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いずこも"change!"/市場実態PickUp/グローバル雑学王−47

今こそ変革のとき! 昨年後半からの経済危機以降、米国大統領選挙はじめ各国の体制変化の状況もあって、どこでもこう叫ばれている雰囲気を感じている。今まで営々と築いてきた蓄積、プラットフォーム、インフラ、・・・の上に立って、刷新、新陳代謝、イノベーション、・・・を如何に図るか。
いずこも直面するこの難題。以下、全部の内容に通じる思いとなっている。

≪いずこも"change!"≫

昨年の8月の米国大統領選を控えた記事の見出しである。  

・「We can change!」でどう変わる? オバマ・リスクを見通す 
 …「変化」を掲げ、米史上初の黒人大統領 & 8年ぶりの民主党政権を狙うオバマ氏と、ブッシュ路線の踏襲で「安定性」を打ち出すマケイン氏。

結果として「変化」が選択され、引き続く国際紛争、そして渦巻く経済危機に立ち向かっている現状ということと思う。

我が国内も然り、この8月かと言われている総選挙を控えて、麻生首相と鳩山民主党代表の初の党首討論の速報に見入ってしまったが、現在の政権与党ともう長年になる待ち状態の野党、さてどう選ぶか?

そこまで広く考えることも大事であるが、エレクトロニクス業界、そして半導体業界の行く末がやはり気になるところである。「変化」という大げさなものではなく、「味付け」、「サービス」を施して、今やエンドユーザの大半である個人消費者の購買心を如何にそそるか、獲得するか、ということと思う。

工夫を凝らす各社の現下の取り組み、気がついた範囲で以下の通りである。

≪携帯オンラインサービス≫

◇Nokia starts roll-out of Apple 'app store' rival(5月25日付け EE Times)
→Nokiaが月曜25日、期待大のオンラインsoftware and content store, Ovi Store展開をスタート、AppleのApp Store成功に追随する狙いの旨。

≪netbookおよびsmartphone対抗≫

◇New low-cost notebooks no cure-all for PC brands(5月26日付け EE Times)
→Intelが新たに打ち上げたconsumer ultra-low voltage(CULV)半導体は、安価なnetbook半導体と従来のnotebook PCsで用いられるさらに強力で高価な半導体の間のgap橋渡しを目指している旨。

◇Intel pushes thin, low-voltage -- but cheap -- laptops-Some analysts say move is aimed at stop cannibalization by its Atom chip(5月27日付け MarketWatch)
→Intel(Santa Clara, Calif.)が向こう何週間かで、小さく安価、しかしfull-featuredのlaptopコンピュータ設計用のconsumer ultra-low voltage(CULV)プラットフォームベース新製品を展開する見込み、netbooksに近い見え方、1インチ厚、約2.5 pounds(1.135kg)、しかしfull-featured laptopに引けを取らず$500以下の価格の旨。

◇Qualcomm touts the smartbook to rival netbooks, smartphones(5月29日付け EE Times)
→Qualcomm社が、同社Snapdragonチップセットの最新1GHzバージョンで動かす'smartbook'の概念の浸透促進をスタート、機能性および性能からnetbookおよびsmartphoneがもつ最も良いところを取り出している旨。

≪中国の心意気≫

◇百度CEO、中国がインターネットの中心になると発言(5月25日付け 13億人の経済ニュース)
→中国最大手検索サイト「百度」の李彦宏総裁兼CEOは、第4回百度連合サミットの中で、中国には膨大なネットユーザがいることから世界のインターネットの中心になりうる、と語った。
インターネットの出現によって、世界経済を消費者が動かす時代になった、とも発言した。

商品企画に腐心する欧米と大規模ユーザ・消費者を擁する中国という構図を改めて眺めている。


≪市場実態PickUp≫

さて、市場の実態はと言うとなかなか決定、決心に辿り着かず、それぞれに紆余曲折を感じる以下の内容であり、じっくり見据えて動かざるを得ないということと思う。

【欧州半導体業界】

◇Infineon grey eminence Max Kley announces withdrawal(5月25日付け EE Times)
→半導体メーカー、Infineonで、CEOsの入れ替え、解雇したり雇用してきたsupervisory board chairman、Max Kley氏が、同社から身を引く旨。株主の高まる怒りの声との相互関係には何ら確認を避けた旨。

◇Asset strippers circle Qimonda (5月27日付け EE Times)
→最後に残っている投資元候補(中国・山東省関係)が関心を却下、Qimondaが引き続き存続する機会がほとんどゼロになっている旨。

