Nvidiaの米国政府説得奏功、対中国H20出荷再開許可の経緯及び関連
この6月終わりに米中貿易協定が最終決定され、中国がレアアースを供給する一方、米国は対抗措置を解除することが盛り込まれて、長らく膠着の米中摩擦に緩和の兆候を感じたところである。今月に入って早々、中国への半導体設計ソフトウェアの輸出規制が解除され、さらにこのほど、対中国輸出規制が取り沙汰されていたNvidiaの中国向け仕様の製品「H20 GPU」の出荷再開を米国政府が許可している。米中の狭間で、中国のAI分野の台頭そして中国でのビジネス機会に揉まれながら、粘り強く米国政府そしてトランプ大統領まで当たったジェンスン・ファン同社CEOの説得が奏功した形である。
引き続き注視を要するが、本件の経緯および関連に以下今回注目である。
≪AI需要急伸増大の市況の中で≫
米中のバランスに苦慮するファンCEOが、次の通り伝えられていた。
◇NVIDIA、ファンCEOが総会でトランプ氏称賛 米中バランス苦慮 (6月26日付け 日経 電子版 11:00)
→米エヌビディアは25日、株主総会を開き、ジェンスン・ファンCEOが先端半導体の国内生産を推進するトランプ米政権の政策を称賛した。政権の対中輸出規制には反発しながらも生産拡大策を評価する――。ファン氏の言動には米中間でバランスを取ろうとする苦慮がにじむ。
そんな中、米中の貿易協定の最終決定が、次の通りあらわされている。
◇China confirms details of U.S. trade deal―US, China finalize trade agreement (6月27日付け CNBC)
→1)*中国は、輸出管理規則の対象となる品目について、適格なライセンスを審査・承認すると述べている。
*声明によると、米国はこれに対応して、北京に対して課している既存の一連の制限措置を撤廃する。
*ドナルド・トランプ米大統領は木曜26日、「我々は昨日中国と署名したばかりだ」と述べた。
2)Howard Lutnick米商務長官によると、米中はジュネーブで初めて概要が示された貿易協定を最終決定した。ラトニック長官によると、この合意には、米国が対抗措置を解除する見返りに、中国が希土類元素を供給するという約束が含まれている。この合意は、7月9日の期限を前に、主要10カ国との貿易協定を確保するためのホワイトハウスの広範な取り組みの一環となる。
ファンCEOの米国の輸出規制の批判が続く一方で、中国への半導体設計ソフトウェアの輸出規制が解除されている。
◇US chip restrictions backfiring (7月2日付け China Daily)
→NVIDIAのJensen Huang CEOは、AIチップに対する米国の輸出規制を批判し、中国の技術進歩を加速させた失敗だと非難した。フアン氏は、この政策は米国企業に悪影響を及ぼし、一方でファーウェイやテンセントといった中国の競合企業を優位に立たせていると警告した。
◇U.S. lifts chip software curbs on China in sign of trade truce (7月3日付け CNBC)
→1)*シーメンスAG、シノプシス、およびケイデンスは、輸出規制が解除されたことを通知された。
*米国は5月23日、複数の半導体設計ソフトウェア企業に対し、ライセンスの取得を義務付けると報じられていた。
*これら3社は、米国が支配する電子設計自動化(EDA)市場の一部とされている。
2)米国政府は、中国への半導体設計ソフトウェアの輸出規制を解除し、シーメンス、シノプシス、およびケイデンスは販売とサポートを再開することができた。この方針転換は貿易摩擦の進展を受けてのものであり、世界の半導体設計市場を支配するこれらの企業にとって大きな追い風となる。
AI市場いっそう伸長の期待感から、Nvidiaの株式時価総額が4兆ドルを突破、世界初である。
◇NVIDIA時価総額、世界初の4兆ドル突破 AI成長期待で (7月9日付け 日経 電子版 22:53)
→米エヌビディアの時価総額が9日、一時4兆ドル(約590兆円)を突破した。時価総額が4兆ドルの大台に乗った企業は世界で初めてとなる。AI開発に欠かせない先端半導体で独走状態が続いており、高成長の維持への期待が高まっている。
以上、直近の7月上旬までの経過であるが、ファンCEOは7月10日、中国訪問を前にしてトランプ大統領と次の通り会談を行っている。
◇Nvidia CEO meets Trump ahead of China trip (7月12日付け Taipei Times)
→1)事情に詳しい関係者によると、NVIDIAのCEO、ジェンスン・フアン氏は木曜10日、世界最大の半導体企業のトップである同氏の中国訪問の数日前、ホワイトハウスでドナルド・トランプ米大統領と会談した。
2)米国の技術規制とエヌビディアの$8 billionの売上損失予測により世界の半導体市場の緊張が高まる中、エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは中国への慎重な姿勢を要する訪問を前にホワイトハウスでドナルド・トランプ大統領と会談した。
ファンCEOの米国政府説得の一方、米与野党上院議員からは同氏訪中懸念の表明である。
◇Nvidia’s Jensen Huang brushes off U.S. fears that China’s military will use his firm’s chips (7月14日付け CNBC)
→1)*「中国は自国の軍事力を強化するために、NVIDIAのチップはもちろん、アメリカの技術スタックも必要としていない」と、NVIDIAのCEO、ジェンスン・フアン氏は日曜日に放送されたCNNのインタビューで述べた。
