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立て続けのMicron攻勢/市場実態PickUp/グローバル雑学王−84

電子機器、デバイス市場の回復気分を反映してか、"積極的"とか"攻勢"という表現が続く以下のタイトル見出しになってしまっている。最先端技術の粋を競い合うISSCC 2010の開催タイミングということで、余計に乗り加減かもしれないが、旧正月を控えて市場に一服感が漂う今こそ、その後の本格回復に向けてしっかり需給対応できるよう充電を、という受け止め方である。

≪立て続けのMicron攻勢≫

前回の≪市場実態PickUp≫の欄にて、すでに【Intel & MicronのNAND攻勢】を取り上げているが、以下に補充して示す通り、Micron Technology社の活発な動きが見られていた。  

◇Intel, Micron take NAND lead, roll 25-nm chip(1月30日付け EE Times)

◇Intel-Micron JV orders litho for Singapore fab(2月1日付け EE Times)
→あるアナリスト発。Intel社とMicron Technology社は、シンガポールの合弁NAND fabの生産スケジュールのことは黙っているが、該合弁、IM Flash Technologies LLC(IMFT)が、その工場向けにリソツールなど装置発注を開始している旨。

◇Micron VP: Five reasons to be bullish (2月2日付け EE Times)

◇Rumor mill: Micron to buy Numonyx? (2月4日付け EE Times)
→昨年表面化したMicron Technology社がNumonyx B.V.(STMicroelectronics 49%、Intel 45%、Francisco Partners 6%:NOR, NANDおよびphase-changeメモリ販売)を買収する計画検討中という噂がまたまた飛び交っている旨。

その後も続けて、次の通り噂話が現実となったり、多角的な戦略アプローチが一気に展開してきている。

◇Micron, Nanya announce 42-nm DRAM process (2月8日付け EE Times)
→Micron Technology社(Boise, Idaho)とNanya Technology社(Taoyuan, Taiwan)が、42-nm DRAMプロセス技術を披露、BoiseのR&D fabで3X-nmプロセスに取りかかっている旨。

◇Micron to acquire Numonyx for $1.27 billion (2月9日付け EE Times)
→予想通り、Micron Technology社が、$1.27B相当の株式取引でNumonyx Holdings B.V.(STMicroelectronics 49%、Intel 45%、Francisco Partners 6%:NOR, NANDおよびphase-changeメモリ販売)の買収に合意の旨。NORおよびphase-change memory(PCM)分野推進、NANDフラッシュ拡大が図れる旨。

◇Analysis: Why did Micron buy Numonyx? (2月11日付け EE Times)
→今週のMicron Technology社(Boise, Ida.)によるNORフラッシュ大手、Numonyx Holdings B.V.(Geneva)買収は、Micronの多角化戦略の一環、最近ではmicrodisplay, solid-state storage(SSD)およびsolar市場参入により新市場領域を拡充、またCMOSイメージセンサ部門を分離、LEDsにも手を出している旨。

◇Five observations from Micron's analyst event(2月12日付け EE Times)
→Numonyx買収、25-nm NANDフラッシュ先行と立て続けに動くMicron Technology社(Boise, Ida.)について、同社アナリストイベントからのAvian Securities LLC(Boston)アナリスト、Dunham Winoto氏の見方。
 1. The big deal.…NORはゆっくり成長する市場であるが、Numonyxによりend-to-endメモリメーカー2社の1つになれる(もう1つはSamsung)
 2. Capex hike.…8月締めの2010年度について$100M増、$850M〜$950Mに
 3. Roadmaps. …NANDコスト低減策として、3-bits/cellよりもノードshrinkに重点化
 4. Taiwan JV report. …Micron社内fabで用いる最新プロセス寸法に近づける計画
 5. Final thoughts. …株式の見方はneutralに維持の結果印象

Micronについては、ここ数年、年に1-2回はこのような新たな機軸の展開を本欄で紹介している、という思い起こしがある。DRAMはじめ業績好転をばねに2010年以降に賭ける意気込みが伝わってくる。


≪市場実態PickUp≫

「半導体のオリンピック」と言われて久しく、今は昔という感じ方もあるかと思うが、恒例のInternational Solid State Circuits Conference(ISSCC)の目に付いた話題から次の通りである。

