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落ち込みの実態/DRAM業界の混沌/グローバル雑学王−29

金融危機がデバイス業界に及んでいる影響が、具体的な各社業績発表に表われてきている。連日報道されているように世界全体、ほとんどの業種が大きな落ち込みに見舞われている中、我が半導体関係も推して知るべしではあるが、統合再編の動きが激しいDRAM業界とともに、以下実態の受け止め方である。

≪落ち込みの実態≫

まずは、半導体業界第一位、インテルについて以下の一連の動きである。

◇米インテルの10-12月期、純利益90%減。(1月16日付け NIKKEI NET)
→米インテルが15日発表した10-12月期決算、純利益が前年同期比89.6%減の$234M、売上高は同23.2%減の$8.226B。同社は12日に業績予測を大幅に下方修正していたが、これをさらに下回った旨。

◇Intel says loss possible in first quarter (1月20日付け EE Times)
→Bloomberg、火曜発。Intel社top executiveの従業員への社内連絡。同社が今四半期、20年以上ぶりの赤字になる可能性の旨。前回の赤字計上は1986年の旨。

◇Intel to close plants, cuts up to 6,000 jobs(1月21日付け EE Times)
→Intel社が、2つのfabsおよび3つのIC組立工場を閉鎖する計画の旨。
 ・Penang, Malaysiaの2つの組立テスト拠点
 ・Cavite, Philippinesの1つの組立テスト拠点
 ・Hillsboro, Ore.の旧い200-mmウェーハfab拠点
 ・Santa Clara, Calif.のD2 facility

インテルの発表を手始めに、半導体関連giantプレーヤーの実態が次々と見えてきている。Reuters発の見出しからは大所として、以下が挙げられている。(1月23日付け EE Times)

 * Samsung posts first quarterly loss as chip, LCD sales hit

 * Microsoft results disappoint, 5,000 job cuts planned

 * Nokia posts worse-than-expected dive in quarterly profit

 * Sony shares fall 7 pct after record loss warning

 * Samsung shares end down 4.1 pct, credit spreads widen

個々のさらに詳細、次の通りである。
                        
◇TSMC faces falling sales and loss in Q1(1月23日付け EE Times)
→Hongkong and Shanghai Banking Corp. Ltd.(HSBC)のアナリスト、Steven Pelayo氏。今週第四四半期業績を発表したTSMC(Hsinchu)、2009年第一四半期はoperating lossとなると見る旨。

◇サムスン電子、初の四半期赤字、10-12月期、半導体・液晶が不振。(1月23日付け NIKKEI NET)
→サムスン電子が23日発表した2008年10-12月期決算、営業損益が9400億ウォン(約600億円)の赤字(前年同期は1兆7800億ウォンの黒字)に転落、赤字は四半期決算の公表を始めた2000年以来、初めての旨。世界シェア首位の主力事業である半導体メモリ、液晶パネルが市況悪化でそろって赤字になったことが響いた旨。売上高は前年同期比6%増の18兆4500億ウォン、最終損益も200億ウォンの赤字に転落した旨。

◇TSMC's sales, profits fall in bad Q4(1月22日付け EE Times)
→TSMCの2008年第四四半期販売高$1.96B、前四半期比30.6%減、前年同期比31.2%減。

◇AMD reports $1.4B loss, sales drop in Q4(1月22日付け EE Times)
→AMD社の12月27日締め第四四半期売上げ$1.162B、前四半期比35%減、前年同期比33%減。
 2008年間売上げは$5.808B、赤字$3.098B。2007年はそれぞれ$5.858B、$3.379B。

◇IBM posts mixed results, IC sales fall(1月20日付け EE Times)
→IBM社の2008年第四四半期総売上げ$27.0B、前年同期比6%減。半導体部門、Microelectronics Groupの売上げは同34%減。

このように見てくると、たまにはプラスの動きを求めたくなるが、以下のLED関連しか見当たらない状況である。世界各国の景気浮揚策とともに、こういう事態だからこそという新分野、新技術への期待が今まさに、と感じている。

◇LEDs expected to outshine other semis in tough '09(1月20日付け EE Times)
→iSuppli社の最新予測発。LCD-TVメーカーからの需要が上昇、LEDs売上げが、2008年10.8%伸長に続いて、2009年に2.9%増えると見る旨。対照的に、半導体市場全体は2009年に9.4%減少に向かう旨。LED売上げ推移&予測データ、下記参照。
http://i.cmpnet.com/eetimes/eedesign/2009/chart1_012009.gif

