米国政府、投資税控除および対中ソフト規制撤回;インテルの新基軸
トランプ政権の減税・歳出法案そして関税交渉の進捗具合が米国内そして世界各国にそれぞれ分断模様の議論を引き起こすなか、半導体関連では米国政府の2つの動きが見られている。トランプ大統領の言う「大きくて美しい法案(One Big Beautiful Bill Act)」を受けて、先進製造投資税額控除の税率が25%から35%に引き上げられ、最も重要な税制優遇措置が推進されている。そして、米中貿易協定の成立発表に応じる形で、中国企業への半導体設計ソフトウェアの提供に関するライセンス要件が撤廃されている。もう1つ、立て直しを図っているインテルについて、ファウンドリーの製造プロセス対応を先進的な14Aノードに移すなど、新たな基軸が示されている。
≪目が離せない展開&進捗具合≫
本欄を埋めている7月5日の朝7時台のニュースとして、トランプ大統領が重要政策として掲げてきた減税案を盛り込んだ法案に署名し、成立させた(現地4日)、としている。4日は米国の独立記念日の休日での動きであるが、この法案には半導体企業に対する米国国内半導体製造強化に向けた税額控除が含まれており、以下の関連の内容&反応である。
◇Chipmakers get larger tax credits in Trump’s latest ‘big beautiful bill’ (7月2日付け CNBC)
→1)*ドナルド・トランプ大統領が上院で可決した「大きくて美しい法案」に基づき、米国で生産能力を増強する半導体企業に対する税額控除が、現行の25%から35%に引き上げられる可能性がある。
*控除の対象となる企業には、インテル、TSMCおよびマイクロン・テクノロジーなどの半導体メーカーが含まれる可能性がある。
2)上院は、トランプ大統領が米国内半導体生産の拡大を推進する中、米国半導体メーカーへの税額控除を35%に引き上げる法案を可決した。この法案は、7月4日の期限を前に下院の承認を待っている。
◇SIA Applauds Passage of Strengthened Semiconductor Investment Credit (7月3日付け SIA Latest News)
→米国半導体工業会(SIA)は本日、米国下院で「One Big Beautiful Bill Act」 (H.R. 1)が可決されたことを受け、SIAのPresident and CEO、John Neufferによる声明を発表した。この国内政策パッケージは、7月4日に大統領の署名により成立する予定。この措置は、advanced manufacturing investment credit(AMIC:先進製造投資税額控除)の税率を25%から35%に引き上げることで、SIAの最重要税制優遇措置を推進するものである。この法案には、SIAが支持するその他の重要な措置も含まれており、外国由来の無形資産所得に対する恒久的な控除の見直しや、国内研究開発費の全額控除の復活などが盛り込まれている。
米国政府の対応の動きとしてもう1つ、先に交わされた米中貿易協定の成立を受けて、この5月に導入された半導体の設計ソフトの対中輸出規制が撤回されている。
◇US lifts ban on EDA sales to China―US lifts EDA sales ban on China in rare earth minerals deal―The US has lifted the restrictions on EDA sales to China. (7月3日付け Electronics Weekly (UK))
→米国政府は、中国との希土類鉱物輸出再開に向けた合意の一環として、5月に貿易交渉の一環として課されていた中国への半導体設計ソフトウェア輸出に対するライセンス要件を撤廃した。シーメンス、シノプシスおよびケイデンス・デザイン・システムズは、中国での販売とサービスを再開している。
◇Trump Administration Removes Chip Design Software Restrictions On China (7月3日付け Wccftech)
→米国政府は、中国企業への半導体設計ソフトウェアの提供に関するライセンス要件を撤廃した、と電子設計自動化(EDA)製品プロバイダーのシノプシスが昨日発表したプレスリリースで明らかにした。この制限は5月に導入されたもので、貿易交渉における中国への圧力として多くの人が考えていたものだった。しかし、トランプ大統領とラトニック商務長官が先月末に中国との貿易協定が成立したと発表したことを受け、ラトニック商務長官率いる商務省は5月に導入した制限を撤回した。
◇米政府、半導体設計ソフトで対中規制撤回 シノプシスなど提供再開へ (7月3日付け 日経 電子版 18:35)
→米政府が5月に導入した半導体の設計ソフトの対中輸出規制を撤回することが2日明らかになった。設計ソフトの主要企業である米シノプシスや米ケイデンス・デザイン・システムズなどが米商務省から規制解除の通知を受け取った。関税交渉を巡る米中政府間の緊張が緩和し始めた。シノプシスは2日に「最近規制対象になった中国向け製品の再提供に向けて取り組んでいる」と表明した。
米国国内の半導体製造強化、そして輸出規制については、いまだ懸案&課題含みであり、今後の推移&打開進捗に引き続き注目である。
◇Does the Semiconductor Industry Have a Perception Problem? (6月27日付け EE Times)
→米国の半導体製造業は活況を呈しているものの、深刻な人材不足が成長を脅かしている。2030年までに6万7000人の雇用が不足するリスクがあり、業界が成功を収めるには、採用活動の改善、福利厚生の拡充、および研修プログラムの拡充が不可欠である。
