セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

“真夏の夜の夢?”/市場実態PickUp/グローバル雑学王−59

世界経済の現状について、最悪期を抜け出して下げ止まりつつある、と米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ(Bernanke)議長が指摘とのこと(8月23日付け NIKKEI NET)、やっと全体認識もここに至ったか、というところである。ただし緩やかな回復という警告条件付きは、半導体業界でも当てはまること、何処でも触れられている。そんな中、先々に向けて心地よく感じる新技術が発表され、目についてきている。

≪“真夏の夜の夢?”≫

それぞれどの程度の深さの夢かと思うが、まずは10年以上先を見据えたIBMほかからの次の発表である。

◇IBM looking to use DNA scaffolding for next gen chips(8月17日付け EE Times)
→IBM ResearchとCalifornia Institute of TechnologyのNature Nanotechnologyでの論文。DNA分子を足場材料として用いるアプローチ(何100万のcarbon nanotubesがDNA分子にくっついてデポ、self-assembleされて精確なパターンになる)が、sub-22 nmリソに到達する道となり得る旨。

◇IBM uses DNA scaffolding to target sub-22-nm lithography-IBM researchers and the California Institute of Technology claim an advancement in combining lithographic patterning with self assembly, a method to arrange "DNA origami" structures on surfaces compatible with today's semiconductor manufacturing equipment.(8月17日付け Electronics Design, Strategy, News)
→リソpatterningをself assemblyと結びつける開発、今日の半導体製造装置と両立する形で"DNA origami"構造を配列する方法。写真データ、下記参照。
http://www.edn.com/articles/images/ENEWS/20090817/6677000_image.jpg

この2件ではなかなかパッとは理解し難いが、もっと一般向きと思う記事の抄訳によると次の通りである。

☆☆☆↓↓↓↓↓
○IBMが、DNAを次世代microchips製造に利用 (8月16日付け Yahoo! Tech)

IBM社が、我々の身体の基礎的要素であるDNAを、次世代microchipsの構造になり得ると注目している。

半導体メーカーは絶え間ない微細化をより低価格で競っており、設計者たちはコスト削減に奮闘している。

専門誌、Nature Nanotechnologyに日曜に掲載された論文によると、人工DNAナノ構造、すなわち"DNA origami"が、微細microchipsを構築する安価な骨組みを供する可能性がある。

「これは、半導体業界での製造プロセスで生体分子を利用する初めてのデモになる。」とIBMの研究マネジャー、Spike Narayan氏は言う。

「基本的にDNAのような生体構造は、現実に半導体プロセスで行使できる、非常に生産再現性があって、反復性があるパターンを実際に示すことを物語っている。」と同氏は言う。

DNA origamiプロセスが生産レベルに縮小すれば、メーカーは、複雑なツールの何百millions of dollarsを、polymers, DNAソリューションおよびheating implementから成るa million以下dollarsと置き換え取引ができるだろう、とNarayan氏は言う。

しかしこの新プロセスは少なくとも10年はかかる。DNA origamiは従来のツールよりはずっと小さな骨組み構築を半導体メーカーにもたらすであろうが、その技法にはまだ何年もの実験&テストが必要である。
★★★↑↑↑↑↑

若干、真夏の夜の夢の気分を感じてしまうが、現実化、そして実現化に向けた順調な歩みに期待である。

さらに以下の内容が時を同じく目に入ってきて、猛暑がほとんどなく切れ目がいまいちのこの夏、一瞬の活を入れられる感じを受けている。夢に終わらず、早くうつつにと、それぞれに願うところである。

◇'Spaser' development enables laser/chip integration(8月17日付け EE Times)
→3大学(Purdue, Norfolk State UniversityおよびCornell University)からの研究者が、electronic半導体に十分統合できる小さなレーザ、"spaser"(surface plasmon amplification by stimulated emission of radiation)を作り出した旨。photonsでなくsurface plasmonsを利用、直径44-nmのresonatorが作れた旨。最初のレーザ動作デモは1960年のこと、50周年を迎える技術ブレイクスルーに相応しい旨。

◇Yale Team Creates Ferroelectric DRAM-A Yale University team led by Professor T.P. Ma has proposed a DRAM that marries a ferroelectric material with a silicon transistor. While the polarization of the ferroelectric decays,the structure, refresh cycle, power consumption and speed of the FeDRAM could offer advantages over conventional DRAMs, Ma said.(8月17日付け Semiconductor International)
→Yale大(New Haven, Conn.)の研究。従来のDRAMsよりも構造が簡単で、retention timeが長いDRAM様のferroelectricメモリ, FeDRAMを開発の旨。
FeDRAMのretention timeは、現在のDRAMより1000倍長い旨。下記参照。
http://www.semiconductor.net/photo/140/140530-FeDRAM_memory.jpg

