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9月半導体販売高/余波の渦中の警告&見通し/グローバル雑学王−17

9月下旬からの米国発金融危機の波紋、余波が引き続く中、米SIAより9月の世界半導体販売高が発表され、ここにも早、伸びの鈍化が表れている。各国・地域でそれぞれに対策が打たれ、米国大統領選挙を間近に控える現時点、デバイス業界では特に世界経済の動向を踏まえた新基軸への布石を探ることの重みを感じている。

≪9月半導体販売高≫

米SIAからの月次販売高発表であるが、この1-8月累計は前年同期比4.5%増であったのが、1-9月では同4%増となっている。8月の世界半導体販売高の前年同月比5.5%増が、9月では同1.6%増と大きく伸びが鈍化していることが、端的に影響を表している。地域別に見ると、9月の米国は前年同月比大きくマイナスに振れる(-15.7%)とともに、欧州もマイナス(-1.5%)となっており、震源とその余波がまず及ぶ地域という構図が出ているものと思う。

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○9月の半導体販売高、前年比1.6%増…10月30日付けSIAプレスリリース

米国の輸出では2番目に大きい半導体の9月の世界販売高が$23 billionと、昨年2007年9月の販売高$22.6 billionからは1.6%の増加である。前月2008年8月の販売高$22.7 billionからは1.1%の伸びである。2008年の1-9月の販売高は$196.4 billionで、2007年の同じ期間の販売高$189 billionに比べると、4%増えている。メモリ製品を除くと、9月の業界販売高は前年比7.8%増となる。いくつかのメモリ製品のビット需要は前年比100%以上伸びているが、大きな価格低下で引き続き売上げにインパクトとなっている。フラッシュメモリ半導体販売高は前年比37.5%の落ち込みである一方、DRAMs販売高は2007年9月から11.1%の低下である。

「半導体販売高の伸び率が9月は鈍化しており、半導体業界は世界金融市場における混乱の影響を感じ始めている。」とSIA President、George Scalise氏は言う。「消費者信頼感が急激に低下し、enterprise分野での警戒感があって、短期的には不安定になっていく。」Scalise氏は、民間の経済研究所であるConference Boardが今週、同所のConsumer Confidence Indexが9月の61.4から最低更新の38に落ち込むという20ポイント以上の低下を発表した、と特に言及している。「新興途上市場ではその様相はいくぶん明るくなる。」とScalise氏は続ける。「半導体販売高の2つの最大の牽引役であるパソコンおよび携帯電話の売上げは、このような新興途上市場では依然と力強く、消費人口の伸びおよび収入レベルの上昇が一層の値ごろ感と合わさって引っ張られている。主要新興諸国における経済伸長は、ひところのピークは下回るとしても、まだ一桁の半ばから高い水準にある。」

アナリストたちは今年少なくとも11.5%のPC販売数量の伸びを見込んでいる。開発途上諸国が今や、PCs販売数量すべての約半分を占めている。
JPMorganは、携帯電話の販売数量が前年比8.7%伸びると見ており、2008年は13.5億台となる。開発途上諸国が2008年の携帯電話販売数量の約70%を占めるものと見込まれている。

MP3/PMPデバイスおよびLCD televisionsなど他のconsumerエレクトロニクス製品の売上げは、iSuppliによると、2008年の1-9月を通してプラスのままである。iSuppliでは、今年のMP3/PMPが11%、LCD TVが33%とそれぞれ数量が伸びて、consumerエレクトロニクス全部については5%の伸びを見込んでいる。
消費者購買が半導体販売高全体の50%以上を引っ張っている。

「年初からの半導体販売高は4%の伸びで、SIA年央予測の4.5%の伸びに後れをとっている。」とScalise氏は言う。「消費者信頼感の回復が、半導体販売高の拡大が前進するための鍵となる。」とScalise氏は締め括った。

※9月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/galleries/gsrfiles/GSR_0809.pdf
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≪余波の渦中の警告&見通し≫

引き続く余波の渦中で各社の業績発表が行われ、エレクトロニクス業界、半導体業界の直近、短期見通しについて、当然ながら警告の色合いが強まっている。現下で目に付いた内容を以下に示すが、四半期毎の業績発表の厳しさ
を改めて感じざるを得ないほんの3ヶ月前と比べたときの変貌ぶりである。


◇NAND revenue to fall further, iSuppli says(10月31日付け EE Times)
 →iSuppli社、31日発の改訂予測。1990年代後半そして2000年代前半に三桁のパーセンテージで当たり前のように拡大した世界NANDフラッシュメモリ売上げが、2008年は14%、2009年はさらに15%落ち込む旨。
   2007年   2008年   2009年
   $13.9B   $12B    $10.2B

◇Intel says credit crisis could hurt business(10月31日付け EE Times)
 →Intel社が31日、信用危機が同社半導体への需要を損ない、主要サプライヤの支払い不能につながって製品遅延を生じる可能性を警告の旨。

