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立ちはだかるリソースの壁/市場実態PickUp/グローバル雑学王−51

微細化の障壁を次々と打ち破って、30兆円のグローバル市場規模が見えてきていた半導体業界が、昨年後半以降の経済危機&不況に直面している現状である。伸びる勢いと豊富なリソースがあってこそのここまでの市場規模拡大と、今になって一層痛切に感じることであるが、ここは何としても乗り越えていかないと。募っていく思いである。

≪立ちはだかるリソースの壁≫

「ひと もの かね」、端的な表現のこのリソースの当面立ちはだかる壁というものを、いろいろな切り口で感じている。現下の経済情勢が一層そうさせているのかもしれない。

年に2回発表されているスーパーコンピュータの性能ランキングに注目してきているが、今回は以下の概要となっている。

◇Intel, IBM spar for lead in Top 500 list-IBM goes for exaflops, but Intel powers most supers(6月23日付け EE Times)
→Hamburgでの会議にて発表されたTop 500 supercomputerリストについて。
 トップ100一覧、下記参照。
http://www.top500.org/list/2009/06/100

◇スパコン世界ランキング、日本はNEC製22位が最高。(6月24日付け NIKKEI NET)
→世界のスーパーコンピュータの計算速度の性能を集計する「TOP500プロジェクト」が23日、最新のランキングを発表、上位500台の国別の保有台数では、日本が15台で6位、前回の5位から順位を落とし、21台を持つ中国に抜かれた旨。
首位は米ロスアラモス国立研究所の米IBM製システム、1位から9位までを米メーカー製が占めた旨。
日本のスパコンの最高位は海洋研究開発機構が2009年春に稼働させた地球シミュレータ(NEC製)で22位、前回2008年11月の調査では日本の最高位は27位(東京大学の日立製作所製スパコン)だった旨。

これもかってのことを言っても仕方ないのかもしれないし、盛り返す努力が懸命に行われていると当然に思うが、何とかしなければと感じるところがある。

メモリ分野はじめリソースの窮状と再生を図る内容の記事が相次いで目に入ってくる。

◇Exec: Memory business model is broken (6月25日付け EE Times)
→メモリ分野でのビジネスモデルが壊れており、該業界でのさらに合理的なbehaviorと整理統合の必要に迫られている旨。

◇Sematech addresses EUV inspection gap (6月26日付け EE Times)
→Sematechが金曜26日、再び非常報知、extreme ultraviolet(EUV)リソを可能にしていくには大きな資金不足およびマスク検査装置がなく、それを打開すべく新しいコンソーシアムを設立する計画の旨。

◇DRAM maker Nanya raises over NT$12 billion (6月26日付け DIGITIMES)
→台湾のDRAM半導体メーカー、Nanya Technologyが26日、資本追加$371.31Mをprivate placementを通して調達の旨。

◇エルピーダ支援に2000億円 官民出融資、3年で。(6月27日付け NIKKEI NET)
→エルピーダメモリの再建に向けた官民の金融支援が総額2000億円規模に達することが明らかになった旨。日本政策投資銀行の資本支援やメガバンクによる融資に加え、国際協力銀行の緊急融資と官民ファンド「産業革新機構」の出資などを総動員、パソコンなどの基幹部品であるDRAM事業を日本で唯一手掛ける同社を支援することで、先端産業の国際競争力を保つ狙い、政府は支援を緊急避難と位置づけており、「出口戦略」も問われそうな旨。

こうなると未来派志向でアピールするのも一つということか、以下の表わし方が見られる。

◇Five enablers for future chip scaling (6月26日付け EE Times)
→Sematechが示したMoore則を可能にしていく未来派のやり方、transistor-level scalingの提案選択肢として以下がある旨。
 1. Zero low-k interface
 2. Single metal gate stack
 3. Gate stacks on III-V semiconductors
 4. Quantum-well MOSFETs
 5. 3-D chips using through-silicon-via(TSVs)

電車の吊り広告を見ても、「電気系離れ」とか「電気系学生の劣化」という見出しが目について、議論すればほとんど"鶏 or たまご"になってしまうところを感じるが、ここは国政に目を向ける知事ならずとも、「どげんかせんといかん」現状であると思う。  


≪市場実態PickUp≫

慨嘆に暮れていてもしょうがないことと、明るい材料を探し求める風情になるが、売上げが上向いてきたという数社が見られている。

【業績上方修正】

◇Marvell lifts sales target on improved demand(6月22日付け EE Times)
→Marvell Technology Group Ltd.(Santa Clara, Calif.)の8月1日締め第二四半期の売上げ目標、前回$540M-$580Mから、今回$600M-$630Mに上方修正、前四半期実績は$521Mの旨。

◇Intersil boosts guidance (6月22日付け EE Times)
→mixed-signal ICベンダー、Intersil社の7月3日締め四半期売上げ見込み、前回$123M-$132Mから、今回$145M-$148Mに上方修正、前四半期実績は$118.2Mの旨。

