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大幅ランキング変動/市場実態PickUp/グローバル雑学王−45

経済危機の影響、余波の深刻さを感じさせるエレクトロニクス大手各社の決算発表が、国内外で相次いでいる。半導体業界のこの1-3月、第一四半期の販売高ランキング記事にも、chaos(無秩序、大混乱)、major upsets(大混乱状態)という見出しが飛び交っている。半導体についても、市場の実態をしっかりつかんで、サプライヤのみならずユーザとのコラボで、消費市場の歓迎、喝采を得ていくにますます如くなしである。

≪大幅ランキング変動≫

その第一四半期のランキングであるが、ファウンドリーを含めた恒例の形でIC Insights社より発表され、次の受け止めの見出しになっている。

◇Q1 chaos remakes top 20 IC supplier rankings(5月14日付け EE Times)
→IC Insights社による第一四半期半導体販売高ランキング。グローバル不況および経済危機の渦中、トップ20の内17社の順位に変動があり、第二四半期にはさらに変化が見込まれる旨。

◇Major upsets in semiconductor top 20 ranking, IC Insights reports-IC Insights reports that reactions to the economic downturn has caused a big changes in the ranking of top 20 semiconductor suppliers in Q1, and this volatile trend is expected to continue into Q2.(5月15日付け Electronics Design, Strategy, News)

発信源のIC Insights社サイトより、大幅という変動のポイントを抽出すると、次の通りかと思う。

◇Chaos Reigns in Top 20 Semiconductor Company Ranking-17 of the top 20 companies changed positions in 1Q09, with more volatility expected in 2Q09(5月14日付け IC Insights)

・2008年のランキング順位と変わらなかったのは、次の3社だけ:
 Intel (1位), Samsung (2位), Fujitsu (17位)

・上昇組:

Qualcomm
 最先端携帯電話用デバイスに重点化するファブレス世界最大手、2008年の8位から2009年第一四半期は6位に。
 2009年を通してハイエンド携帯電話(smartphoneなど)の売上げはますます好調、同社には今後も追い風か。

AMD
 12位から9位に。しかしながら、2009年第二四半期販売高は第一四半期より悪化しそうとしており、どれくらいトップ10に残れるか?

MediaTek
 進境著しいファブレス、MediaTekが、5つランクを上げて20位に。トップ20の中では、1Q09/4Q08販売高比で唯一増加、それも16%増である。ディジタルTV IC並びにワイヤレス通信事業が好調とのこと。

・下降組:

TSMC
 ファウンドリー世界最大手、この第一四半期には6つランクを落としたが、トップ10には踏みとどまった形。
 4Q08および1Q09の2四半期は在庫払底を余儀なくされて、1Q09販売高は3Q08に比べて57%減に。しかしながら、TSMCの予想される販売高回復は、今年のIC業界で見られる最も著しい盛り返しであり、2Q09販売高は約$2.2B、前四半期比89%増の見込み。こうなるとすれば、2Q09では第3位に浮上へ。


NXPおよびNvidia
 この両社はトップ20の圏外へ。NXPは15位から21位、Nvidiaは20位から22位へ。しかしながら、両社とも2Q09にはかなりの回復が見られ、トップ20に戻るに充分と思われる。

1Q09のトップ20ランキングのデータは、以下参照。

http://www.icinsights.com/news/bulletins/bulletins2009/bulletin20090514.html

このデータ数値を見ると、今回の経済不況の影響の度合いというものを改めて感じさせられる。各国・地域の景気回復策の浸透、そして奏功の度合いを見据えながらの今後の展開ということと思う。


≪市場実態PickUp≫

一気に解けていけばよいが、いろいろもつれも見られる半導体業界の現状と受け止めている。そのような実態とか、今後の展開につながる新たな糸口、大きな曲がり角など、複雑な思いが交錯する以下のPickUpとなっている。

【今後の回復如何?】

◇ST sees early chip market recovery (5月15日付け EE Times)
→STMicroelectronics N.V.のpresident and CEO、Carlo Bozotti氏。ここ2週間で市場好転の初期の兆しが確認されており、以前の予想より早く半導体市場は改善すると見ている旨。中国、アジアでの顧客需要が第一四半期末以降戻してきており、ワイヤレス、コンピュータ、産業用などmulti-application市場での販売高を押し上げている旨。

◇Panel prices continue to rise throughout 3Q09 due to tight supply(5月15日付け DIGITIMES)
→業界筋発。中国からのLCD TVsの力強い需要、パネル価格が第三四半期を通して上昇する様相の旨。2009年の中国市場でのLCD TVs販売は24M-25M台に増える見込みの旨。