*この発言は、今年2度目の中国訪問を前に、フアン氏が北京と米国の間で綱渡りをしようとしていた中での発言だった。
2)NVIDIAのCEO、ジェンスン・フアン氏は、中国軍によるNVIDIAチップの使用が安全保障を脅かすという米国の懸念を軽視し、規制は逆効果だと述べた。中国訪問を前に、同氏は世界的なAIアクセスの必要性を強調し、米国の輸出規制と市場機会のバランスを取った。
◇「NVIDIAファンCEOの訪中を懸念」 米与野党上院議員が書簡 (7月14日付け 日経 電子版 12:00)
→米与野党の上院議員は13日までに、米半導体大手エヌビディアのジェンスン・ファンCEOの中国訪問を懸念する書簡を公開した。中国軍との関係がある企業や米国の規制対象の企業幹部らと面会しないように求めた。
そんな中、Nvidiaの中国向け仕様のAI半導体「H20 GPU」について、中国顧客への販売再開が許可されていく動きが以下の通り、業界各紙の取り上げである。
◇Nvidia says it will resume H20 AI chip sales to China ‘soon,’ following U.S. government assurances (7月14日付け CNBC)
→1)*エヌビディアは火曜15日、これまで販売を制限していたH20 GPUの中国顧客への販売再開を米国政府に申請すると発表した。
*「米国政府はNVIDIAに対し、ライセンスが付与されることを保証しており、NVIDIAはまもなく出荷を開始することを期待している」と同社はプレスリリースで述べた。
2)エヌビディアは、米国政府が輸出ライセンスの付与に同意したことを受け、中国へのH20 GPUsの販売を再開する見込みであると発表した。この方針転換は、CEOのジェンスン・フアン氏のロビー活動を受けてのものであり、貿易摩擦の緩和を背景にエヌビディアの市場プレゼンスが高まっていることを示している。
◇Nvidia To Resume H20 Shipments To China (7月15日付け EE Times)
→*NVIDIAは以前、中国向けSKU(製品単位)であるH20の在庫を$5.5 billion分減損処理していた。
*トランプ政権が不評だった輸出管理規則を撤回することを決定したことを受け、NVIDIAは中国へのAI GPUの出荷を再開する。具体的には、中国向けHopper世代SKUであるH20の出荷である。米国政府がバイデン政権によって導入された以前の規則を見直している間、出荷は制限されていた。この規則は業界では不必要に厳しいと広く見なされていた。
◇Nvidia to resume H20 sales in China - says U.S. government has promised to grant licenses, deliveries to start soon―Nvidia set to resume China sales of H20 AI chips -The H20 taps are open once again. (7月15日付け Tom's Hardware)
→NVIDIAは、米国政府から輸出許可の取得を確約されたことを受け、中国におけるH20チップの販売を再開すると発表した。中国市場向けに設計されたH20チップは、NVIDIAの最上位製品に比べると性能は劣るものの、Bank of Americaの予測によると、中国は今年AI投資を48%増加させると見込まれており、NVIDIAにとって依然としてビジネスチャンスとなる。NVIDIAはまた、デジタルツインAI向けの新型グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)も中国で発売する予定だ。
◇Tech war: Nvidia to resume selling H20 graphic processing chips to China in boon for AI (7月15日付け South China Morning Post (Hong Kong))
→*NVIDIAはH20 GPUの販売を再度申請し、米国政府は「ライセンスが付与されることをNVIDIAに保証した」と表明した。
*NVIDIAは、中国向けに製造されたコンピュータチップを中国の顧客に販売すると発表した。一方、創業者兼CEOのジェンスン・フアン氏は、米国との競争が深まり、激化する中、今年3度目となる世界第2位の経済大国、中国への訪問のため北京に滞在している。
◇[News] NVIDIA’s China H20 Sales to Resume After U.S. Commitment, Samsung Poised to Gain from HBM3 Supply (7月15日付け TrendForce)
→北京訪問中のNVIDIA CEOジェンスン・フアン氏は、米国のライセンス取得保証を受け、中国におけるH20チップの販売を再開する計画を発表した。この動きは$10 billionの回復と、現在NVIDIAの新型GPUsにメモリを供給しているサムスンの業績向上につながる可能性がある。
◇Nvidia regains China access as Trump reverses H20 ban, but at what cost? (7月15日付け DigiTimes)
→NvidiaのCEO、ジェンスン・フアン氏はワシントンと北京で外交的、商業的に大きな賭けに出て、AIを世界の産業とイノベーションの決定的な力として位置づけている...