◇Cree revenue up 24% in fiscal second quarter(1月20日付け EE Times)
→LEDのCree社(Durham, N.C.)、2008年12月28日締め四半期売上げ$147.6M、前年同期比24%増、来る3月29日締め四半期売上げは$128M-$135Mを見込む旨。


≪DRAM業界の混沌≫

前回の本欄に続いて、DRAM業界の再編、その後の動き、関連含め以下の通りである。

◇ProMOS sells fab gear to TSMC(1月19日付け EE Times)
→Reuters発。cash調達のために、台湾のDRAMメーカー、ProMOS Technologies社が、fab装置を現地2社、TSMCおよび半導体packagingパートナー、Powertech Technologyに売却の旨。

◇Analysts to memory makers: consolidate(1月20日付け EE Times)
→先週のIndustry Strategy Symposium(ISS)にて、半導体アナリストのプレゼンからメモリ業界の統合を促す以下のコメント例。
 VLSI Research社(Santa Clara, Calif.)のCEO、G. Dan Hutcheson氏:
 「メモリ市場はサプライヤの数を合理化する必要。」
 Gartner社(Stamford, Conn.)のアナリスト、Bob Johnson氏:
 「メモリ市場は各セグメントで2社あたりのサプライヤにまで統合が迫られるとともに、向こう見ずな振る舞いを変えなければならない。」

◇エルピーダ、台湾3社と統合交渉 合意は不透明。(1月21日付け NIKKEI NET)
→エルピーダメモリが台湾の半導体メーカー3社と経営統合交渉を進めていることが21日明らかになった旨。半導体各社は市況低迷で業績が悪化しており、統合合意を前提に台湾当局に金融支援を求める考え、ただ日台4社や台湾当局の間にはまだ考え方の開きがあり、合意できるか不透明な面がある旨。エルピーダは現在DRAMで世界3位、統合が実現すれば世界シェアは約3割になり、首位の韓国サムスン電子に次ぐ2位になる旨。

◇Qimonda bailout plan in limbo(1月22日付け EE Times)
→Saechsische Zeitung(Dresden)発。苦境のメモリ半導体メーカー、Qimondaを救済しようという交渉が、行き詰まりの様相の旨。

◇Update: Qimonda files for insolvency(1月23日付け EE Times)
→苦境のDRAMベンダー、Qimondaが、Munich裁判所にinsolvency申請、金融対策パッケージでの財政援助交渉が間に合うよう完了しない可能性の旨。

過剰供給の事態を受けて、昨年2008年第四四半期のグローバルDRAM capacityは、前四半期比27%以上の削減が行われたとされている。メモリ価格も以下の通り、底をついてフラット、あるいは上昇の推移となってきており、市場の展開を見据えた今後に注目ということと思う。

◇DRAM contract prices show mild rebound and NAND flash sustains upside, says inSpectrum(1月22日付け DIGITIMES)
→inSpectrum発。主流DRAM半導体契約価格が1月後半に緩やかな伸びで安定化、対して主流NANDフラッシュ半導体価格は上昇基調を維持の旨。それぞれのこの1年の推移データ、下記参照。
http://www.digitimes.com/NewsShow/20090121PR206_files/6.gif
http://www.digitimes.com/NewsShow/20090121PR206_files/5.gif


≪グローバル雑学王−29≫

米国のオバマ新政権がスタートしたが、イスラーム世界に対するスタンスとして以下の記事の下りに注目している。

○平和へ国際協調、オバマ氏、対イスラム「新たな道」模索(1月22日付け asahi.com)
→オバマ米大統領の20日の就任演説は、米外交の新しい姿を世界に向けて発信する場でもあった。オバマ氏は「イスラム世界に対して、私たちは、共通の利益と相互の尊敬に基づき、新たな道を模索する」と発言。ブッシュ政権で悪化した世界との関係の再構築を目指す考えを表明した。
オバマ氏は穏健なイスラム教徒が大多数を占めるインドネシアの首都ジャカルタで、小学生時代の数年間を過ごし、ムスリム(イスラム教徒)と日常的に接してきた経験を持つ。このため一部の過激派のムスリムと一線を画す形で、穏健ムスリムによる市民社会の形成を促す考えをこれまで示してきた。

イスラームの世界への理解を、引き続き

『イスラームの世界地図』(21世紀研究会 編著:文春新書 224)