【台湾DRAM業界】

◇Trade group questions Taiwan's DRAM plan (5月14日付け EE Times)
→米国-台湾lobbyingグループ、U.S.-Taiwan Business Council(Arlington, Va.)、木曜14日発。台湾のDRAM業界を政府支援のTaiwan Memory Co.(TMC)を軸に統合するという台湾政府の計画は、依然はっきりしないところがあり、良くなるよりはむしろ悪くなる可能性の旨。

◇Taiwan DRAM makers scaling up production (5月15日付け DIGITIMES)
→メーカー筋発。台湾のDRAMメーカー、Inotera Memories, Nanya TechnologyおよびPowerchip Semiconductor Corporation(PSC)が最近増産しており、第三四半期に引き続き価格の回復を見込む旨。

【日本のスパコン】

◇理研、次世代スパコン開発抜本見直し、NECと日立が計画離脱。(5月14日付け NIKKEI NET)
→理化学研究所が14日、官民共同で進めてきた次世代スーパーコンピュータの開発を抜本的に見直すと発表、中核技術を担うNECと日立製作所が同日、開発から事実上撤退する決定を表明したため、世界最高性能を目指す現行計画を白紙に戻す旨。

【EC対インテルの攻防】

◇欧州委、インテルに巨額罰金へ 不法リベートで1300億円超か。(5月11日付け NIKKEI NET)
→米半導体大手のインテルがパソコンメーカー各社に対し、ライバル企業の部品を使わないよう要請し不法にリベートを払ったとして、欧州連合(EU)の欧州委員会が巨額な罰金を科す方向となった旨。英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)によると、罰金は10億ユーロ(約1300億円)を超え、史上最高額となる可能性がある旨。欧州委は13日の定例会合で方針を決定するとみられる旨。

◇AMD shares jump ahead of EU ruling on Intel (5月11日付け EE Times)
→AMD社の株価が月曜11日、約8%上昇の旨。

◇Intel hit with record $1.45B EC antitrust fine-Intel took strong exception to the decision and maintained that its business practices are not anticompetitive.(5月13日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Intel社が独占禁止法に違反、支配的なx86 CPUの市場地位を乱用していると、EC(European Commission)が今朝裁定、同社が$1.45B(1.06Bユーロ)という記録的な罰金に直面している旨。

◇Europe vs. Intel: Evidence in question-Otellini says chip maker can prove allegations false(5月13日付け EE TimesEET)
→Intelのchief executive、Paul Otellini氏。同社には、European Commissionの誤りを明らかにする証拠がある旨。

※いずれも併記するのが精一杯、なかなかコメントが難しい状況である。なんと申しましょうか・・・、というかっての名調子を思い出すが、その後を続けるのが大変。当面はじっくり模様眺めの体とならざるを得ない。


≪グローバル雑学王−45≫

このような難局を如何に打開するか、すべきか。現在、本コーナーで目を通してきている

『地球の水が危ない』 (著者 高橋  裕氏:岩波新書 827)…2003年2月発行

からの今回の以下の内容からも、気がつかされるいくつかの点があると思うがどうであろうか。一つとして、日本には国際河川というものはなく、この国際問題には無関心になりがちということ。ややもするととかく孤立につながりかねない日本の特殊性である。さらに、トルコ、エジプトの大規模ダムの建設・運用には関係国家間の調整に立った卓越したリーダーの存在が大きく働いた、ということである。


II 紛争の絶えない国際河川・国際湖

II-1 地球の全陸地の半分近くは国際河川流域

[国際河川問題に無関心な日本]
・水に満ち満ちている地球の表面 
 →97.5%は海水
 →残り2.5%のうち7割以上が南極や氷河などの氷
・我々が利用しやすい河川湖沼の水は、淡水の約0.37%にすぎない
 →これを巡って有史以来激しい水争いの繰り返し
・日本には国際河川は存在しない →日本人は国際河川問題に無関心

[陸地の半分弱は国際河川流域]
・地球の全陸地の45%は国際河川流域
・1978年では214の国際河川
   ↓
 多くの新しい独立国誕生(ソ連、旧ユーゴスラヴィアの崩壊) +51
 イエメンと東西ドイツの統一                      -4
   ↓ 
 1999年現在、世界中で国際河川は261

[国際河川は普遍的存在]
・国際河川数が多いヨーロッパ、アフリカ …ひしめきあう多数の国々
 →河川を通して他国からの流入水に水資源を頼っている国々が極めて多い

[対立関係になりやすい国際河川流域内の国々]
・友好関係にあった国同士が、ダム計画や水質問題によって、にわかに対立関係になってしまうこともしばしば

[上下流の利害対立]
・1960年代以降 →ダムによって沈む水源地の山村が下流の都市側の犠牲になるとの意識
 1970年代   →ダムにより水没する水源地域対策を真剣に考慮するように

