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変わらなければ/市場実態PickUp/グローバル雑学王−60

技術、投資回収など様々な限界、行き詰まり、はたまた昨年後半以降の世界経済不況などにより、止む無く変わらざるを得ないという状況を方々で感じるところがあり、今回注目している。市場好転の兆しがさらに見えているとはいえ、昨年前半以前の水準に向かって戻していく過程では、変わらなければという状況に今後とも遭遇するのではという予感である。

≪変わらなければ≫

微細化の限界による技術的な変わり目というのはいつでもどこでも、半導体の世界では議論されること。今回のHot Chips conference(Palo Alto, Calif)の場でもそうであったようである。

◇Hot Chips panel looks for inflection point in silicon scaling(8月24日付け Electronics Design, Strategy, News)
→恒例の夕方のパネル討議にて、半導体業界に常に付きまとう悩みの種の1つが取り上げられた旨。

1980年代のこと、出席していた米国でのJEDECメモリ会合の場で、DRAM事業撤退の事態となったインテル、TI出身のエンジニアが新天地を求める話をしていたのを思い出す。今やグローバルな人の行き来する業界となっているが、とはいえ大きな事業方針の転換の影響を受ける心境に今も変わりなし、ということで以下の手記記事である。

◇From A to D and back again (8月25日付け EE Times)
→ここ25年半導体業界、大半をAMDおよびSpansionで過ごしたKeith Miller氏の手記。AustinからDresdenへ、そして今やAlbanyへ。"grand plans"を受けて自分のキャリアを適合させ動いていく宿命について。

莫大な投資、リソースを要する最先端プロセスノードで、またまた新たな連携である。独自完結路線から変わらなければ、という流れが止まらなくなっている感じを受けている。

◇Fujitsu, TSMC partner on 28-nm logic ICs (8月27日付け EE Times)
→Fujitsu Microelectronics Ltd.とTSMCが、28-nmロジックICsのファウンドリー生産を目指す開発でコラボの旨。

solarパネルもここにきて、市場が急落、何らかの変わり方が求められる情勢を感じている。

◇Solar panel prices fall sharply (8月27日付け EE Times)
→投資銀行、Piper Jaffray発。solarパネルのコストが、供給増&需要減から、ここ1年で急落の旨。

趣きが変わって、これは嬉しい変わりようと言えようが、フラッシュメモリメーカーには歓迎すべき見方であり、今後の推移に注目ということと思う。

◇Higher NAND memory prices coming, analyst says(8月27日付け EE Times)
→IC Insightsが最近リリース、McClean Reportのmid-yearアップデート。
フラッシュメモリ市場が向こう数年にわたり、買い手市場の状況から抜けて、NANDフラッシュメモリサプライヤに与する状況に変わろうとしている旨。

◇IC Insights: Conditions Favor Flash Density-The flash memory market is setting up for a dramatic shift in the supply-demand balance -- one that will fuel growth for the NAND flash market through 2012. Bit growth is escalating wildly, yet this does not translate to great increases in capital spending.(8月27日付け Semiconductor International)
→フラッシュメモリデバイスについて、出荷数量およびビットvolume需要は増え続けているが、同時に、フラッシュメモリcapital spendingが著しく減ってきている旨。
ビットvolume 対 Capexの推移図面(Source: Micron, IC Insights)、下記参照。
http://www.semiconductor.net/photo/141/141442-NAND_Flash.jpg

実際の成り行きはどうなるかがあるが、いずれにせよどんな変化にも即応してやっていかざるを得ない現下の情勢、状況ということと思う。


≪市場実態PickUp≫

上でも述べたHot Chips conferenceの今回は、IBM社のPower7 CPU半導体への注目一色という風情を感じている。

【Hot Chips conference】(Palo Alto, Calif)

◇Researchers report progress on parallel path-Hot Chips gives update on the road to many-core CPUs(8月24日付け EE Times)
→IBM社が、Power7を今回の場で披露、最高速multicoreサーバプロセッサを作るAdvanced Micro DevicesおよびIntel社との競争でリードをとっている旨。

