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5月の世界半導体販売高/市場実態PickUp/グローバル雑学王−52

5月の世界半導体販売高は3ヶ月連続で前月比増加しているが、緩く鈍い足取りの戻し基調となっている。これは業界関係いろいろな方々との話でも共通する感覚と受け止めている。まだしばらくは世界の各国・地域の経済情勢に照らして市場需要を模索していく展開が続くものと思われる。

≪5月の世界半導体販売高≫

米SIAからの発表は、現下の空気を反映してか、あっさりした簡潔な以下の内容となっている。

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○5月の半導体販売高、前月比5.4%増…7月3日付けSIAプレスリリース

5月の世界半導体販売高が$16.5 billionで、前月、4月の$15.6 billionから5.4%増加した、とSemiconductor Industry Association(SIA)が本日発表した。前年2008年5月の$21.5 billionからは23.2%の減少である。販売高の数値はすべて、グローバル半導体販売高の3ヶ月移動平均で表わしている。

「5月の販売高の数字は、半導体業界が3ヶ月連続で前月比伸びていることを表している。」とSIA President、George Scalise氏は言う。「このように月ごと増えていることで、我々の業界が前進して通常の季節パターンに戻っていると、用心しながらもそう思えてくる。」

半導体の製品配列が拡大して広範に普及していく一途にあり、グローバルmicrochip業界はますます経済全体の実績を映し出すものになっている、とScalise氏は特に言及している。「消費者の確信が戻り、経済が伸びを取り戻してきており、業界がそのようなパターンを反映していると見る。」とScalise氏は締め括った。

※5月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/galleries/gsrfiles/GSR_0905.pdf
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地域別のデータを取り出すと、次の通り。我が国内が最も回復が遅れている結果となっているが、最近テンポが上がってきたという報道も見られ、今後に注目である。

市場地域 12- 2月平均 3- 5月平均 change
Americas2.462.7210.6
Europe2.122.182.6
Japan2.792.75-1.3
Asia Pacific6.868.8428.9
 計$14.23 B$16.49 B15.9 %

5月販売高の関連記事として以下がある。

◇Global chip sales seen ticking up in May (6月30日付け EE Times)
→Carnegie Group(Oslo, Norway)の5月グローバル半導体販売高の見方。3ヶ月平均では、$16.6Bで前月4月の$15.6Bから上昇、前年同月比では22.6%減。実際の5月販売高は前年比18.4%減の見込み、4月は15.5%減であった旨。

届いたばかりの「學士會会報」七月号で、
『グローバル時代のイノベーション』と題する講演記事が目に止まった。政策研究大学院大学の教授で内閣特別顧問(2006〜2008年)を務められた黒川氏によるもので、小生なりに以下の抜粋である。共通する認識を多々感じるところがある。

・イノベーションとは何か →「新しい社会的な価値の創造」

・1年前には、アメリカ国内でもまさかオバマが勝つとは?
 →アメリカの「変化しよう」という多くの国民の明らかな意思
 ⇒オバマ自身の能力、背景とともに、誰もが大統領選に参加できるという意識(←携帯電話などIT技術を使い、広くdonation[寄付])

・1991年: 冷戦が終結、世界が一つの市場経済圏に
 1992年: WWW(World Wide Web)が登場
       ⇒世界がフラットに。情報が双方向になり、情報格差がなくなる。
 その後の携帯電話、インターネットの普及:
  日本は従来の産業構造、製造業からなかなか抜け出せていない。

・日本は、Solar Panelや環境技術など一番進化しているが、海外ではマーケットが取れない。
 →日本はどうしても自分で作っていないと気が済まないという価値観が強い。
 ⇒若い人たちには、自分たちのrole modelになるような10年先、20年先輩の人たちが見えない。¶今の日本の大きな悩み

・日本の常識がいかに世界と合わないか
 例:Cambridge、MIT、Harvard、Princeton、Brown、Pennsylvaniaの各大学のトップは女性。日本はお茶の水女子大の例があるくらい。
 →学部で休学して、留学をするような若者を評価するよう

変える、変わる、というのはなかなか言う通りにはいかないこと。それは分かっていても、市場、売上げの拡大という結果がついてこなければ、というもどかしい現状の問題でもある。選挙演説の声が遠くから聞こえてくることもあって、しばし沈思黙考である。


≪市場実態PickUp≫

今年の後半はかく盛り返す、と以下2件同じ内容であるが、いくつかの指標で表されている。

【後半の盛り返し】

◇IC market 'surge' at hand, says analyst (7月1日付け EE Times)
→IC Insights(Scottsdale, Ariz.)からまもなく発行のmid-year update発。惨憺たる前半に比べて、2009年後半は、electronicシステム販売の季節的な力強さ、世界的なGDPの伸びおよび第二四半期に始まったIC在庫補充の流れの継続から、次の伸びを見込む旨。
 世界半導体市場               18%増
 ファウンドリー販売高            43%増
 半導体capital equipment spending  28%増

