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新年の業界概観&早々の動き/市場実態PickUp/グローバル雑学王−80

中国が世界経済回復の牽引役という昨年来の構図が、半導体業界の今後を見ていく恒例の新年の場でも一層明確に表されている。パソコン出荷数量も、ネットブックなどの売れ行きが貢献して前年同期比二桁増となっているが、金額の方は同二桁減ということで、本来の伸長軌道に戻すには各国・地域の経済圏に向けてそれぞれの消費者の購買心理を如何に掻き立てるか、工夫のしどころということと思う。

≪新年の業界概観&早々の動き≫

新年早々、中国が世界一に躍り出る見出しが相次いでいる。

◇中国、輸出世界一へ、2009年1.2兆ドル、前年比は16%減。(1月10日付け NIKKEI NET)

◇中国の2009年新車販売1364万台、生産も世界一確実。(1月11日付け asahi.com)
  
かっての"米、日、欧、その他(ROW)"という経済関係データの仕分け見出しが、"中国、その他"になっているような現状の感じ方である。その他の落ち込みが大きく、回復速度も緩慢で、このような成り行きを生み出していると思う。

半導体業界の現状を分析し、今後を占っていく新年恒例の

Industry Strategy Symposium(ISS)(HALF MOON BAY, Calif.)

でも、まず目を引いたのが分かりやすい推移データの図面による次の記事である。

◇China Leads World Out of Recession, Through Recovery-Dominating much of the discussion this week at the Industry Strategy Symposium (ISS) in Half Moon Bay, Calif., China has been repeatedly pointed to as a major driver in recovery -- for the semiconductor industry, PV and flat panel displays. It was the first country to recover, and its government has built initiatives that will drive considerable demand.(1月14日付け Semiconductor International)
→今回のこの場で最も話題に上ったのが中国であり、世界の半導体業界に対するその凄まじく拡大するインパクトである旨。図面データ、下記参照。
・中国が2008年12月から世界の好転を先導、韓国、台湾および日本が続いた。(出典: DuPont)
http://www.semiconductor.net/photo/240/240472-Industrial_Productys_Asia_DuPont.jpg
・中国の黒字が同国巨額の富を牽引。(出典: VLSI Research)
http://www.semiconductor.net/photo/240/240477-VLSI_Surplus.jpg
・中国は最も有力な世界のプレーヤーになっているが、半導体の側面でその伸びの利益化には悩み。(出典: VLSI Research)
http://www.semiconductor.net/photo/240/240476-VLSI_Profitability.jpg

経済全体では世界最大のプレーヤーの一角に躍り出ているが、半導体プレーヤーとしては中国はまだまだこれからという現時点が表されている。米、日、欧、韓国、台湾、そして中国と順に長きにわたり広がってきている半導体プレーヤーの世界のリードタイムということと思う。

さて、この半導体の世界で新年早々、統合、連携の動きが目に入ってくる。
まずは、中東資本を得て独立した前AMDの製造部門、GlobalFoundriesについて次の通り。この結果、Charteredという長年馴染んだ社名が消えるとのことである。

◇GlobalFoundries Integrates Chartered-GlobalFoundries said it has formally completed the integration with Singapore's Chartered Semiconductor. The enlarged foundry will offer manufacturing in all three regions once the Malta, N.Y., fab is finished in 2012. "We are sending out a strong message that we will be an integrated company across the globe, with regionalized manufacturing," said Tom Sonderman, vice president.(1月13日付け Semiconductor International)
→GlobalFoundries社が本日正式に、Chartered Semiconductor Manufacturing Ltd.を同社グループに組み入れ、operations headquartersをMilpitas, Calif.に移転、TSMC(Hsinchu, Taiwan)との直接ファウンドリー競争を始める旨。GlobalFoundriesのスタッフ100人以上が、SunnyvaleからMilpitasの以前のCharteredのビルに移っている旨。関連図面、下記参照。
・GlobalFoundriesは世界の主要3地域で製造を提供
http://www.semiconductor.net/photo/239/239929-GlobalFoundries_global_manufacturing_operations.jpg
・GlobalFoundriesは来年から低電力28-nmプロセスを提供
http://www.semiconductor.net/photo/239/239930-GlobalFoundries_Advanced_Technology_Roadmap.jpg
・顧客ニーズに応じて、技術フルセットを計画
http://www.semiconductor.net/photo/239/239931-GlobalFoundries_Technologies_and_Value_Added_Solutions.jpg