◇帝人、樹脂上に半導体素子、ガラスより軽く曲げやすく。(8月19日付け NIKKEI NET)
→帝人が樹脂基板上にシリコンの半導体素子を作製することに初めて成功、現在使っているガラス基板に比べて重さが半分以下、液晶テレビに応用すれば大幅に軽くでき、力を加えると簡単に曲がるため、複雑な形状の外壁にも張れる太陽電池の実現にもつながる旨。電機メーカーと協力して、3年後の実用化を目指す旨。
米国のベンチャー企業、ナノグラム(NanoGram Corporation[Milpitas, CA])との共同成果、ナノグラムが開発した直径数十nmのシリコン粒子を溶かしたインクを使う旨。

≪市場実態PickUp≫

さて、生々しい世界に戻って、以下の動きである。

【投資意欲】

UMC、そしてTSMCと、今まで抑え基調であったのが、この1ヶ月で高まってきている状況が見られる。

◇TSMC on equipment spending spree (8月17日付け EE Times)
→TSMCが買いに出ており、ここ何週かで半導体capital equipmentに$250M以上費やしている旨。

【Flash Memory Summit:続編】

以下のレビュー記事2件、メモリ市場のみならず半導体市場の現状および今後のポイントについて、改めて認識するところがある。

◇The Future of NAND Flash Memory According to Samsung(8月15日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Flash Memory SummitでのSamsungのMemory Marketing VP、Jim Elliott氏の基調講演、“NAND Continues to Soar (App after App after App...)”から、興味深い情報&見方の図面データ、下記参照。
http://www.edn.com/articles/blog/980000298/20090815/NAND%20Flash%20Pricing%20Trends.jpg  (…YoY価格低下 鈍化へ)
http://www.edn.com/articles/blog/980000298/20090815/NAND%20Flash%20Device%20Usage.jpg  (…NAND用途容量[GB]比率)

◇SanDisk CEO: Eight predictions for NAND (8月17日付け EE Times)
→SanDisk社のfounder, chairman and chief executive、Eli Harari氏の基調講演から、NAND事業予測10項目:
 1. Recovery seen.
 2. ASPs do not fall as fast as before.
   …2005-2009年 約60%低下/年
    2010-2013年 約40%低下/年
 3. Multi-bit rules.
   …現主流    2-bit-per-cell
     2009〜2015年 3-bit-per-cell(x3)および4-bit-per-cell(x4)へ
 4. Managed NAND.
 5. Universal memory hype.
 6. 3-D or bust?
 7. 450-mm in limbo?
 8. EUV on the bubble.

【装置業界BB比】

上記の設備投資の動きがあり、半導体製造装置業界の今後の回復に注目である。

◇Fab tool book-to-bill moves above parity (8月18日付け EE Times)
→SEMI(San Jose)発。北米半導体装置メーカーの7月BB比1.06、6月の0.80から上昇の旨。bookingsおよびbillingsともに増えて2007年1月以来のBB比1以上であるが、bookingsは依然前年を大きく下回っている旨。

◇SEMI book-to-bill ratio climbs above parity for first time since January 2007-The July numbers are significant as they mark the first time this year and, furthermore, the first time in more than two years that the ratio has reached parity.(8月19日付け Electronics Design, Strategy, News)
→SEMI(San Jose)発。北米半導体装置メーカー7月の3ヶ月平均データ、次の通り。
  bookings $569.7M  前月比約62%増  前年同月比約36%減
  billings  $538M    前月比約22%増  前年同月比約50%減

◇Japanese chip gear book-to-bill hits 1.32 (8月19日付け EE Times)
→SEAJを引用、Dow Jones発。日本半導体製造装置、7月のBB比1.32、6月の1.27から上昇、しかしながら7月受注は前年同月比半分の約$465Mの旨。

【ファウンドリーcapacity稼働率】

TSMC、UMCなどファウンドリー業界の現況を示し、半導体業界を大きく映し出すパラメータと言えると思う。

◇World Economy, Semis Seeing Return to Normalcy-At the SEMI Silicon Valley Lunch Forum yesterday, speakers said the world economy is expected to return to normal growth rates next year, after the worst worldwide GDP performance since 1946.
Fab utilization rates will increase from 68% in Q2 to 78% in Q3 2009.(8月20日付け Semiconductor International)
→ファウンドリーcapacity稼働率は、第二四半期の68%から、第三四半期には78%にさらに上昇する見込み、下記図面参照。(Source: Gartner)
http://www.semiconductor.net/photo/140/140826-Foundry_capacity_utilization.jpg