◇NVIDIA、中国向けAI半導体出荷再開を表明 米政府が方針撤回 (7月15日付け 日経 電子版 13:00)
→米エヌビディアは14日、中国向けに設計したAI半導体「H20」の出荷を再開する計画を表明した。H20は米政府が4月に規制対象に加え、出荷を停止していた。エヌビディアの働きかけを受け、米政府が規制強化の方針を撤回した。
米国商務長官の販売禁止を撤回した理由説明である。
◇Commerce Secretary Lutnick says China is only getting Nvidia’s ‘4th best’ AI chip (7月15日付け CNBC)
→1)*ハワード・ラトニック商務長官は、トランプ政権がNVIDIAの中国へのAIチップ販売許可を撤回した理由を説明した。
*ラトニック長官は、中国企業に十分なAIチップを販売し、米国技術に「依存」させる戦略だと述べた。
*さらに、ラトニック長官は、中国企業がNVIDIAの「4番目に優れた」チップしか入手していないと述べた。
2)ハワード・ラトニック商務長官は、トランプ政権がNVIDIAの中国へのAIチップ販売禁止を撤回したのは、同社が最先端技術を輸出しないためだと述べた。NVIDIAは、中国が米国技術に依存し続けるよう、より低速な「4番目に優れた」H2Oチップを販売していく。
本件および関連の内容が、以下の通り続いている。
◇China’s open source AI is ‘a catalyst for global progress’, Nvidia’s CEO Jensen Huang says (7月16日付け South China Morning Post)
→1)中国のオープンソースAIは「世界的な進歩の触媒」であり、「あらゆる国と業界にAI革命に参加する機会を与えている」と黄氏は述べた。
2)NVIDIAのCEO、ジェンスン・フアン氏は、中国のオープンソースAIの進歩を称賛し、継続的な協力を約束するとともに、チップ出荷の再開に伴い市場へのコミットメントを改めて表明し、米国の輸出規制が継続しているにもかかわらず、AIが製造業に変革をもたらす影響力を強調した。
◇US approves Nvidia sales to China (7月16日付け Taipei Times)
→1)購入準備完了:NVIDIAが承認を発表した直後、中国企業はH20 GPUsの注文に殺到した。NVIDIAはH20 GPUsを米国政府に送付し、承認を得る必要がある。
2)NVIDIAのCEO、ジェンスン・フアン氏は、米国政府が高度なH20 AI GPUsの中国への販売ライセンスを承認したと発表した。貿易摩擦は依然として続いているが、NVIDIAとAMDは出荷を再開し、中国の重要なAI研究市場を支援し、輸出規制を緩和する予定である。
◇米政権、レアアースの見返りで譲歩 NVIDIA半導体の対中輸出許可 (7月16日付け 日経 電子版 06:21)
→トランプ米政権がAI半導体の輸出規制を一部緩和する。4月に自ら規制対象に加えた米エヌビディアの中国向け製品の輸出再開を一転して認めた。中国との間で貿易交渉を進めるなか、同国のレアアース輸出規制緩和に応え譲歩した格好だが、AI開発で最大のライバルを利するとリスクを指摘する声は多い。
◇Nvidia CEO Jensen Huang wants to sell more advanced chips to China after H20 ban is lifted (7月17日付け CNBC)
→1)*エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、H20製品よりも高度なチップを中国に出荷したいと述べた。
*米国は、エヌビディアの輸出規制に準拠したH20と呼ばれるチップを中国に輸出することを禁じていた禁輸措置を撤回した。
*フアンCEOは、ドナルド・トランプ米大統領の政策を称賛しつつも、中国への規制緩和を求めるロビー活動という微妙なバランスを保ってきた。
2)エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、米国の輸出規制にもかかわらず売上を伸ばすため、現行のH20モデルよりも高度なAIチップを中国に出荷する計画だと述べた。フアンCEOは進化する技術を強調し、中国の$50 billion規模のAI市場への参入を目指して規制緩和を訴えた。
◇Jensen Huang is right about the real AI race with China―The future of AI might not be about performance, but whose model achieves the widest global adoption (7月17日付け Taipei Times)
→エヌビディアのCEO、ジェンスン・フアン氏は、同社のAIチップが中国の軍事力を強化する可能性があるという米国の懸念を軽視し、輸出リスクがあるため中国は米国の技術に頼ることはできないと主張した。エヌビディアが中国市場の維持に努める中、ファーウェイのチップ再設計は、米国の規制強化の中で同社の優位性を脅かしている。
◇エヌビディア半導体、対中輸出再開 レアアース緩和に米譲歩 AI向け ファン氏の説得奏功 (7月17日付け 日経)
→トランプ米政権がAI半導体の輸出規制を一部緩和する。4月に規制対象に加えた米エヌビディアの中国向け製品の輸出再開を認めた。
中国のレアアース輸出規制緩和に応え譲歩した格好だが、AI開発で最大のライバルを利するとリスクを指摘する声は多い。「中国で開発された世界レベルのAI基盤モデルが、世界のAIの急速な発展をけん引している」北京で16日に始まった「中国国際サプライチェーン促進博覧会」の開幕式に出席したエヌビディアのジェンスン・ファンCEOは、AI新興企業のDeepSeekなどを引き合いに、中国AIの成長を称賛した。
米中摩擦のここにきての変化は、以下の買収懸案の承認にもあらわれている。
◇$35bn Synopsys takeover of Ansys conditionally approved by China regulator―Chinese regulator conditionally OKs $35B Synopsys-Ansys deal (7月14日付け Electronics Weekly (UK))
→中国国家市場監督管理総局は、シノプシスによるアンシスの$35 billionの買収を条件付きで承認したと、同当局の声明で発表された。