◇GlobalFoundries readies tool orders, swallows Chartered(1月12日付け EE Times)
→Chartered Semiconductor Manufacturing Pte. Ltd.の買収を最近完了、GlobalFoundries社が今週、新しい合体したentityを打ち上げる見込み、社名はGlobalFoundriesとなる旨。

TSMCを軸にした連携が、以下のように見られる。上記のIndustry Strategy Symposium(ISS)の場でも、28-nmノード、450-mmウェーハという最先端では誰がお金を支払うのか、という議論が続いている。ここでもかくも最先端でなければ実現できない応用需要を創り出して、消費市場に問いかけるステップを踏んでいくということと思う。

◇Qualcomm, TSMC extend collaboration to 28nm(1月11日付け DIGITIMES)
→TSMCが金曜8日、Globalfoundriesからの受注を示して僅か1日、Qualcommとの連携を65-nmおよび45-nm技術から28-nmへの拡張を発表の旨。TSMCはQualcommと、high-k metal gate(HKMG) 28HPおよびsilicon oxynitride(SiON) 28LP技術の両方で協働しており、その最初の商用28-nm製品は2010年半ばにtape out予定の旨。

◇富士通マイクロ、TSMCと次世代LSI共同開発。(1月12日付け 日経)
→富士通マイクロエレクトロニクスがTSMCと次世代システムLSIの共同開発を本格化、週内に設計技術者10〜15人程度をTSMCに派遣。両社の技術を融合させ、2010年中に次世代システムLSIの生産技術を確立することを目指す旨。両社が開発するのは線幅28-nmプロセスを使って半導体回路を形成する技術、富士通マイクロは自社の設計技術をTSMCの生産設備に落とし込み、高性能な28ナノ品を生産する技術の開発を進める旨。
富士通マイクロは民生品に強く、国内カメラメーカーなど主要顧客、業界に先駆けて28ナノ品を生産できる体制を整えることで、競争力を維持したい考えの旨。


≪市場実態PickUp≫

Industry Strategy Symposium(ISS)から肝心の半導体業界についての見方である。楽観論、慎重論が入り交じるのが現時点何処も、ということと感じている。

【Industry Strategy Symposium(ISS)から】

◇New Productivity Fears in the Face of Recovery Optimism-Most companies are headed for significant growth this year -- at least 20% by most accounts -- as the semiconductor and equipment industries rebound from one of the worst recessions in history. But as manufacturers hold to more pessimistic employment measures, will they have the workers in place to really to take advantage?(1月12日付け Semiconductor International)
→30年以上の歴史上最も憂鬱なmeetingsの1つとなった昨年とは180°の変わりよう、今年のISSはoptimismに浸っている旨。データ図面、下記参照。
・四半期ベースの出荷数量からはほぼ完全なV字回復を予想するIC Insights
http://www.semiconductor.net/photo/239/239485-2005_2010_Quarterly_IC_Unit_Volume_Shipment_Trend.jpg
・Semico ResearchもIC販売高でV字回復を予測
http://www.semiconductor.net/photo/239/239487-Semico_Research_also_predicts_a_V_shaped_recovery.jpg

◇Bleak fab tool outlook seen as IC biz slows (1月14日付け EE Times)
→今回の場のプレゼンに耳を傾けていると、ICおよびfab tool業界の2010年は俄かに景気づく年と見込まれるが・・・、対照的な見方も(a little 'W' out of the V-shaped recoveryの一方、今年、来年と続きそうな''super-cycle'')。