◇Democratizing Design: How The CHIPS Act Is Reshaping EDA And Semiconductor Innovation―Reflections from a recent panel discussion at DAC, The Chips to Systems Conference held at Moscone West on the CHIPS Act’s impact on the design ecosystem (7月2日付け Semiconductor Engineering)
→CHIPS法は、前例のない連携、AI主導の設計イノベーション、そして長期的なエコシステム開発を可能にすることで、米国半導体業界に変革をもたらしている。Keysightは、この法律が設計、人材育成、そして国内半導体業界のリーダーシップを再構築する触媒となると考えている。
◇US chip restrictions backfiring (7月2日付け China Daily)
→NVIDIAのJensen Huang CEOは、AIチップに対する米国の輸出規制を批判し、中国の技術進歩を加速させた失敗だと非難した。フアン氏は、この政策は米国企業に悪影響を及ぼし、一方でファーウェイやテンセントといった中国の競合企業を優位に立たせていると警告した。
次に、立て直しに向けたインテルの取り組みであるが、韓国・SK Hynixとの提携が以下の通りである。
◇Intel’s Next-Gen Jaguar Shores “Gaudi” AI GPUs To Feature SK hynix HBM4 Memory, New Arc GPUs For Edge AI Coming In Q4 2025―Intel partners with SK Hynix for next-gen AI GPUs (7月1日付け Wccftech)
→インテルはSK Hynixと提携し、次世代Jaguar Shores「Gaudi」グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPUs)を開発している。このユニットはHBM4メモリを搭載し、18Aプロセスノードを採用することで効率性を向上させている。また、インテルは第4四半期にエッジAIサーバー市場をターゲットとしたArc GPUsの発表も計画している。同社によると、Jaguar Shores GPUsはGranite RapidsおよびDiamond Rapids Xeon CPUsと組み合わせられる予定である。
◇[News] Intel Reportedly Taps SK hynix’s Next-Gen HBM to Power Jaguar Shores in AI Chip Race (7月1日付け TrendForce)
→インテルはSKハイニックスと提携し、次世代AIアクセラレータを共同開発すると報じられており、HBM4を次期Gaudiチップに搭載する可能性がある。契約はまだ確定していないものの、この提携により、インテルは2026年までにNVIDIAやAMDとの競争力を高めることができるであろう。
ファウンドリー製造事業の対応で大きな移行であるが、18Aプロセスの販売を中止し、14Aプロセスに集中する検討が行われているとのことである。
18Aは自社製品に用い、外部顧客向けにはさらに先の14Aプロセスでということで、大きな基軸の変更となる。
◇Report: Intel considers moving on from 18A chip manufacturing process (7月2日付け Silicon Angle)
→インテルは、Lip-Bu Tan CEOの下、18Aチッププロセスから次期14Aノードへと重点を移し、大規模な再編、人員削減、そして2024年の$18.8 billionの損失の中、業界のリーダーシップを取り戻すことを目指している。
◇Intel may stop marketing 18A to foundry customers―Intel CEO Tan considers major shift in chipmaking strategy (7月2日付け Electronics Weekly (UK))
→1)ロイター通信によると、インテルはファウンドリ顧客への18Aプロセスの販売を中止し、14Aプロセスに集中することを検討している。18Aプロセスは、今年後半に発売されるPanther Lakeから、インテルの自社製品に引き続き使用される予定だ。
2)インテルのLip-Bu Tan CEOは、同社の受託製造戦略の変更を検討しており、18Aチップ製造プロセスの外部顧客への販売を中止する可能性もある。3月にCEOに就任して以来、タンCEOはコスト削減に注力し、インテルの事業再生に向けた新たな方向性を模索している。
◇Intel’s new CEO explores big shift in chip manufacturing business―Since taking the company’s helm in March, CEO Lip-Bu Tan has moved fast to cut costs and find a new path to revive the ailing US chipmaker (7月2日付け South China Morning Post (Hong Kong)/Reuters)