◇Tech war: China approves Synopsys’ acquisition of Ansys after US lifts EDA ban―The State Administration for Market Regulation gives the green light to the US$35 billion deal under certain conditions (7月14日付け South China Morning Post)
→中国の独占禁止法規制当局は、米国がEDAの輸出規制を撤廃したことを受け、シノプシスによる$35 billionのアンシス買収を承認した。この買収により、両社は中国の顧客との契約を維持することが義務付けられ、半導体業界における緊張緩和を示唆している。
◇And Finally: Synopsys Closes $35bn Purchase of Ansys (7月18日付け EE Times)
→*シノプシスは、米国と中国でAnsys買収に必要なすべての承認を取得し、取引を完了した。
*今週、シノプシスが$35 billionでAnsysを買収したというニュースは、取引完了に必要な承認を得るために18ヶ月間も苦労してきた同社の経営陣にとって大きな安堵となった。
AMDのAI半導体も、中国への出荷が再開される動きである。
◇AMD to resume MI308 AI chip exports to China (7月15日付け CNBC)
→1)*アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は火曜15日、米国商務省が中国へのチップ輸出に関するMI308ライセンスの審査を再開すると発表した。
*AMDは4月、MI308輸出規制に関連して最大$800 millionの罰金を科されると発表していた。
*このニュースは、米中関係の緊張緩和を受け、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが先週ドナルド・トランプ大統領と会談した後に発表された。
2)アドバンスト・マイクロ・デバイセズは、米国商務省の承認を待って、MI308 AIチップの中国への出荷をまもなく再開すると発表した。米中対立が続く中、貿易摩擦の緩和とチップメーカー各社による輸出規制緩和の推進を受け、AMDの株価は6%以上上昇した。
◇AMD Says It Will Restart MI308 Sales to China After US Review―AMD plans to restart MI308 sales in China (7月15日付け Bloomberg)
→米国がMI308チップの販売を承認すると発表したことを受け、AMDは中国への出荷を再開する計画だ。これは、NVIDIAのH20 AIチップについても同様の決定が下されたことを示している。これは、これまで中国へのチップ販売を厳しく制限してきたドナルド・トランプ政権の方針転換を示すものだ。
AMDの株価は、この発表を受けて市場前取引で5%上昇した。
中国のHuawei、そして米国のNvidiaと、ともにいろいろ情勢に揉まれる中の動きに刻刻注目である。
◇ファーウェイ、競合のAIモデル模倣か 「アリババと酷似」―ASIA TECH (7月15日付け 日経 電子版 13:27)
→中国通信機器大手の華為技術が、生成AIの基盤技術である大規模言語モデル(LLM)の開発で競合のモデルを模倣したとの見方が出ている。同社のモデルが中国ネット大手アリババ集団のものと酷似しているとされる。ファーウェイは模倣を否定するが、先端分野の知財を巡る事案として関心を集める。
◇Nvidia's new consumer desktop PC chip reportedly delayed well into 2026―Reports: Nvidia's consumer PC chip delayed to 2026―But GB10-based workstations are nearly here. (7月16日付け Tom's Hardware)
→SemiAccurateによると、NVIDIAは重大なハードウェア欠陥のため、コンシューマー向けPC CPUsの発売を2026年に延期した。当初は今年発売予定だったN1およびN1Xプロセッサは重大な問題に直面し、NVIDIAはファームウェアアップデートで一時的に解決したが、新たな欠陥によりシリコンの再設計が必要となり、数ヶ月の遅延につながる可能性がある。
いつどうなるか、先が明確に見通せない情勢ではあるが、AI半導体、そして本格回復が待たれる半導体市場全体について、引き続き推移を注視するところである。
激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。
□7月13日(日)
トランプ大統領の発する関税関連の動きが引き続いている。
◇欧州委員長、米関税に報復発動「8月上旬まで延期」 交渉で解決探る (日経 電子版 21:41)
→EUのフォンデアライエン欧州委員長は13日の記者会見で、米国による追加関税に対する報復措置の発動を8月上旬まで延期する方針を明らかにした。トランプ米大統領は8月1日から30%の関税をEUに適用すると発表しており、交渉での解決を探る。
□7月14日(月)
中国の対米輸出が減少、タイ、ベトナムなど迂回輸出の可能性である。
◇中国の対米輸出、4〜6月24%減 東南アジア迂回で関税回避か (日経 電子版 16:17)
→中国税関総署が14日発表した貿易統計(ドル建て)によると、2025年4〜6月の対米輸出は前年同期比24%減だった。一時100%を超えたトランプ米政権による対中追加関税の影響で米国向け出荷が急減した。東南アジア向け輸出は増えており、迂回輸出を強めた可能性もある。
□7月15日(火)
懸念が交錯するインフレ率、予想に収まる範囲となっている。
◇US Core Consumer Prices Rise Less Than Expected for Fifth Month―Inflation rises to 2.7% in June―Core CPI comes in below estimates for fifth straight month―Inflation in services, vehicles cooled in June―Tariff impacts in furniture, electronics offset by weakness elsewhere―Price data likely to keep Fed on track for September cut (Bloomberg)
