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5月の世界半導体販売高、月次最高の$59 billion;際立つAI濃淡模様

米国・Semiconductor Industry Association(SIA)から月次世界半導体販売高が発表され、この5月について$59.0 billionと、少なくとも2022年まで遡って昨年11月の$57.8 billionを上回る月次最高を示している。本年出だし2ヶ月は前月比減少となったが、以降5月まで3ヶ月連続増加となり、AI(人工知能)関連需要が圧倒的に牽引すると目される現下の市場の力強さがあらわれている。PC、スマホはじめ従来の分野の本格的回復が待たれる雲行きの中、今の状況が続くかどうか、変化に目が離せないところである。各社の状況についても、Nvidia及びTSMCがAI関連を圧倒的に引っ張る一方、インテル、Samsungなど追い込みを図る取り組みと、際立つAI濃淡模様である。

≪5月の世界半導体販売高&各社業績発表から≫

米国・SIAからの今回の発表が、次の通りである。

☆☆☆↓↓↓↓↓
○5月のグローバル半導体販売高が、前年同月比19.8%増ー世界半導体販売高、前月比3.5%増 …7月7日付け SIA/Latest News

米国・Semiconductor Industry Association(SIA)が本日、2025年5月のグローバル半導体販売高が$59.0 billionで、前年同月、2024年5月の$49.2 billionに対して19.8%増、そして前月、2025年4月の$57.0 billionを3.5%上回った、と発表した。
月次販売高は、WSTS(World Semiconductor Trade Statistics)機関が集計し、3ヶ月移動平均を表している。SIAは、売上高で米国半導体業界の99%を代表し、米国以外のチップ企業のほぼ3分の2を代表している。

「5月の世界半導体販売高は引き続き好調で、前月をわずかに上回り、前年同月比でも大幅に上回った。」と、SIAのpresident and CEO、ジョン・ニューファー氏。「グローバル半導体市場の成長は、南北アメリカ大陸とアジア太平洋地域/その他地域における堅調な需要に引き続き牽引されている。」

地域別では、5月の前年同月比で、the Americas (45.2%), Asia Pacific/All Other (30.5%), China (20.5%), Japan (4.5%), およびEurope (4.1%)と、すべてで増加した。5月の販売高前月比では、Asia Pacific/All Other (6.0%), China (5.4%), Europe (4.0%), the Americas (0.5%), およびJapan (0.2%)と、これもすべてで増加した。

                         【3ヶ月移動平均ベース】

市場地域
May 2024
Apr 2025
May 2025
前年同月比
前月比
========
Americas
13.89
18.25
18.35
32.0
0.5
Europe
4.22
4.26
4.43
5.0
4.0
Japan
3.71
3.74
3.75
1.1
0.2
China
15.12
16.20
17.08
13.0
5.4
Asia Pacific/All Other
12.30
14.50
15.38
25.1
6.0
$49.23 B
$56.96 B
$58.98 B
19.8 %
3.5 %

--------------------------------------
市場地域
12- 2月平均
3- 5月平均
change
Americas
18.64
18.35
-1.6
Europe
4.01
4.43
10.5
Japan
3.78
3.75
-0.8
China
15.06
17.08
13.4
Asia Pacific/All Other
13.42
15.38
14.5
$54.92 B
$58.98 B
7.4 %

-------------------------------------

※5月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
https://www.semiconductors.org/wp-content/uploads/2025/07/May-2025-GSR-table-and-graph-for-press-release.pdf
★★★↑↑↑↑↑

この発表を受けた業界各紙の取り上げが次の通りである。

◇Global Semiconductor Sales Increase 27.0% Year-to-Year in May (7月7日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→SIAは本日、2025年5月の世界半導体売上高が$59.0 billionとなり、2024年5月の合計$49.2 billionと比較して19.8%増加し、2025年4月の合計$57.0 billionと比較して3.5%増加したと発表した。

◇May semi sales up 19.8% y-o-y, says SIA―SIA: May semiconductor sales rose 19.8% to $59B (7月8日付け Electronics Weekly (UK))
→米国・SIAによると、5月の半導体売上高は$59 billionで、2024年5月の$49.2 billionに比べて前年比19.8%増、2025年4月の$57 billionに比べて3.5%増となった。

