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年越しの総括/市場実態PickUp/グローバル雑学王−78

世界経済不況による大きな落ち込みに対して世界各国・地域の景気回復策を総動員して必死の食い止めに追われた感のある2009年も終わり、新しい年、2010年を迎えている。半導体業界も、慎重な在庫調整・補充、新興市場の旺盛な需要などで、当初のマイナス見込みほどには至らなかったようである。
2009年から2010年への年越しを業界記事から総括してみる。

≪年越しの総括≫

長らく注目してきている2つの業界記事サイトから、それぞれ2009年のうちに最も数多くアクセスを受けた記事のトップ・ランキングをもとに見ていく。

EE Timesのトップ10は、次の通り。小生なりの抄訳、コメントをつけている。

◇The 10 most popular stories of 2009 (12月29日付け EE Times)
→12月29日までに最も多く読まれた2009年EE Times記事、トップ10:

1) Ten companies in trouble(5月29日付け)
→EE Timesがとりまとめた"10 companies in trouble"。赤字垂れ流し、買収されそう、破産保護、など特に苦境という観点で、以下アルファベット順:
 Advanced Micro Devices Inc.
 (tie) Automatic test equipment(ATE) industry
 Cadence Design Systems Inc.
 Chartered Semiconductor Manufacturing Pte. Ltd.
 Freescale Semiconductor Inc.
 Infineon Technology AG
 Magma Design Automation Inc.
 Renesas Technology Corp.-NEC Electronics Corp.
 Semiconductor Manufacturing International Corp.(SMIC)
 (tie) Taiwan DRAM vendors
"選外佳作"として以下の旨。
 ASAT,
 ASMC,
 Asyst (Chapter 11),
 Axcelis,
 Electroglas,
 Elpida,
 Hynix,
 Lam,
 Mattson,
 Micron,
 MIPS,
 Novellus,
 NXP,
 Photronics,
 Qimonda (Chapter 11);
 Spansion (Chapter 11),
 Sony,
 UMC

※直接、辛辣な評価記事ということで、注目を集めるとともに、業界模様がよく表わされている。以下の3)がアップデート版となっており、特にDRAMメーカーの業績回復が表れている。

2) Anger grows as Spansion files for bankruptcy (3月1日付け)
→スパンションが1日、米連邦破産法11条の適用を申請、事実上、経営破綻した旨。世界的な景気低迷による半導体市況の悪化が経営を直撃、自力再建は困難と判断した旨。2月には同社の日本法人スパンション・ジャパンが東京地裁に会社更生法の適用を申請の旨。

※本件、年末ぎりぎりで次の状況となっている。

◇Spansion plans to emerge from bankruptcy in Q1(12月31日付け EE Times)
→フラッシュメモリのSpansion社(Sunnyvale, Calif.)、generally accepted accounting principles(GAAP)に則って9月27日締めの第三四半期、販売高$327.6Mで$1.5Mのnet income。同社2005年12月のgoing public以来、初めての黒字四半期の旨。

3) Ten companies in trouble(9月28日付け)
→前回(上記1)参照)同様に、EE Timesがとりまとめた"10 companies in trouble"。赤字垂れ流し、買収されそう、破産保護、など特に苦境という観点で、以下アルファベット順:
 Advanced Micro Devices
 Freescale Semiconductor
 Infineon Technology AG
 Magma Design Automation
 Motorola Inc. *
 Nokia Corp. *
 NOR supply chain *
 NXP Semiconductor *
 Renesas Technology Corp.-NEC Electronics Corp.
 Semiconductor Manufacturing International Corp.(SMIC)
*印が今回加わり、外れたのが以下の旨。
 (tie) Taiwan DRAM vendors
 (tie) Automatic test equipment(ATE) industry
 Cadence Design Systems Inc.
 Chartered Semiconductor Manufacturing Pte. Ltd.

4) Twenty predictions for semis in 2009 (2008年12月30日付け)
 1. Downturn or depression?
 2. The (fab-tool) sky is falling
 3. EDA--Down and out?
 4. Here comes the sun
 5. Bailout blues
 6. Memory lane
 7. Flash dance
 8. Abu Dhabi vs. Intel
 9. Foundry fools
 10. Analog ailments
 11. FPGA vs. ASICs
 12. Who's on hot seat?
 13. Who will not make it?
 14. Litho blues
 15. 450-mm conspiracy
 16. Throw in the towel
 17. Solar or bust
 18. Semi IP is not a loser
 19. Fab vs. fabless
 20. Walmart rules

※2009年に向けては2008年末に上記の予測が挙げられたが、2010年は果たして如何?有望な新技術として以下が挙げられている。

5) Ten emerging technologies to watch in 2010(11月18日付け)
→EE Timesがまとめた2010年に注目に値すると思われるemerging技術リスト:
 1. Biofeedback or thought-control of electronics
 2. Printed electronics
 3. Plastic memory
 4. Maskless lithography
 5. Parallel processing
 6. Energy harvesting
 7. Bio-electronics and wetware
 8. Resistive RAM or the memristor
 9. The through-silicon via
 10. Various battery technologies

