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ISSに見る2009年予測/台湾DRAM業界の動き/グローバル雑学王−28

1年で最も寒いかと感じるこの時節、1月半ばに、本年の景況感を占ういろいろな見方が表わされるが、この世紀に一度の経済危機と言われる中では、落ち込みはどの程度か、戻すのはいつか、そして業界の統合再編は如何に、・・・、様々な見解を眺めて我が身の感じ方と見比べている。

≪ISSに見る2009年予測≫

恒例のIndustry Strategy Symposium(ISS)(HALF MOON BAY, Calif.)記事から、デバイス業界の本年の見方を抜き出してみる。

◇ISS: Gartner, Semico, VLSI tip IC forecasts(1月12日付け EE Times)
→リサーチ各社、リリース予定の最新予測。
 Semico Research社   [2008年]   [2009年]
   半導体            -2%      -4.3%
   capital spending     -23%   -25〜-30%
 Gartner社
   半導体装置spending           約-34%
   半導体装置市場               -33%
 VLSI Research社
   半導体            -1.7%     -6.9%
   IC装置            -24%      -25%

◇IC Insights sees boom after recession(1月13日付け EE Times)
→IC Insights社(Scottsdale, Ariz.)のpresident、Bill McClean氏。2009年のIC業界全体は17%縮小(少し前は10%減としていた)、またcapital spendingは30%減と見込む旨。

◇VLSI cuts IC forecast in 'grim' market(1月13日付け EE Times)
→VLSI Research社の改訂予測。
                 [2008年]    [2009年]
  半導体販売高       -2.7%     -10.4%
    (2008年11月時点   -1.7%     -6.9%)
  IC装置販売高       -25.3%    -26.3%

◇Gartner cuts capex forecast again (EET)
→Gartner社の改訂予測、昨年10月、12月に続く3回目の修正。
 2009年半導体装置spending    -34.1%
 2009年装置業界           -31.7%

※昨年の秋以降は、日を追うごとに経済環境の厳しさが増していって、予測の方も下方修正が重ねられる経緯があり、上記の内容にも表れている。

◇Fearless IC predictions from Wall Street  (1月15日付け EE Times)
→今回の場でのアナリスト4氏2009年予測:
   [IC]        [capital spending]   [fab-tool受注1-st wave]
Tim Arcuri氏(Citigroup Investment Research)
   -20%                    メモリメーカー
Jim Covello氏(Goldman Sachs)
   -10% - -15%    -50%        メモリメーカー
Brett Hodess氏(Merrill Lynch)
   -22%        -33% - -40%   ロジックメーカー(Intel)
Matthew Petkun氏(D.A Davidson & Co.)
                           メモリメーカー

どのデバイスSBUから上昇に転じて装置受注を盛り返していくか、この最も気になる問いに対しては、上記の通りメモリという見方が優勢のようである。もっとも値下がりが進み過ぎて、もう上がるしかないという辟易感が自然と伝わってくるメモリ価格であるだけに、応用市場と両睨みで今後の展開を見定める最有力の先行指標と感じている。そのメモリ関係の市場動向記事、今回は以下の通りである。

◇Comment: The iPhone Nano and the industry rebuild(1月13日付け EE Times)
→準備中のApple iPhone小型版について。iPod Classicに続いてあらわれたiPod Nanoのように該iPhone Nanoには依然数個の半導体があり、いわゆるiPhone Classicと同様のbill of materials(BOM)、半導体業界には良いニュースの旨。

◇DRAM prices rally following production cutbacks(1月13日付け EE Times)
→DRAMeXchange(台北)発。DRAMsスポット価格が、大手プレーヤーによる生産削減に伴って、先月安定化の旨。

◇NAND flash contract prices soar by up to 40% in 2H January, says DRAMeXchange(1月16日付け DIGITIMES)
→主流の8Gbおよび4Gb multi-level cell(MLC) NANDフラッシュメモリの契約価格がそれぞれ、1月後半で40%および33%まで上昇の旨。