2021年、2022年と相次いで年間半導体販売高の最高を更新して、2023年は減少に転じたが、2024年はAI需要が牽引してまたも過去最高を更新するとともに、$600 Billionの大台に初めて載せた経緯となっている。
パソコン、スマホなど従来の主要応用分野の本格回復がいまだ道半ばという見方が優勢な中、AIが大きく引っ張る現下の市場がどう推移するか、今後に注目するところである。照らし合わせの意味合いで、2022年以降の以下の見方を続けることにする。
以下、米国・SIAの月初の発表時点の販売高、そして前年同月比および前月比が示されている。
2024年11月に記録した単月販売高最高の$57.82 Billionから、2ヶ月連続若干落として、この2025年1月は$56.52 Billionとなっている。依然最高水準にあることは以下のデータよりわかるが、今後に向けては現下の市場特性の見極めを要するところである。
2月の販売高としては史上最高を記録しているが、以下に示す通り、前月比で3ヶ月連続減少しており、今後に注目するところである。
3月は若干持ち直して、前月比減に歯止めを施す見え方となっている。四半期の締めで集中駆け込みの可能性もあり、引き続き推移に注視を要する。4月も引き続き盛り返して、2024年11月の最高に迫る水準である。今後も増勢が維持されるかどうか、注目である。
5月は$58.98 Billionと、以下で分かる通り、昨年の11月を上回って、月次最高となり、たぶんに史上最高の月次水準になる覚えである。このAIが引っ張る増勢の今後に注目するところである。

販売高
前年同月比
前月比
販売高累計
2022年 1月 
$50.74 B
26.8 %
-0.2 %
2022年 2月 
$50.04 B
26.1 %
-1.4 %
2022年 3月 
$50.58 B
23.0 %
1.1 %
2022年 4月 
$50.92 B
21.1 %
0.7 %
2022年 5月 
$51.82 B
18.0 %
1.8 %
2022年 6月 
$50.82 B
13.3 %
-1.9 %
2022年 7月 
$49.01 B
7.3 %
-2.3 %
2022年 8月 
$47.36 B
0.1 %
-3.4 %
2022年 9月 
$47.00 B
-3.0 %
-0.5 %
2022年10月 
$46.86 B
-4.6 %
-0.3 %
2022年11月 
$45.48 B
-9.2 %
-2.9 %
2022年12月 
$43.40 B
-14.7 %
-4.4 %
$584.03 B
 
2023年 1月 
$41.33 B
-18.5 %
-5.2 %
2023年 2月 
$39.68 B
-20.7 %
-4.0 %
2023年 3月 
$39.83 B
-21.3 %
0.3 %
2023年 4月 
$39.95 B
-21.6 %
0.3 %
2023年 5月 
$40.74 B
-21.1 %
1.7 %
2023年 6月 
$41.51 B
-17.3 %
1.9 %
2023年 7月 
$43.22 B
-11.8 %
2.3 %
2023年 8月 
$44.04 B
-6.8 %
1.9 %
2023年 9月 
$44.89 B
-4.5 %
1.9 %
2023年10月 
$46.62 B
-0.7 %
3.9 %
2023年11月 
$47.98 B
5.3 %
2.9 %
2023年12月 
$48.66 B
11.6 %
1.4 %
$518.45 B
 
2024年 1月 
$47.63 B
15.2 %
-2.1 %
2024年 2月 
$46.17 B
16.3 %
-3.1 %
2024年 3月 
$45.91 B
15.2 %
-0.6 %
2024年 4月 
$46.43 B
15.8 %
1.1 %
2024年 5月 
$49.15 B
19.3 %
4.1 %
2024年 6月 
$49.98 B
18.3 %
1.7 %
2024年 7月 
$51.32 B
18.7 %
2.7 %
2024年 8月 
$53.12 B
20.6 %
3.5 %
2024年 9月 
$55.32 B
23.2 %
4.1 %
2024年10月 
$56.88 B
22.1 %
2.8 %
2024年11月 
$57.82 B
20.7 %
1.6 %
2024年12月 
$56.97 B
17.1 %
-1.2 %
$616.70 B
 
年間最高更新
 
2025年 1月 
$56.52 B
17.9 %
-1.7 %
2025年 2月 
$54.92 B
17.1 %
-2.9 %
2025年 3月 
$55.90 B
18.8 %
1.8 %
2025年 4月 
$56.96 B
22.7 %
2.5 %
2025年 5月 
$58.98 B
19.8 %
3.5 %


米国・SIAは、半導体業界の現状について、年次報告書を以下の通り発表している。現時点を改めて確認する内容である。

◇2025 State of the Industry Report: Investment and Innovation Amidst Global Challenges and Opportunities (7月10日付け SIA Blog)
→SIAは本日、年次報告書「米国半導体産業の現状」を発表した。この報告書は、2025年の半導体業界の現状、すなわち進行中の進捗状況、今後の課題と機会、そして適切な対応の重要性について概観している。
 2024年には、世界の半導体産業の売上高は$630.5 billionに達し、当初の予測を上回り、初めて年間売上高$600 billionを突破している。WSTSの推計によると、世界の半導体産業の売上高は2025年には$701 billionに達し、2024年比11.2%の成長率を記録すると予測されている。AI、5G/6G通信、自動運転車といった最先端アプリケーションからの需要の高まりを受け、半導体業界は世界的な生産能力の大幅な増強を迫られている。