6) EE Times updates list of emerging startups to version 8.0(2月2日付け)

7) Conficker 2.0 worm set to strike(3月31日付け)

8) Executive pay: 10 notable chip company CEOs(11月5日付け)

9) IBM cuts jobs as workers reach boiling point(1月28日付け)
→IBM社が、半導体、研究などの部門内含め、さらに人員削減の旨。

10) Cold fusion experimentally confirmed(3月23日付け)
→American Chemical Societyの年次会合でのプレゼン、米海軍Space and Naval Warfare Systems Center(San Diego)のPamela Mosier-Boss氏が、cold fusionを実験的に確認、fusion反応が室温で起きている動かぬ証拠がある旨。

総じて、厳しい市場環境を色濃く映し出す内容となっていると思うが、もう1つのElectronics Design, Strategy, Newsの方は、次のトップ5となっている。新技術、新興市場、環境関連が目に付いている。

◇Readers' Choice: Most-clicked-on EDN 2009 content(12月31日付け Electronics Design, Strategy, News)
→2009年の最終日を締めるにあたって、今年最も数多くクリックされた記事およびブログ、トップ5:

□Utilities suffer from CFLs' poor power factor(4月6日付け)
 CFL=電球型蛍光灯

□2012: The year of looming solar disaster, when civilization devolves?(5月5日付け)

□MIT researchers announce lithium-ion battery breakthrough(3月12日付け)

□India's $20 laptop plan challenges our thinking about system design(2月2日付け)

□Tech salaries increasing, despite economy(2月16日付け)


≪市場実態PickUp≫

年越しのタイミングにはお構いなく、あい続く以下の動きである。

訴訟合戦を繰り広げてきている両社、2009年10月、ノキアがアップルのiPhoneについてノキア特許7件を侵害しているとして米国で提訴、アップルは12月はじめ、ノキアの携帯電話がアップルの特許13件を侵害しているとして対抗している経過がある。

【ノキアとアップルの訴訟合戦】

◇ITC complaint latest volley in Nokia-Apple fight(12月29日付け EE Times)
→Nokiaが火曜29日、Appleを相手取って米International Trade Commission(ITC)に提訴、"実質的にすべての"Apple cellphones, portable music playersおよびコンピュータで特許侵害がある旨。

以下の≪グローバル雑学王−78≫に出てくるVISTAの一角、ベトナムは、半導体についても2010年、注目である。

【インテルのベトナムでの動き】

◇米インテル、2010年7月にベトナムで半導体組み立て開始。(12月29日付け 日経)
→米インテルが2010年7月、ベトナム南部の商都ホーチミンで半導体の組み立てを開始、総事業費10億ドルの大型プロジェクトで、同国向けIT関連投資では過去最大規模となる旨。建設中の工場は中国、マレーシアなどと並ぶ戦略拠点となる旨。製造コストの抑制により世界規模での競争激化に備える狙いがある旨。
ベトナムに半導体メーカーが生産拠点を建設するのはインテルが初めて、同国では来年から2011年にかけて半導体関連の部品や資材メーカーも進出するとみられており、インテルを頂点にIT産業の集積が進む可能性もある旨。

2010年に向けて強気な取り組みがこのところ目立つTSMCが、またもである。

【TSMCの意気込み】

◇TSMC surpasses '09 capex estimate (12月28日付け EE Times)
→TSMCが、12月だけで装置購入にびっくりする$1.24Bの出費、2009年capital spendingの最新見積もり評価を凌ぐことがすっかり確実な様相の旨。12月2日から28日の間に15ベンダーから39の取引でツール購入の旨。

2010年も活況が続くというDRAM市場の見方である。

【DRAM市場】

◇Increasing PC sales, expected DRAM shortage to provide DRAM vendors with profit opportunity -DRAMeXchange estimates that the DRAM market will be more balanced in next two years given an anticipated 80% capex enhancement in 2010, recovering PC shipments, and other DRAM application growth.(12月28日付け Electronics Design, Strategy, News)
→DRAMeXchangeの最新レポート。PC出荷が勢いづいてDRAMが不足する可能性から、2010年を通してDRAMベンダーには黒字を維持するopportunityがある旨。DRAMベンダーのcapex(capital expenditures)は、2009年の$4.30Bから2010年には80%増$7.85Bに増えると見るが、これは2001年から2003年の低いcapex水準をなお下回るものと特に言及の旨。