≪台湾DRAM業界の動き≫

DRAM業界、第1位と第2位の韓国勢に続くメーカー間の動きが慌ただしく見える。さらなる統合再編を模索する内容である。

◇マイクロンのCEOがNanyaおよびInoteraとの話し合いで訪台(1月14日付け DIGITIMES)
→業界筋によると、Micron Technologyのchairman and CEO、Steven Appleton氏が、戦略的パートナー、Nanya TechnologyおよびInotera Memoriesとの合併交渉で先週台湾を控え目に訪問。そのDRAMメーカー3社並びにNanyaの親会社、Nan Ya Plasticsのexecutivesが、政府財政支援資金の獲得に向けた統合リンクの計画を定めるよう会合をもった旨。

◇論評: 技術移転が台湾DRAMメーカーの政府資金獲得の鍵に(1月15日付け DIGITIMES)
→Powerchip Semiconductor Corporation(PSC)およびProMOS Technologiesに対して、海外パートナーのプロセス技術およびIPを入手するもっと明らかな保証を擁して財政支援出資の申請を行うよう求める台湾政府の姿勢は、現地のDRAM業界がもっと技術的に独り立ちするよう促しているのが明白の旨。

◇マイクロンが韓国以外のDRAMメーカーでの連携合体の期待(1月15日付け DIGITIMES)
→DRAMメーカー筋によると、マイクロンが、米国、日本および台湾のDRAMプレーヤーを3つの親会社と5つの兄弟会社で編成して一体にする連携を形作ることを期待している旨。

◇台湾政府がProMOS救済計画を銀行に働きかけ (1月16日付け DIGITIMES)
→ProMOS Technologiesのユーロ転換社債の履行期限が近づいており(2009年2月14日)、台湾政府が同社への財政支援を延ばそうとする計画を押し通そうとする銀行と積極的に協議してきている旨。

◇マイクロンが正式にInoteraの役員会入りへ  (1月16日付け DIGITIMES)
→Qimondaにおけるstakeを2008年11月、マイクロンに売却したInotera Memoriesが、役員会メンバーを選び直す臨時株主総会を本日(1月16日)予定しており、中国語のCommercial Timesによると、マイクロンが正式にDRAM合弁、Inoteraの役員会入り、5つのdirectorの席と2つのsupervisorの席に注目している旨。

このような経緯を踏まえ、台湾経済部(経済産業省)と台湾DRAM業界とのやりとりの現状が、以下の見出しで表わされており、引き続き注目である。

◇台湾DRAM支援難航、日米台連合、当局が提唱、大手3社、足並み乱れ。(1月16日付け 日経産業)  

ところで、台湾のDRAM業界はどういう構図になっているのか、上記の一連の内容をもとに表してみる。これで合っているのであろうか、というところである。

【 台湾のDRAM業界の現状 】

[大手3社]                       ≪現状の連携先≫
 Powerchip Semiconductor (力晶半導体) ⇔ エルピーダ
 Nanya Technology(南亜科技)        ⇔ マイクロン
 ProMOS Technologies(茂徳科技)     ⇔ Hynix Semiconductor
 
[カスタムDRAM]
 Winbond Electronics(華邦電子)       ⇔ Qimonda

[生産合弁]
 Rexchip Electronics(瑞晶電子)       …Powerchip & エルピーダ
 Inotera Memories(華亜科技)        …Nanya & マイクロン


≪グローバル雑学王−28≫

厳しい戒律と教義というイメージがどうしても先行してしまうイスラームの世界。その心髄はどこからくるのか、

『イスラームの世界地図』(21世紀研究会 編著:文春新書 224)

より、手探りながら今回から入っていく。

◎イスラームの論理と心理

[イスラーム原理主義とは何か]
・イスラーム原理主義
 …イスラーム的な政治・国家・社会のあり方の実現を目指す政治的活動を指す「イスラーム主義 Islamism」の諸運動、あるいはムスリム(イスラーム教徒)の宗教的・政治的な急進主義派、過激派を指す、批判的ニュアンスのこもった呼称。
  [出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』]
・「原理主義」という言葉はキリスト教世界の用語。どことなく狂信的なイメージが付きまとう。
・イスラームとは、「唯一の神、アッラーに絶対服従する者」という意味。
 サラーム(平和)から派生したとも。