AI需要が引っ張る現下の市場の際立つ濃淡模様について、まずは、さらなる成長期待で世界初、時価総額4兆ドルを突破したNvidiaの取り上げが以下の通りである。

◇Nvidia briefly touched $4 trillion market cap for first time―Nvidia briefly hits $4T market cap amid AI boom (7月9日付け CNBC)
→*エヌビディアの株価は水曜9日に急騰し、日中取引で初めて時価総額4兆ドル($4 trillion)を突破した。
 *このチップメーカーは、この節目を達成した最初の企業であり、生成型AIブームの恩恵を受けている。
 *エヌビディアの最近の株価上昇は、地政学的な緊張と、中国への販売を阻害している継続的な半導体規制にもかかわらず実現した。

◇NVIDIA時価総額、世界初の4兆ドル突破 AI成長期待で (7月9日付け 日経 電子版 22:53)
→米エヌビディアの時価総額が9日、一時4兆ドル(約590兆円)を突破した。時価総額が4兆ドルの大台に乗った企業は世界で初めてとなる。AI開発に欠かせない先端半導体で独走状態が続いており、高成長の維持への期待が高まっている。

◇Nvidia’s Historic $4 Trillion Market Cap Highlights AI Chip Sector’s Central Role in Tech Supremacy (7月10日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→NVIDIAは昨日、上場企業として史上初の時価総額4兆ドルを突破し、テクノロジー大手のAppleとMicrosoftを上回り、世界のAI市場における重要な転換点となった。大手データ・アナリティクス企業、GlobalDataによると、この節目は、ウォール街におけるAIへの信頼の高まりと、高性能半導体の中心的な役割を浮き彫りにしている。

◇NVIDIA、4兆ドルクラブ一番乗り AIの「黒子」が呼んだ地殻変動 (7月10日付け 日経 電子版 11:30)
→米半導体大手のエヌビディアの時価総額が一時史上初の4兆ドル(約585兆円)に達した。生成AIのインフラ企業の躍進は、産業の主役が数十億人単位の消費者接点を持つプラットフォーマーから、それらの営みを支える「黒子」へと移行したことを象徴している。

次に、AI向け先端半導体製造から、絶好調を維持するTSMCである。

◇TSMC、4〜6月売上高38.6%増で過去最高 AI向け好調 (7月10日付け 日経 電子版 16:22)
→半導体世界大手のTSMCが10日発表した2025年6月の売上高(速報値)は同月として過去最高の2637億台湾ドル(約1兆3000億円)だった。前年同月比で26.9%増えた。4〜6月期の売上高は前年同期比38.6%増の9337億台湾ドルとなり、四半期ベースの最高を更新した。
 生成AIを動かすサーバー向けなどに先端半導体の販売好調が続いた。

◇TSMC revenue climbs 39% in latest sign of AI spending boom―TSMC's revenue jumped 39% in Q2 as AI chip demand continues (7月10日付け South China Morning Post (Hong Kong)/Bloomberg)
→エヌビディアとアップル向けの該チップメーカーは、報告された月間売上高に基づき、3ヶ月間の売上高が$32 billionに増加した。

◇TSMC posts its second-lowest sales this year (7月11日付け Taipei Times)
→*安定した業績:6月の連結売上高は減少したものの、AIアプリケーション向けチップの需要に支えられ、第2四半期の売上高は過去最高を記録した。
 *TSMCは昨日、先月の連結売上高が2,637億1,000万台湾ドル($9.02 billion)となり、今年2番目に低い月次業績となったと発表した。世界最大の受託半導体メーカーであるTSMCは声明で、先月の売上高は2月の2,600億1,000万台湾ドルをわずかに上回ったと述べた。

一方、AI需要対応で引き離されて、追い込みを図る立場の中から、Samsungの直近四半期業績が、以下の通りである。

◇Samsung Elec Q2 profit likely to drop 39% on weak AI chip sales―Report: Samsung's Q2 profit may fall 39% amid AI chip challenges (7月6日付け Yahoo/Reuters)
→サムスン電子は火曜8日、第2四半期の営業利益が39%減少すると予想する見通しだ。これは、AIチップ大手のNVIDIAへの先端メモリチップの供給遅延が響く。
 LSEG SmartEStimateによると、世界最大のメモリチップメーカーであるサムスンは、4〜6月期の営業利益が6兆3000億ウォン($4.62 billion)と、過去6四半期で最低の水準になると予想されている。

