台湾市場での好転/市場実態PickUp/グローバル雑学王−44
世界的な経済不況に加えて、新型インフルエンザがこれまた世界的な規模の拡がりを示してきている。豚肉、そしてメキシコ料理にはトンでもない災難であり、早期鎮静化をひたすら願うのみである。我が半導体、そしてデバイス市場については、しぶとく好転および新規成長材料を探し出す日々が続いており、今回は以下の通りである。
≪台湾市場での好転≫
前回の本欄、米SIAからの3月世界半導体販売高では、地域別に日本だけが前月比マイナスを抜け切れておらず、勢い他地域のプラスの内容に目を向けざるを得ない。中でも各社業績発表において、台湾市場での前月比の伸びに注目しているところである。まずは、半導体ファウンドリーの最大手、TSMCとUMC。以下の2件、合わせて参照である。
◇TSMC, UMC April sales improve in chip recovery(5月8日付け EE Times)
→TSMCの4月販売高(unconsolidated)$657M(T$21.75B)、前月比60%増、2ヶ月連続の前月比増、前年同月比22.6%減。1-4月ではT$61.95B、前年同期比46.8%減。
UMCの4月販売高T$6.877B、前月T$4.541B、前年同月比19%減。1-4月ではT$17.72B、46%減。
両社の販売高前年比推移図面、下記参照。
⇒http://graphics.thomsonreuters.com/059/TW_TSMC0509.jpg
⇒http://graphics.thomsonreuters.com/059/TW_UMC0509.jpg
◇TSMC and UMC continue sales recovery in April(5月8日付け DIGITIMES)
→両社、1月から4月の販売高(unconsolidated)推移グラフ、下記参照。
⇒http://www.digitimes.com/NewsShow/20090508VL201_files/1.gif
前年比ではまだ今回の谷の深さを感じるが、取り戻しが急な様相も見られる。また、FPD関係を以下に示す。
◇AUO April consolidated revenues up 10% (5月8日付け DIGITIMES)
→AU Optronics(AUO)の4月売上げ(consolidated)NT$24.36B(US$736.4M)、前月比10.1%増、前年同月比42.6%減。
半導体後工程の世界大手であるASEとSPILも、急激な落ち込みから今年に入って月を追うごとに戻してきている状況が伺える。
◇ASE and SPIL sales recovery continue in April(5月7日付け DIGITIMES)
→Advanced Semiconductor Engineering(ASE)の4月販売高(unconsolidated)NT$3.39B(US$102.4M), 前月比10.1%増、前年同月比22.1%減。
Siliconware Precision Industries(SPIL)の4月販売高(unconsolidated)
NT$4.2B、前月比8.6%増、前年同月比15.5%減。
両社の今年の月次売上げ推移、下記参照(unconsolidatedベース/Source: Companies, compiled by Digitimes, May 2009)。
⇒http://www.digitimes.com/NewsShow/20090507VL200_files/3.gif
本物の市場好転に向けて、このような基調が高まっていくことを期待している。小生もいろいろな切り口でお付き合いが長い台湾の工業技術研究院(ITRI:Industrial Technology Research Institute)の最近の紹介パンフレットをいただいて目を通しているが、上記のTSMC、UMCはここからのスピンオフ。2006年3月時点で140社の新会社設立を達成し、ITRIのベンチャー事業は高い成功率を誇っている、とある。今や台湾が市場の先行指標という感じ方が強まるところがあり、その通りという受け止めであるが、今後に向けては新しい有望なアプリの中軸を成す半導体、あるいはデバイスというユーザ&サプライチェーンのパートナーシップを如何に構築できるか。何処の市場もこの達成が正念場になってきている現時点ということと思う。
≪市場実態PickUp≫
【今後の回復如何?】
上記の通り戻してきているとは言え、今回の谷は非常に深く、半導体市場について以下の見方がある。
◇Analyst predicts IC market growth in Q1 2010 (5月8日付け EE Times)
→実際の月次グローバル半導体販売高数値に長年取り組む半導体市場統計アナリスト、Mike Cowan氏の見方。
Q1 2009 Q2 2009 Q3 2009 Q4 2009 Q1 2010