→労働省によると、6月の米国消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.7%上昇し、エコノミストの予想と一致した。食品とエネルギーを除いたコアインフレ率は2.9%だった。市場は好反応を示し、株価先物は上昇し、特に長期国債の利回りは低下した。
関税の動きを見ながらの上げ下げが繰り返される今週の米国株式市場である。
◇NYダウ、反発 関税政策を巡る楽観的な見方が支え (日経 電子版 05:20)
→14日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前週末比88ドル14セント高の4万4459ドル65セント(速報値)で終えた。トランプ米大統領がEUとメキシコに30%の追加関税を課すと明らかにし、売りが先行した。ただ、米国と貿易相手との今後の交渉次第では税率が下がるとの楽観的な見方が根強く、株式相場を支えた。
□7月16日(水)
◇Trump says he will set tariffs for 150 small countries in one swoop―White House plans tariffs for 150 countries from Aug. 1―"It’s all going to be the same for everyone," the president told reporters of the U.S. duty those countries will face. (Politico)
→ドナルド・トランプ大統領は、8月1日から150カ国に関税を課す計画で、既にEU、日本および韓国を含む24カ国に通知している。トランプ大統領は、米国は日本とインドとは交渉中だが、日本との合意には懐疑的だと述べた。「日本とは、おそらく通知での約束を守ることになるだろう」とトランプ大統領は述べた。
◇NYダウ反落、436ドル安 決算ピークの銀行株に売り (日経 電子版 05:56)
→15日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、前日比436ドル36セント(0.98%)安の4万4023ドル29セントで終えた。米株相場が高値圏で推移するなか、決算を発表した金融株に売りが優勢になった。インフレ懸念も根強く米長期金利が上昇したことも、主力株の利益確定売りにつながった。
半面、好材料が出たエヌビディアなどハイテク株の一角は買われ、相場を下支えした。
□7月17日(木)
◇NYダウ、反発 インフレ鈍化で J&J株高も支え (日経 電子版 05:28)
→16日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比231ドル49セント高の4万4254ドル78セント(速報値)で終えた。同日発表の物価指標がインフレの鈍化を示し、買い安心感が広がった。ジョンソン・エンド・ジョンソンが決算発表をきっかけに大幅高となり指数を押し上げた。
□7月18日(金)
◇NYダウ続伸 米経済指標が改善、S&P1週間ぶり最高値 (日経 電子版 06:39)
→17日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前日比229ドル71セント(0.51%)高の4万4484ドル49セントで終えた。朝方発表の米経済指標が改善し、米景気の底堅さを示した。ダウ平均の構成銘柄ではないが半導体受託生産のTSMCが好決算を発表し、半導体株などハイテク株の一部に買いが広がった。
□7月19日(土)
◇NYダウ反落、142ドル安 週末控えた持ち高調整の売り (日経 電子版 06:12)
→18日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日ぶりに反落し、前日比142ドル30セント(0.31%)安の4万4342ドル19セントで終えた。主力株が高値圏にあり、持ち高調整や利益確定の売りが出やすかった。トランプ米大統領がEUとの関税交渉で強気姿勢を示していると伝わったことも投資家心理の重荷となった。ダウ平均は250ドルあまり下げる場面があった。
≪市場実態PickUp≫
【ラピダス関連】
北海道千歳市の工場でのGAAトランジスタ構造のテストウェハの試作開始が発表され、関連含め以下の通りである。今後の進捗にいっそうの注目である。
◇Rapidus starts prototyping―Rapidus starts 2nm test production (7月17日付け Electronics Weekly (UK))
→1)日本政府が支援する2nmプロセススタートアップ企業であるラピダスは、自社のInnovative Integration for Manufacturing(IIM-1)ファウンドリにおいて、2nm GAA ICsの試作プロセスを開始したと発表した。
2)日本の半導体メーカーであるラピダスは、2ナノメートルゲートオールアラウンド(GAA)トランジスタ構造の試験生産を開始し、テストウェーハは期待される電気特性を満たしている。ラピダスはまた、全てのフロントエンド工程に枚葉式ウェーハプロセスを採用しており、これにより精度と欠陥低減が向上する可能性があるものの、製造コストと時間は増加する可能性がある。
◇Japanese chipmaker Rapidus begins test production of 2nm circuits - company commits to single-wafer processing ahead of 2027 mass production target―PDK set to be available in Q1 2026. (7月18日付け Tom's Hardware)
→ラピダスは金曜18日、日本の同社IIM-1工場において、2nmゲート・オールアラウンドトランジスタ構造のテストウェハの試作を開始したと発表した。同社は、初期テストウェハが既に期待通りの電気特性を達成していることを確認した。これは、同社の製造装置が計画通りに稼働しており、プロセス技術開発が順調に進んでいることを意味する。
◇ラピダス、2ナノ半導体の試作品初公開 27年量産へ顧客開拓託す―ビジネスTODAY (7月18日付け 日経 電子版 18:35)