◇Samsung Electronics estimates 56% drop in Q2 operating profit on chip slump, US trade policies (7月8日付け The Korea Times)
→サムスン電子は、第2四半期の営業利益が55.9%減の4兆5,900億ウォンとなったと発表した。半導体販売の低迷と米国の貿易制限により、予想を下回った。同社は、第3四半期にはメモリチップの需要と利益が回復すると見込んでいる。

◇サムスン、4〜6月営業利益56%減 半導体在庫の評価損で (7月8日付け 日経 電子版 08:30)
→韓国サムスン電子が8日発表した2025年4〜6月期の全社営業利益は前年同期比56%減の4兆6000億ウォン(約4900億円)だった。前年同期を下回るのは6四半期ぶり。パソコンやスマートフォンの需要低迷で主力のメモリーの在庫が積み上がり、在庫評価損を計上したことが利益を押し下げた。売上高は0.1%減の74兆ウォンだった。

◇Samsung expects steep drop in operating profits on US chip woes (7月9日付け Taipei Times)
→サムスン電子は、米国による中国向け先進AIチップの輸出規制を理由に、第2四半期の営業利益が56%減の$3.3 billionになると予想している。半導体事業は生産能力削減の影響で利益が減少したが、需要回復により下半期には業績が改善する可能性がある。

以下に、インテルの状況が続いているが、当面続くと思われるAI主導の増勢と、従来分野の回復が如何に推移していくか、米国・SIAの月次世界半導体販売高のデータをベースに注目である。


激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。

□7月6日(日)

減税法案を巡って、トランプ大統領とイーロン・マスク氏に、以下の亀裂である。

◇Race to define Trump’s legislation to voters is next political test―Trump signs sweeping tax bill into law (The Washington Post)
→1)共和党は数ヶ月かけて法案を自分たちに売り込んだ。今や、多くの有権者が法案の内容を理解できないと訴えているため、より幅広い聴衆に訴えかけなければならない。
 2)ドナルド・トランプ大統領は金曜4日、「One Big Beautiful Bill Act」に署名し、共和党が米国の経済成長を後押しすると主張する大規模な減税と経済対策を盛り込んだ法案を成立させた。この法案は、数週間にわたる党派間の議論と上院での土壇場での交渉を経て可決された。州政府の指導者たちは現在、この法律の条項の実施方法に苦慮しており、その一部は地方予算を圧迫する可能性がある。議会予算局は、この法案により2034年までに連邦政府の赤字が$3.4 trillion増加すると予測している。

□7月7日(月)

◇マスク氏、トランプ氏と再び応酬 「DOGEに何の意味があったのか」 (日経 電子版 10:48)
→米起業家イーロン・マスク氏は6日、トランプ米大統領が自身の新党構想を批判したことを受け、同氏と応酬を繰り広げた。X(旧ツイッター)に「彼(トランプ氏)が5兆ドルも債務を増やすなら、DOGE(米政府効率化省)にいったい何の意味があったのか」と投稿した。
 トランプ氏に反論するかたちで、4日成立したトランプ減税の恒久化を柱とする大型の減税・歳出法を巡る政権批判を強めた。

□7月8日(火)

トランプ大統領の我が国はじめ各国への関税賦課の文書通知の波紋が続いていく。

◇Japan, South Korea face 25% tariffs as Trump ramps up trade war in letters to 14 nations―Trump targets more countries with tariffs, extends deadline (Reuters)
→トランプ大統領は、日本、韓国、その他の国々に対し、25%から40%の関税賦課の可能性を警告し、交渉期限を8月1日まで延長した。この警告により、世界的な貿易摩擦が再燃し、米国の主要同盟国は適用除外の確保に奔走するとともに、世界のサプライチェーンにおける不確実性が高まっている。世界市場は、新たな関税賦課の警告と進行中の貿易協議という相反するシグナルに反応し、投資家は貿易摩擦の激化リスクを慎重に検討している。

NvidiaはじめAI関連でひととき持ち上げられたが、トランプ関税による景気不安の重し、4週ぶりの下落で締めた今週の米国株式市場である。

◇NYダウ422ドル安、日韓に関税通知 円は146円台に下落 (日経 電子版 06:06)
→米国による日本と韓国などへの追加関税の内容が明らかになったことを受け、7日の米株式市場でダウ工業株30種平均は前営業日比422ドル(1%)安の4万4406ドルと下落した。日本株も売られ、米預託証券(ADR)でトヨタ自動車は4%安だった。ニューヨーク外為市場で円は対ドルで一時1ドル=146円台前半と、前週末から1円以上円安・ドル高が進んでいる。