【DRAM業界売上げ】

たまたま34%並びになっているが、今後の回復の弾みにこれも期待である。

◇DRAM sales up 34% in Q2-According to iSuppli, the recent shortage of DDR3 DRAM will persist through the end of this year.(8月19日付け Electronics Design, Strategy, News)
→iSuppli社、火曜18日リリースデータ。4-6月四半期のDRAM売上げ$4.5B、前四半期比約34%増、前年同期比約34%減、DDR3の不足が続いている旨。ランキングデータ、下記参照。
http://www.reed-electronics.com/articles/images/ENEWS/20090819/6678681_img.jpg

他に、インテル社のソフトウェア・ツールプロバイダー買収の動きがある。
multicore戦略の一環とのこと、"ウィンテル"の再来か、ここにきて業界注目要素が幾重にもなりそうである。


≪グローバル雑学王−59≫

音楽の発祥を辿る世界の旅、最後は、中南米そしてアフリカである。縁遠いこともあって、
   
『音楽がわかる世界地図 −今と過去、世界各地の音楽・楽器・ミュージシャンが一冊でわかる!』(世界の音楽編集部 編)  …2007年7月 第三刷

に加えて背景の知識を要し、以下の(注)以下は、WikipediaなどPC百科事典から取り出している。


Part.1 地図でみる世界の音楽

≪あの音楽はここで生まれた! …後編…≫

【中米・カリブ・南米】
⇒複合的で魅力ある様々な音楽スタイル。リズム、メロディの宝庫。

[マリアッチ(Mariachi)] − メキシコ 
…メキシコ革命以前から西部のハリスコ州で発展した"結婚式向きのロマンティックな伴奏"的な、のどかな音楽。
(注)メキシコを代表する楽団の様式。7ないし12名で編成される楽団(ただし、人数に上限は無い)。ビウエラ、ギター、ギタロン、バイオリン、トランペットは欠かせない楽器とされ、これらにフルートやアルパが加わることもある。音楽の種類を指すものではなく、マリアッチの楽団は様々な種類の音楽を演奏する。

[ソン(son)] − キューバ
…スペイン色の強かったダンソン(Danzon)(舞曲)やトローバ(TROVA)(吟遊詩人の歌)に、土着性を取り入れ、混血的でアフロ色が強調されたキューバ独自の音楽。
(注)キューバ起源のラテン音楽。スペイン語で音という意味。

[スカ(SKA)/ロックステディ(rocksteady)] − ジャマイカ
…1960年代初期、R&Bやジャズなどが変形に変形を重ね、独自のアップ・ビートをもつ音楽に生まれ変わったのがスカ。そのスカがやがてゆったりとしたリズムに変化して生まれたのが、ロックステディ。

[カリプソ(calypso)] − トリニダード・トバゴ
…ベネズエラやカリブ諸国の音楽の影響を受け20世紀初頭ごろに誕生したのがトリニダード・トバゴのカリプソ。1930年代に登場したスティール・ドラム。
(注)20世紀に始まったカリブ海の音楽のスタイルのひとつ。イギリス領、フランス領のカリブの島々、特にトリニダード・トバゴのカーニバルで発達した音楽ジャンル。

[ボサノヴァ(Bossa Nova)] − ブラジル
…1950年代後半、土臭いサンバに対抗するようにして誕生、ギター1本で、洗練された複雑なリズムを表現する。
…「イパネマの娘」

[マンボ(mambo)/チャチャチャ(cha-cha-cha)] − キューバ
…ダンソンにジャズの要素などを取り入れた現代的なサウンドがマンボ。
 1950年ごろキューバ本国で流行したのが、ダンソンを発展させたチャチャチャ。
…ペレス・プラード楽団

[レゲエ(reggae)] − ジャマイカ
…1960年代末から1970年代初頭にかけてスカやロックステディのアンサンブルがさらに変形して誕生したのが、強烈なアフター・ビートが特徴のレゲエ。

[ショーロ(Choro、Chorinhoとも)] − ブラジル
…19世紀後半に生まれたリオ・デ・ジャネイロのポピュラー音楽。ギターを中心とした弦楽器、フルート、打楽器パンデイロなどで演奏。