→最先端半導体の国産化を目指すラピダスは18日、回路線幅2ナノメートル半導体の試作品を報道陣に初公開した。4月に稼働した北海道千歳市の工場で生産し動作を確認した。2027年の量産開始を目指し、海外の競合を追う。スタートラインに立ったが完成度を高めていけるかはラピダスの最大の課題の一つである顧客獲得の成否を占う。千歳市内のホテルにサプライヤーや顧客候補約200人を招いた。
◇国内製造業あってのラピダス 半導体再興、顧客創造が不可欠に―Deep Insight 本社コメンテーター 中山淳史 (7月18日付け 日経 電子版 12:46)
→数兆円の国費がつぎ込まれる最先端半導体の受託生産会社(ファウンドリー)、ラピダスが量産に向けた試運転にこぎつけ、工場のある北海道千歳市で18日、お披露目の記者会見を開いた。
今のところ、同社への評価は期待と不安が入り交じっている。どちらかといえば、不安の声の方がやや多いかもしれない。
・・・・・
【TSMC関連】
AI需要が引っ張って絶好調の直近四半期業績はじめ、関連する動き&内容が以下の通りである。
◇TSMC’s materials executive quits (7月12日付け Taipei Times)
→TSMCは、資材管理責任者のVanessa Lee氏が個人的な理由により明日付けで辞任すると発表した。後任にはシニアバイスプレジデントのCliff Hou氏が就く。リー氏はGoogleとAppleの元幹部で、パンデミックに関連したサプライチェーンの混乱において重要な役割を果たした。
◇TSMC’s Arizona Factory For Latest 2nm Tech Could Start Production In 2027, Implies Report―Sources: TSMC may accelerate 2nm chip production at Ariz. plant―TSMC's 2-nanometer Factory In Arizona Purportedly Ahead Of Schedule, Says Report (7月14日付け Wccftech)
→TSMCは、アリゾナ州に建設予定の3番目の半導体製造施設の建設パートナーを年末までに決定する見込みだと、台湾のサプライチェーン筋は伝えている。この施設は、TSMCの広大なアリゾナ・キャンパスの一部となり、既に4ナノメートル製品の製造を開始している。同社が商務省に提出した計画によると、この工場では2ナノメートル製品が製造される予定だ。
◇AI Fuels TSMC Record Earnings and Market Dominance (7月17日付け EE Times)
→世界最大の受託半導体メーカーであるTSMCは、2025年第2四半期の業績が好調だったと発表し、これまでの最高益を塗り替え、年内残りの業績見通しを大幅に引き上げた。
同社幹部は、この素晴らしい業績の要因として、「AIおよびHPC関連の需要が引き続き堅調」であることを挙げている。
◇TSMC Q2 profit up 60% y-o-y―TSMC posts 60% profit surge in Q2 (7月17日付け Electronics Weekly (UK))
→1)TSMCの第2四半期の利益は前年同期比60.7%増の$12.8 billionとなり、売上高は前年同期比44.4%増、前四半期比17.8%増の$30 billionとなった。
2)TSMCは、第2四半期の利益が前年同期比60%増となったと発表した。半導体売上高のうち、先端技術関連が74%を占めた。
◇TSMC profit surges 61% to record high fueled by AI chip demand (7月17日付け CNBC)
→1)*TSMCの6月四半期の純売上高は前年同期比38.65%増の9,338億台湾ドルとなり、市場予想を上回った。
*世界最大の半導体受託製造会社であるTSMCは、NVIDIAやAppleなどの顧客向けに先進的なプロセッサを製造しており、AIへのメガトレンドの恩恵を受けている。
2)TSMCは、AIチップの堅調な需要に支えられ、第2四半期に前年同期比61%増という過去最高の利益を記録しました。売上高は市場予想を上回り、先進的なチップが売上高の74%を占めている。同社は、AIトレンドの急成長を背景に、通年で30%の成長を見込んでいる。
◇[News] TSMC Raises 2025 Sales Growth to 30%, Forecasts 8% QoQ USD Revenue Growth amid Exchange Headwinds (7月17日付け TrendForce)
→TSMCは、為替と関税の逆風にもかかわらず、AI需要の堅調さと3nm/5nmチップの堅調な受注に支えられ、第3四半期の売上高は前年同期比最大38%増と予測している。台湾ドル高により、利益率は若干低下する。
◇TSMC最高益、4〜6月60.7%増 AI向けの先端半導体が好調 (7月17日付け 日経 電子版 14:41)
→半導体世界大手のTSMCが17日発表した2025年4〜6月期決算は、売上高が前年同期比38.6%増の9337億台湾ドル(約4兆7000億円)、純利益は60.7%増の3982億台湾ドルだった。いずれも四半期として最高だった。
増収増益は6四半期連続。回路線幅3〜5ナノメートルの先端半導体の販売が好調だった。
◇[News] TSMC Accelerates 2nd Arizona Fab Production; Ramp-Up Schedules for Japan, Germany Undisclosed (7月17日付け TrendForce)
→TSMC CEOのC.C. Wei氏は、$165 billion規模の米国拡張計画の一環として、アリゾナ州の工場での生産を加速し、2番目の3nm工場が完成し、3番目の工場が2nmおよびA16プロセスを使用して進行中であると発表した。
◇TSMC Packs Up GaN To Focus on Advanced Packaging (7月17日付け EE Times)
→NavitasがPSMCの窒化ガリウム(GaN)ウェハ需要を満たすためPSMCと提携すると発表したことを受けて、TSMCがGaN生産から撤退するという憶測が飛び交っている。
Taipei Timesは、TSMCが2027年までにGaNファウンドリサービスを終了すると報じ、世界最大の半導体チップ受託製造業者の撤退につながる「市場力学の変化」に言及した。