◇IC market second-half 'surge' predicted-IC Insights expects an 18% "surge" in the IC market in the second  half of the year and claims there is clear evidence that the much-anticipated turning point toward recovery has already occurred.(7月2日付け Electronics Design, Strategy, News)
→2009年の前半と後半、各種業界指標の対比、下記参照。
http://www.reed-electronics.com/articles/images/ENEWS/20090702/6668784_img.jpg

一方では、事業再構築が施された後で盛り返しに即応できるか、という懸念の記事もいくつか目に止まる。次もその1つである。

【懸念要因】

◇TSMC hit by yield issues, double ordering, says analyst(7月1日付け EE Times)
→FBR Capital Marketsのアナリスト、Mehdi Hosseini氏。TSMCが、第二四半期guidanceは越える見込み、しかしながら2H09の出荷&売上げの勢いについては、40-nmの歩留りおよびdouble orderingパターンという懸念要因が高まっている旨。

いまだリソースの削減も引き続いている。

【なお続く削減】

◇Canon reportedly cutting 700 jobs in stepper biz(6月30日付け EE Times)
→Reutersreportなど発。キヤノンが、lithography stepper部門から約700 jobs削減する計画の旨。

◇Oracle plans to lay off up to 1,000 in Europe(7月2日付け EE Times)
→フランス通信社、AFP、木曜2日発。Oracle社が欧州で、同社グローバルstaffの約1%に相当する1,000 workersまで削減する計画、EMC社, HP, IBM社, Intel社, Microsoft社およびSAP AGなどに続く大きなレイオフの動きの旨。

新興市場からの発信から、まずは改めてさすがの規模を感じる中国の携帯市場である。

【中国の携帯市場】

◇China mobile phone user base increases to nearly 687 million in May 2009(6月29日付け DIGITIMES)
→中国・Ministry of Industry and Information Technology(MIIT)の統計。2009年5月末時点で、中国のモバイル通信サービス加入者は686.95M人(同国人口の50.7%)、前月比1.20%増、前年比16.01%増。

◇携帯電話付加価値サービス市場、1500億元規模に(6月29日付け biglobe配信[13億人の経済ニュース])
→中国のコンサルティング会社iResearchの発表によると、携帯電話付加価値サービス市場が昨年比23.9%増の1550億4千万元になる見込みである。
同社は、オンラインゲーム産業についても、昨年比49.6%増の310億8千万元に達すると予想している。
さらに同社は、オンラインショッピングについても安定した成長を予想しており、2011年の利用者は2億人を超え、市場規模も5700億元規模になると予想している。
(注)1元=約14円

アフリカのモロッコで、先端実装のWafer-Level Packaging拠点が稼働しているとのこと。新たなグローバル化の段階というものを感じている。

【アフリカでの先端実装】

◇Wafer-Level Packaging in Africa?-Yes, Africa. Nemotek Technologie is manufacturing wafer-level optics and packaging in its state-of-the-art facility located in Morocco's Rabat Technopolis Park.(7月1日付け Semiconductor International)
→Nemotek Technologie(Rabat, Morocco)のwafer-level optics and packaging製造拠点について。Moroccoの投資会社、Caisse de Depot et de Gestion(CDG)が、今までに大枚$40Mも支援している旨。製造ラインの写真、下記参照。
http://www.semiconductor.net/photo/127976-Nemotek_s_fab_070109Class10_19_jpg_.jpg


≪グローバル雑学王−52≫

昔の家の間取りは大体確かにそうだったなあ、と思い起こしているが、

『「間取り」の世界地図 −暮らしの知恵としきたり』
(著者 服部 岑生[みねき]氏:青春新書INTELLIGENCE PI-137)…2006年1月発行

より、我が国の「間取り」の伝統と知恵の蓄積を改めて認識しているところである。間取りのイメージはご想像いただいて、以下読み進めていただきたく思う。


I 日本の「間取り」とその変遷

3章 間取りから浮かび上がる、暮らしの知恵としきたり

[通り庭を生かした町家の工夫]
・かっては、家の中でも下足のまま移動する空間 
 …土間とそれに続く「通り庭」
 →例:『男はつらいよ』の寅さん、団子屋の店内を抜け、裏庭にまで出て、「労働者諸君!」
・町家は、もともと職人や町人の住居の総称
 …通りに面して、間口の狭いお店がズラリと並び、お店の奥行きが深い
 →江戸時代には日本各地で独自の展開
・フランスのパリ、オランダのアムステルダム、ドイツのベルリンなどの町並みにも、こうした傾向

[町家の町並みが美しい理由]
・町家の間取り …タテにきれいに一列に並ぶ三室
 →道路沿いの部屋である「店」は応接の場
 →真ん中の部屋=中ノ間 …おもに食事用
 →奥の部屋の「座敷」は主寝室であり、正式な客の応接の場
・「食寝分離」を巧みに実現
 生活動線の処理のむずかしさを、土間と通り庭でうまく解消裏庭の奥には土蔵を配置
・かつての卸しの町、蔵の町で知られる埼玉の川越市 
 →いまでも当時の面影
・町家の堅格子 
 …通りに面した窓の補強枠であり、町並みの景観をつくる役割
 →地方によってそれぞれ独自の工夫

