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春節の週に感じること/市場実態PickUp/グローバル雑学王−85

今年の旧正月、春節は2月14日で19日までの1週間は、中国、台湾はじめお休みということで、半導体・デバイス市場も一服感がそこかしこに感じられるところがある。市場経済の伸びに沸く中国、そして最先端技術の今後に立ちふさがる障壁の中に、ひたすら拡大する動きとじっくり見据える動きという両者の対照を感じている。

≪春節の週に感じること≫

1週間前のテレビで、中国・温州の経済人グループがドバイへ向かうという飛行機内の場面がたまたま目に入って、その後見入ってしまった。ドバイの世界一最高層ビルのマンションの価格が当初の1/3に下がっている現状ということで、その買い付けが目的とのことである。一方では、ドバイに出稼ぎにきているバングラデシュからの人々が、給料未払いで動くに動けない事態が映し出されていた。

まさに中国の経済界の世界をまたにかけたダイナミックな動きを感じるが、関連情報、ニュース記事として以下を見つけている。
* 温州市(Wenzhou)は中華人民共和国浙江省東南沿海に位置する地級市(地区クラスの市)。商才に長けた温州人は「中国のユダヤ人」と称されることがある。
* 不動産投機で知られる中国浙江省温州市の「温州商人」が、春節休暇中に、金融危機や政府系企業の信用不安を受けて大きく値下がりしたアラブ首長国連邦(UAE)ドバイの不動産購入に向けたツアーを計画している。中国英字紙チャイナ・デーリーが14日までに伝えた。完成したばかりの世界一の高層ビル「ブルジュ・ハリファ」(828m)内のマンションなども対象という。同紙によると、ドバイには約2万人の温州商人がおり、合計で少なくとも50億元相当の資産を保有しているという。

我が国でも中国からの春節特需が次のように報じられ、テレビのニュースにも取り上げられている。

◇厳冬消費に春節特需、中国人観光客に熱視線。(2月18日付け NIKKEI NET)
→家電量販店や百貨店などが春節(旧正月)の長期休暇(13〜21日)で日本を訪れている中国人観光客でにぎわいをみせている旨。家電、デジタル一眼レフカメラなど「メード・イン・ジャパン」の高額品を買い求める顧客が目立つ旨。政府は中国人観光客の誘致拡大に力を入れる方針、消費不振に悩む小売業界では“春節需要”の上乗せ効果に年々期待が高まっている旨。

まさに中国のグローバルなネットワークの力を改めて感じさせられる。中国の1月の貿易実績が次の通りとなっており、ここでも世界経済の危機前の水準への回復が裏付けられている。

◇1月の輸出入総額が2047億ドル突破、2008年水準を回復。(2月19日付け 13億人の経済ニュース[biglobe配信])
→税関総署が10日発表した1月の貿易統計によると、輸出入総額は2047億8000万ドル(前年同月比44.4%増)で、すでに2008年同月水準に戻るなど回復を続けている。内訳は輸出額が1094億7000万ドル(前年同月比21%増)、輸入額が953億1000万ドル(同85.5%増)。貿易黒字は141億6000万ドル(同63.8%減)となった。世界金融危機と春節(旧正月)の二重の影響で2009年1月は輸出入が激減したことから、今回は前年同月比で大幅な伸びとなった。ただ、2008年1月と比べても今年1月の輸出入総額は2.4%の増加で、すでに2008年の水準を回復している。

この中国の"動"と対照的に感じるのが、先般のInternational Solid State Circuits Conference(ISSCC)の総括記事からの今後の最先端技術の進展に立ちふさがる障壁の様相である。

◇Opinion: ISSCC memory papers failed to impress(2月14日付け EE Times)
→過去何年かのInternational Solid State Circuits Conference(ISSCC)では新しくなるほどと思わせる''universal memory''論文があったが、今年は注目せずにいられないものがあまりなく、scalingが活発で幅を利かせており、いろいろな''universal memory''の窓を先に追いやっている旨。

◇Six things that surprised us at ISSCC -Next year we hope to see more nano, software--and EEs(2月16日付け EE Times)
→power management重点化の広がり、ナノテクおよびソフトウェア関連論文の不足および参加者数回復の鈍さ、これらが先週のISSCC 2010でのEE Times editorsが受けた驚きであった旨。
1) Power everywhere
 …タイトルにパワーfiguresが目立つ論文の多いこと
2) Software nowhere
 …設計への全体アプローチの一環としてソフトウェア関連のセッションが見られない
3) Attendees trickle back
 …2010年は明るい見込みということで、もう少し参加者が伸びると思ったという印象
4) Tiny nano presence
 …ナノテク関係論文の少なさ
5) Disruptive history
 …1952年のISSCCスタート時、米国政府は該技術の公開討論を望まなかった経緯。
6) IBM back in NPUs
 …IBMが数年前に撤退したNPU(Network Processing Unit)市場に再参入