◇TSMC raises revenue growth forecast―DEMAND: The forecast did not factor in potential increases from lifted US restrictions on Nvidia’s H20 chips to China, which TSMC CEO C.C. Wei described as ‘good news’ (7月18日付け Taipei Times)
→TSMCは、AIおよび高性能コンピューティング(HPC)チップの需要急増を背景に、2025年の売上高成長率予測を30%に引き上げた。同社の直近四半期純利益は前四半期比60.7%増の$13.54 billionと過去最高を記録した。
◇TSMC、4〜6月最高益 今期、3割増収に上方修正 米工場へ投資、需要つかむ (7月18日付け EE Times日経)
→半導体世界大手のTSMCが17日発表した2025年4〜6月期決算は売上高・純利益がともに四半期として最高だった。米エヌビディアなどAI向けの需要が好調で25年通期の業績見通しを上方修正した。北米顧客向けの売上高比率が7割を超えるなか、米国工場への投資を進め現地需要を取り込む。
4〜6月期決算は、売上高が前年同期比38.6%増の9337億台湾ドル(約4兆7千億円)、純利益は60.7%増の3982億台湾ドルだった。為替の台湾ドル高・米ドル安が逆風となったが、売上高営業利益率は49.6%と事前の会社予想の上限を上回った。
【ASML関連】
最先端リソ装置のASMLが、四半期業績を発表、好調な内容であるが、先々の成長は確約できないとのコメントを受けて株価下落の市場の反応である。
◇ASML shares drop 11% after the chip giant says it can’t confirm that it will grow in 2026 (7月16日付け CNBC)
→1)*ASMLは第2四半期の純売上高が77億ユーロ($8.95 billion)となり、予想を上回ったと報告した。
*しかし、同社は2026年に成長が見込めるかどうかは確定できないと述べている。
*ASMLは、世界で最も重要な半導体サプライチェーン企業の1つである。
2)ASMLは、好調な売上高と純受注により第2四半期の業績が予想を上回ったものの、経済の不確実性により2026年は成長が停滞する可能性があると警告した。AIによる需要増にもかかわらず、ガイダンスの弱さと2025年の見通しの縮小により、株価は11.4%下落した。
◇ASML posts strong results, eyes growth amid China curbs and tariff concerns―ASML's revenue rose 23% despite China's restrictions (7月16日付け DigiTimes)
→ASMLは第2四半期の業績が好調だったと発表、売上高はアップグレード需要とコスト効率の向上に支えられ、前年同期比23%増の76億9,000万ユーロ($8.94 billion)となった。関税の影響は予想よりも軽微だったが、同社は依然として生産活動に制限をかけられている。
◇ASML45%増益 4〜6月、最先端半導体向け好調で (7月16日付け 日経 電子版 15:22)
→オランダの半導体製造装置大手ASMLホールディングが16日発表した2025年4〜6月期決算は、純利益が前年同期比45%増の22億9000万ユーロ(約4000億円)だった。最先端半導体の量産に必要な極端紫外線(EUV)露光装置の販売が増えたことが寄与した。売上高は76億9200万ユーロと23%増えた。増収増益は4四半期連続。
◇ASML、純利益45%増 4〜6月 来期成長は「確約できず」 (7月17日付け 日経)
→ASMLは26年12月期もAI向け半導体の需要が力強いとみる。一方でマクロ経済や地政学リスクの不確実性を背景として、クリストフ・フーケCEOは来期の成長を「この段階では確約できない」と述べるにとどめた。
【インテル関連】
事業再構築、そして新技術&新製品の取り組みと、以下現下の動きを取り出している。
◇Intel spins out AI robotics company RealSense with $50 million raise (7月11日付け CNBC)
→1)*インテルは、AIロボティクスと生体認証のベンチャー企業であるRealSenseをスピンオフさせ、$50 millionの資金調達ラウンドを発表した。
*ロボット自動化のためのツールと技術を開発するRealSenseは、調達した資金を新製品ラインの開発と高まる需要への対応に充てる計画だ。
*テスラやアマゾンといったテクノロジー企業は、ロボティクス技術と自動化に大きな投資を行っている。
2)インテルは、$50 millionの資金調達を受けたAIロボティクス部門、RealSenseをスピンオフさせ、自動化ツールに注力する。RealSenseは、業界全体でロボティクスへの投資が加速する中、製品ラインを拡大し、世界的な需要に対応することを目指している。
◇[News] Intel Raises Oregon Layoffs to 2,400; Reportedly to Cut 4,000 Nationwide by Mid-July (7月14日付け TrendForce)
→インテルは大規模な世界規模のレイオフを発表し、オレゴン州だけで約2,400人(以前の報告の5倍)を削減、米国全体では3,900人以上を削減、さらに再編と自動化の取り組みの一環としてイスラエルとアイルランドでも人員削減を行う。
◇[News] Intel on the Move: Nova Lake Reportedly Tapes Out on TSMC’s 2nm, with 18A Yields Gaining Speed (7月14日付け TrendForce)
→Intelは次世代プロセッサ「Nova Lake-S」の開発を進めており、最近TSMCの2nmファブでコンピューティングタイルのテープアウトを完了した。人員削減にもかかわらず、18Aの歩留まりは上昇しており、年末までに70%を目標としている。これは、2026年の発売と将来のファウンドリ成長に向けた力強い勢いを示している。
◇Intel’s Nova Lake-AX CPUs In The Works, To Compete With AMD’s Halo APUs With Bigger iGPU, Caches & More―Intel's Nova Lake-AX SoCs to rival AMD's Halo APUs (7月16日付け Wccftech)