◇Sun, IBM push multicore boundaries-Both pack 128 threads in a server CPU socket(8月26日付け EE Times)
→Sun Microsystemsが、16-core, 128-threadプロセッサ、Rainbow Fallsを披露、しかしアナリスト連は、最新のハイエンドサーバ・プロセッサでより興味をかき立ててやまない業績として、IBM Power7を称賛の旨。
SunのRainbow Fallsのブロック図、下記参照。
http://i.cmpnet.com/eetimes/eedesign/2009/diag1_082609.jpg

◇IBM Power7 architecture illustrates some issues for the rest of us-By balancing execution speed, memory bandwidth and latency, and coherency overhead the Power7 architects have attempted to make possible systems that will scale up to 256 CPU cores without experiencing a sharp drop-off in performance-per-core. As such, the Power7 is not only a major stride in microprocessors for large systems, but a textbook on the lessons SOC designers will need to study in coming years.(8月27日付け Electronics Design, Strategy, News)
→IBMが水曜26日に披露したPower7 CPU半導体は、次の3つの興味深いarchitectural pointsを提起、今後より広範なcomputingおよびembedded communitiesに関係するarchitectural issuesを説明している旨。
 1. メモリhierarchyの重要性増大
 2. superscalar movement is far from over
 3. ハードウェアcoherency to symmetric multiprocessingの重要性
 IBM Power7 CPUのチップ写真、下記参照。
http://www.edn.com/articles/images/EDN/20090827/6686259_img.jpg

肝心の半導体市場の現実であるが、以下の好転材料が続いてお目見えである。ただし、本格的な回復と言えて新規投資にも弾みがつくのは、昨年前半の市場実勢を取り戻すことという見方が優勢と受け止めている。

【さらに好転?】

◇Gartner says semi market has performed better than expected, ups 2009 revenue estimate-The semiconductor industry continues to move away from worst-case scenarios for 2009.(8月26日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Gartner社が、2009年世界半導体売上げ予測をまたまた上方修正:
  今回      前年比 17.1%減 :$212B(2008年 $255B)
  5月時点    22.4%減
  2月時点    24.1%減

◇Intel ups Q3 revenue expectations on stronger than expected demand for MPUs, chipsets-Intel's improved outlook is one of several recent signals that the electronics industry's economic situation is improving.(8月28日付け Electronics Design, Strategy, News)
→エレクトロニクス業界好転のさらなる兆候、Intel社が、9月四半期売上げ予測を、前回$8.5B±$400Mから、今回$9B±$200Mに上方修正の旨。

◇TSMC continues to spend on equipment (8月28日付け DIGITIMES)
→TSMCが、8月24-28日の週で、計13の装置購入、約NT$11.76B(US$357.6M)相当の旨。2009年第三四半期中の今までに、43の装置購入を完了、計約NT$42.54Bの旨。

米国での300-mmライン資産売却およびTSMCでの最先端ノード技術開発について、以下の進展状況である。

【中古300-mm装置】

◇Used 300 mm Tools Are Hot-The potential sale of Qimonda's 300 mm assets in Virginia to Texas Instruments (TI) confirms the opportunities in used 300 mm equipment identified in a study from Semico Research Corp.(Scottsdale, Ariz.), now available.(8月26日付け Semiconductor International)
→先端プロセッサおよびメモリデバイスの生産に使われた中古の300-mmツールが、アナログデバイス、イメージセンサ、mixed signal部品などロジックデバイスといった他の半導体生産に転用され、これらのいくつかは90-nm以下での生産に移行していく旨。

【TSMCの28-nmノード】

◇TSMC makes SRAMs in three 28-nm processes (8月24日付け EE Times)
→TSMCが、次期28-nm製造プロセス技術の3つのバージョン(28-LP、28-HPおよび28-HLP)すべてにわたり64-Mbit SRAMs動作を得ている旨。