から深めていきたく思う。

◎アッラーの教え

[火は地獄]
・アッラーという言葉 
 …"アル(定冠詞)=イッラーフ(アラビア語の「神」)"が簡略化されたものと言われる
・イスラーム →アッラーに絶対に服従すること
 ムスリム  →アッラーの教えを信じる者。「服従する者」の意。
・アッラーは、唯一絶対神。
・火は、アラビア語ではそのまま地獄という意。
・殉教した者は、最後の審判のとき天国に迎えられる、という信じ方。
 …自爆テロのようなこともジハード(イスラームのために努力するすべての行為)のひとつと解釈
・決して許されないのは、神に疑いをもつこと。
 …神の力を科学的に解釈するようなことは許されない

[神はアラビア語を話した!]
・コーラン(正しくはクルアーン) →「読唱されるもの」という意
・第三代目のカリフ、ウスマーンの時代に、一冊の本に。
・コーランの内容 
 →現実の生活についての一種の手引き書、原則、規準の書
・細かな事例は、弟子たちが伝えたムハンマドの言行録ハディース(第二法源)に従う。
 以下、第三法源としてイジュマー、第四法源としてキヤース。
・基本的には、コーランとハディースがイスラーム法のすべての規準に。
・国際社会となった今日、外部世界との矛盾に苦しむことも。

[ファトワーによる死]
・ファトワー(法判断) 
 →イスラームの教え、社会に不利益だと、イスラーム法によって判断されれば、どんなことにも出される。ただし、信者を納得させるだけの回答ができなければならない。
・アル=カイダ →小さな基地の意
・政府よりイスラーム法学者の方が決定権で上位に。
・シーア派で発せられたファトワーがスンナ派で否定されることもあるし、その逆も。

[目には目を、歯には歯を]
・イスラームの教えには、刑罰も明確に規定。
 …古代バビロニア王国のハンムラビ法典(紀元前1700年頃)に記された復讐法を受け継いでいる、といわれる。
・キサース(犯人には同害報復) 
 →条件があり、実際にはほとんど実行不可能なこと
 →加害者が「血の代償(ディヤ)」を支払うことで問題を解決
・ハッド(刑罰) →アッラーが定めた「制限」「限度」という意
・タージール  →事情聴取の上、裁判官が刑を決めるもの

[スンナ派とシーア派]
・四代目のカリフ(神の使徒の代理)のとき、すでに後継者を巡る争い
・シーア・アリー(アリー党)の人びと 
 →シーア派と呼ばれるように
 →後継者問題でいくつもの派閥に
  …現在イランの主流は一二イマーム派
・聖人崇拝を認めているシーア派 
 →偶像崇拝を禁じるイスラームであるにも拘らずホメイニ師、ハーメネイ師などの写真が掲げられている
・イスラームの9割を占めるスンナ派 
 →預言者ムハンマドの慣行(スンナ)がすべて
・スンナ派にとって、シーア派が認められないのは、聖廟を巡礼したり、写真を掲げるなどは、崇拝の対象はアッラーのみ、という一神教の教えに反している、という考え。

[断食月とは]
・1ヶ月の断食、ラマダーン
 …西暦紀元610年のある夜、アッラーがムハンマドにコーランの啓示を始めたことを記念する月
・日の出から日没まで、水も含めてすべての食物を断つ。
・苦しみの中でイスラームの教えを再認識する機会ともに苦行に耐えることで連帯意識を高めるとき

[施しは神との契約]
・喜捨は、施しとでもいうべきもの …アラビア語では、ザカート
 →神と信者との一対一の契約
・自発的な喜捨 …ザカートと区別して、サダカ
 …イスラームの親戚同士の助け合いの精神は、想像以上に強い。

[利子を認めないイスラーム銀行]
・コーランには、「利子(不労所得のこと)」を禁じる教え
・イスラーム世界にも、銀行はある。ただし、利子はとらない。
・そこで考えられたのが、投資信託方式。
 …預かったお金を銀行が企業に無利子で貸し出し、利益が出ればその配分を受け取る。
  →こうしたイスラーム銀行を最初に試みたのはパキスタン

≪イスラームの礼拝≫
・毎日の礼拝(サラート・アル=マクトゥバ または ファルド)が義務
・5回の礼拝:
 ファジュル (早朝、または夜明けの礼拝)
 ズフル (正午過ぎの礼拝)
 アスル (夕方、または午後遅くの礼拝)
 マグリブ (日没後の礼拝)
 イシャーフ (就寝前、または夜半の礼拝)

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