→Intelは、AMDのHaloアクセラレーテッド・プロセッシング・ユニット(APUs)に対抗すべく、エンスージアスト向けチップとしてNova Lake-AXシステムオンチップ(SoCs)を開発中だ。Nova Lake-AXは、大規模なCPUクラスター、Xe3「Celestial」アーキテクチャに基づくより大型の統合型GPU、そしてFoverosパッケージを採用したキャッシュを搭載すると予想されている。
【Broadcom関連】
スペインでの半導体投資断念、そして先端ネットワーク用半導体の発表について、以下の通りである。
◇Broadcom scraps $1 billion chip investment in Spain―Reports: Broadcom drops $1B Spain chip project amid stalled talks (7月14日付け New Electronics (UK))
→メディア報道によると、ブロードコムはスペインにマイクロチップ製造工場を建設する計画を断念したという。
◇[News] Broadcom Reportedly Scraps $1 Billion Chip Investment in Spain (7月14日付け TrendForce)
→ブロードコムは、スペイン政府との協議の停滞とドナルド・トランプ大統領の2025年の就任を受け、スペインにおける約$1 billion規模の半導体工場建設計画を中止したと報じられている。一方、TSMC、フォックスコン、およびNXPはドイツとフランスにおける半導体投資を拡大し続けている。
◇Broadcom Aims to Reimagine the Ethernet Switch for HPC and AI―Broadcom unveils 5nm Tomahawk Ultra chip to rival Nvidia―Announced today, the new device challenges the assumption that Ethernet can't support small packet sizes or optimized transport paths. (7月15日付け All About Circuits)
→Broadcomは、TSMCの5ナノメートルプロセスを採用し、高性能AIインフラの強化を目的としたTomahawk Ultraイーサネットスイッチチップを発表した。NVIDIAのアクセラレータインターコネクトへの挑戦ともいえるこのスイッチは、51.2テラビット/秒で250ナノ秒のレイテンシを実現し、毎秒770億パケットの処理能力を備え、最適化されたイーサネットヘッダーやハードウェアベースのフロー制御などの機能を備えている。
◇With Tomahawk Ultra, Broadcom asks who needs UALink when there's Ethernet?―The never Nvidia networking party just got another option (7月15日付け The Register (UK))
→「ネットワークのあらゆる部分に同じテクノロジーを用いることには大きなメリットがある」と、ブロードコムのTomahawk製品ラインマネージャー、Pete Del Vecchio氏はEl Reg誌に語った。「イーサネットを使うことで、監視、テレメトリ、およびデバッグツールといった面で多くのメリットが得られる。だからこそ、UALink(Ultra Accelerator Link)がなくなることはないと考えている。」
◇Broadcom launches Tomahawk Ultra AI networking chip built on TSMC's 5nm process to challenge Nvidia (7月16日付け DigiTimes)
→Broadcomは、TSMCの5nmプロセスを使用して製造された最新のTomahawk Ultra Ethernetスイッチ チップを発表した。このチップは、アクセラレータ相互接続におけるNvidiaの優位性に真っ向から挑戦することを目的とした設計で、高性能AIインフラストラクチャをターゲットにしている。
【新興半導体市場関連】
マレーシアそしてインドにおける動き&内容である。SEMICON India 2025は、9月2−4日、New Delhiでの開催である。
◇[News] Tariff Uncertainty Could Put Malaysia’s Chip Expansion on Ice (7月11日付け TrendForce)
→米国の関税をめぐる不確実性から、マレーシアの半導体メーカーは投資を停止し、8月1日から適用される可能性のある25%の関税に関する明確化を待っている。米国への輸出は極めて重要であり、企業は半導体部門の勢いを取り戻すために免除措置を期待している。
◇India's semiconductor push could cut chip imports by USD20 bn: McKinsey (7月14日付け Times of Oman)
→インド政府は$10 billionの優遇措置に支えられた半導体産業育成策を推進し、半導体輸入額を$10-20 billion削減することを目指している。マッキンゼーは、これらの優遇措置と世界的な技術提携を組み合わせることで、世界の半導体市場におけるインドの役割を強化することを提言している。
◇Arrow Electronics Strengthens Tech Innovation Support Across India, Southeast Asia (7月14日付け EE Times India)
→Arrow Electronicsは、インドのバンガロールにエンジニアリング・ソリューション・センター(ESC)を開設した。この拡張により、AIoT、エッジコンピューティング、インテリジェントセンシングといった重要技術へのアクセス性を高めるというArrowのコミットメントが強化されるとともに、インド、東南アジア、韓国、および日本における産業、自動車・輸送、エネルギー管理、および航空宇宙・防衛といった主要セクターの国内テクノロジーメーカーのエンジニアリング能力も強化される。
◇India Expects Record Participation at Expanded Semicon India 2025 (7月16日付け EE Times India)
→SEMICON India 2025 は、自立的で信頼性が高く、そして世界的に競争力のある半導体エコシステムを構築するインドの能力の向上を示すことを目的としている。