□7月9日(水)

◇NYダウ続落、165ドル安 トランプ関税の不透明感が重荷 (日経 電子版 06:37)
→8日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続落し、前日比165ドル60セント(0.37%)安の4万4240ドル76セントで終えた。米政権の貿易政策を巡る不透明感が引き続き相場の重荷となった。半面、ハイテク株の一角に買いが入り、相場の下値を抑えた。

□7月10日(木)

◇NYダウ反発、217ドル高 NVIDIAとMicrosoftが最高値 (日経 電子版 06:36)
→9日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3営業日ぶりに反発し、前日比217ドル54セント(0.49%)高の4万4458ドル30セントで終えた。米政権による貿易政策の不透明感が根強いなか、エヌビディアなどハイテク株に買いが入った。米長期金利が低下したことも相場の支援材料だった。ダウ平均の上げ幅は一時300ドルを超えた。

◇トランプ大統領、ブラジルの関税5倍の50%に 8カ国に新税率通知 (日経 電子版 08:41)
→トランプ米大統領は9日、ブラジルに8月1日から50%の新たな相互関税の税率を適用すると表明した。従来の税率の5倍になる。ブラジル政府の偽・誤情報対策やトランプ氏と親しかったボルソナロ前大統領への裁判をやめるよう要求するなど、ルラ政権への不満を示した。9日に新税率を通知したのは8カ国となった。

□7月11日(金)

◇NYダウ、続伸し192ドル高 ナスダックは連日の高値更新 (日経 電子版 05:42)
→10日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前日比192ドル34セント(0.43%)高の4万4650ドル64セントで終えた。同日発表の米経済指標や、デルタ航空の四半期決算などが米景気の底堅さを示したと受け止められた。ハイテク株に出遅れ気味だった消費関連株や景気敏感株などが物色され、指数を押し上げた。

□7月12日(土)

◇米株4週ぶり下落、関税で景気不安再び 4年ぶり割高水準に危うさ (日経 電子版 06:52)
→11日の米株式市場でダウ工業株30種平均は前日比279ドル安の4万4371ドルで終えた。週間では1.0%安と4週間ぶりに下落した。トランプ米大統領が貿易相手国への関税引き上げを相次ぎ表明し、景気減速への警戒感が強まった。楽観的な「TACO(Trump Always Chickens Out:トランプ氏はいつも腰砕け)」トレードで4年ぶりの割高水準に近づく米株市場が冷え込むリスクもありそうだ。

◇NYダウ反落279ドル安、関税懸念が重荷 利益確定売りも (日経 電子版 07:17)
→11日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日ぶりに反落し、前日比279ドル13セント(0.62%)安の4万4371ドル51セントで終えた。米政権がカナダに8月1日から35%の関税を課すと表明。米国の高関税が世界景気を押し下げるとの懸念が広がり、高値圏にある主力株に利益確定売りが出た。


≪市場実態PickUp≫

【インテル関連】

路線、基軸の再構築を図っているインテル。昔は真のリーダーだったが、今や世界は変わった。大手半導体企業とは思っていない、と従業員に訴えるCEO、Lip-Bu Tan氏。以下の内容を読み返すところがある。

◇[News] Intel Reportedly Considering Dropping Glass Substrate Project, Eyes External Sourcing (7月3日付け TrendForce)
→報道によると、インテルは、柔軟性とリスクの軽減を目指して、社内のガラス基板開発と18Aプロセスから重点を移し、基板を外部から調達し、ファウンドリの顧客に14Aノードを推進することを選択しているという。

◇Would shifting away from 18A help Intel rediscover its mojo?―Analyst take: Intel may rediscover its "mojo" (7月4日付け Fierce Electronics)
→インテルはLip-Bu Tan CEOの下、18Aプロセス技術への注力を減らし、次世代の14Aプロセス技術への移行を検討していると報じられており、アナリストのJack Gold(ジャック・ゴールド)氏もこの戦略を支持している。ゴールド氏は、インテルのリソースが限られていることと、将来の技術に注力する必要性を挙げている。「タンCEOは、インテルが業界をリードする『mojo(モジョ:魔力)』を取り戻すことに集中することを望んでいると私は考えている。それはTSMCに追いつくことではなく、TSMCを上回ることを意味する。」

