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携帯市場の昨今/市場実態PickUp/グローバル雑学王−46

この1-3月、第一四半期の携帯機器市場の販売数量データが発表され、携帯電話は前年同期比1割近く減少している一方、新顔のsmartphoneは同約13%増で、台数も携帯電話の約14%の規模になっている。不況の渦中にあっても、技術の進化速度は変わらない、むしろ早めないと市場に受け入れられない、そのような感じ方である。

≪携帯市場の昨今≫

相次いで目にした携帯機器市場の最新状況についての記事、次の通りである。

◇Symbian: Smartphone sales to grow 12-15% in '09(5月19日付け EE Times)
→世界で最も人気のあるOSが中軸の会社コンソーシアム、Symbian Foundationのchief、Lee Williams氏。2009年のsmartphones販売高が12-15%伸びる見込みの旨。

◇Handset margins, shipments continue to sink (5月20日付け EE Times)
→Wireless Intelligence(London)発。グローバルmobile handset市場が、出荷およびoperatingマージンの両方で打撃を被っている旨。

※smartphoneとmobile handset、ニューフェースとvolumeゾーンの現状の対比ということと思う。

◇Cellphone industry seen facing more trouble (5月20日付け EE Times)
→Gartnerによると、cellphone需要回復は2010年にかなり入って以降のこと、一方、Reutersデータでは、4-6月が業界最悪四半期となる可能性の旨。

◇Nokia lost out as Q1 mobile phone sales fell, says Gartner(5月22日付け EE Times)
→Gartner社(Stamford, Connecticut)発。2009年第一四半期の世界携帯電話販売総計は269.1M台、前年同期比8.6%減。ランキング、以下の通り。
       2009年第一四半期シェア 2008年第一四半期シェア
 1.Nokia      36.2%           39.1%
 2.Samsung   19.1%           14.4%
 3.LG        9.9%            8.0%
 4.Motorola    6.2%           10.2%

※韓国勢の健闘ぶりが目立っている。こういう環境だからこそ伸ばす、という韓国発の最近の半導体業界コメントを連想している。

◇Nokia, Symbian smartphone market shares dip as sales climb, says Gartner (5月22日付け EE Times)
→Gartner社(Stamford, Connecticut)発。2009年第一四半期の世界Smartphone販売は36.4M台を上回り、前年同期比12.7%増。該四半期のSmartphone販売はモバイル機器販売全体の13.5%、前年同期は11%。ランキング、以下の通り。
 1.Nokia  市場シェア 41.2%
 2.RIM           19.9%
 3.Apple          10.8%
 4.HTC            5.4%
 5.Fujitsu          3.8%
世界smartphone OS市場シェア:
         2009年第一四半期シェア 2008年第一四半期シェア
 1.Symbian    49.3%             56.9%
 2.RIM       19.9%             13.3%
 3.iPhone     10.8%              5.3%

※smartphoneの世界も早、激動という趣きを感じている。

携帯電話業界の方々の最近のお話でも、国内ではCMOSイメージセンサの画素数が最低でも5Mピクセル、来年は12Mになるか、とのこと。半導体の方は着々とロードマップを踏んで進化しており、むしろ当初以上の先端度がないと市場の裾野の拡がりが伴ってこない、というこれまでと変わっていない受け止め方でいる。


≪市場実態PickUp≫

新たな路線を模索する動き、市場の今後を慎重に見極める動き、などなど、以下の抽出、捉え方である。

【新技術を巡る動き】

◇Unity rolls 'storageclass' memory technology(5月19日付け EE Times)
→7年のR&Dを経て、Unity Semiconductor社(Sunnyvale, Calif.)が、ついに同社のノンボラメモリ技術、CMOx(イオン運動が可能という新材料、conductive metal oxides)を披露、メモリセルにTRsが不要なpassive rewritable crosspointメモリアレイを案出の旨。

◇IM Flash is possible partner for Unity's RRAM manufacture(5月22日付け EE Times)
→64Gビットresistive RAMノンボラメモリを2010年に作る意向を発表したばかりのUnity Semiconductor社(Sunnyvale, Calif.)が、該デバイス製造のウェーハfab建設でIDMと組む計画、1つとしてIM Flash Technologies LLC(Lehi, Utah)(Intel社とMicron Technologies社のNANDフラッシュ製造合弁)が可能性のあるパートナーとして挙がっている旨。

