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A-SSCC、初めてシンガポールで開催、ハイレベルの技術発表を予定

半導体回路の国際会議ではずっと前からISSCC(International Solid-State Circuits Conference)が誰もが応募して技術力を示したい発表の場であるが、最近はアジアのプレゼンスの高まりと共にA-SSCC(Asian Solid-State Circuits Conference)もエンジニアにとって権威のある国際会議になりつつある。

図1 A-SSCCの論文投稿数、採択数の推移 出典:IEEE A-SSCC

図1 A-SSCCの論文投稿数、採択数の推移 出典:IEEE A-SSCC


A-SSCCは、リーマンショックと共に論文投稿数は減りつつあったが、2011年に盛り返す傾向がみられ、2012年は少し落ち込んだものの、2013年は2008年の投稿論文数を超えた(図1)。採択数は毎年大きな差はないと思われるが、それでも投稿論文数が少なければ採択率は若干高まる傾向がある。今年は投稿論文数が盛り返し、採択率は35%とリーマンショック前のレベル(32〜34%)に戻ってきた。

今年は11月11〜13日、初めてシンガポールで行われる(図2)。これまでは、台湾、中国、韓国、日本を繰り返して開催されてきたが、今回からシンガポールが加わることになった。シンガポールは、国の豊かさを表す、国民一人当たりのGDPが日本のそれを数年前に超えた国である。この都市国家は、国際会議場の存在や、地域本社機能などビジネスの拠点としてのインフラを整えている。A-SSCCはリゾート施設のあるセントーサ島のコンベンションセンターで開かれる。


図2 シンガポールの発表会場 セントーサ島のコンベンションセンターで開催 出典:IEEE A-SSCC

図2 シンガポールの発表会場 セントーサ島のコンベンションセンターで開催
出典:IEEE A-SSCC


今年のテーマは、「Integrated Circuits and Systems for a Mobile Society(モバイル社会に向けた半導体LSIとシステム)」である。11日はチュートリアルセッションであるが、12日と13日にはそれぞれ基調講演が2件ずつある。それぞれ、「Future Mobile Society Beyond Moore’s Law(ムーアの法則を超える未来のモバイル社会)」(シンガポールIME)、「The Evolution of CMOS Image Sensors(CMOSイメージセンサーの進化)」(ソニー)、「SW-SoC Convergence Platform for Next Generation Smart Devices Design(次世代スマートデバイス設計に向けたソフトウエアとSoCの融合プラットフォーム)」(韓国ETRI)、「Collaborative Innovation for Future Mobile Applications(未来のモバイル応用に向けた協業イノベーション)」(シンガポールGlobalFoundries)、である。全て未来志向のテーマとなっており、今後の成長が期待される。

パネルディスカッションのテーマも未来志向であり、「From Sensor to Cloud; What is a Role of Integrated Circuits?(センサからクラウドまで;半導体LSIの役割は何か?)」としてIoT(Internet of Things)に係わる問題を議論する。

一般講演では、アナログ、データコンバータ、デジタル、SoC、RF、有線、新技術・応用、メモリという分野に加え、今年もインダストリープログラムを設け、企業からの発表を集めた。今回は、オラクル(買収したサン・マイクロシステムズ)が128スレッドのSPARC T5プロセッサ、TI/TSMCのグループはFRAMマイコンで起き上がり384nsと高速のアーキテクチャ、IBMは次世代PCIe4.0規格を狙う16Gbpsレシーバーなどについて発表する。

アナログではTHD+Nが0.004%とA級アンプ並みに低い雑音のD級アンプをBroadcom、医療用埋め込みデバイス向けにインダクタ利用のワイヤレス給電を台湾交通大学が発表する。シンガポールのA*STAR/南洋工科大学のグループはECG(心電図)センサからの信号処理プロセッサを発表し、日本の早稲田大学からは最新のH.265エンコーダ用動き検出アーキテクチャ、台湾交通大学から高速の誤り訂正処理チップ、中国精華大学からも47.6〜71GHzの超広帯域VCOなど最新技術が集まる。

IoTを意識して、新技術・応用分野ではセンサ関係が多い。A*STARは脳内観測用に圧力/酸素/温度センサを1チップにし、ドイツのUniversity of UlmはNMR用のスピンセンサーを発表する。メモリはセンスアンプの発表が多い。300度まで動作可能なSOI-SRAMや不揮発性のReRAMなどの発表がある。

(2013/09/20)

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