◇TSMC CEO: Semiconductor industry to decline 5-9% in 2009(10月31日付け DIGITIMES)
 →TSMCの第三四半期販売高$2.84B(NT$93B)、第四四半期はNT$69B-71Bを見込む旨。「半導体業界販売高は2008年はフラットに留まり、来年は5-9%減少、ウェーハOEMsはさらに険しい落ち込みを見ている。」(TSMCのCEO、Rick Tsai氏)

◇Analysis: Grim outlook seen for semis(10月30日付け EE Times)
 →多くの半導体メーカー、特に業界を先導する向きからの現状ガイドに基づくと、2008年第四四半期以降は厳しい様相の業況の旨。サブ見出し、次の通り。
 - The world is flat (for processors)
 - Memory lane is painful
 - Analog, foundry, wireless woes
 - What other IC makers say

◇Global handset sales take a rain check in Q308 (EET)(10月30日付け EE Times)
 →Strategy Analytics発の警告。今年第三四半期に世界に出荷された携帯電話は303M台に留まり、5%と失望させる伸び率、2002年以降該業界で最も鈍くなっている旨。

◇米アプライドCEO「半導体業界、2009年は低迷続く」:世界経営者会議(10月28日付け NIKKEI NET)
 →米アプライド・マテリアルズのマイケル・スプリンター社長兼最高経営責任者(CEO)が28日、第10回日経フォーラム「世界経営者会議」で講演。半導体業界の先行きについて、世界的な景気減速の影響を受けて2009年は低迷が続くとの認識を示した旨。そのうえで、SSDなどの需要増で「2010年には新しい技術が半導体業界を牽引する」と述べ、回復基調をたどるとの見方を示した旨。

◇Semiconductor industry can expect 'long, dark season' for OEMs, Gartner reports-Garter said it expects the greatest impact will be on high-end consumer electronics, such as laptops, LCD TVs, media players, and portable navigation devices.(10月27日付け Electronics Design, Strategy, News)
 →通常の流れに抗して、OEMsのいくつかがholiday season向けのelectronic装置生産を増やさないとの決定、グローバルな経済危機が続き、consumersからの需要が弱まることを予想の旨。


≪グローバル雑学王−17≫

危機だの余波だのもうたくさん、ここはパッと明るくいきたい気分にもなるが、

『色彩の世界地図』(21世紀研究会 編著:文春新書 311)

に基づくシリーズ、今回は「黄色」である。イメージによっては比類ない明るさが漂う一方、なかなかこなしが難しく身に纏うのには勇気が要るという感じもある。以下の小生お任せの抜き出しからも、様々な経緯に富んだ意味深い色合いの一端が出ていると思うが、どうであろうか。

○皇帝色、黄禍、そしてユダヤ人の色

・シュエジゴン・パゴダ(バガン、ミャンマー) 
 …「黄金の川岸」という意。遠くからでもはっきりわかる高さ約100mの仏塔。

[黄の語源]
・古代中国の陰陽五行説 →黄色は、世界の中心の色、中国の大地の色
・英語 yellow →古ゲルマン語 gelo(黄色い土) が語源 
         →geolu→yelwe→yellow
    geolu→ 大地に関係する言葉の語源に: geology  地質学
                               geography 地理学
・大航海時代、16世紀からは中国についての情報が次第にヨーロッパに伝わるように。
・19世紀後半に活躍したドイツの地理学者、フェルディナント・リヒトホーフェン(Ferdinand Freiherr von Richthofen)は、シルクロードを命名、中国の11省を訪ね、黄土地帯の地形や地下資源について詳しく調査。       
 ↓
日清戦争を経て、皇帝ヴィルヘルム2世は、いつしか有色人種がキリスト教国を脅かしていることを説くように。
 ⇒黄禍(おうか/こうか:Yellow peril、独 Gelbe Gefahr)
・1905年、日本がロシアに勝利、黄禍という言葉は一気に欧米で広まった。
・yellows[古語] =ねたみ、嫉妬
 黄色いバラの花言葉 …「嫉妬」

[ユダヤ人を区別する方法]
・13世紀のはじめ頃、キリスト教会は、公共の場でのユダヤ人はそれとわかる服装をするように、と命令。
 →イギリスのユダヤ人はモーセの十戒を記した布か羊皮紙を上着につけることに。その色が黄色と決められた。

[中国の皇帝色]
・中国皇帝の正装は、鮮やかな黄色が基本の色。
・北京の紫禁城 →建物の屋根瓦の色は、すべて皇帝色とされる明黄色。

[イエロー・ジャーナリズム]
・19世紀末のアメリカで人気があった扇情的な通俗小説 
 ⇒yellowback(黄表紙本)
・19世紀末のNew York JournalとNew York Worldの人気キャラクターYellow Kidを巡る騒動
 ⇒the yellow journals:利益のためなら手段を選ばない、扇情主義的な出版のあり方
   →イメージのよくない言葉

[カーキ色の誕生]
・カーキ色が生まれたのは1848年のこと、イギリス軍がインドを攻撃したときの迷彩服。
 カーキ Khaki …ヒンディー語のカーキ(汚れた)
・イギリスで get into Khaki =陸軍に入隊する
・スコットランドのツイードのジャケット →起源は、狩猟時の迷彩服
・太平洋戦争では、日本軍もこのカーキ色を採用 …「国防色」の名称

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