※まさに"理想的メモリ"技術を感じさせるキーワードの連続である。

◇GlobalFoundries and T-RAM to Tackle Advanced Nodes-T-RAM Semiconductor, which develops embedded memory IP based on thyristor technology, will work with GlobalFoundries to advance T-RAM's embedded memory solution to the 32 and 22 nm technology generations.(5月19日付け Semiconductor International)
→T-RAM Semiconductor社(Milpitas, Calif.)とGlobalFoundries(Sunnyvale, Calif.)が、T-RAMのThyristor-RAM embeddedメモリ技術を32-および22-nmプロセスに適応させることで協働する旨。thyristorベースnegative differential resistance(NDR)技術を用いるT-RAM、下図参照。
http://www.semiconductor.net/articles/images/SI/20090519/051909T-RAM.jpg

※これも"基本のメモリ"の開拓。今後に注目である。

【今後の市場見通し】

◇Tech execs cautiously optimistic on recovery(5月22日付け EE Times)
→今週のReuters Global Technology Summitでの各社講演から。大半は経済模様に気難しいアセスメント、在庫restockingが生産を押し上げているにも拘らず、アジアが引っ張りそうなconsumer需要のpick-upが見えるまでは依然警戒感がある旨。

※大方の最も素直な見方と思う。

【半導体分野別の実態】

◇Taiwan IC production value falls 41% in 1Q09, IEK says(5月22日付け DIGITIMES)
→台湾Industrial Technology Research Institute(ITRI)のIndustrial Economics and Knowledge Center(IEK)発。2009年第一四半期の台湾のIC生産が、前年同期比41%減の$6.2B、うち製造分野の落ち込みが最大、53.1%減の旨。データ図面、下記参照。
http://www.digitimes.com/NewsShow/20090522PR201_files/1.gif
http://www.digitimes.com/NewsShow/20090522PR201_files/3.gif

※半導体の中の分野別実態がよく出ている図面と思う。

◇Tool book-to-bill up, but have we hit bottom?(5月21日付け EE Times)
→SEMI発。北米半導体装置メーカー、4月のBB比0.65、3月の0.56から上昇の旨。Have we hit the bottom? Yes and no.

◇Japan's chip equipment book-to-bill climbs to 0.44(5月21日付け EE Times)
→SEAJから引用、Dow Jones発。日本半導体製造装置メーカー、4月グローバルBB比0.44、3月の0.30から上昇の旨。

◇Wafer shipments fell 56% in Q1, says SEMI (5月20日付け EE Times)
→SEMI Silicon Manufacturers Group(SMG)によるSiウェーハ業界の四半期
分析: 2009年第一四半期  前四半期  前年同期
        940M        1,428M   2,163M  [平方インチ]

※半導体装置、材料の現状。底を打ったかどうか。

◇Analyst: SATS sector set for further declines(5月18日付け EE Times)
→Gartner社によるsemiconductor packaging, assembly and test(SATS)分野の分析。SATS事業販売高:
   2007年    2008年
   7%以上増  2.4%減(2001年以来のマイナス)
現在の不況下でもSATS市場は引き続き半導体業界全体を上回る伸び、IDMsおよびOEMsのoutsourcing採用が続く旨。

※IDMsからの大きな委託発注の動き、堅調なSATS業界。

【各社・業界の動き】

◇TSMC chairman asks all laid-off employees to return, says the worst is over (5月20日付け DIGITIMES)
→TSMCが、レイオフしたすべての従業員に復帰するよう求め、同社chairman、Morris Chang氏の言う"regrettable actions"を償い、経済不況の渦中却下する旨。

◇SEMI says Europe chip industry needs leadership(5月19日付け EE Times)
→Reuters Global Technology Summit(Paris)にて、SEMIのEuropean head、Heinz Kundert氏。減退している欧州の半導体分野は、該地域での半導体製造が生き残るために、半導体メーカーを共通の目標を軸にまとめる力強いリーダーを必要としている旨。


≪グローバル雑学王−46≫

国際問題における水というものの重みを、

『地球の水が危ない』 (著者 高橋  裕氏:岩波新書 827)…2003年2月発行

より、回を追うごとにますます理解させられる感じを受けている。アジア、欧州、南北アメリカ、それぞれの水を巡る歴史、経緯とともに、国情、文化の相互理解の重要性を改めて考えさせられるところがある。


II 紛争の絶えない国際河川・国際湖

II-4 アジアの国際河川

[ガンジス川・ブラマプトラ川・メグナ川]
・ガンジス川 …流域面積167.57万km2(=日本全土の約4.4倍)
          インド      約60%
          中国       約20%
          ネパール      9%
          バングラデシュ  7.4%
・バングラデシュ独立の1971年、インドはファラッカ・ダムを建設
→当時、両国間に水利権に関する協定はなく、バングラデシュとの紛争の始まりに
・インド人にとってはガンジス川は、インドの川、ヒンドゥーの川、という強い意識
・最近ようやく、両国間で流量配分の話し合いがついたとのこと。