◇VDMA says it fears loss of European chip industry(5月28日付け EE Times)
→多くは中小規模のengineering業界3000社以上を代表するGerman Engineering Federation(VDMA)発。半導体生産が他に行ってしまえば、欧州のengineeringは概して脅威に晒されることになり、European Union(EU)は欧州での製造を支援するよう行動する必要があって、これが価値の高いengineeringを支えることで欧州での半導体製造を守れることになる旨。

◇No deadline for Qimonda, says insolvency adminstrator(5月29日付け EE Times)
→Qimondaのinsolvency administratorが明らかにしたところでは、同社交渉に最終的deadlineというものはなく、投資家の模索が続いている旨。

※地域を守るか、グローバルにやっていけるか、その狭間に揺れる難しさを感じている。

【半導体市場見通し&改定】

◇When will we see the IC recovery? (5月26日付け EE Times)
→IC市場が不況の渦中、次第に良くなってきているが、回復の時期についてはアナリストの見解が一致していない旨。IC Insights社は2009年後半にビジネスが上向くとしているが、投資bankingのFBRはその確信がない旨。

◇Chip sales improve for second month in a row, says analyst(5月27日付け EE Times)
→Carnegie Group(Oslo, Norway)発。4月のグローバル半導体販売高・3ヶ月移動平均は$15.2Bの見込み、3月の$14.7Bから3.4%増、前年同期比では27%減。2009年第一四半期での前年同期比落ち込みよりは小さくなっている旨。

◇Gartner expectations for 2009 improve, predicts Q2 sales growth-The revision to a 22.4% decline in sales, while representing less than a 2% change from Gartner's February estimates, is significant as it moves industry projections away from worst-case scenarios.(5月28日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Gartner社が今朝、2009年世界半導体売上げ見積もりを改定、2月時点の24.1%減から今回22.4%減と見る旨。

◇Gartner Says Worldwide Semiconductor Revenue to Decline 22 Percent in 2009 (5月28日付け Gartner Press Release)
→Gartner社最新予測。2009年の世界半導体売上げが$198B、2008年$255Bから22.4%減と見る旨。

◇Bottom hit in Q1, 5% growth for Q2 expected, IC Insights reports-IC Insights reports that there is evidence a cyclical bottom was reached in Q1, lending credence to its opinion that a turning point has been encountered in the semiconductor industry.(5月29日付け Electronics Design, Strategy, News)
→第二四半期について半導体業界観測筋の楽観的な見方が増えており、6月四半期の販売高伸長を予測するのが、今週Gartnerに次いでIC Insightsが2番目の旨。

※第一四半期で底を打ったとする予測が2社から公表されている現時点である。払底した在庫を埋めるだけなのか、はたまた新規の本格需要に結びつくのか。この天気模様次第で、難しい決断、決心は良くも悪くも固まってくる、・・そういうことと思う。強烈に消費者の心をつかむ新技術を織り込んだ新商品による市場創出&拡大に心待ちである。


≪グローバル雑学王−47≫

半導体と水。半導体製造に水は欠かせないが、それに留まらず多々通じるところを、

『地球の水が危ない』 (著者 高橋  裕氏:岩波新書 827)…2003年2月発行

から、ますます感じさせられている。著者は小生より二世代位上の方であり、戦後の我が国のインフラ構築に邁進、高度成長期に必死に頑張られた世代の強烈な"技術者魂"のメッセージを、以下の内容に受け止めている。


III 世界の水問題と日本人

III-1 日本は大量の水を輸入している

[国際河川をめぐる紛争への無関心]
・国際河川が存在しない日本
 →国際河川に自国の水資源を委ねている国々の試練を十分に察することが難しい

[低い食糧自給率と水の大量輸入] 
・食糧自給率が低い日本 →大量の食糧輸入に伴う水の輸入
・日本の食糧自給率:     2000年現在  1970年
  穀物(食用+飼料用)     約28%     46%
  野菜                82%     99%
  肉類(鯨肉を除く)         52%     89%
  供給熱量自給率(国内総供給熱量に対する国産総供給熱量の割合)
                     40%     60%
・世界中の水が牛肉などに姿を変えて、毎日、多くの家庭の食卓に 
⇒間接水(仮想水)
 →年間約744億m3       →直接水使用量の約85%にも
  …国別輸入量:
    アメリカ      427億m3
    オーストラリア  105億m3

[間接水輸入量の試算方法]
・日本には牛肉やとうもろこし、小麦、大豆の大量輸入に伴い、きわめて大量の水を間接的に輸入
・水の国際化は急速に進行 
 →間接水利用を通しても地球の運命共同体化が明らか