【ISSCC 2010】

◇ISSCC: Intel has edge over AMD, for now-Duo still close in a tight multicore processor race(2月8日付け EE Times)
→Intel:6コアを用いる初の32-nmサーバプロセッサ
 AMD:x86およびグラフィックスコアを組み合わせた新コア、Llano

◇Intel rolls Tukwilla, nixes fully buffered DIMMs-Road map calls for 32nm follow-on Poulson in 2012(2月8日付け EE Times)
→2年の遅れを経て、Intel社が、Itaniumサーバプロセッサ、Itanium 9300, 別名Tukwillaを打ち上げ、x86コアを用いない同社唯一の半導体についてのロードマップを描き直しの旨。

◇IBM's Power7 systems expand lead over Itanium(2月8日付け EE Times)
→IBM社が、新Power7プロセッサを用いる最初のシステムを展開、競合に対するリードを広げ、新Itaniumプロセッサを発表したIntelおよびHewlett-Packardを出し抜いている旨。

◇ISSCC: Expert picks winner for post-CMOS era (2月8日付け EE Times)
→Georgia Institute of Technology(Atlanta, Georgia)教授、James Meindl氏。半導体scalingは少なくとも15年は続く見込み、またpost-CMOS時代の後の次の技術を予測(grapheneに大きな期待)の旨。

◇AMD, Intel Vie on Power Savings Ideas-At ISSCC, AMD and Intel engineers offer competing views on how to keep power consumption under control. AMD introduced its 32 nm SOI processor, Llano, and Intel discussed its 32 nm Westmere family. Intel Labs staff presented conference papers on how to conserve watts while dealing with manufacturing variability.(2月9日付け Semiconductor International)
→電力節減を最重点に挙げて、AMD社(Sunnyvale, Calif.)およびIntel社(Santa Clara, Calif.)が自分たちの32-nmプロセッサをプレゼンの旨。

Intel 対 AMD、IBM 対 Intel、半導体scaling、32-nmノードといったキーワードから追っていく現在の習性となっている。

さて、"積極的"の第一弾は、Samsung、東芝からの活きの良い設備投資戦略の展開発表である。

【積極的な設備投資展開】

◇Where is Samsung's semi capex going? (2月9日付け EE Times)
→Barclays Capitalのアナリスト、C.J. Muse氏。$6.5B-$7.3Bに上ると見られ、すべてメモリ事業に充てられると見るSamsung Electronics Co. Ltd.の設備投資の行方について。
 1. Boost spending on a memory fab in Korea--Line 16.
 2. Spend funds on a new memory line in Korea--Line 17.
 3. Two 300-mm conversions--Austin, Texas and Line 10 in Korea.
 4. Huge ramp in foundry business.

◇Analyst: Samsung hogging litho supply chain (2月9日付け EE Times)
→Samsung Electronics Co. Ltd.がIC回復の渦中、capital spendingを高める可能性、その過程でまたASML Holding NV(Netherlands)から多数の193-nm scannersを購入、実際にASMLシステムのsupply chainを一人占めしようとしている旨。

◇東芝、8000億円で半導体新工場、四日市、3年後に能力倍増。(2月10日付け NIKKEI NET)
→東芝がNAND型フラッシュメモリの新工場を建設、2010年度から3年間で三重県四日市市に計約8000億円を投じ、凍結していた工場建設を再開する方針の旨。月産能力は現在の約2倍になる見通し、同メモリ最大手の韓国サムスン電子を抜き、世界首位を目指す旨。半導体各社は2008年秋の世界経済危機後、投資を控えてきたが、需要拡大を見込み再び競争が激化する旨。

第二弾は、2010年が二桁10%台後半の大きな伸びが半導体業界に期待されるという読みについてであり、その根拠が示されている。いずれも引き続きトレースしていって随時アップデートを要する重要な指標と感じている。

【積極的な予言】

◇An analyst's 10 reasons to be cheerful (2月8日付け EE Times)
→IC Insights社(Scottsdale, Ariz.)のアナリスト、Bill McClean氏。2010年が半導体業界にとってgood year(15%伸長)およびgreat year(20%以上の伸長)の間に入ろうと考える理由、根拠10項目:
1) 2010年1月26日、IMFが、2010年世界GDP予測を3.1%から3.9%に上方修正
2) 2009年12月の米国Index of Leading Economic Indicatorsが1.1%上昇
3) 2010年1月の米国U.S.製造分野Purchasing Managers Index(PMI)値
4) 中国の2010年1月PMI値…2004年調査開始以来最高値
5) 中国の2009年第四四半期GDP伸長…10.7%
6) TI, Altera, On Semiなど第一四半期販売高が前四半期比増える見込み(通常は季節的に落ち込む)
7) IC在庫数量の厳しい管理が継続
8) 2009年第四四半期の300-mm IC製造稼働率が95%超
9) SEMI発。2009年12月北米半導体装置受注が$863Mに上昇 
 …2009年3月水準の3.5倍
10) 低迷の2009年を経て、PCおよび携帯電話の出荷数量は二桁伸びる見込み