新顔では、今後の上向きに大きな一役を買ってほしい「Windows 7」である。

【Windows 7】

◇Microsoft to cut prices on Windows 7 system (6月25日付け EE Times)
→Microsoft社が、新しいWindows 7 OSの標準home-user版を、Vistaの相当版よりも8%低価格で販売する予定、グローバル不況が技術spendingに打撃を与えている旨。  

◇ウィンドウズ7、10月にも発売。「使い勝手」「安さ」重視。(6月27日付け 朝日)
→マイクロソフト日本法人が、「ウィンドウズ7」の構成や価格を発表、失速気味のOS事業をテコ入れ、PCメーカーは「セブン商戦」に期待の旨。
 ・Windowsの7代目
 ・2007年1月に発売したVistaの後継
 ・常時作動のプログラム減: 起動時間、Vistaの40秒から29秒に短縮

各社連携・提携では、インテルとノキアの次世代モバイル機器開発に向けたビッグな動きがあるとともに、どうなるやらと冷めた見方も同時に発信されている。

【インテル/ノキア 連携】

◇Intel, Nokia team up for opportunities in PC-mobile convergence(6月23日付け EE Times)
→Intel社とNokia社が、次世代mobile computingデバイス開発でコラボ合意、モバイル通信市場での広範な共同製品開発活動であり、両社がハードウェア、ソフトウェアおよびインターネット関連offeringsでお互いに協力し合う計画の旨。

◇Opinion: Don't expect a Finntel iPhone-This mobile marriage was not made in heaven(6月23日付け EE Times)
→NokiaとIntel、iPhoneよりも素敵な何かをコラボで作れるだろうか?

◇Analysis: Intel, Nokia deal: Where's the beef?(6月23日付け EE Times)
→すぐにはNokiaで"Intel inside"の新製品は展開されないだろうし、本日早く間違って報じられているが、Intelがサプライヤ合意を擁してmobile handset半導体市場を疾走していることもない旨。

◇Intel, Nokia ink broad mobile alliance-The non-exclusive Intel and Nokia partnership includes collaboration in several open-source mobile Linux software projects. Intel will also acquire a Nokia HSPA/3G modem IP license for use in future products as part of the deal.(6月23日付け Electronics Design, Strategy, News)

◇インテル・ノキア、次世代携帯で提携、アップルに対抗。(6月24日付け asahi.com)
→米インテルが23日、ノキアと、次世代の携帯電話などの開発に関して技術提携を結んだと発表、多様な機能を組み込んだスマートフォンなどの分野で、米アップルなどに対抗する狙いとみられる旨。
発表によると、両社は、スマートフォンや無線通信ができる小型パソコンなどの次世代機の開発で提携、とくに携帯機器の基本ソフト(OS)では共同開発に乗り出し、無償OSの「リナックス」をベースにしたOSの高性能化を目指す旨。

そのインテルの中国の300-mm工場で、製造プロセス世代が上方変更されている。市場面、政策面など現下の情勢に合わせていく措置と感じる。

【インテルの中国fab】

◇Intel switches gears, plans 65-nm in China (6月24日付け EE Times)
→Intel社が戦略変更、中国北部、大連の新しい300-mm fabにおいて、当初の90-nm製品ではなく、65-nm製品を作る計画の旨。

MEMS業界の現状について、以下の記事から理解を深めている。

【MEMS業界】

◇Competition intensifies in MEMS foundry market(6月25日付け EE Times)
→Yole Development(Lyon, France)発。MEMSファウンドリー市場で現在、少なくとも50社が活動しており、非常にばらばらになった競争の激しい分野である旨。トップ20ベンダー、下記参照。
http://i.cmpnet.com/eetimes/seminews/2009/table1_062509.gif

◇Freescale claims billionth sensor shipped (6月22日付け EE Times)
→Freescale SemiconductorのMEMS部門(元はMotorolaの一部)はセンサで30年の歴史があり、現在車載用センサではNo.1(iSuppli社より)の旨。


≪グローバル雑学王−51≫

住まい、間取りの変遷というものを、

『「間取り」の世界地図 −暮らしの知恵としきたり』
(著者 服部 岑生[みねき]氏:青春新書INTELLIGENCE PI-137)…2006年1月発行

より習得している。分かっているようでなるほどと思うところ多々である。
江戸から、明治、大正、昭和の前半と、自分の目では見ていない事実、考え方、そして海外との関わりを興味深く感じている。


I 日本の「間取り」とその変遷

2章 江戸の武士住宅からつづく、日本住宅の古きよき伝統

[家の「表」と「裏」をはっきり分けた武士の住宅(江戸後期)]
・武士の住宅 →日本の都市の住宅の伝統は、これに由来
 …庭付き一戸建ての「屋敷型」
 …道の通り側に「表」つまり晴れの部屋: 
  日常的な普段着の部屋は「裏」、即ち内側に

