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Bell研の一時代/科学技術関係会議の傍聴/グローバル雑学王−10

この2008年9月12日が、Jack Kilby氏IC発明の50周年になるとのこと、Texas Instruments社では先端半導体研究センターをDallasに設立すると発表している。一方、Bell研が基礎研究を停止することについて米SIAからの発表があり、ともに合わせて半導体業界の大きな節目を感じるところがある。

≪Bell研の一時代≫

大学の研究室時代、ATTのべル研究所の成果報告誌、BSTJ(Bell System Technical Journal)の論文をよく読み、最大限の努力で理解に努めて、論文の基軸として引用させていただいたものである。まさに世界の科学技術、産業技術の広範な分野にわたって、萌芽期のtrigger、発信源を送っていただいたという思いがある。

IC発明に先立つトランジスタの発明に加え、通信理論の基盤など、インターネットのデータで遡っても枚挙に暇がない状態になるBell研の長年に波及する成果である。その後の経緯があってこのほど基礎研究活動を停止することが発表され、米SIAから次のコメントリリースである。

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○一つの時代の終わり:Bell研が基礎研究を停止…9月8日付けSIAプレスリリース

「Bell研の歴史的重要性およびmicroelectronics業界を起こしていく中で果した役割は、いくら述べても述べ足りないくらいである。」とSemiconductor Industry Association(SIA)のpresident、George Scalise氏は言う。「61年前のBell研でのトランジスタの発明は、今年のグローバル販売高が$265 billionを超える業界を打ち上げている。Bell研が基礎科学および材料物理における研究を止めるという最近の発表は、一つの時代の終わりを示している。」

「Bell研での基礎研究の基本原則は、1984年に裁判所命令によるAT&T解体をもって変わっている。」とScalise氏は続ける。「今日、corporate研究開発活動のほとんどは、5年以内に商用化できる新製品および技術の開発に焦点を当てている。」

業界が支援する基礎研究について昔のモデルに戻ることはないだろう、とScalise氏は言う。「今日の物理および材料科学における基礎研究のほとんどは、連邦政府および民間業界による出資を得て大学で行われている。Bell研が基礎研究をもはや行わないという今回の発表は、大学および国立研究機関での基礎研究に対する連邦出資を高めることが極めて重要であることをもう一度強調している。」とScalise氏は結論づける。SIAは、10年という期間にわたり、National Science Foundation(NSF), National Institute of Standards and Technology(NIST)およびエネルギー省のOffice of Scienceによる基礎研究の連邦出資を、倍増することを求めている。

Bell研からの科学者は、1937年から1998年の間にノーベル物理学賞を6つ受賞している。Bell研の研究者は、1947年に固体トランジスタ、1958年にレーザを発明している。Bell研での基礎物理における研究は、IC開発およびmicrochip技術の進展におびただしい貢献を行っている。
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基礎研究に対する国家予算の出資増額を求める米SIAの常々の主張が盛り込まれているのは、世界をリードする競争力強化を謳う米国そして米国半導体業界の基本スタンスを強く感じるものがある。 


≪科学技術関係会議の傍聴≫

経済産業省開催の第24回 研究開発小委員会を傍聴させていただく機会があり、前出の内容に通じるところがある我が国における基礎研究のあり方、取り組みの議論を拝聴した。大学、産業界からの学識経験者の委員メンバーの方々であり、小生もかって半導体業界と政府との会合という場があって覚えのある経済産業省の国際会議室での開催である。

今後の中長期的な研究開発政策の取りまとめ、技術戦略マップのローリング基本方針など、議論される中、手元メモから論点として以下の受け止めである。因みに現在は、5ヶ年計画である第3期科学技術基本計画(平成18〜22年度)の中間点に位置するとのことである。

[経済産業省の方の挨拶から]
・今の問題として、資源価格の高騰。今朝行われた政府-産業界意見交換会でも今後はイノベーションが必須ということに。
・一律の政策は無理か?分野ごとに相反することも同時に打つ必要も。