冒頭に触れたパソコン出荷であるが、次の通りである。金額で戻すにはまだまだという現時点であり、従来のデスクトップ、ノートからどう変容して、新興経済圏はじめ受け入れられていくか、携帯電話とともに注目である。

【PC出荷】

◇世界パソコン出荷急増、2009年10〜12月15%、「ネットブック」好調。(1月14日付け NIKKEI NET)
→米調査会社IDCがまとめた2009年10〜12月の出荷台数は前年同期比15.2%増の8580万台、低価格のノート型「ネットブック」が年末商戦で好調だったほか、需要の2割強を占める米国が24%増と大きく伸びたことが全体を押し上げの旨。IDCは2010年もネットブックを中心に台数増が続くとみている旨。ただ単価下落は大きく、台数の2ケタ増にもかかわらず「出荷額は2ケタ減となった模様」、2010年も「新興国を中心に需要が伸びるが、出荷額は減少する」見通しの旨。

◇PC shipments jumped 22.1% in 4Q09, says Gartner(1月15日付け EE Times)
→Gartner社(Stamford, Conn.)からの速報値。2009年第四四半期の世界PC出荷は90M台を上回り、前年同期比22.1%増。2009年年間の世界PC出荷は306M台、2008年比5.2%増。

インテルを巡る動き、最新四半期業績と早速に以下の通りである。最先端技術・市場戦略、パソコン出荷との相関と、同社には目が離せないところである。

【インテル関連】

◇Analyst: Intel may acquire FPGA vendor (1月13日付け EE Times)
→JP Morgan Securities社、Wall Streetアナリスト、Christopher Danely氏。Intel社が、embedded市場並びにSoCsでのプレゼンス拡大を狙って、2010年にXilinx社あるいはAltera社などのFPGAサプライヤの買収に目を向ける可能性の旨。

◇Intel helps lead Europe's 450-mm wafer initiative(1月13日付け EE Times)
→欧州の半導体製造装置メーカーが、Intel社およびIMECといっしょになって、欧州450-mm径ウェーハ装置/材料initiative、EEMI-450を結成の旨。
steering committeeメンバーを出しているのは以下の通り。
 ASM International,
 ASML Holding NV,
 Siltronic AG,
 Soitec SA,
 IMEC,
 Recif Technologies SA,
 Fraunhofer Institut of Integrated Systems and Device Technology(Fraunhofer-IISB)
 Intel

◇Intel Q4 bests estimates, again showing double-digit revenue gains-Intel's Q4 revenue of $10.6 billion was up $2.3 billion, or 13%,on Q3's results. (1月15日付け Electronics Design, Strategy, News)
→史上最悪の年の1つを経たIntel社の数字と位置について、業界watchersからは“blowout”、“robust”および“impressive”といった表し方の旨。

仕事始めの週に開催されたConsumer Electronics Show(CES)について、簡潔な見方として次の通りである。

【Consumer Electronics Show(CES)総括】

◇Apple, Qualcomm seen as winners of CES trends-Analysts cite carrier bottlenecks among mobile barriers(1月12日付け EE Times)
→アナリスト連が、今回Consumer Electronics Show(CES)の2大テーマとして新規途上モバイル機器と3DTV、今回のbig winnersの2社としてAppleとQualcommを選抜の旨。


≪グローバル雑学王−80≫

民族、宗教はじめいくつかの切り口で、本コーナーで世界いたるところ、紛争の経緯、火種を見てきている。大体に行き着く先のない果てしない読後感があるが、今現在の世界各地の衝突、小競り合いはどうなっているか?

