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ミニマルファブ、LED光源のリソ装置でMEMSカンチレバーを作製

ミニマルファブのプロジェクトが組織化され、昨年12月のセミコンジャパンにおいて初めて装置のモックアップが展示された。今どこまで進展したのか。その第1回の報告会とも言うべき「ミニマルファブ・シンポジウム2013」が東京品川で開催された。

図1 ミニマルファブの装置は皆同じ大きさ 出典:ミニマルファブプロジェクト

図1 ミニマルファブの装置は皆同じ大きさ 出典:ミニマルファブプロジェクト


ミニマルファブプロジェクトは、少量多品種の半導体ICを作ることを目的として生まれた。直径0.5インチ(1.27cm)のSiウェーハ当たり1個のチップを生産するという、超カスタマイズされた半導体生産システムだ。このコンセプトを実現しようとして生まれた組織が「ミニマルファブプロジェクト」である。

このシンポジウムでは2件の基調講演の後、ミニマルファブのコンセプトを同プロジェクト代表の原史郎氏、その進捗状況をミニマルファブ技術研究組合プロセス開発チームサブリーダーのクンプアン・ソマワン氏がそれぞれ発表した。ミニマルファブでは、局所クリーンというコンセプトの装置を使う。この装置は、どのプロセスでも全く同じ外形寸法に規定している(図1)。各装置にはロードロック方式の予備室PLAD(Particle Lock Air-tight Dock)があり、そこと本チャンバをゲートバルブで遮断している。予備室からチャンバへウェーハを送る時だけゲートバルブを開く。

ソマワン氏は、開発してきたリソグラフィプロセスについて発表した。この中で、レジストの塗布不均一を解消するため、ウェーハのエッジに丸みを付け、ウェーハ周囲でレジストが厚くなることを防いだと述べた(図2)。ただ、半導体業界ではウェーハのベベリング作業は新しい話ではない。また、リソ装置ではLED光源を用い、光学系にMEMSプロセスで製造するDMD(Digital Mirror Device)を用いた(図3)。これによって小型化が図れる。現状は、1μm/1μm程度の線幅/線間隔を描く程度である。UV LED光源と光学系では365nmの紫外線光源を想定すると0.55μm程度が限界だとソマワン氏はいう。微細化しなくてもすむような用途を狙う。


図2 レジスト不均一性を解消 出典:ミニマルファブプロジェクト

図2 レジスト不均一性を解消 出典:ミニマルファブプロジェクト


図3 ミニマルファブのリソ装置 出典:ミニマルファブプロジェクト

図3 ミニマルファブのリソ装置 出典:ミニマルファブプロジェクト


最初の試作で、MEMSのカンチレバーを製造したという。Ti/PtメタルにPZTの圧電素子を形成した薄膜を持つMEMSである。Siウェーハから始まり200工程を経てデバイスを試作した。MEMSのパターンは、マスクレスプロセスを使い、DMDでスキャニングしながら描く。ただし、スパッタやCVD、エッチングなどの装置はまだ完成していないため、既存の4インチ対応装置も使う、ハイブリッドプロセスで作製した。

今回のセミナー会場では、講演だけではなく装置開発のパートナー企業の展示もあった。装置そのものは、震度7の地震にも耐えるように固定され、設置場所のフックとの位置決め精度は±0.3mmと高い。装置の形状は全く同じに統一しているだけではなく、装置前面のLCDディスプレイパネルのGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)も共通にしている。このプロジェクトには、GUI開発のソフトウエアメーカーや組み込みソフトメーカーなども参加している。

基調講演でMEMSの応用について話した東北大学マイクロシステム融合研究開発センター長の江刺正喜教授は、「ミニマルファブは一つの重要な方向であるが、フレキシビリティを持たせることが大事で、例えばいろいろなものにも対応できる搬送系が望ましい」とQ&Aでコメントを述べた。もう一人の基調講演者であるロームの常務取締役の高須秀視氏は「MEMS技術で作るマイクロ流路(TAS)や医療機器はできるだけ小型化したいという要求があり、これにはミニマルファブが向いている」と述べた。

ミニマルファブは、1チップのプロセスステップを200工程とすると、1工程1分の処理時間を想定し、チップ作製まで200分かかると原氏は見積もっている。だからと言って量産に向かない訳ではないと原氏は言う。最初のウェーハを投入したら1分後に2番目のウェーハを投入、これを続ければ、200分で1個だが400分で200個のチップができると主張する。ただし、1分で出来る工程を想定する一方で、RTA(ラピッドサーマルアニール)ではなく、従来の石英ボート方式の抵抗加熱方式を進めており、1分という時間は達成が難しそうだと業界ではみている。工程間のつなぎも含めた時間としても1分という時間を今後検討する余地はあるが、同氏のパイプライン的なプロセスでは月産数1000個は計算上いけるかもしれない。

(2013/07/05)

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