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世界のエコシステム構築に経営トップレベルが交流できるGSA

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世界のエコシステムをどうやって構築していくか、これをテーマにしたパネルディスカッション(図1)がSEMICONジャパンの会場で行われた。主催者のGSA(Global Semiconductor Alliance)は、世界中の半導体および半導体関連企業のトップが集まる人脈ネットワークで、事業の拡大と業界の発展に貢献することを最大の狙いとした団体だ。

図1 パネルディスカッションの風景

図1 パネルディスカッションの風景


世界中の半導体トップエグゼクティブとのネットワークがなぜ必要か。半導体産業がもはやグローバルなエコシステムとして運営していかなければ成功しないことがはっきりしてきたからだ。

GSAには、ファブレス、ファウンドリ、EDA、IDM、装置メーカー、セットメーカーなど半導体に関係する企業のトップエグゼクティブが集まる。GSAの会長である英国のファブレス企業CSR社のCEOのJoep van Beurden氏(図2)によると、来週150名の経営トップが集まり、ディナー会を米国で開催するという。GSAで海外の半導体関連企業のトップとの人脈が形成できれば、M&Aや、工場売却、あるいは装置だけの売却、購入など各企業の発展に関係する行動に即、移すことができる。日本の半導体メーカー・ファブレス企業でGSAの会員は、東芝、ザインエレクトロニクス、メガチップスしかいないという。これでは世界とのエコシステムを構築できない。トップが知り合いになり、その人脈を作ることから全て始まる。


図2 CSRのCEO、Joep van Beurden氏

図2 CSRのCEO、Joep van Beurden氏


中国の代表的なファウンドリ企業SMICのCEOであるTzu-Yin Chiu氏(図3)は、「日本の半導体メーカーの世界市場における存在感はまだ大きい。8インチ換算のウェーハプロセス工場での世界のキャパシティの28%が日本」とエールを送る。ここに日本のIDMがこれからも成長できる大きな機会があるとする。例えば、工場を拡張したい場合に、SMICを使うメリットとして、SMICは中国市場に詳しいため、IP検証とデザインサービスを迅速に提供できることを上げている。すでに40nmプロセスで量産しており、28nmプロセスも始まっている。


図3 中国SMICのCEO、Tzu-Yin Chiu氏

図3 中国SMICのCEO、Tzu-Yin Chiu氏


SMICはバンプ形成サービスにSiltech社と組み、CMOSイメージセンサ向けのオンチップマイクロレンズとカラーフィルタには凸版印刷との合弁のTSES社と組んでいる。

続いてCSRのBeurden氏は、半導体産業がかつての年平均20%増という超高成長時代を終え、低成長時代に入りながら、微細化コストが上がり、しかも市場によっては成長・停滞がダイナミックに変わるこの時代こそ、エコシステム構築するためのパートナー探しが欠かせないとする。このパートナーにはカスタマやサプライヤはもちろんのこと、コンペティタでさえ候補になる。差異化技術を開発するのに、エコシステムを通じたコラボレーションが極めて有効だと述べている。

この後のパネルディスカッションでは、グローバルな半導体エコシステムを構築するうえで何が重要で、具体的にどうインプリメントしていくか、というテーマで議論した。CSRのBeurden氏は、どうやって世界の早い変化についていくか、が課題になろうとする。
Advanced Technology Resource Groupの社長であるStephen Rothrock氏は、非競争領域での標準化推進、複数企業の共同技術開発、ファブの共有による投資リスクシェア、など、様々な形態での高効率のコラボによって、安定した利益率の持続が可能となると述べた。

やはりGSAの会員である東京エレクトロン 取締役専務執行役員の鷲野憲治氏は、微細化と同時進行するデバイスの高機能性は、新材料開発が鍵を握っていると述べ、IDM→Foundry/Fablessへとシフトした半導体産業界は、今、設計・デバイス製造・プロセス開発・装置製造・材料製造・テスト/アセンブリといった要素が多角的に協業する構図に移り変わっていくと述べた。

材料メーカーの代表としてパネリストに参加した、JSR代表取締役社長の小柴満信氏は、基礎研究から応用研究に至る段階では、流れの速い変化(魔の川)を乗り越える知恵が求められ、応用研究を事業化につなげる段階では、資金や人材などを枯れない(死の谷)ようにすることが求められ、事業を成功させるまでの段階では、多くのライバルの中での厳しい生き残り競争(ダーウィンの海)が待っているという概念をベースに、最後のダーウィンの海の渡り方における日本の産業界の強化の急務を説いた。


図4 東芝常任顧問の齋藤昇三氏がモデレータを務めた

図4 東芝常任顧問の齋藤昇三氏がモデレータを務めた


今回のフォーラムのコーディネータとなった、GSA役員でもある東芝 常任顧問の齋藤昇三氏(図4)は、研究開発や企業間共同開発におけるコンソーシアム・アライアンス、半導体設計・プロセス技術・後工程プロセス・OSAT・半導体営業・流通におけるGSA、そして装置・材料業界のSEMI、それぞれのポジショニングの重要性を強調し、パネリストが掲げた課題点の解決に向けて、半導体関連業界のプレイヤーの協業と、それぞれの団体のコーディネーションによって、グローバルなコラボレーションが最適化されると説いた。

(2013/12/12)

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