やはり以下の≪グローバル雑学王−78≫に出てくる中国を巡る関連記事として、次の通り。  

【中国へのマネー流入】

◇新規株式公開、中国が世界の3分の1、2009年、700億ドル調達。(12月28日付け NIKKEI NET)
→香港、上海、深センの中国3市場での新規株式公開(IPO)による調達額が今年は700億ドル(約6兆3000億円)前後となり、世界の3分の1を占める見込み、上海や深セン市場のIPO再開に加え、香港市場での中国本土企業の上場が相次ぎ、2008年の1割から急速に膨らんだ旨。中国企業の旺盛な資金需要を背景に、来年以降も世界のマネーが中国に流入する動きが加速しそうな旨。

【中国における歪み】

◇China Mobile executive removed from post (12月31日付け EE Times)
→China Mobileのvice chairmanで中国共産党head(51才)が、"重大な経済問題"への関与から解任の旨。


≪グローバル雑学王−78≫

西から東に動く世界のお金、弱体化が進むアメリカ、それでは世界をリードする構図はどうなっていくのか。

『知らないと恥をかく世界の大問題』(池上 彰 著:角川SSC新書 081)
 …2009年11月 第1刷

より、まさに現時点の世界の動向を大きく左右する、あるいはなかなか分かりづらくそれでも気になる国・地域が、以下に取り上げられていると思う。


第3章 アメリカ一極集中の崩壊−−−次なる覇権国家はどこか?

■アメリカをおびやかす国はどこだ?
・BRICs …ブラジル、ロシア、インド、中国
 →世界に占めるウエート: 国土面積で29%、人口で42%
・VISTA 
 …ベトナム、インドネシア、南アフリカ共和国、トルコ、アルゼンチン
・儲かって仕方ない中東の石油産出国
 ドバイでは高さ818mの「ブルジュ・ドバイ」が建設中
 →摩天楼の主役も、アメリカからアジア・中東へ
 石油の値段 …1970年ごろ1バレル=$1だったものが100倍もの金額に

※BRICs、VISTAときて、それでは中東はどんな略称に? のんきなことを言っている場合ではないが、今まで馴染んだ主要国並みに理解を深めるには果てしない奥の深さを感じること。

■中東のオイルマネーがアメリカから回帰
・2001年の9・11以降、イスラム圏とアメリカとの対立が深刻に
・進むイスラムの世界の保守化 
 →イスラム法を順守して設計された金融取引、「イスラム金融」も然り
  …リース形式にして金利ではなく手数料を受け取る「イジャーラ」
  …合弁企業に出資、利益・損失を分担し合う「ムシャーラカ」
・イスラム圏は投資先としても人気が上昇
 →米ドル建てイスラム債(スクーク)に申し込み殺到
・カタールやU.A.E.、いずれオリンピックの開催国の希望

※特にイスラム圏が難解に映るが、これから時間をかけてでも乗り越えていかなければ。

■資源高が大国ロシアを復活させた
・ロシアは天然ガスの生産量、確認埋蔵量ともに世界一、石油の産出量でも世界第2位
・赤字続きだったロシアの国家予算は、2000年から黒字に転換、外貨準備高も急増
・ガスプロムという半国営の企業を使って、ここがすべての資源を支配するような権力構造
・資源高を生かした経済成長政策がうまくいくかどうか、見極める必要

※ロシアにおける半導体の動き、これもじっくり注目である。

■世界の工場から世界の市場へと変貌する中国
・中国の貿易黒字の多くはアメリカから稼いだもの、アメリカから中国に富が移転
・2004年、IBMのパソコン部門を聯想(Lenovo)集団が買収
 …「蛇が象をのみ込む」との評
・気になるのは、中国の事実上の「一党独裁」政権
・「開発独裁」…発展途上の国が急激に成長する際の典型的なパターン伴なった5つの歪み
 1.バブルが起こる
 2.汚職の蔓延
 3.格差が広がる
 4.公害の発生
 5.商標権などの問題

※ここ数年、半導体の世界でも急拡大の中国。世界半導体会議(WSC)にCSIAがすでに参画、今後のプレゼンス如何に注目している。

■ITを成長戦略にするインド
・2050年には世界第1位の人口大国になるとの予測
・ITは新しい産業 →職業としてのカーストの縛りがない
         ⇒"インディアンドリーム"
・民主主義のインド →開発に要するコストと時間
・テロがインドの経済発展を考える上では明らかにリスク要因

※インドは中国のように事が急激に運べるお国柄ではない模様。半導体の工場建設でもそういった影響が見られるように理解している。

■フランス・サルコジ大統領の野望「地中海連合」
・2008年7月、「地中海のための連合」(UPM)開催
・北アフリカは、人件費が安いし、イスラム圏の中でも穏健で過激派もあまりいない地域
・安い労働力の確保、EUへの不法移民流入防止、という思惑

※モロッコのNemotek Technologies社、アフリカ初の携帯カメラ用ウェーハレンズ製造工場を稼働ということで、身近に感じるところがある。

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