[パレスティナ問題とアフガン内戦]
・過激派と呼ばれるグループが起こすテロには、大きく分けて2つ。
 → 外敵の侵入に対する抵抗運動
 → 反政府運動
・パレスティナ問題の始まり …第一次世界大戦中の「バルフォア宣言」
・1948年、パレスティナの57%をユダヤ人地区とし、そのままイスラエルは独立宣言。
・アラブ対イスラエルの四度にわたる中東戦争、今に至るまで解決していない。
・キリスト教徒中心の欧米の都合によって振り回され、利用されてきたという被害者意識、不満が鬱積。

[アメリカは悪魔]
・アメリカは、イスラーム世界への侵略者であるイスラエルの味方であり、イスラームの国の政府を背教者に仕立てた悪魔とみている。

[最初の預言者アダム、最後の預言者ムハンマド]
・ムハンマドが、610年から632年まで、大天使ジブリール(ガブリエル)を通じて受けた神の啓示を記したというコーラン。
・イスラームのアッラーとは、ユダヤ教徒たちがいうところのヤーヴェと同じ神。
・アラビア語を読める者だけが神の教えを正しく理解できる、という考え方。
 → コーランはアラビア語のものしか認められていない。聖書のように、各国語で訳されたものを聖典とすることはない。
・原理主義といわれる人びとの思い
 … 自分たちがムハンマドと同じアラブ人であり、アラビア語が読めるから、ユダヤ教徒やキリスト教徒より神に近い存在
 → キリスト教徒中心の欧米が世界の実権を握っているというのは、不完全な教えを信じている人びとが世界を支配しているということ。経済の格差も風紀の乱れもすべてそこに原因がある。

[アラブ人の起源]
・イスラーム世界が拡大していく過程で、エジプト人、シリア人など、非アラブ系の人びとがイスラームに改宗し、アラビア語を習得し、ウンマ(イスラーム共同体)の中でアラブ人になっていった。 
 ⇒ 「新生アラブ人」

[文化概念としてのアラブ]
・アラブ → イスラーム共同体を構成し、アラビア語を自分の言葉とした人びと
     ⇒ アラブ人とは、民族名というよりは文化概念
・言語だけでは、イスラーム、アラブをくくることはできない。
・アラブという民族の意識
 → 19世紀、オスマン帝国の支配下にあったエジプト、レバノン、シリアなどで起こったアラブ復興運動がやがて政治運動に発展
 → 20世紀になってからのユダヤ国家の建設問題に対抗する形で高まっていった。
 ⇒ イスラームの同胞という強い意識

[信じられるのは神だけ]
・沙漠のように厳しい環境でのアラブの連帯意識
 → 遊牧生活をともにする天幕(ウスラまたはアハルという家族の単位)
       △
    天幕集団(ハイイ)
       △
    氏族(アシーラ)
       △
    部族(カビーラ)
・日本の風土     …中間色の世界
 アラビア半島の世界 …強烈なコントラストの世界
  ⇒沙漠に出れば、信じることができるのは天だけ
・イスラームは、厳しい自然と人間関係の中から生まれた宗教。

[聖戦(ジハード)とは何か]
・ジハード → アラビア語のジャハダ(努力)から派生した言葉
・厳格なイスラーム国家では、棄教、改宗は、イスラームの教えを否定すること、アッラーを冒涜する行為であると解釈。

[右手にコーラン、左手に剣]
・中世ヨーロッパでは、東に広がるイスラーム世界を「サラセン」と呼称
 → 一方的な蔑称

[イスラームの教えに戻れ]
・イスラーム国家の中には、原理主義を合法的に採用している国も。
 → 代表的: スンナ派のサウジアラビア
         シーア派のイラン
 
[主権在民という言葉はない]
・主権はアッラーにあり、法もアッラーの教えであるコーランに照らして制定され、判断される。
・コーランの教え → 沙漠の多いアラビア半島の苛酷な環境の中で、人が平和に暮らすためにはどうしたらいいのか、定めたもの
・原理主義と呼ばれる運動は、実は民主化を求めての闘いだとも。

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