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奮い立たせる動き/市場実態PickUp/グローバル雑学王−82

二番底の懸念など警戒気分が依然払拭しきれない中、奮い立つ動き、奮い立たせる動きがほしいものと思っていたら、そのような動きが相次いで起きている感じを受けている。市場気分を前向き、上昇志向にもっていくことは常に大切と思っているが、新興経済圏をはじめとする実需上昇、注目の新製品登場などその気分を支える材料が実際に増えてきている現時点と思う。

≪奮い立たせる動き≫

先を読んで引っ張り上げる、引っ張っていく動きは、本当に今こそ必要と思っていたら、同じ思いということか、強気の引っ張る予測に小生も何年か接してきているMalcolm Penn氏の以下の見方である。最近テレビで、お酒の力を借りてこう言ってみたーい!、と絶叫するお笑いが受けているが、小生もかくありたい、あってほしいとひたすら願うのは勿論である。

◇Future Horizons sees 30% chip market boom (1月27日付け EE Times)
→名うての強気の読みで知られるFuture Horizons(Sevenoaks, England)のprincipal analyst and founder、Malcolm Penn氏。世界半導体市場、向こう2年は20%以上の伸び、単年で30%以上にもなる可能性の旨。

Penn氏も市場気分を読んでのことと思うが、一方では、製造、ものづくりから遠ざかる半導体メーカーの現状傾向に対しては、同氏は次の通り注意を促している。製造面、そして勿論市場・販売面とグローバルにますます精通していく努力が、今後の事業展開には欠かせないという思いと受け取っている。

◇Analyst rails against the fab-lite (1月28日付け EE Times)
→Future Horizons(Sevenoaks, England)のprincipalアナリスト、Malcolm Penn氏が、ファブレス半導体ベンダーおよびfab-lite製造戦略を追求する向きに対して苦言。外部委託を行う半導体メーカーには最低限のウェーハ価格上昇が見えてしまって、最悪、半導体の不足についてのmarket windowsを失う恐れがある旨。

もう一つ、奮い立たせる動きと感じたのが、TSMCの設備投資についてである。今年の各社半導体設備投資の予測が以下の通り示されたのはつい先週のことである。

◇Who's in $1 billion capex club? (1月21日付け EE Times)
→IC Insights社(Scottsdale, Ariz.)発。2010年$1B以上のcapital spendingが予想されるのは次の9社(2009年は8社):
 Samsung      $6B
 Intel         $5.3B
 TSMC        $3B
 Hynix         $2B
 Toshiba       $1.95B
 AMD/GlobalFoundries  $1.9B
 Micron        $1.3B
 Nanya        $1.1B
 Elpida        $1B
2010年全体のcapital spendingは$36.985B、2009年比45%増と見る旨。

ところが間髪置かずの感があるが、一挙に60%増の上方修正という形の次の発表である。同社トップ、Morris Chang氏の積極的な奮い立たせる姿勢というものを感じている。

◇TSMC says capex to reach US$4.8 billion in 2010(1月29日付け DIGITIMES)
→TSMCの2010年capexが、2009年$2.671Bから79.7%増の$4.8Bに達する見通し、これまでの同社最高capexは2000年の$3.3Bである旨。

市場の確実な読み、裏付けがあってのこれら奮い立たせる動きと見ていたら、各社の昨年最終四半期の上向き、好調な業績発表が次の通り続いている。本来の成長軌道に戻るにはまだ時間とさらなる努力が必要と思うが、着実にその回復軌道には乗ってきているという感じ方である。

◇TI Q4 net soars on higher analog IC demand (1月25日付け EE Times)
→Texas Instruments社(Dallas, Texas)の2009年第四四半期売上げ$3B、前年同期($2.5B)比21%増、アナログコンポーネントの力強い需要とワイヤレスおよびembedded processing分野の改善が押し上げの旨。この第一四半期は$2.95B〜$3.19Bの販売高が見える旨。

◇Samsung revenue up 19% on strong chip sales(1月28日付け EE Times)
→Samsung Electronics Co. Ltd.(Seoul, South Korea)の第四四半期売上げ$33.9B、前年同期比19%増。