『知らないと恥をかく世界の大問題』(池上 彰 著:角川SSC新書 081)
 …2009年11月 第1刷

より、知っておくべき実態を抜き出している。


第5章 新たな火種、世界各地の小競り合い 〜国や地域間の衝突〜

■なぜテロが起こるのか?
・産油国で豊富な資金を持つサウジアラビアの王室のメンバーに、イスラム原理主義者に資金援助を行う者も
・「自分たちを攻撃してきた異教徒と戦って死ねば、天国に行ける」という発想

■ユダヤ人とアラブ人の陣取り合戦
・パレスチナの土地にイスラエルが建国されたのは1948年。イスラエルはヘブライ語で「神の戦士」の意。
・イスラエル建国で故郷を失ったパレスチナの人々 
 …イスラエルと戦うことは「ジハード」に
 ⇒自爆テロに走る理由
・中東は言論の自由や政治的自由がない国ばかり 
 …現世に絶望している若者が大勢

※イスラムの世界については、歴史経緯、気候、風土、・・・、様々な角度で見てきているが、改めて知る現実である。

■新疆ウイグル自治区で何が起こっている?
・新疆とは「新しい土地」という意。清の時代に"清の一部"に。
・ウイグル族はトルコ系の民族で、イスラム教徒
・かっては「東トルキスタン共和国」。西トルキスタンは現在のカザフスタン、タジキスタン、キルギスのあたり、ソ連崩壊でこれらは独立。
 →東トルキスタンを刺激、独立運動が盛んに
・しばしば起こる暴動 …漢民族に対するウイグル族の反乱
・イスラム教徒の抵抗の芽 
 →中国の北アフリカへの進出にブレーキの可能性も

※今や世界経済を牽引する中国も、難しい舵取りの民族問題を抱えている。

■イランはなぜ核を開発したいのか
・イランがまた新たなウラン濃縮施設を建設
・「核拡散防止条約」…1968年に調印、1970年に発効
 →その時点で核兵器を持っていた5つの国(アメリカ、旧ソ連、イギリス、フランス、中国)だけに限り、ほかの国が核兵器の開発をすることを禁止
・IAEA …核兵器を持っていない国が原子力発電所を持った場合、ウランやプルトニウムを兵器に転用していないかどうかを定期的に検査
・イランは、イラク戦争を見て、「核兵器を持っていれば、アメリカも報復を恐れて攻撃できないだろう」との考えか
・日本が輸入している原油の15%近くはイランから →日本の問題でも

■「北朝鮮」と距離を置く韓国
・北朝鮮は、一番上に朝鮮労働党が位置、国家は金正日総書記の命令に従うことに
・主席は金日成だけ。金正日は国防委員会委員長。
・軍事力あっての国家、軍事力の強い国こそが生き残れる、という思想
・李明博大統領になって、莫大な援助がすべてストップ、経済的に苦しい現状

※核兵器、軍事力に頼らざるを得ないとする国に対する関係国のスタンス、協議は、日々のニュースで知らされる難航ぶりである。

■アフリカの資源をめぐって日中がにらみ合い
・世界がアフリカに注目する2つの理由
 「資源」
 「市場」
・東西冷戦が終わった途端、アメリカもソ連を継いだロシアもアフリカには知らん顔。そこに手を差し伸べたのが日本。
 …日本は当時、国連安全保障理事会の常任理事国になりたいという野望

■ダイヤモンド産出国の南アフリカ共和国は輝けるか?
・南アフリカは今、電力不足の悩み
・アパルトヘイトの撤廃 
 →移動が自由に、白人居住区だったヨハネスブルクは今や黒人の街に

※サッカーのワールドカップを控え、今年は特に注目を浴びるアフリカである。根深い民族間の争いも激しく続いており、実態をよく知る契機にという思いである。

■ロシアと東ヨーロッパ諸国の冷めた関係
・北京オリンピックの開催中、グルジア軍による南オセチア進攻 
 →グルジアとロシアの戦闘
・アメリカはロシアを非難、ヨーロッパ諸国は慎重な姿勢
 …ロシアの資源はパイプラインを通じてEU諸国に供給
・旧東ヨーロッパ諸国やヨーロッパに近い旧ソ連圏の国々に対するロシアの影響力が低下の一途の様相

■中南アメリカに広がる反米ネットワーク
・原油価格の高騰で国家財政が潤うベネズエラ
・ベネズエラとボリビア、キューバによって、反米ネットワークが形成

※原油で潤うロシア、ベネズエラ、それぞれに回りの国々との関係の現状である。

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