II-2 中近東河川の紛争

[水争いの場−−ヨルダン川]
・アラブとイスラエルの長年にわたる対立 →常に水問題が絡む
・ヨルダン川 …長さ322km、利根川とほとんど同じ
        …流域面積4万2800km2、利根川の約2.5倍
 →流れ込む死海の水面は、地中海面以下約400m、なお毎年1m近く低下中。その塩分濃度は海水の約5倍、なお高まり続く。

[イスラエルとヨルダンの水資源共同開発]
・1993年、史上初めてイスラエルとヨルダンが手を結び、水資源開発が活況に
 …構想案いずれにも、水資源ならびに400mの落差を利用する、いわゆる死海発電計画が含まれる
・現在、流域内諸国はいずれも人口が激増、いよいよ増している水資源確保の緊急性

[世界最大の水資源開発]
・トルコで現在、おそらく世界最大規模の水資源開発が進行中
 −−−特に1992年にユーフラテス川に竣工したアタチュルク・ダム
     :堤高169m、総貯水容量487億m3
      →フーバー・ダムの367億m3をはるかに凌ぐ規模
・事業主体は、GAP(南東アナトリア開発公社:GAPはトルコ語表示の頭文字)

[シリアへの影響と対策]
・GAPの事業について、ダム湖に水質悪化が生じれば、隣国シリアに流入する水質も悪化
 ダムでトルコの思うように貯めれば、シリアへの流入量が減少
 →主要データを隣国にも公開、信頼関係の維持、発展が重要
・オルジャイ・ウンバーGAP総裁 …一躍国内外のメディアの寵児に

[総合的社会開発事業]
・世界各国で評価されているGAP
 →もっぱら総合的社会開発事業としての成果を認められる
・トルコが神経を使って慎重にダム水位の操作
 →シリアの行政担当者もほぼ認めるところ

[責任者の姿勢が重要]
・ウンバーGAP総裁の技術的力量、河川観、そして包容力
 →責任者の姿勢が決め手に

[ダム事業への批判]
・1980年代以降 →ダム事業への批判が世界的に高まる
・人口が急増しつつある途上国は、何らかの水資源開発が必須・急務
 →水需要が停滞している先進国と、水需要がさらに著しく伸びる途上国とを、同一には論じられない

[ダム建設の教訓]
・水資源問題も、他の地球環境問題と同じく南北問題に帰着
 →先進国は、技術援助、自らの開発史の教訓をこそ途上国へ伝えるべき

II-3 上下流対立が深刻なナイル川

[世界三大河川のひとつ]
・アフリカ最大のナイル川 …アマゾン川、ミシシッピ川とともに世界三大河川
 →流域面積303.24万km2 −日本の面積の約8倍
                  −流域内に10ヶ国
  長さ6695km        −日本最長の信濃川の約18倍

[エジプトの水は97%がナイル川から]
・エジプトで利用する水の実に97%は、スーダン国境から流れてくるナイル川の流れ
・エジプトは、年に約700万人ずつ人口が激増、水需要も増加する一方

[アスワン・ハイ・ダムの完成]
・1971年に完成したアスワン・ハイ・ダム 
 →貯水容量1620億m3 …驚くほどの容量
  ⇒巨大ダムの宿命として、さまざまな面で環境悪化を起こし、利点は触れられず評判は悪い

[強調されたダムのマイナス面]
・ダムの環境アセスメントの手法が整うのは、一般に1980年代以降
・アスワン・ハイ・ダムの場合は、冷戦構造の犠牲も
 →ソ連が建設資金を提供
 →環境への影響で槍玉に、標的にされた嫌いの経緯

[エジプトの水資源開発のリーダー]
・水資源・灌漑大臣のアブ・ザイド氏
 →1996年以後はWWC(世界水会議)の議長:水問題の国際的リーダー
  ⇒時間をかけて情報を蓄えて、最終的には見事にまとめている手腕 

[スーダン、エチオピアの水問題]
・1959年にエジプトとスーダンの間でナイル川の水配分の協定
・エジプトがナイル川流域内の水問題で気にせざるを得ないのは、隣国スーダンと青ナイルの水源国エチオピア

[「ナイル川流域イニシアチブ」の設立]
・流域の10ヶ国が同じテーブルに着いて情報を交換しつつ協議する組織作り
 →1999年2月、正式に「ナイル川流域イニシアチブ」が設立
 ⇒成り行きを、世界、特に国際河川を巡って対立している国々が注視

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