[南向きよりもはるかに重要だったこと]
・武士住宅の特徴 
 →南向き北向きとは関係なく、概ね通り側を重視するという価値観
・現代の住宅   →通り側よりも南面へのこだわりが強い
・日本の伝統的な家屋にも、通り側を重視し、にぎやかにする特徴
 →伝統的な町並みと現在の町並みが対照をなす大きな要因

[「続き間」が示す日本人の生活観]
・「続き間」 …襖を取り払うと、「座敷」と「次の間」がひと続きになる間取り
 →主に冠婚葬祭用のためにつくられた間取り
 →家の中を一望できる(一望監視型) …家長支配、封建的
 ⇒明治から大正にかけて長く続く
・「座敷」 …お客との対面の場
 →接客中心
・やがて、「茶の間」が家の中心に位置 →「続き間」は姿を消していく

[文豪たちが暮らした住宅(明治)]
・森鴎外や夏目漱石が東京・千駄木で住んでいたという借家 
 …明治村に移築・保存
 →封建時代の対面の場を受け継いだ「続き間」
 →"中廊下"の原型
・昭和に入るころから、「次の間」と「座敷」の位置が逆転
・都市型の住宅では、「次の間」が「茶の間」に
 →接客用の「座敷」と家族用の「茶の間」という二部屋が、単に隣り合う間取り
 ⇒「続き間」という間取りが、その役目を終えた 
   …封建時代から抜け出した 

[中廊下の登場で変わった日本人の意識]
・明治時代半ばに登場、大正から昭和初期にかけて広く普及 
 →「中廊下」をもつ住宅
  …玄関から奥へ、家の中央をまっすぐに貫く長い廊下
 →現代のマンションや戸建てにも
・武士の住宅は、「外廊下型」
 →プライバシーが全くない部屋構成、家の真ん中を貫通する中廊下型にまで発展
・中廊下の登場が、家族のプライバシー確保に一役

[和洋折衷という試み]
・明治の後半、従来の和式の住宅に洋風の応接間を取り入れようとする試み
 …「和洋折衷住居」
・住み慣れた住宅の玄関脇に一部屋の洋風応接室を付け加えるだけ、新しい時代の住まいへの変身を可能に

[文化住宅が目指した生活改善(大正)]
・大正期 …日清・日露と相次いで戦勝、第一次世界大戦の影響で好景気
 →欧米の思想を吸収するムードに
 →政府も深く関わった"住宅改良運動" …さらなる洋風化の動き
・家族の場をもっと大きな部屋で、かつ住環境のよい場所にもってくるべきとの提案
 →アメリカの庶民向け戸建て住宅、バンガロー住宅に注目
 …「PP(public & private:公私室)分離」

[日本で最初の住宅展示会]
・大正11年(1922年)、東京と大阪で住宅の実物展示を実施
 →その後の住宅販売などの手法として定着

[つくられた"和風"住宅]
・このころ、上流階級の接客の場も西洋式が定着へ
・ハイカラでモダンといった意味で<文化>という言葉
 →文化村、文化住宅、文化生活、文化包丁、文化鍋、…
・その後はだんだんと戦時体制へ
 →政府は一転、ハイカラ・モダンな洋風から、"和風"ムードへ

[日本初の高級アパート「お茶の水文化アパート」の誕生]
・我が国で最初の本格的な集合住宅「お茶の水文化アパート」
 …大正14年(1925年)竣工、関東大震災の後で眩しく目立つ外観

[「お茶の水文化アパート」での優雅な生活ぶり]
・住める人は、僅か2%の上流階級
 →結果的には、外国人向けの高級賃貸マンションの先駆けに
・すべて洋式。家具や設備は今でも通じる高水準。
・当時の都市生活者の住まい観、金銭感覚とはかなりズレ
 →6〜7倍の家賃

[フランス人建築家を魅了した「同潤会アパート」(昭和初期)]
・昭和元年から9年(1926〜34年)の間に竣工、鉄筋コンクリート造りの集合住宅
 …「同潤会アパート」
 →原宿をはじめ青山、代官山、江戸川、小岩など
・抑制の利いた外観: 日本で初めて一般庶民の生活に根ざした間取り
・設備の革新(特に水洗トイレの採用)に伴う新たな間取り
 →我が国の住宅史においても画期的な出来事

[間取りがバラエティに富んでいた理由]
・同潤会の設立 …大正13年(1924年)、関東大震災後の罹災者救済を担うべく、義援金で設立された財団法人
・1戸10坪(33m2)ほどの小住宅: 多様な間取りプラン

[同潤会アパートがモデルにしたもの]
・同潤会がもっとも影響を受けたのがウィーンの住宅
・同潤会アパート →方位にはこだわらず、アパート群全体を都市的な集合体
 公営・公団住宅 →日照3時間の確保を優先、規則的な配置計画(→50年代のイギリスが手本)
 ⇒両者の学んだ時期の違い

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