$44.02B $44.57B $47.94B $47.45B $45.28B
前年同期比 -29.9% -31.1% -30.4% -9.1% 2.8%
半導体製造ラインの稼働率については、この第一四半期を底にやはり徐々に戻していくという見方があり、以下3件、同じ内容である。
◇Semis market tracker sees start of 'recovery phase'(5月7日付け EE Times)
→iSuppli発。第二四半期の半導体fab稼働率が久方の60%に、第一四半期の49%止まりから上向く見込みの旨。
◇iSuppli Sees Q2 Fab Utilization Improving to 60%-iSuppli said semiconductor manufacturers will enjoy the first improvement in fab utilization in a year, as 60% of fab capacity is being utilized in the current second quarter. The rate will go up to 75% in the third quarter, predicts iSuppli manufacturing analyst Len Jelinek. (5月7日付け Semiconductor International)
→半導体製造fab稼働率の2008年〜2010年推移&予測図面、下記参照。
⇒http://www.semiconductor.net/articles/images/SI/20090507/050709isupply.jpg
◇Semiconductor manufacturing utilization set to rise in 2Q09, says iSuppli (5月8日付け DIGITIMES)
→2008年〜2010年のグローバル半導体製造capacity稼働率の推移&予測グラフ(Source: iSuppli, compiled by Digitimes, May 2009)、下記参照。
⇒http://www.digitimes.com/NewsShow/20090508PR201_files/1.gif
デバイス分野別に見ると、基幹のシステムICsについては第二四半期が底という次の見方がある。
◇System ICs to return to growth in Q3, iSuppli says(5月5日付け EE Times)
→iSuppli社(El Segundo, Calif.)発。システムICs(ASICs、ASSPsおよびPLDs)市場はここ6ヶ月にわたり売上げが約1/3ほど減少後、第三四半期には以下の通り前四半期比伸びると見る旨。
グローバル"core silicon"売上げ 第二四半期 第三四半期
$17.6B $19B
この増加は2008年第三四半期以来の旨。しかしながら、前年同期比でプラスに戻るのは2010年第一四半期以降の旨。年次では以下の見方:
2009年 2010年
24.2%減 10.1%増
半導体製造装置となると、もう少しかかるという見方かと思う。
◇Analyst: Signs point to recovery in ICs, not gear(5月5日付け EE Times)
→The Information Network(New Tripoli, Pa.)のアナリスト、Robert Castellano氏。グローバルなIC分野の回復への多くの兆しが出てきているが、半導体製造装置ベンダーにとって上向きになるのは少なくとも8月以降になる様相の旨。
一方、サプライチェーン筋からはまだ厳しい見方が続いている。
◇No rebound just yet, according to supply-chain survey(5月6日付け EE Times)
→電子コンポーネントディストリビュータ、Digi-Keyが主催、VentureOutsource.comが行った230以上のエレクトロニクスsupply chain decision makers対象の調査。エレクトロニクスsupply chainは依然悲観的、今回の不況の底はまだ打っていないと見ている様相の旨。
【組織改編】
業界再編と並んで、各社の組織、体制固めが以下の通り行われている。
◇TSMC reshuffles management, sets up new business organization(5月8日付け DIGITIMES)
→業界筋発。TSMCが、中国市場での今後の運営に備えて、台湾、中国およびシンガポールでの体制を改編、energy-saving市場に向けて新しい事業組織、New Business Development Organization(NBDO)(現在はLEDおよびsolar市場に着目)を設立の旨。