[議論の中から論点項目]
・研究人材を海外に入れるとき、情報、知財管理の強い足かせ。
・ポスドクの問題: 研究者人口激減の危険性
            女性研究者
・世界の流れについていけない現状がある。特に医薬品、然り。
・トータルの国としての強化策を。結果が本当に見えてくる投入が必要。
・技術を如何に統合するか、これができる人が求められる。
・付加価値の上げ方   
 例:半導体の長期低落。医薬品、1社ではとてもできない。
 異次元の創出 →シナリオが描けるか
・これだけ投入して成果がどうして出ない?というジレンマがある。
  知識をストックするメカニズム
  知財をプールする1クッションが必要では
  アウトバウンド型(1社ではできない)
・医薬品 空洞化 薄い国内ベンチャー層
 →構造改革を
・海外を含めたオープン・イノベーションの重要性
・科学技術、産業技術の両立、あり方
・グローバルオープン・イノベーション
 日本、取り残される感が強い
 日本の税金を海外に出していいのか?

半導体業界に身を置く一人として、本当に痛切に感じるそれぞれの問題意識である。我が国の強みを考えなければならないし、グローバルな協調と競争という構図の中で、半導体業界の今後に向けたリーダーシップというものが本当に問われている現時点という思いが続く昨今である。グローバルに学際、業際を越えたスーパー人材というのは相当に高いハードルであるが、それ相当のグローバルに引っ張る信用力のあるパワーを協調、協力して醸成していくことか。なにやら現下の自民党総裁選、来るべき総選挙の一大論点に掲げるべき内容に思えてくる。


≪グローバル雑学王−10≫

この際、『常識の世界地図』(21世紀研究会 編著:文春新書 196)を完読、一区切りつけようという気になり、他にもいろいろな切り口の『世界地図』が待ち構えていて、あれこれ勝手に飛んでいく視点に、お付き合い願いたく思う。

○子どもと大人の境界線
・贈り物には適さない花: 
 イギリス ユリ
 フランス 黄色い花(侮蔑)、カーネーション、キク
 ドイツ  カラー、ヒース
 イタリア キク
 スペイン ダリア、キク
 日本   キク
 インド  プルメリア
 ブラジル カラー
 アルゼンチン 黄色い花(不吉)
 赤いバラは、ほぼ世界中で愛情を表わす花として知られ、贈る相手を間違えてはいけない。
・大人と子ども、どこで分かれる。
 アメリカでは16才の誕生日が大きな節目。多くの州で、16才で車の免許が取れることも。
 ラテン・アメリカ諸国では、女子が15才の誕生日を迎えると、「キンセアーニョス」という大規模なパーティ、事実上の成女式。
・人生の節目での儀礼的習慣
 バンジージャンプ …メラネシアのバヌアツ北部のある島の、豊饒祈願と成年式を兼ねたような伝統的儀礼に起源
 キリスト教社会  …生まれてすぐの幼児洗礼という最初の儀式(秘蹟)
             7才頃の第二の秘蹟「堅信礼」
 日本の七五三
・からだの神聖な場所
 イスラーム教徒 →頭。子どもの頭を撫でるなどとんでもない行為。東南アジア、南アジアの多くの国でも。
 インド人    →耳も。
・贈り物にしない方がいいもの
 各地共通    →刃物(友情を断ち切る)
 ヒンズー教徒  →牛革製品
 イスラームの国 →豚肉と酒
            日本人形など(偶像崇拝の禁止)
・ラテン・アメリカの一般的なパーティ、最低でも、二、三十分遅れていくのが礼儀。ラテン系の人と同じように人生を楽しむためには、何といっても体力と気力、そして丈夫な胃袋が必要。

グローバルにお付き合いする上で、それぞれのお国・地域でのTPOのわきまえ方、振舞い方を知らされている。

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