経済危機の影響、余波を依然強く感じるところがあるが、最先端技術の分野にも早く回復感の具体的な表われを待望するものである。


≪市場実態PickUp≫

春節の週に重なって開催の携帯電話の展示会、Mobile World Congress(MWC)から、注目した内容、動きとして次の通りである。

【Mobile World Congress(MWC)】

◇世界の携帯大手、「高機能」に軸足、欧州で大型見本市。(2月15日付け NIKKEI NET)
→世界最大の携帯電話見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」がスペイン・バルセロナで15日に開幕、韓国サムスン電子や英ソニー・エリクソンなど端末大手はインターネットの操作性を高めた高機能携帯電話(スマートフォン)の新機種を発表、市場全体が伸び悩むなか、高成長の高機能分野が主戦場となり、日本勢も対応を迫られそうな旨。

◇TI samples OMAP 4, but only to big players (2月15日付け EE Times)
→Texas Instrumentsが、45-nm製造プロセス技術に成るOmap-4アプリ・プロセッサのサンプル配布中、しかしhigh-volume OEMs and ODMs向けのみであり、ディストリビュータ経由では販売しないとの注意付きの旨。

◇Intel, Nokia launch open software 'MeeGo' platform(2月15日付け EE Times)
→IntelとNokiaが、それぞれ独自に開発してきたモバイルLinuxを統合すると発表、Intelの「Moblin」とNokiaの「Maemo」を統合、統一Linuxプラットフォーム「MeeGo」を打ち上げの旨。

◇GlobalFoundries, ARM tip 28-nm process for mobile(2月15日付け EE Times)
→GlobalFoundries社(Sunnyvale, Calif.)とARM Holdings plc(Cambridge, England)が、初のHKMG技術に成る28-nmウェーハを展示、両社コラボはモバイルおよびconsumerアプリ用28-nm "super" low powerプロセスおよび28-nm高性能プロセスをカバーする旨。

◇高機能携帯、使い勝手の良さ競う、MSやノキア、新型OS投入。(2月17日付け NIKKEI NET)
→急拡大する高機能携帯電話(スマートフォン)市場で、使い勝手を高めた新しい基本ソフト(OS)が相次いで登場、米マイクロソフト(MS)が新型OSを開発したほか、ノキア(フィンランド)と米インテルもOSを共同開発、既に登場している米グーグルのアンドロイドも含め、快走する米アップル「iPhone」に対抗する旨。

この携帯電話業界市場の2009年データが発表されている。

◇Nokia remains top dog in handsets, despite growing smartphone competition-Samsung is credited by iSuppli as being the "star performer" in the global mobile handset market in 2009 as the only company among the top-five brands to increase both its market share and operating profits.(2月17日付け Electronics Design, Strategy, News)
→iSuppli社発。smartphone領域での競合激化およびかき乱された経済にも拘らず、2009年のグローバルmobile handset市場でNokiaが業界をリードするprofitabilityを達成の旨。トップ5ランキング、下記参照。
http://www.reed-electronics.com/articles/images/ENEWS/20100217/6719325_chart.jpg

DRAM売上げが2006年以来の前年比プラス、それも大幅という予測が出されている。市場回復の度合いの最も具体的な指標の一つということで、今後の実際の推移、結果に逐次注目ということと思う。

【DRAM売上げ予測】

◇DRAM revenue expected to skyrocket 40% in 2010(2月19日付け Electronics Design, Strategy, News)
→iSuppli社発。グローバルDRAM売上げ、3年連続の減少を経て、2010年は大きくプラスに戻す旨。
 2007年  2008年  2009年  2010年
             $22.7B  $31.9B
 7.5%減  25.1%減  3.7%減  40.4%増

◇DRAM revenue to grow 40% in 2010, says iSuppli(2月19日付け EE Times)
→iSuppli社(El Segundo, Calif.)によるDRAM売上げ推移&予測グラフ(縦軸:USM$)、下記参照。
http://i.cmpnet.com/eetimes/eedesign/100218_isuppli_dram_demand.jpg

半導体製造装置業界も、経済危機前の水準に照らす回復状況の兆しが見られている。

【北米半導体装置業界】

◇Fab tool book-to-bill jumps (2月18日付け EE Times)
→SEMI発。北米半導体装置メーカー、1月のBB比1.20、12月の1.07から上昇。半導体capital equipment受注が、2008年4月以来の高水準の旨。

一方では、模造品の実態が次の通り発表されている。ますますグローバルに行き交う半導体製品であり、各国、業界、各社の一層の対策、取り締まりが求められると思う。

【模造品の急増】

◇U.S.: Fake parts threaten electronic market (2月17日付け EE Times)
→米国Bureau of Industry and Security発。電子コンポーネントの模造が、企業および政府レベルの一層の努力にも拘らず増え続けており、業界supply chainの健全性を脅かしている旨。半導体関連メーカーなどコンポーネントサプライヤが報告している模造件数は次の通り激増、
 2005年   2008年
 3,868件   9,356件(約142%増)
サプライヤの最近の調査では模造品の主要供給源として、中国, 台湾, フィリピン, マレーシアおよびインドが挙げられている旨。