◇Intel’s CEO: ‘We are not in the top 10’ of leading chip companies (7月9日付け The Oregonian (Portland))
→新CEOのリップ・ブー・タン氏は今週、従業員に対し、インテルを大手半導体企業とは考えていないと語った。これは、深刻な技術的・財務的課題に直面し、該半導体メーカーが大規模な人員削減を開始したことに対する、心強いメッセージだ。

◇Intel CEO says it's "too late" for them to catch up with AI competition - reportedly claims Intel has fallen out of the "top 10 semiconductor companies" as the firm lays off thousands across the world―Reports: Intel is pivoting as it falls behind in AI―Dark days ahead, or perhaps already here. (7月10日付け Tom's Hardware)
→インテルのLip-Bu Tan CEOは、流出した会話の中で、インテルはトップクラスの半導体企業から脱落したと述べたと報じられている。タンCEOはまた、AI分野で追いつくには遅すぎるため、エッジAIとエージェントAIに注力すると述べた。「20年、30年前は、インテルは真のリーダーでした。しかし今、世界は変わりました。インテルは半導体企業トップ10にも入っていません」と、タンCEOは従業員に語ったと報じられている。

◇[News] Intel’s Harsh Wake-Up Call: CEO Reportedly Says It’s No Longer a Top 10 Chipmaker (7月10日付け TrendForce)
→インテルのLip-Bu Tan CEOは、オレゴン州で500人以上の雇用が削減されたことを受け、同社がもはやトップクラスのチップメーカーではないことを認めた。インテルはエッジAIへの転換、オハイオ州工場の稼働延期、そして製造戦略の見直しを進めている。

◇Intel increases its Bay Area layoff count for the third time (7月11日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
 →*インテル社のAI部門責任者、Naveen Rao氏が退社すると水曜9日に発表した。
  *人員削減は7月15日に発効する。


【TSMC関連】

AI需要で好調なTSMCの業績は上に示したが、ここではそれ以外。特に、GaNウエハー事業から撤退する動き、などである。

◇[News] TSMC to Exit GaN Production by July 2027, Reportedly Repurposes Fab for Advanced Packaging (7月3日付け TrendForce)
→TSMCは2027年7月までにGaNウェハの生産を終了し、Fab 5をAI駆動型技術に注力する先進パッケージング拠点に転用する。Navitasは、技術的な互換性とコスト効率の高いGaN-on-Si技術を理由にPSMCへの移行を決めた。

◇TSMC to phase out its gallium nitride business (7月4日付け Taipei Times)
→1)市場要因:Navitas Semiconductor社は、高電圧窒化ガリウム(GaN)チップのサプライヤーとしてPowerchipがTSMCから引き継ぐと発表した。
 2)TSMCは、市場の変化を受け、顧客の円滑な移行を確保するため、2年以内にGaN半導体事業を段階的に廃止すると発表した。PowerchipはGaNチップの生産を引き継ぎ、AIデータセンターや電気自動車からの需要増加に対応する。

◇[News] Infineon Accelerates GaN Push While TSMC Exits, with 300mm Wafer Samples Expected 4Q25 (7月7日付け TrendForce)
→TSMCは価格圧力と低い利益率のため、2027年7月までにGaNウエハー事業から撤退する予定だが、一方でインフィニオンは300mmウエハーでのGaN生産を拡大し、2025年第4四半期のサンプル出荷を目標としており、中国からの競争が激化する中で異なる戦略を強調している。

◇TSMC's GaN market exit creates opening for Samsung, Asian chip race rage on―TSMC's move to phase out its GaN foundry opens door for Samsung (7月9日付け DigiTimes)
→TSMCが最近、GaNファウンドリ事業を段階的に廃止することを決定したことは、化合物半導体業界に波紋を広げ、新たな競争相手に門戸を開くとともに、高まる地政学的および価格圧力を浮き彫りにしている。

◇[News] TSMC Reportedly to Break Ground on U.S. Advanced Packaging Plants in 2028, Starting with SoIC (7月10日付け TrendForce)
→TSMCは、2028年までにアリゾナ州に2つの先進パッケージング工場を建設する計画で、まずSoICとCoPoS技術を手掛け、台湾への依存度を低減する。この動きは、アリゾナ州の工場拡張と並行して、将来の米国における半導体生産を支えるものである。

◇[News] Is the GaN Foundry Model Facing Trouble? China’s Innoscience Weighs In as TSMC Plans 2027 Exit (7月11日付け TrendForce)
→TSMCは2027年までにGaNファウンドリ事業から撤退する計画だが、一方でインフィニオンは投資を増やしており、業界の専門家が投資収益率(ROI)を確保するには従来のファウンドリモデルではなく統合製造がGaNには必要だと強調する中で、異なる戦略を反映している。