→インテルの新CEOは、主要顧客獲得のため、受託製造事業の大幅な変更を検討していると、事情に詳しい2人の関係者がロイター通信に語った。これは、前任者の計画からの大きな転換となる可能性があり、大きな負担となる可能性がある。
関係者によると、もし導入されれば、インテルが「ファウンドリー」事業と呼ぶこの新戦略は、同社が長年開発してきた特定の半導体製造技術を外部顧客に販売しないことを示唆することになるという。
◇[News] Intel Reportedly Weighs Dropping 18A, Bets on 14A to Attract Clients and Challenge TSMC (7月2日付け TrendForce)
→ロイター通信によると、インテルはTSMCとの競争力を高め、アップルやエヌビディアなどの主要顧客を引き付けるために、18Aチッププロセスからより先進的な14Aノードへの移行を検討しており、多額の減損が発生する可能性があるという。
先端実装に向けて検討されているガラス基板も、社内での開発は止めて、外部から購入する可能性が以下の通りである。
◇Intel plans to abandon in-house glass substrate development, shift to external procurement―Reports: Intel to end in-house glass substrate work under CEO Tan (7月3日付け DigiTimes)
→Computerbaseによると、新CEOのLip-Bu Tan氏のリーダーシップの下、インテルはガラス基板の自社研究開発を中止し、専門サプライヤーから既製のソリューションを購入する可能性があるという。
先行きの見通しが難しい現況であるが、新技術&新製品の日進月歩、着実な進展には期待するところである。
激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。
□6月29日(日)
世界経済の不確実性が、以下にもあらわされている。
◇World economy faces 'pivotal moment', central bank body BIS says―BIS warns that global economy is at a "pivotal moment" (Reuters)
→国際決済銀行(BIS:Bank for International Settlements)は、貿易の分断、債務の増加および地政学的ショックにより、世界経済は不確実性の高まりに直面していると述べた。退任するBIS総裁のAgustin Carstens氏は、制度に対する国民の信頼が揺らいでいると警告し、経済の回復力強化に向けた緊急の行動を求めた。
□7月1日(火)
金曜4日が独立記念日の休日で4日の取引、1日小幅下げたもののあとは比較的大きな上げとなった今週の米国株式市場である。
◇NYダウ3日続伸275ドル高、貿易交渉期待 S&Pは最高値更新 (日経 電子版 07:06)
→6月30日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続伸し、前週末比275ドル50セント(0.62%)高の4万4094ドル77セントで終え、2月以来の高値を付けた。米国とカナダの貿易交渉が進展するとの期待から、投資家心理が改善。景気敏感など出遅れ感のあった銘柄にも買いが広がり、相場上昇を支えた。
□7月2日(水)
◇NYダウ続伸し400ドル高 製薬や保険が押し上げ、ハイテクは軟調 (日経 電子版 05:35)
→1日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4日続伸し、前日比400ドル17セント高の4万4494ドル94セント(速報値)で終えた。製薬や保険株などこのところ株価の動きがさえなかった銘柄に買いが入り、相場を押し上げた。半面、ハイテク株には利益確定の売りが出やすかった。
□7月3日(木)
◇U.S. payrolls increased by 147,000 in June, more than expected―US added 147K jobs in June, exceeding forecasts (CNBC)
→1)*非農業部門雇用者数は季節調整済みで14万7000人増加し、市場予想の11万人を上回り、5月の上方修正値14万4000人をわずかに上回った。
*雇用統計発表を受けて市場の価格は大きく変動し、トレーダーは7月の利下げの可能性をほぼ排除した。
*政府部門雇用者数は州および地方自治体の雇用が堅調に増加したため、7万3000人増加し、全部門で最大の伸びを示した。
2)米国労働統計局によると、6月の米国非農業部門雇用者数は14万7000人増加し、政府部門雇用の増加が牽引役となり、市場予想の11万人を上回った。失業率は4.1%に低下し、2月以来の低水準となったが、労働力参加率は62.3%に低下した。平均時給は前月比0.2%上昇、前年比3.7%上昇した。
◇NYダウ小幅反落、10ドル安 S&Pとナスダックは最高値 (日経 電子版 06:24)
→2日の米株式市場でダウ工業株30種平均は5営業日ぶりに小幅に反落し、前日比10ドル52セント(0.02%)安の4万4484ドル42セントで終えた。朝発表の雇用関連指標が米労働市場の悪化傾向を示し、米経済の先行き不透明感が重荷となった。一方、関税交渉を巡って米政権がベトナムと合意に達したと発表し、関税に関する市場の懸念が後退した。
□7月4日(金)
◇NYダウ、反発し344ドル高 予想上回る雇用統計で景気懸念後退 (日経 電子版 03:23)