[メコン川を地域の共有財産に]
・東アジアおよび東南アジアでは、メコン川だけが国際河川らしい河川
・戦後半世紀 →流域各国が何とか協力、この川を共有財産にしようとする苦闘の歴史

[日本の2倍にもなる大河]
・メコン川 …流域面積78万km2(日本国土総面積のほぼ2倍)
        長さ4350km
 流域6ヶ国 ラオス  タイ
        中国   カンボジア
        ベトナム ミャンマー

[メコン川の開発の歴史]
・1995年4月、「メコン川流域の持続的開発協力に関する協定」調印
 …中国、ミャンマーを除く下流4ヶ国
・この調印に至るまでの激動の歴史
 *1957年10月、通称「メコン委員会」の設立(バンコクに事務局)

[暫定メコン委員会]
 *1975年活動停止 →1978年、通称「暫定メコン委員会」が再開
              ⇒タイとベトナムの対立で消滅の危険に

[メコン川委員会]
・UNDP(国連開発計画)の仲介
→1995年4月のタイ・チェンライでの新協定調印(上記参照)に:
  「メコン川委員会」として再出発

[河川管理は良好な関係から]
・国際河川の理想 −−統合的な河川管理の方向へ一歩ずつでも近づくこと
・強大国一国だけの都合での河川開発や管理は許されなくなっている
 …流域国間の良好な外交関係

[メコン川と日本人]
・メコン川の開発に関与した数限りない日本人の方々の言葉から:
 −経済よりむしろバランスがよくとれた安定した社会の構築
 −心のあり方を重視し個人の生活を大切に思う生き方
 −6ヶ国民はいずれもほとんどが仏教を信奉
  …より大きな調和を願い、愛と慈悲の心をもって互いに許し合う
  …日本人もまた仏教信者 →奉仕の精神

[朝鮮半島の国際河川−−漢江]
・北朝鮮からソウルを経て仁川付近で黄海に流入する漢江
・漢江治水 →交渉は進展していない

II-5 ドナウ川の環境と開発 −−スロヴァキアとハンガリーの対立

[ヨーロッパを貫流する大河]
・ドナウ川 …流域面積81.5万km2(=日本全土の約2.2倍):流域17ヶ国
        長さ2850km

[開発と環境運動]
・ドナウ川をはさむチェコ、スロヴァキアとハンガリーの対立
→1977年に締結、ドナウ川開発に関する条約に端
 ⇒歴史の波に翻弄されて、紆余曲折、複雑な経緯

[ハンガリー革命とチェコ、スロヴァキアの分離]
・1989年、ハンガリーの共産主義政権は打倒され、ドナウ川開発計画も変更を余儀なく
・その後、チェコ・スロヴァキアはチェコとスロヴァキアに分離
→この問題はハンガリーとスロヴァキア間の対立問題に

[国際司法裁判所の判決]
・1992年、両国は交渉を再開、仲裁裁定をオランダ・ハーグの国際司法裁判所に申請
→河川に関する紛争では初のケース
 ⇒両者の主張は平行線を辿ってなお合意に達してはいない

[環境重視の時代へ]
・1977年(上記参照)当時、両国はなお開発優先気運が旺盛
 一方、アメリカや西欧では、すでに環境保護運動が激化

[ドナウ川開発の貴重な報告]
・環境破壊を国際法の精神に違反するとした点、高い評価

[歴史的経緯と双方の国情]
・河川に関する国際紛争 …それに至るまでの歴史的経緯と双方の国情をも理解すること
       ハンガリー側:  ドナウ川の環境保全が多くの国民の支持
       スロヴァキア側: 民主化が遅れ、ドナウ川開発も早くから実施

II-6 南北アメリカの国際湖・国際河川

[五大湖の水質問題]
・北米の国際河川 →コロンビア川     (カナダからアメリカへ)
              セント・ローレンス川(アメリカからカナダへ)
・両国に跨る国際湖、五大湖の水質について、1909年に国際協定
→最近の地球温暖化のためか、水位が急激に低下

[コロラド川]
・アメリカとメキシコに流れるコロラド川
→メキシコ領内の河川流量の減少、生態系の破壊について議論

[ラ・プラタ川]
・南米でアマゾン川に次ぐ大河、ラ・プラタ川
 …流域面積296.69万km2
 →ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ボリヴィア、ウルグアイ
・ブラジルとパラグアイの国境に建設されたイタイプ・ダム 
 …1982年に完成
 →発生電力を両国に二等分し、パラグアイが消費しきれない余剰電力はブラジルが優先的に買い取る方式で合意

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