[長屋に見る集合住宅の原点]
・長屋 …一棟の建物のなかに数戸の住戸が並んで建てられた住宅形式
 →「風呂なし共同トイレの木造アパート」様
・「表長屋」→表通りに面したもの
 「裏長屋」→表通りから入った私道などに面したもの
・1941(昭和16)年、大阪市での調査
 →専用住宅(店などの職業用スペースを持たない住宅)の8割は長屋

[大阪における長屋の独自の発展]
・昭和の戦前に建てられたという「大阪の長屋」の例
 →基本的に部屋は襖で仕切られているだけの間取り
 …寝ている人をまたいで通る
  →家族関係が現代よりはるかに密だからこそ、可能だった間取り

[なぜ大阪ではいまでも多く残っているのか]
・「長屋建て」…二階建ての長屋が関西ではとくに普及
 →いまでも関西地域で多く見られる

[熊さん、八つぁんが暮らした江戸長屋]
・江戸の文政期(文化文政は1804〜30)の典型的な長屋の例:
 表通りから入った路地空間 …公共の通りではあっても、部外者を寄せつけない私的な空間

[南向きにやたらとこだわる日本人]
・日本人ほど、南向きかどうかにこだわる国民はほかに見当たらないほど
・最近では、経済成長著しい中国の人びとが南面にこだわりはじめたとのこと

[いつから南面信仰が生まれたのか]
・健康の維持に日照が大切だとわかったのは、明治の中ごろから
 →それ以後はなんでもかんでも南面一辺倒に
・ニューヨークのマンハッタン
 →マンションはむしろ北向きのほうが人気が高いくらい

[欧米人が南向きにはそれほどこだわらない理由]
・欧米では、日当たり以上に、町全体の景観、町並みのほうを優先
 →昔の家や町並みを大切にする思想が、いまも町全体の景観を守ることに

[日本人の「内」と「外」の感覚]
・私たち日本人は、"内と外"とを分ける明確な感覚
 …靴を脱ぐという行為によって「内」を感じる
・欧米では靴が脱げる部屋、寝室こそが何でも許され、解放感を味わえる空間
・日本人の特性として、個人のプライバシーを主張するより、互いの雰囲気を大切に

[なぜ日本のドアは外開きになったのか]
・欧米の内開きの選択 
 →まずは外敵の侵入を防ぐという防犯上の要因が一番大
・日本のドアは、外開きであることが一般的
 雨仕舞…雨が流れ込まないよう仕掛けられた凹凸 →内開きでは不可

[サザエさん一家の間取りの特徴]
・『サザエさん』に登場する家 …庭付きの5DK、平屋の一軒家
                  …波平夫婦とサザエさん夫婦の二世帯

[襖と障子がもたらした日本人の五感力]
・日本研究家のエドワード・モース(Edward Sylvester Morse):
 「…我が国(米国・メイン州ポートランド出身)の住居と、日本の住居とのあいだの主要な相違点は、間仕切りと外壁とに見られる。…」
・家族がそれぞれ個室 →家の中から人のいる気配が消えてしまう
 ⇒家族のコミュニケーションの問題

[世界屈指の風呂好き民族]
・日本人は大の風呂好き →西洋の浴室とは違った、ある種日本的なもの
 →リラックスできる時間を、お風呂を楽しみながら共有

[江戸時代のお風呂事情]
・もともとお風呂の歴史には二つの流れ
 →湯水でからだを清める南方系の沐浴
 →サウナ風呂のように蒸気にあたる北方系の蒸気浴
・江戸の銭湯 …単にからだを洗う場所ではなく、遊びの要素を備えた憩いの場

[内風呂の技術は世界一]
・1970年代半ばから80年代にかけて、浴室の湿気だけではなく、加熱したガスの換気技術の向上
 →窓のない浴室を可能に …マンションの間取りに自由度

[畳の部屋が生まれた理由]
・本来の畳は、必要なところにだけ敷かれる →天皇の「玉座」の例
・部屋全体に敷きつめたのが「座敷」
・庶民層では「ゴザ」
 →必要ないときは畳める →「畳」に
・一般庶民の住宅にも畳が普及し始めるのは江戸時代中期以降、農村にあっては明治になってから
・現在のような一寸八分(5.4cm)の厚さをもつ畳 
 →昭和20年以降、全国的に普及

[なぜ東西で畳のサイズがちがうのか]
・京を中心とする地方 −畳の長辺がほぼ六尺三寸(約1.9m) →京間
 江戸          −五尺八寸(約1.75m)          →江戸間
                                      (田舎間)
・同じ六畳といっても、地域によってかなりのバラツキ
 →団地サイズの六畳は京間の約4.8畳分しかない

[畳の敷き方にも工夫があった]
・家相の吉凶:
 吉 →合わせ目をT字形にする「祝儀敷き」
 凶 →合わせ目が十字になる「不祝儀敷き」
・「畳縁を踏むな」 →畳縁には階級を示す紋章

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