[タンゴ(tango)] − アルゼンチン
…南米最大の港町、ブエノスアイレスで、19世紀後半に誕生。バンドネオン、ヴァイオリン、ピアノといった西洋音楽の楽器で強烈なリズムを打ち出す、歌と踊りが渾然一体となった音楽。
(注)ポピュラー音楽およびダンスの一形態で、カンドンベ、ミロンガ、ハバネラなど複数の音楽が混ざり合って19世紀半ばにブエノスアイレス、ウルグアイ・モンテビデオ近辺のラ・プラタ川流域で生まれたとされる。

[サンバ(Samba)] − ブラジル
…各種打楽器が交錯するリズム、切ないサウダージに満ちた旋律をもつ、ブラジルを代表する音楽。

[フォルクローレ(folklore)] − アンデス山脈周辺
…インカ帝国を支配したスペインのテイストと土着のインディオの血が混ざり合って成立した民謡の総称。ギターが必須。
(注)演奏は、スペイン系の起源を保つ弦楽器(ギター・チャランゴ・マンドリン・バイオリン・アルパなど)と、先住民系の起源をもつ管楽器(ケーナ・サンポーニャ・ロンダドールなど)、両者に起源をもつ打楽器(もっとも一般的に使われるボンボはスペイン起源だとされる)のアンサンブルによって行われる。

【アフリカ】
⇒数えきれないほどの民族、言葉、そして音楽。泉のようにあちらこちらから湧き出ている。

[ライ(rai)] − アルジェリア
…砂漠の遊牧民、ベドウィンの歌をルーツに、港町オランで欧米のポピュラー音楽と混じり合い、1980年代にハレドらがポップ音楽として確立。
(注)アルジェリア西部、オラン地方起源のポップ音楽。本来は両大戦間のころ都市部に定着したベドウィン歌謡を源泉として発達したオラン方言のアラブ語で歌われる音楽であるが、現在では非常に多様化し、ライというジャンル名も濫用、誤用されたものが定着しており、その全体を音楽として統一的に定義するのは困難である。

[ジュジュ(Juju)] − ナイジェリア
…西アフリカの港町で流行っていたパームワイン音楽やハイライフなどのポピュラー音楽を、主要民族のヨルバ人が発展させ、トーキング・ドラムなど自らの伝統楽器を導入して誕生、伝統的かつモダンな音楽。

[リンガラ・ポップ(lingala pop)] − コンゴ
…リンガラ語で歌われる曲が多いことから名付けられ、キューバ音楽とコンゴ各地の伝統音楽が溶け合ったサウンド。

[ンバラ(mbalax)] − セネガル
…元々はセネガルの主要民族であるウォロフ人の伝統的ダンス音楽の名前。モダンなサウンドで表現、ポピュラー音楽の名前としても定着。

[フジ(FUJI)] − ナイジェリア
…イスラムの影響が強いヨルバ人の音楽。イスラム教徒を礼拝に招く呼び掛けから生まれたとされるコブシたっぷりのヴォーカルとコーラスが、ヨルバの伝統的パーカッションに絡む。

[ンバクァンガ(Mbaqanga)] − 南アフリカ
…黒人の間で発展した伝統的コーラスに、エレキ化された伴奏と跳ねるようなビートが加わったポピュラー音楽。

[マンディング(Mandingue)] − マリ
…マンデ音楽とも。中心的存在はグリオと呼ばれる世襲制芸能集団。時代とともに次々と変化、モダン化することで、魅力的な音楽を生み出し続けている。

[ハイライフ(Highlife)] − ガーナ
…ガーナで1920年代に生まれた音楽。スウィングやラテン音楽、カリプソなどの要素を取り入れた、管楽器付き小編成バンドによるポピュラー音楽として、1950年代に黄金期を迎えた。
(注)1920年代にガーナで発祥し、シエラレオネ、ナイジェリア等英語圏西アフリカ及びリベリアに広まったワールドミュージック/音楽ジャンル。
ジャズを基調としたブラス/ホーンセッションに複数のギターが特徴付けられる。

[ベンガ・ビート(Benga Beat)] − ケニア
…ケニアの南西に位置するヴィクトリア湖の周辺で暮らすルオ人の伝統音楽に、コンゴのギター・スタイルなどが取り入れられて生まれた。
(注)ベンガ=つんのめるようなスネアのビートときらびやかなエレキギターのサウンドで織りなすケニヤのポピュラー音楽

[ターラブ(Taarab)] − タンザニア
…ケニア南部からタンザニアにかけてのインド洋沿岸とザンジバル島を中心に広がるターラブ。イスラムやインド音楽、さらにはアフリカ音楽などが溶け合って生まれた超ハイブリッド音楽。
…ターラブ=「感動した、魅了された」(アラブ語)

月別アーカイブ