【GlobalFoundries関連】

GlobalFoundriesが、エッジAI対応に向けて、プロセッサのMIPSを買収、以下各紙の取り上げである。

◇MIPS CEO: Acquisition by GlobalFoundries Strengthens Edge AI Opportunity ―The acquisition of MIPS by GlobalFoundries today accelerates MIPS edge AI opportunities. (7月8日付け EE Times)
→1)GlobalFoundriesは本日、創業40年のプロセッサ企業であり、これまで幾度となく経営陣が交代してきたMIPSを買収することで正式契約を締結したことを発表した。ゲーム業界、そして自動車業界向けにRISCベース・プロセッサを提供してきた実績を持つ同社は、2022年に事業を転換し、特にエッジAIを中心とした様々なアプリケーションにおけるリアルタイムコンピューティングを実現するRISC-VベースのプロセッサIPとソフトウェアツールの提供に注力するようになった。
 2)GlobalFoundriesは、エッジAI向けRISC-V IPへの転換を進めている40年の歴史を持つプロセッサ企業MIPSの買収を発表した。この買収により、GFのカスタマイズ可能なIPポートフォリオが拡大し、MIPSのロードマップを加速させるとともに、GFのグローバルな製造および市場リーチを活用する。

◇GlobalFoundries to Acquire MIPS to Accelerate AI and Compute Capabilities (7月8日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→GlobalFoundriesは本日、AIおよびプロセッサIPのサプライヤーであるMIPSを買収することで正式契約を締結したことを発表した。この戦略的買収により、GFのカスタマイズ可能なIPポートフォリオが拡大し、IPとソフトウェア機能によってプロセス技術のさらなる差別化が実現する。

◇GlobalFoundries signs agreement to acquire MIPS, a supplier of AI and processor IP―GlobalFoundries acquiring MIPS to expand processor IP―GlobalFoundries has announced that it has signed a definitive agreement to acquire MIPS, a supplier of AI and processor IP. (7月9日付け New Electronics (UK))
→GlobalFoundriesは、AIおよびプロセッサIPプロバイダーであるMIPSを買収することで合意した。これにより、GFのカスタマイズ可能なIP製品とプロセス技術が強化される。RISCコンピューティングの革新で知られるMIPSは、最近、RISC-V仕様に基づくAtlasポートフォリオにより、プロセッサIPを拡充した。


【Samsung関連】

直近業績は上に示したが、ここでは新製品&新技術関連について、以下の通りである。

◇Samsung launches three new foldable smartphones as it fends off Chinese rivals (7月9日付け CNBC)
→1)*サムスンは水曜9日、薄型の折りたたみ式スマートフォン2機種「Galaxy Z Fold」と「Galaxy Z Flip 7」を発表した。
  *同社はまた、折りたたみ式スマートフォンの廉価版となる「Galaxy Z Flip 7 FE」も発表した。
  *サムスンは、HonorやOppoといった中国メーカーとの競争激化に直面している。
 2)サムスンは、中国メーカーとの競争激化の中、顧客獲得を目指し、Galaxy Z Fold 7、Z Flip 7、そして廉価版のFlip 7 SEを含む3機種の折りたたみ式スマートフォンを発表した。これらの機種は、薄型デザイン、AI搭載カメラ、そして改良されたディスプレイを特徴としている。

◇サムスン「Galaxy」、AIスマホ進化アピール 折り畳み型新機種を公開 (7月10日付け 日経 電子版 05:00)
→韓国のサムスン電子が生成AIを取り入れたスマートフォンで攻勢に出る。9日に発表した折り畳み型の新機種で、AIと様々なアプリを同時に動かして作業できる新たな機能を盛り込んだ。AIの進化を印象付けて米アップルなど競合との違いを打ち出し、スマホ世界首位への返り咲きを目指す。

◇Samsung bets big on 2nm chips as foundry unit faces make-or-break moment―Samsung pins hopes for foundry unit on 2nm (7月11日付け DigiTimes)
→サムスン電子は、ファウンドリー部門が増大する損失を解消し、世界トップのTSMCとより効果的に競争できるように取り組む中で、2nmチップ製造技術に大きな賭けを仕掛けている。


【市場データ関連】

本格回復が待たれるとされるパソコン、スマホに特に注目。定点観測の趣きで以下の通りである。

◇China’s smartphone shipments plunge in May amid weak consumption, fewer new models (7月5日付け South China Morning Post)
→1)5月の数字は、2月から4月までの月間出荷台数がすべて前年同月比で増加していたため、前3ヶ月から減少に転じた。
 2)中国のスマートフォン出荷台数は、5月に前年同月比21.8%減の2,370万台となり、国内メーカーの出荷台数が24.2%減少したことが主な要因。補助金制度の導入にもかかわらず、需要の低迷、新モデルの減少、そして市場の飽和状態により、スマートフォン業界の回復は鈍化した。