◇TSMC Goes Gate-Last Process for 28-nm Transistors ? is it Intel-based?(8月25日付け Semiconductor International)
→今まではIntelだけがgate-last high-k/metal gate(HKMG)技術を、TSMCはじめ他の先端メーカーはgate-first HKMG技法を推進していた旨。

中国および台湾において、貿易取引を制約する以下の動きである。

【貿易摩擦再燃?】

◇Proposed ban by China of rare-earth metal exports would affect hybrid cars, CFLs (8月27日付け Electronics Design, Strategy, News)
→中国のMinistry of Industry and Information Technologyが、terbium(Tb), dysprosium(Dy), yttrium(Y), thulium(Tm)およびlutetium(Lu)の輸出全面禁止を提案している旨。
(注)CFLs=compact fluorescent lights

◇Taiwan still prohibits China Mobile equity investment in FET(8月28日付け DIGITIMES)
→台湾政府が、中国の会社による台湾のテレコムキャリアへの出資を依然禁止、China MobileのFar EasTone Telecommunications(FET)での12% stake買収計画を承認しない旨。

国際通商の問題として浮上する可能性があり、注目を要すると思う。


≪グローバル雑学王−60≫

美空ひばりさんが亡くなってから20年になるとのこと。1970年代半ばに新宿コマ劇場での舞台を見たが、「今日は声の調子は最高!」との観客への呼びかけに続く圧倒的な迫力の歌唱を思い出す。

『音楽がわかる世界地図 −今と過去、世界各地の音楽・楽器・ミュージシャンが一冊でわかる!』(世界の音楽編集部 編)  …2007年7月 第三刷

より、世界各国・地域での“ひばり”たちに目を向けてみる。

以下の(注)以下は、WikipediaなどPC百科事典から取り出している。


Part.2 世界規模で活躍するミュージシャンたち

≪世界の“ひばり”たち≫

[アメリカ] ビリー・ホリデイ(Billie Holiday)(1915〜1959)
・ジャズ界のファースト・レディ。
・どのフレーズにも彼女独自のアクセント、ニュアンスが聴き取れる天性。
(注)「レディ・デイ」の呼称。サラ・ヴォーン(Sarah Vaughan)やエラ・フィッツジェラルド(Ella Jane Fitzgerald)と並んで、ジャズ史上最高の歌手の一人。

[アメリカ] パッツィ・クライン(Patsy Cline)(1932〜1963)
・カントリーの女王
・濃密な情感、毅然とした歌いっぷりは唯一無二。
(注)偉大なカントリー歌手。奥深くロマンティックなレコードと脳裏に焼き付く声。

[キューバ(→ニューヨーク)] セリア・クルース(Celia Cruz)(1924〜2003)
・1960年キューバ紛争を機にアメリカに亡命。
・“サルサ”ミュージックの発展に大きく貢献。
(注)SALSA界の美空ひばり。LATIN MUSICをここまで世界のメインストリームに伸し上げた立役者の1人、77歳まで歌い続けたGOD MOTHER。

[キューバ] マリア・テレサ・ベラ(Maria Teresa Vera)(1895〜1965)
・キューバン・ミュージックの発展とともに歩んだ伝説的な名歌手。
(注)キューバのポピュラー音楽黎明期を代表する女性トローバ(trova:かつて宗主国であったスペイン起源のカンショーン、クリオージャ、クラーベなどの音楽をひっくるめての呼称)歌手。

[メキシコ/ペルー] タニア・リベルター(Tania Libertad)(1960's〜)
・ペルーの人気アイドル歌手から、1980年にメキシコに拠点。
・アメリカ大陸のみならず世界に目を向ける歌姫に。
(注)ペルー生まれで今やメキシコの新しい歌の女王と称される艶やかな美しい歌手。

[アルゼンチン] メルセデス・ソーサ(Haydee Mercedes Sosa)(1935〜)
・「100年に一人の声」「南米民衆の心の代弁者」
・熱く力強くエモーショナルな歌唱。
(注)アルゼンチン・フォルクローレの女性歌手。1982年、アルゼンチンが民政に復帰するのと前後して亡命先(スペイン)から帰国。