◇TSMC profits in Q4 on returning demand (1月28日付け EE Times)
→TSMC(Hsinchu, Taiwan)の12月31日締め第四四半期売上げ約$2.88B、前四半期比2.4%増、前年同期比42.6%増。net incomeは約$1.02B。

◇Infineon reports strong growth, raises guidance(1月29日付け EE Times)
→Infineon Technologies AG(Munich, Germany)の12月31日締め2010年度第一四半期売上げ$1.317B、前四半期比10%増、前年同期比27%増。

◇Chip makers swing to profitability (1月29日付け EE Times)
→Sandisk社, Maxim Integrated Products社, Cypress Semiconductor社およびLattice Semiconductor社などの半導体メーカーが、2008年後半は不況のピークで赤字に苦しんだのに対し、2009年最終四半期は黒字に転化の旨。

デバイス分野別には、DRAMの急回復ぶりがPC需要増を受けて目立っている。

◇DRAM revenue up 42% in Q4(1月29日付け Electronics Design, Strategy, News)
→DRAMeXchangeからの最新データ。世界DRAM売上げが、2009年第三四半期の前四半期比40%増に続いて、第四四半期はさらに42%増の$8.682Bに達している旨。この12月四半期の伸びは、DRAMのASP(average selling prices)上昇、数量増およびPC販売好調が効いている旨。

下記の待望の見出しが現れたのは本当に歓迎すべきこと。手綱を引きながらも積極的に乗り出していく現状の市場局面ということと思う。

◇半導体、世界で業績回復 薄型TVやパソコン好調。(1月30日付け NIKKEI NET)
→半導体需要が世界的に回復しており、中国など新興国向けに薄型テレビなどデジタル製品の販売が急増、パソコン出荷も好調で搭載するメモリの供給が需要に追いつかない旨。価格上昇と出荷増で東芝や富士通などの収益は大幅に改善、海外勢も業績が回復している旨。新興国を先導役に世界景気が回復に向かうなか、当面は半導体産業の好況が続くとの見方が多い旨。


≪市場実態PickUp≫

27日の発表どんなもの?と待たれていたApple社のtablet型コンピュータが、ついにというか予定通り発表されている。 

【AppleのiPadお披露目】

◇Update: Apple launches 'iPad' tablet (1月27日付け EE Times)
→予定通り、Apple社(Cupertino, Calif.)のCEO、Steve Jobs氏が水曜27日、新しいtablet型モバイルコンピュータ、iPadをお披露目、以下のアピールの旨。
・10インチtouch screen: 約1.5 pounds(約680グラム)
・9.7インチLCD画面
・Apple設計のSoC、A4
・並外れたプロセッサ&グラフィックス性能
・10時間までの電池寿命
関連写真、下記参照。
*AppleのSan Franciscoでの発表イベント会場の外の群衆
 ⇒http://i.cmpnet.com/eetimes/eedesign/2010/Apple_Event1b.jpg
*いろいろな角度からiPadの外観(他サイトより)
 ⇒http://sankei.jp.msn.com/photos/economy/business/100128/biz1001280801007-p1.htm

本のページをめくる画面表示もあって、随所に進化している印象がある。紙のサイズと勘違いしそうなSoCの"A4"であるが、Appleブランドのチップを公の場で発表するのは今回が初めてとのことである(朝日インタラクティブの日本向け編集記事より)。さらにA4の注記として以下の通り。
・A4の「A」はAppleを指すと思われる。
・動作周波数は1GHz。iPhone 3GSは推定0.6GHz。
・卓越した電力効率性 →10時間ものバッテリー寿命
・AppleのP.A. Semiチームによる開発作業の成果(Appleは2008年にP.A. Semiを買収)