◇PC Shipments Remained Strong in Q2 Signaling Vendors Getting Ahead of Tariff Deadlines, according to IDC (7月8日付け IDC)
→2025年第2四半期のPC出荷台数は、米国以外の旺盛な需要に牽引され、前年同期比6.5%増の6,840万台に達した。しかし、IDCのJean Philippe Bouchard氏によると、米国での販売は在庫の積み上がりと輸入関税の迫りくる影響で減速した。

◇パソコン世界出荷、4〜6月7%増 関税前需要でAppleは2割増 (7月11日付け 日経 電子版 09:21)
→米調査会社IDCは10日までに、2025年4〜6月の世界パソコン出荷台数(速報値)が前年同期比6.5%増の6840万台だったと発表した。米アップルは21.4%増と大きく伸びた。米国のトランプ関税発動を前に在庫の積み増しが続く。
 メーカー別出荷台数は、首位の中国レノボ・グループが前年同期比15.2%増の1700万台だった。


【Apple関連】

AI対応が問われているAppleであるが、経営面での以下の内容である。

◇Apple’s Supply Chain Guru Jeff Williams Steps Down ―Sabih Khan, new COO, has to deal with global supply chain challenges. (7月9日付け EE Times)
→1)Appleは、長年COOを務めてきたJeff Williams氏が今月下旬に退任し、年内に完全引退する準備を進めており、事業運営の指揮を執る上で重要なリーダーシップの交代を迎えている。
  1998年からAppleに在籍し、約10年間COOを務めてきたウィリアムズ氏の後任には、現在Appleのオペレーション担当シニアバイスプレジデントを務めるSabih Khan氏が就任する。この人事異動は、このテクノロジー大手にとって注目すべき交代であり、同社はこれを「長年計画されてきた後継者交代」と表現している。
 2)AppleのCOOであるジェフ・ウィリアムズ氏は今月退任し、年内には完全退職する予定である。これは、Appleにとって大きなリーダーシップの転換となる。後任はサビ・カーン氏で、Appleは中国以外の生産拠点への多様化と持続可能性の強化に向けた取り組みを強化する。

◇Apple経営陣の「新陳代謝」働かず、4割が10年超在任 AI劣勢が鮮明 (7月12日付け 日経 電子版 06:30)
→生成AI開発で後手に回る米アップルに対し、経営陣の新陳代謝を求める声が高まっている。ティム・クックCEOを含め経営陣の4割が今年で10年以上の在任になる。COOが退任するなど重い腰を上げ始めたが、経営に新風を吹き込む人事を急ぐべきだとの見方が多い。


【関税インパクト関連】

トランプ大統領の関税通告について、半導体分野関連でのインパクトが以下の通りである。拡がり&推移に注目である。

◇Trump adds 50% tariff on copper, vital in all electronics―Copper tariff poses challenges for electronics (7月10日付け Fierce Electronics)
→ドナルド・トランプ大統領は、国家安全保障上の懸念を理由に、国内生産の拡大を図るため、8月1日から銅に50%の関税を課すと発表した。銅はエレクトロニクス産業、特に半導体において重要な材料であり、回路製造においてはシリコンに次いで重要な役割を担っている。アナリストは、銅への新たな50%の関税により、生産コストの上昇が消費者に転嫁されると予測しており、電子機器の価格が上昇する可能性がある。

◇Copper market in turmoil as Trump touts 50% tariff on US imports (7月10日付け Taipei Times)
→トランプ大統領は銅輸入に対する50%の関税を突然発表し、米国銅先物価格は記録的な17%の急騰を記録し、世界価格は下落した。この措置は米国の銅採掘を促進することを目的としているが、銅需要の高まりの中でコスト上昇と供給問題を引き起こすリスクがある。

◇Chip Firms in Malaysia Pause Investment Plans on Tariff Angst (7月11日付け Bloomberg)
→Malaysia Semiconductor Industry Association(マレーシア半導体産業協会)のPresident、Wong Siew Hai氏によると、マレーシアの半導体企業は、米国からの関税に関する明確な説明を待ち、投資と事業拡大を控えている。ウォン会長はブルームバーグTVのHaslinda Amin氏とのインタビューで、企業は米国政府が8月1日以降も半導体への関税適用を免除し続けることを期待していると述べた。この期限は、ドナルド・トランプ大統領が発表した関税引き上げの期限である。

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