[ミネラル・ウォーターの急増]
・直接に日本の水輸入量そのものも激増 
 →ミネラル・ウォーターのボトル水
・国内のミネラル・ウォーターの生産量
   1989年   2001年
   10.1万kl  102.1万kl :12年間に10倍以上
ミネラル・ウォーターの輸入量
   1.63万kl  22万kl   :約13.5倍
⇒日本人の飲み水に対する嗜好の大変革
 ある調査: 47%が日常的に水道水を飲まない
・日本の水道事業は、飲料に適した安全な水をほとんどの国民に日夜供給
⇒自覚喚起を

[水道水への不信]
・苦労して飲める水にして配水 
 →にも拘らず、ミネラル・ウォーターを飲む人々が多い

[水についてのライフ・スタイルの変化]
・輸入ボトル水の著しい伸び 
→輸入先はフランスが圧倒的、全輸入量の実に75%にも
・最近10年間のミネラル・ウォーターの爆発的ともいえる売れ行きの向上
 ←ガラス瓶からペットボトルへ
 ←海外旅行者の増加
・国内の県別生産量 
 →山梨(全国の50%と圧倒的)、以下、兵庫、鹿児島、静岡、富山の順

[「おいしい水」ブームの背景]
・1980年前後、日本でいわゆる「おいしい水」ブーム
→おしなべて美味しかった昔の水を飲みたいとの願望がこのブームを後押し

[国際的に高く評価されていた日本の水道水]
・敗戦直後のころ、水道普及率は3割にも達せず
・水道普及以前の日本の沢水、井戸水の水質は優れ、美味しい水を供給
 →日本の水道事業は、もっと自信をもって、販売面でもミネラル・ウォーターに負けない水の配水を!

III-2 日本の第二次世界大戦後の水開発

[明治に始まった大治水事業]
・明治維新以後、日本の河川技術と行政も大変革 
→日本の河川は変貌の火蓋
・1896年(明治29年)公布された旧河川法
→日本の重要河川に洪水災害を減らすための大規模治水事業が開始

[モンスーン・アジア最初の壮挙]
・河川の両岸に連続した堤防を築くという治水手段は、モンスーン・アジアでは最初の壮挙
→主要河川の沖積平野の氾濫頻度は激減し、日本の経済と社会の基盤を支えた

[明治の先人たちの高い心意気]
・多種のインフラ整備、短期間の明治・大正から昭和初期に近代技術を習得、日本国土に展開
→当時の技術をリードしたエリートたちの目的意識
・これら大先輩の心意気と人生観
→僅か半世紀余りで、日本のインフラをほぼ欧米並みにまで引き上げ

[第二次大戦後の連続大水害]
・自然の重要な部分である河川への工事 →河川をつねに変化へ
・活発な流域開発と大規模治水工事が洪水規模の拡大をもたらした
・森林の状態は鋭敏に河川に影響
→統合的流域管理が治水事業の前提として必須の条件

[水不足時代の到来]
・1950年代末から60年代、日本には世界に先駆けて都市化現象
→深刻な水不足時代が到来
・人口が予想を上回る勢いで膨張した大都市、新興工業地帯ではいずれも水対策が当面の急務に
・1960年代後半から、環境破壊に抗議する住民運動が激しさ
→ダム事業におしなべて目立つ遅れ

[水需要増加に変調]
・1973年の第一次オイルショック →水需要の動向に明らかな変調
⇒ずっと右肩上がりの水需要増加に明らかな変化
・水環境が重大なテーマに
→河川湖沼の水質改善
→河川や湖沼の水資源などの各種開発

[水の戦後史]
・第二次大戦後、変転極まりない試練の経験
 未曾有の大洪水の頻発
     ↓
 都市化時代における水需給バランスの破綻による水不足時代
     ↓
 環境問題の到来
・社会や経済が目まぐるしく変わったこの半世紀
→大局的には何とか破局的危機をすり抜けてきた

[技術信奉の思想を墨守した結果]
・第二次大戦後: インフラの整備
              ↓
            高度経済成長期 …土木技術者興奮時代
                           (司馬遼太郎氏による名づけ)
⇒ひたすら≪つくる≫技術を信奉して突進

[河川法改正の意義]
・1990年代に入って河川行政は大きく方向転換
 河川法改正(97年) …河川という自然との付き合い方、そして地元住民との対話が重要であることを表明

[戦後史の教訓]
・モンスーン・アジアの水危機に対し、我々の歴史的経験こそ伝えるべき

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