[ブラジル] エリゼッチ・カルドーゾ(Elizeth Moreira Cardoso)(1920〜1990)
・ブラジル音楽の支柱。
・リーダー・アルバム、ヒット曲数知れず。
(注)“歌の貴婦人”、“サンバ・カンサゥンの女王”、“ブラジル音楽の至宝、“DIVAの中のDIVA”(ディーヴァ、神)、あるいは“A DIVINA”(ヂヴィーナ、女神)など数多の称号・形容詞。

[フランス] エディット・ピアフ(Edith Piaf)(1915〜1963)
・「愛の讃歌」の決定的明唱。
・薄幸の天才が歩む、絵に描いたような激動の人生。
(注)フランスで最も愛されている歌手の一人であり、国民的象徴。傷心的な声を伴った痛切なバラードであり、その悲劇的な生涯を反映していたのが特徴。

[ノルウェー] カリ・ブレムネス(Kari Bremnes)(1956〜)
・“ノルウェーの知性”。幅広いレパートリー分野。
(注)ノルウェーを代表する、女性シンガー。とても知性を感じさせる声。

[スウェーデン] アンネ・ゾフィー・フォン・オッター(Anne Sofie von Otter)(1955〜)
・現在最高峰の地位にいるクラシック歌手。
・ポップ系ミュージシャンとの共演でも高い評価。
(注)深みと翳りのある声と、気魄と表情力に富み、劇的だが気品ある表現が特徴的。

[スペイン] マリア・ドロレス・プラデーラ(MARIA DOLORES PRADERA)(late 1920's〜)
・アルゼンチンに生まれスペインを拠点にした歌姫。
・潤いのある声、聴き手の心を優しく解きほぐすような包容力。
(注)スペインの潤いと気品、ラテンの情感、そしてしなやかな節まわしは圧巻。

[ポルトガル] アマリア・ロドリゲス(Amalia Rodrigues)(1920〜1999)
・リスボンの下層階級から生まれた音楽“ファド”の女帝。
・しゃがれ声で切々と訴える歌声。
(注)"ファドの女王(Rainha do Fado)"として知られる。

[イタリア] ミルバ(Milva)(1937〜)
・ヨーロッパ硬派ポピュラー・ソングの第一人者、大御所。
・イタリアのカンツォーネ歌手御三家。
(注)本名はイルバ・マリア・ビオルカティ(Ilva Maria Biolcati)。1960年にデビューして以来多くのヒット曲を歌い大衆の人気を得た。

[ギリシャ] ハリス・アレクシーウ(alexiou)(1950〜)
・ギリシャ・ポップ“ライカ”の女王。
・低く重量感のある歌声、力強い節回し。
(注)ギリシャを代表する大ヴォーカリスト。

[トルコ] セゼン・アクス(Sezen Aksu)(1954〜)
・ターキッシュ・ポップスの女帝。
・ハスキーな声で絞り出すような歌い方。
(注)トルコ音楽の大御所的存在であり、「トルコポップの女帝」と呼ばれる。

[ボスニア・ヘルツェゴビナ] ヤドランカ(Jadranka Stojakovic)(1950〜)
・1984年冬季五輪で公式テーマ曲を歌い、国民的歌手に。
・1988年来日、内戦のため拠点を日本に。
(注)サラエヴォ出身で日本で活動するシンガーソングライター、歌手。

[台湾] テレサ・テン(Teresa Teng:麗君、デン・リージュン)(1953〜1995)
・台湾のみならず日本はじめ東・東南アジア諸国で活躍した歌姫。
・現在のチャイニーズ・ポップの立役者。
(注)「アジアの歌姫」

上記の中ですぐにパッと彼女と分かるのは数人止まりであるが、最後のテレサ・テンさんには言うまでもなく、今も大いに楽しませていただいている。

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