先日発表されて大きな注目を浴びているApple社のiPadについて、細かいコスト分析が行われている。"相当なかなりの"マージンという見方になっている。

【Apple社iPadのBOM & 製造コスト分析】

◇Apple gets hefty margin on iPad cost-50%-plus margin offers pricing flexibility (2月10日付け EE Times)
→iSuppli社によるApple社iPadの最新コンポーネント&製造コスト・ブレイクダウン分析。現状の流通価格帯、$499〜$829(16GB〜64GB:3G有無)に対し、材料&生産コストは$229.35〜$346.15の旨。

◇Apple builds cost cushion into iPad-ISuppli suggests ARM, Broadcom, and Infineon are among the suppliers to the iPad.(2月11日付け Electronics Design, Strategy, News)
→iSuppli社によるApple社iPadのBOM(bill of materials) & 製造コスト分析表、下記参照。
http://www.reed-electronics.com/articles/images/ENEWS/20100211/6718745_chart.jpg


≪グローバル雑学王−84≫

米国の政治の動き方、実態推移を、

『アメリカを知る』(実 哲也 著:日経文庫1213)…2009年12月 1版1刷

より、読み取っている。抜き出し、解釈の妥当性如何はあるかもしれないが、長期停滞が続き政権交代後の模索が続く我が国と照らしてみて、考えること、考えさせられること、多々である。


[II] 米国の政治はこう動く

1 大統領の役割
(1)行政権は大統領個人に
・ワシントン滞在での実感 …大統領選挙は一種の革命
 →政権交代、政府の幹部やアドバイザーが数千人規模で入れ替わり、新たな住人に
・米国では、閣僚は上院の承認を得ないと職につけない
・行政権は大統領個人が持っている
・大統領を直接支える数百人もの職員
 …ホワイトハウスにいる首席補佐官、国家安全保障担当補佐官はじめ
  →上院の承認不要
・日本で言えば各省の局長クラスの人々まで大統領が任命
(2)国民の代表と最高司令官
・大統領の役割
 −米国民の代表という立場
 −最高司令官(Commander in Chief) …戦争の指揮をとる最高責任者(ただし宣戦布告は議会の権限)
(3)権限めぐり論争
・首相に比べると権限が強いように見える大統領
 …議会による弾劾裁判で辞めさせることは可能
  →過去に辞めた例はなし。ニクソン大統領の場合は自ら辞任。
・米国では法律はすべて議員が提出。予算案の作成も議会が。
 →大統領はお願いする立場でしかない
・大統領は気に入らない法案に拒否権を発動する権限。ただし、議会が2/3以上の多数で再可決すれば成立。
・副大統領の影響力は政権ごとに異なる。
(4)大統領選挙は長期戦
・延々と戦いが続く米国の大統領選挙(4年に1回、11月の第一月曜日の後の火曜日に実施)
 −1年半以上も前に共和、民主両党の大統領候補が名乗り
 −州ごとに予備選や党員集会
 −夏以降は両党の大統領候補、副大統領候補同士の争いに
・長期戦 →米国民は候補者が掲げる政策だけでなく、リーダーとしての資質や性格まで伺い知る機会をもてる
・共和党が強いRed States
 民主党が強いBlue States
 どちらに転ぶかわからない州 →Swing States
               …Ohio州やFlorida州が典型例

※米国大統領の権限、役割というものを改めて知る思いである。米国議会との関係も、立法促進を働きかける場面に今までに何回か出くわしており、なるほどというところである。大統領選挙は本当に長い道のりと思うが、米国民を代表して世界を引っ張る立場になるわけで踏むべきステップとして根付いているシステムということと感じる。