◇AMD creates new business units (5月6日付け EE Times)
→AMD社(Sunnyvale, Calif.)が水曜6日、4つのoperatingグループに改編、新グループはproducts, technology, marketingおよびcustomersを軸とする旨。
≪グローバル雑学王−44≫
人類が生存するために欠かせない筆頭に出てくる水について、グローバルな斑模様の実態を、
『地球の水が危ない』 (著者 高橋 裕氏:岩波新書 827)…2003年2月発行
を読み進めるにつれ、ますます教えられている。半導体製造も大きく左右する水であり、その実態アップデートに努めるべきことと思う。
I 地球環境と水の危機
I-3 地下水の危機
[地下水の変質]
・地下水は、地球にとって人の血液にも匹敵するほど重要
・地下水は、ありがたい水資源 −きわめて安価
−年中おおむね低温、かつ美味
・最近は場所によっては、地下水も絶対安全とは言えず
[地下水過剰汲み上げ]
・世界中到る処でほとんど例外なく過剰揚水
→地下水位の低下や枯渇
・農業生産拡大には輝かしい成果を上げたが、そのあまりに大きい代償
・インドの例、井戸の数:
1951年 1997年
約400万 1700万
[中国の慢性的水不足]
・中国では、1961年から1985年までの25年間に、灌漑用井戸は実に20倍以上もの増加
・地下水枯渇による食糧減産への対策
→用水量減少に耐える作物への転換、品種改良
灌漑効率の向上
・インドと中国では、地下水位低下は井戸掘り争いに
→深い井戸を掘れない貧者と富裕な階級の格差を助長
[水量の激減]
・アメリカの灌漑面積は、インド、中国に次いで世界第3位
・北アフリカとアラビア半島の地下水危機も深刻
・インド、中国、アメリカ、パキスタンの4ヶ国で世界の灌漑面積の過半、これら4ヶ国を含む世界の上位10ヶ国で約3分の2に
[地下水質の悪化]
・農薬・肥料の多用など次々と出現する化学物質
→水質悪化にやがて苦しむことに
⇒特に地下水の水質悪化は、その回復が困難
[地下水に含まれる砒素]
・現在何よりも重大な問題 =地下水に含まれる砒素による中毒
・特に深刻なバングラデシュの場合:
井戸掘り合戦 →深い地下水層に潜んでいた砒素に出くわす
⇒数百万人が手足などの皮膚、神経系、循環器系などの疾患に苦しむ
・具体的な対策のひとつ →地下水に代わる雨水利用施設の普及
I-4 湖沼の危機
[河川湖沼の現状]
・河川や湖沼は地表水の健康状態の指標
[象徴的なアラル海の惨状]
・カザフスタンとウズベキスタンに囲まれた国際湖、アラル海:
1960年ごろ 2000年現在
面積 6.8万km2(世界で4番目) 約4万km2弱
平均水深 53.4m 15m
[アラル海プロジェクト]
・1960年、ソ連が誇った自然改造計画、アラル海プロジェクト
→農業発展の大きな代償は、アラル海の自然の改悪
・カザフスタンでの例:
15万人の人口を抱えていたかつての湖畔の大都市が、現在は3万人を割っている
◎河川開発は、上下流の流量関係、土砂移動、そして水質、生態系も含め、全流域管理の観点から考えねばならない
[旱魃で縮むチャド湖]
・数ヶ国に及ぶ典型的な国際湖、アフリカ北西部のチャド湖:
1962年まで 現在
2.5万km2 1/20に
[危ない湖が続出]
・特に中近東から中国大陸にかけてはじめ、同様の運命を追う可能性が高い
・共通する原因 →湖周辺の盛大な開発のための河川水利用、湖への土砂流入
・地域を限定した開発 →短期的にはその地域に多大な利益
⇒広範囲の関連地域には、災害可能性を増加させることがしばしば
[毒物流入による汚染]
・重化学工業地帯のアメリカ五大湖周辺、北欧バルト海での水質問題
[ILECによる調査と対策]
・国際的組織、ILEC(国際湖沼環境委員会:International LakeEnvironment Committee):滋賀県草津市に事務局
・1984年、琵琶湖で最初の世界湖沼会議を開催。以後ほぼ2年に1回、問題を抱える世界各地で。
I-5 洪水災害の激化
[異常な強雨の頻発]
・洪水災害が、1990年代以降、世界的に頻発し激化
[拡大する洪水災害]
・最近は、洪水災害が自然災害の中で被災者数でも被害額でも最も多い
・洪水災害被災者 → 1973年−1977年 1993年−1997年
年平均被災者 2000万人 1億3100万人
[なぜ洪水災害がひろがっているのか]
・途上国における人口急増: 都市化に伴う都市への人口集中
・1990年代10年間の自然災害による経済的損失=6080億ドル
→1950年からの40年間の合計を上回る
→1980年代の3倍に相当
[社会構造的要因の究明を]
・1990年代以降の大水害頻発と被害額の飛躍的増大
→社会構造的要因が一層潜む
・社会構造のいわゆる高度化、細分化
→災害に対してはかえって抵抗力の弱い社会の形成