビデオプロセッサを集積したSoCを発表する。ルネサスはクルマの安全仕様であるISO26262 ASIL-Bを満足する、16nm FinFETプロセスのヘテロジニアスマルチコアSoCも発表する。

ディープラーニング関係では、韓国の大学院大学KAISTがウェアラブルAR(仮想現実)向けにディープラーニングコアを備えたUI/UXプロセッサについて述べる。MITからも、ディープラーニングの一種であるディープCNN(コンボリューション方式のニューラルネットワーク)向けに再構成可能なアクセラレータの発表がある。低い消費電力と広いメモリバンド幅不要というメリットがある。

メモリはさすがにアジアからの論文発表が多い。NANDフラッシュでは、Samsungが48層のV-NAND構造で3ビット/セル方式の256Gビットフラッシュメモリを、Micronの日本法人がフローティングゲート型で3次元構造の3ビット/セル方式768GビットNANDフラッシュメモリを発表する。MicronはIntelと共に、フローティングゲート型の3D-NANDを開発することを表明していた。一方、東芝やSamsungはMONOS構造のセルを利用している。

微細なプロセスでは、10nm FinFETプロセスを用いたSRAMをSamsungが発表する。これまで最小のデザインルールなので、セルサイズは0.04µm2と小さい。プロセッサに搭載するSRAMの集積度を上げるため、Intelはビット線当たり256セルと多くのセルを並べたアレイを可能にするセンスアンプについて述べる。

DRAM関係では、Samsungが9Gbps/ピンのGDDR5の8GビットDRAMと、バンド幅307GB/sのHBM2(8層スタックのHigh Bandwidth Memory)のDRAMモジュールをウェーハ上で行うテスト法も含めて発表する。

以上、前評判の高い主な発表論文を拾ったが、ここで紹介しきれない優れた論文も多い。これらの詳細は、2016年1月31日〜2月4日のISSCCで発表される。初日の1月31日(日)はチュートリアルセッションが行われ、10名の専門家がビギナー向けの講義を行う。日本からも神戸大学の永田真教授がミクストシグナルSoCのノイズシミュレーションに関して講義する。


(編集室注) 米国や欧州では、IoTという言葉あるが、IoEとは言わない。「IoT or Internet of Everything」と話すことが多い。セミコンポータルでは、省略形で表す時は世界共通語になっているIoTを使う。

参考資料
1. 3D-NANDの製品発表相次ぐ (2015/03/30)

(2015/11/19)

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