≪グローバル雑学王−85≫

米国の外交スタンス、特にブッシュ前政権から大きく変わろうとしていると言われるオバマ政権の基本的な立ち位置を、

『アメリカを知る』(実 哲也 著:日経文庫1213) …2009年12月 1版1刷

より見てみる。チェイニー前副大統領が、テロ対策で現政権の手ぬるさを批判している渦中であり、今後の成り行きに目が離せないところと思う。


[III] 米国の対外関係

1 理想主義と現実主義のせめぎあい
(1)下ろせぬ人権重視の看板
・米国の外交政策の議論 …民主主義が世界に広がることが望ましく、米国はそれを推進する役割を果たすべきだという考え方がそこかしこ
・社会の民主化は可能で必然 →米国はそのために正しい役割を果たすべきだという楽観的な国民性も
(2)軍事力行使辞さず
・軍事力の使用をそれほど躊躇しない
・同時テロの対応 →やられれば即座にやりかえす。しかもいざとなれば単独で行動する。
(3)対話重視のオバマ外交
・オバマ大統領の対外政策 …「ブッシュ外交の失敗」からの教訓を得て形作られていると言える
・対話の重視や軍事力行使を抑制する姿勢 →状況によっては大きく変わる可能性
・テロ対策 →オバマ大統領はもともと軍事力の行使を否定していない
(4)保守派の軟弱外交批判
・対話を重視した外交政策で成果を出すことが至上命題 →オバマ流の現実主義外交が試練を迎えるのはこれから

※ブッシュ政権のイラク攻撃には賛否両論いまだに渦巻いている感がある。
理想と現実の狭間でのオバマ政権の舵取りに注目である。

2 揺れる自由貿易の旗
(1)歴史的な「二面性」
・米国の対外経済政策 −常に二面性
 ⇒自由貿易の旗振り役
 ⇒自国産業の利益を優先する保護主義
・米国の貿易政策の二面性の歴史
*1930年のスムートホーリー(Smoot-Hawley)法 →世界的な関税引き上げ競争
*ハル・ノート(Hull note) …フランクリン・ルーズベルト政権下
              →GATT体制の確立
*戦後、ケネディ・ラウンドなどの貿易自由化交渉を主唱
*日欧から、今は中国など新興国に目
(2)「開かれた国」に試練
・国境を越えた投資についても二面性
 ⇒外資アレルギーが強い日本と比べれば「開かれた国」
 ⇒米国への投資が大きな問題になるのは安全保障に影響が出ると判断されたとき
・テロ再発への懸念や台頭する中国への警戒感
(3)立ち位置に悩むオバマ政権
・オバマ大統領の構え(スタンス)
1)自由貿易に否定的な対応はとらないが、自由貿易協定を新たに結ぶかどうかなどは労働者への影響やメリットを冷静に判断して決める
2)グローバルな貿易で不利益を被ったとみられる人には様々な支援措置をとる

※小生が半導体業界活動を行っていた90年代後半に、米国が各国ごとに貿易収支を毎月データ発表して、大きな超過については警鐘を鳴らしており、現在も続いているものと思う。きめ細かい厳しい目に当時は驚かされたが、世界をリードして良否、善悪を判断、即座に動くスタンスからは当然ということと受け止めている。

3 中国とどうつきあうか
(1)大国としての責任求める
・米国の政治指導者たち →中長期的な観点から一番真剣に考えなければいけないのが対中関係
・国際的に「責任のあるstakeholder(利害共有者)」としての役割を果たすよう求める考え方
 …中国の大国意識をくすぐりながら、責任分担や大国にふさわしくない行動の見直しを求める
(2)一部に根強い警戒論
・軍拡を進める中国に対する軍事的優位性を確保するとともに、日本や韓国、そして欧州の同盟国との関係は引き続き重視していく構え
・もっと強硬な路線をとるべきだと主張する勢力もまだ根強く残る
(3)関係強化に動くオバマ
・米国が重視する核の不拡散、テロ防止にも中国の協力は一層不可欠
・世界的な経済危機からの脱却で中国に頼る部分が大きくなっている
 …米国債の最大の買い手は中国
・中国の力をうまく使わなければ、米国にとっての利益を高めることもできないというオバマ流の現実主義
(4)日本への関心薄れる
・日本に対する関心が相対的に薄れているという事実
 …ワシントンのシンクタンク主催・シンポジウムで、日本がテーマになることはあまりない一方、中国ものは多く、いつも満員・双方が努力して「日米の畑」を耕していかないと関係が希薄になってしまう危険

※ここでも経済成長著しくグローバルなプレゼンスを大きく高めている中国が出てくる。半導体の知的財産権もまだこれからの問題の1つとして、上記の「日米の畑」をよく耕していく必要があると思う。

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