このiPad発表を受けて、以下早速のいくつか反応記事である。

◇Winners, losers from Apple iPad roll out (1月28日付け EE Times)
→AppleのiPad tabletコンピュータ発表に対する市場watchersの勝ち組/負け組の見方:
[Winners]
 Apple …出荷見込み:2010年4.9M台、2011年8.7M台
 Apple熱烈ファンの財布 …大方の予想より安価
 Qualcomm社
 Broadcom社, Triquint Semiconductor社およびSkyworks Solutions社
 LG DisplayおよびInnolux Display社
[Losers]
 Amazon.com's Kindle …e-book対抗
 Intel社およびAMD社
 NANDフラッシュベンダー

◇ST owns EU-registered iPad trademark (1月28日付け EE Times)
→STMicroelectronics NV(Geneva, Switzerland)が、"IPAD"を2000年9月1日にEuropean Union(EU)で商標登録、2010年9月1日が期限の旨。Apple社が発表したtablet型コンピュータと同名になる旨。STのIPADは、Integrated Passive and Active Devicesの頭字語、技術的相関はない旨。

本当にいろいろ出てくるものと思うが、米国在住の記者の方からは次の見え方となっている。小生の場合特に、時代についていくのはますます大変、頑張らなければと、偽らざる心境である。

◇Reporter's notebook: Why iPad isn't cracking the Japanese market(1月28日付け EE Times)
→「日本の熱心な読書家はApple版とかなんでもe-booksにはお構いなしに見える。先日東京に向かう通勤電車の中、米国とは違うことに、人っ子ひとりe-bookを読んでいない。多くの吊り革にぶら下がっている乗客の多くは携帯電話の画面に見入っている。」

話変わって、前回はファブレスメーカー・ランキングを本欄で取り上げたが、今回はファウンドリーメーカーについてである。AMDおよびその製造部門スピンアウト、GlobalFoundriesが、それぞれファブレス、ファウンドリーとして、初のランキング入りとなっていることがまず注目である。AMDはファブレスの2位、GlobalFoundriesは下記の通りファウンドリーの5位と、ともに急お目見えの形である。GlobalFoundriesはCharteredの買収を昨年後半行っており、単純計算では2位のUMCに肉薄する位置づけとなる。ここでも今後に注目である。

【2009年ファウンドリー・ランキング】

◇Foundry rankings: New firm emerges; Samsung, IBM lag(1月27日付け EE Times)
→IC Insights社による2009年ファウンドリー販売高トップ17ランキング、次の通り。不況の渦中、大半がシェアを落とし、新顔の米国GlobalFoundries社が第5位にランク入りの旨。

   2008年 2009年 2009/2008変化率
1. TSMC $10.556B $8.989B -15%
2. UMC $3.070B $2.815B -8%
3. Chartered* $1.743B $1.540B -12%
4. SMIC $1.353B $1.075B -21%
5. GlobalFoundries -- $1.065B N/A
6. Dongbu $490M $395M -19%
7. Vanguard $511M $382M -25%
8. IBM $400M $335M -16%
9. Samsung $370M $325M -12%
10. Grace $335M $310M -7%
11. He Jian $345M $305M -12%
12. Tower** $252M $292M 16%
13. HHNEC $350M $290M -17%
14. SSMC $340M $280M -18%
15. TI $315M $250M -21%
16. X-Fab $368M $223M -39%
17. MagnaChip $290M $220M -24%
(注) * Purchased by GlobalFoundries in 4Q09.   ** Tower bought Jazz in 2008.


≪グローバル雑学王−82≫

世界経済危機を経て、新興経済圏へのシフトの渦中にある現在、まさに今の世界の実態をよく知らなければ、ということで読み進めた

『知らないと恥をかく世界の大問題』(池上 彰 著:角川SSC新書 081)
 …2009年11月 第1刷

も、早、最終章である。著者の池上さんを最近テレビでよく見かけるが、国民一人ひとりが"グローバル博学王"になっていく努力が必要な現時点の情勢を受け止めている。本欄は相変わらずの"雑学王"として続けたく思う。