2 議会と司法の役割
(1)与野党対立深まる議会
・大統領が議場に足を踏み入れる機会はほとんどない
 →しかし、1年に1回は必ず、1月下旬に行われる一般教書演説にて
  …たびたびのstanding ovation
  …ヤジは通常は飛ばない
・議会と政権は全く関係のない別の存在として互いを厳しく牽制
・以前に比べて与野党間の足の引っ張り合い、党利党略が目立つという嘆きの声
 →背景:−影響力の大きい大物の議員が共和、民主両党ともにいなくなった
      −両党ともいわゆる中道の穏健派議員の数が減り、考え方の隔たりが大きくなって妥協の余地が少なくなった
(2)議員は法案づくりに熱心
・米国では厳しい党議拘束はなく、各議員の独立性が強く、責任も重い
・上院議員では通常30人を超えるスタッフ
・皆せっせと法案をつくっている議員たち
 →法案になって実を結ぶ「打率」はかなり低く、せいぜい数%というのが実態
・上院と下院
 →立法手続きのうえで上下関係はない
 →上院は、各州から2人(全部で100人)、任期は6年
 →下院は、議員数435人(ほぼ人口に比例)、任期は2年
  ⇒上院議員の方が格が高い
(3)影響力大きい最高裁判決
・米国では最高裁判事は有力政治家と同じくらいの知名度
 …考え方から人となりまでメディアでよく報じられる
  →どんな判決が下るか、大統領の政策と同様に大きな関心事
・政治のレベルでは進まなかった黒人差別問題への対応が最高裁判決をきっかけに動き出した例
・最高裁判事に任期はない。死ぬまで判事でいることも可能。
(4)判事選びに政治色
・最高裁判事への関心が高いもう1つの理由
 →指名が政治的な意味合いを持つ
・連邦裁判所 →地方裁判所(第一審)
          控訴裁判所(第二審)
          最高裁

※我が国との比較、違いをそれぞれに認識させられる。面積、人口、人種の大きさ、多さの一方、歴史、伝統、文化はこちらの方が遥かに長い時間軸である。我が国も長い自民党政権から交代して数ヶ月の現時点、上記の内容より民意の反映のやり方について改めて考えている。

3 政治を支えるインフラ
(1)政策のプロが集まるシンクタンク
・シンクタンク …単なる研究者ではなく、いつでも政権に入って、政策を立案できる人たち
・代表的な例 
 *ブルッキングス研究所 …リベラル色が強い:伝統的に民主党政権の人材源
 *アメリカン・エンタープライズ研究所 …共和党政権との関わり合い
・時には競い、時に刺激を受け合い協力しながら働いているシンクタンクの分厚い人材の層
 →「政策産業」が成り立っている米国の大きな強み
(2)消えぬロビイストの影響力
・ワシントンでは、たくさんのロビイストが日夜、政府や議会詣で
・合衆国憲法の規定:「不当な扱いを正すために政府に請願する人々の権利を妨げる法律は作ってはならない」
(3)活発な草の根団体
・一定の思想に基づいた草の根のグループの活動がとても活発
 →大きな政治的影響力を発揮、時には共和、民主両党の政策決定を揺さぶることも
・保守派の団体を中心に目立つ手法 …議員を事実上採点すること
(4)揺れる政治潮流
・1980年代以降の保守化現象
 →1960年代から1970年代に進んだリベラル全盛時代への反発
・オバマ大統領の登場は、保守化の終焉を意味するのか、そうではないのか
 …米国社会に深く根付いている保守的な考え方
(5)政党の思想基盤
・共和党 …保守派を土壌
 →大きく3つのグループ分け 
  社会的保守派 …草の根の活動が最も活発:ここ20年、勢いを伸ばす
  経済的保守派
  穏健中道派
・民主党 …社会福祉重視や労働者の権利拡大を主張するリベラル派が強い影響力
・2000年代半ばから変わってきている流れ
 …グローバル化が進むなかで所得が伸びないことへの不満
(6)保守派メディアの台頭
・米国のメディア …反権力、弱者の人権重視のリベラル色が強く、時に政権とも厳しく対峙
・社会の保守化も映して、メディア界にも反リベラル派が台頭

※米国の政治を動かすエネルギーの源泉の実態を改めて見る思いである。半導体でも、米国SIAは議員の立法、法案通過などまめに反応してプレス発表を行っている。意見、主張が入り混じって収拾しきれずどっちつかずの場面が数多く見られる我が国であり、お互いかもしれないが鮮明な表し方は学ぶ点があると思う。

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