第7章 世界の中の新しい風を読む 〜私たちがなすべきこと

■アメリカ・ブッシュ政権が残したもの
・ブッシュ政権下のアメリカでは貧富の差が拡大

・米国両党共和党民主党
[政策]"一国主義"国際協調路線
[シンボルカラー]「赤いアメリカ」「青いアメリカ」
[支持層]アメリカ中部に住む農業従事者、エネルギー産業従事者東西海岸と五大湖に面した都市に住んでいる人:ホワイトカラー
・オバマが「第2のルーズベルト」になれるかどうか、注目

※ブッシュ政権はさんざん叩かれての幕引きだったように映るが、ここでもその論調である。9.11、そしてアフガン、イラク攻撃と、小生とてイスラム世界に関心を持たざるを得なくなったし、決定的な亀裂のますますの深まりを感じながら、現在に至っている。オバマ大統領への大きな期待感があるが、当面は目覚しい伸長が続くと見込まれる中国はじめ新興経済圏の台頭の中で、如何に世界のリーダーシップを発揮して如何なる国際協調路線を敷けるか、引き続き注目である。

■小泉・竹中改革が残したもの
・郵政事業の最大の問題点は、330兆円ものお金が民から官へ流れていたこと
 →財政投融資のもと無駄な公共事業などへ
・不良債権処理のお蔭で、今回の危機で日本の金融機関は比較的少ないダメージ
・人材派遣業法の改正はやってはいけなかったのでは
 →結果的に、ワーキングプアやネットカフェ難民を生んだ一面も
・冷静に見極めて、これから改めるべきところは改めていく、その姿勢が大事

※「自民党をぶっつぶす」と対抗勢力に向けて言い張って、推進された小泉政権の改革。いろいろな功罪の見方、上記にもある通りである。過去の経緯は問題、過ちがあるにせよ、今後、未来志向で考えれば、当時の中国、韓国との距離感はあり過ぎたように思うことも1つ。なかなか両立しない政治および経済の関係であるが、民間の、例えば各種業界の交流を一層深めることから時間をかけて信頼の輪を積んでいくことか。

■政権交代で何が変わる?
・鳩山新政権の印象 …「社会民主主義的な色彩が復活する」
・政策決定システムの構築 →「政治主導」
              「政府・与党の一元化」
・党自体で政権を握り、党が自ら政治を行っていく
・国の役所には、大臣、副大臣を含め100人近い政治家送り込み
・"国の予算" …「81兆円」ではなく、特別会計まで入れた207兆円の予算を政府が動かす
       →207兆円のかなりの部分は、国土交通省と農林水産省が管轄する特別会計
・「子ども手当」
 農家の戸別所得補償
 「温室効果ガス1990年比25%削減」

※まさに現在進行形、たった今国民一人ひとりが注視している成り行きである。来る参議院選挙で、何が変わったか、改めて審判が下されようとしている現時点である。小生の子供の頃からの自民党政権が大きく本格的に交代した今現在であり、長きにわたる構造、仕組みの中での暮らし、人生がどう影響を受けて転進を図る必要があるのか。上記の小泉政権の改革の功罪にも通じること、本当に実態をよく知って冷静に見極めることの大切さである。

■私たちがこれからなすべきことは何か?
・世界同時金融恐慌ですっかり元気をなくしてしまった世界、そして日本の社会
・大事なことは、我々一人ひとりが自立すること
 「子ども手当」→「配偶者控除」「扶養控除」は廃止する方針
・民主党、自民党、両党の"哲学の違い"を認識する必要
・個人個人の本当の生きがいを見つけるチャンス、今にこそ。

※若き頃の我が国高度経済成長時代、ひたすら伸びて与えられた仕事に没頭する日々、ベースアップも今とは大きな桁違い。このところの中国発のニュースに当時との大きな重なりを感じている。今や我が国は高度なインフラに恵まれた成熟時代という感があるが、現在の世界の中にあってひたすら伸びて若い世代が没頭できるような仕事は何だろうか。日本を、そして世界を元気にするのに、我が国ならではの技術、文化など磨いて、国際交流を深めて高めていくことと思うし、その中で見い出せる生きがいが今後ますます大きくなっていくのではと感じている。

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