→3日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発した。前日比344ドル11セント(0.77%)高の4万4828ドル53セントと2月上旬以来の高値で終えた。3日発表の6月の米雇用統計で雇用者数が市場予想以上に増え、失業率は低下した。米景気懸念が後退し、主力株の買いを誘った。
冒頭に触れたトランプ政権の減税法案そして関税交渉であるが、米国国内そして世界各国・地域での波紋&軋轢が以下続いている。
◇トランプ減税法案が下院通過、成立へ 企業と富裕層に恩恵・EVに逆風 (日経 電子版 06:36)
→トランプ米政権の主要政策を盛り込んだ大型の減税・歳出法案が3日、連邦議会下院を通過した。トランプ米大統領が4日に署名して成立する見通しとなった。政権の最大の成果で、米経済にはやや追い風となる。企業や富裕層が恩恵を受ける半面、低所得層には厳しい内容となった。深刻な状態にある財政状況も、一段と悪化する懸念がある。
◇米減税法案で財政悪化490兆円、関税収入上回る 高成長論に疑念も (日経 電子版 07:04)
→トランプ減税の延長・恒久化を柱とする減税・歳出法案が4日にトランプ米大統領の署名で成立する。米議会予算局(CBO)が10年で3.4兆ドル(約490兆円)とはじく財政悪化の規模は過去の法案と比べても巨額だ。関税収入で賄いきれない公算が大きい。
◇インド、米国の自動車関税に報復方針 WTOに通知 (日経 電子版 22:59)
→インド政府は4日、トランプ米政権が発動した自動車と自動車部品への関税に対抗して、米国からの輸入品に報復関税を課す方針を示した。世界貿易機関に通知した。WTOに提示した文書によると、米国がインドから徴収する関税は
$725 million(約1050億円)に上るとして「米国産品から同額の関税」を確保すると主張した。
□7月5日(土)
◇マスク氏が「アメリカ党」構想 減税法に反発、脱二大政党を主張 (日経 電子版 05:22)
→起業家のイーロン・マスク氏は4日、新党「アメリカ党」の構想を明かし、賛否を問う「投票」を開始した。少数の選挙区に絞って議席を獲得すれば、与野党が拮抗する米連邦議会で議論を主導できるという。溝が深まったトランプ米大統領からの批判をけん制する狙いもありそうだ。
◇トランプ米政権、EU農産品に17%関税を警告 FT報道 (日経 電子版 05:33)
→英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は4日、トランプ米政権が欧州連合に対して農産物に17%の関税をかけると警告したと報じた。これまで発表した関税に上乗せするかどうかは不明だ。関税交渉の期限が近づき、揺さぶりをかけている。
≪市場実態PickUp≫
【TSMC関連】
世界の半導体製造を引っ張る一方、米中の狭間の立ち位置にあるTSMCについて、以下改めての認識である。
◇TSMC named on Time’s list of 100 most influential companies (6月28日付け Taipei Times)
→タイム誌は、世界中のAIとテクノロジーを支える最先端チップを評価され、TSMCを2025年の「最も影響力のある企業」リストの「Titan」に選出した。TSMCはまた、米中間のAIをめぐる緊張の高まりの中心に立っている。
◇The rise of Taiwan’s chip industry (6月29日付け Taipei Times)
→1)最近公開された『A Chip Odyssey(造山者-世紀の賭け)』は、単なるドキュメンタリーではない。台湾の産業発展の軌跡と国民的アイデンティティの変遷を、タイムリーに映し出している。台湾が地政学的な緊張の高まりに直面している今、この映画は、台湾が半導体分野でリーダーシップを発揮するまでの長く不確かな道のりを、人々に思い起こさせてくれる。
2)ドキュメンタリー「A Chip Odyssey」は、政策、粘り強さ、そして公共投資によって形作られた、国家主導の共同の旅として台湾の半導体産業の成長に焦点を当て、地政学的緊張が高まる中で、神話に挑戦し、国民の自信を高めている。
◇‘Silicon shield’ idea not productive (6月29日付け Taipei Times)
→1)この分析は、台湾を守る「シリコンシールド」という考えは神話に過ぎないと主張している。米国の台湾防衛は半導体ではなく戦略的利益に基づくものであり、この神話を広めることは台湾の国際的なイメージと国内の民主主義を損なう。
2)「シリコンシールド」――台湾の半導体産業が米国の保護を保証するという信念――は神話だ。支持を牽引しているのは半導体ではなく戦略的な地理的条件であり、技術力の優位性を誇張することは、台湾の国際的なイメージと国内の結束を損なうリスクがある。
◇TSMC looks to compress Arizona fab construction into just two years―Report: TSMC to tighten timeline for second Ariz. fab (6月30日付け New Electronics (UK))
→1)報道によると、TSMCのアリゾナ州第2工場(P2)は、早ければ2026年第3四半期にも装置の設置を開始し、2027年に量産開始される予定である。
2)TSMCは、アリゾナ州第2工場の建設を加速させており、2年以内の完成を目指していると報じられている。報道によると、装置の設置は来年開始され、量産は2027年になると見込まれている。この動きは、需要への対応と関税緩和を目的としたTSMCの米国における事業拡大計画の一環である。
◇TSMC Arizona chair to retire; senior management changes expected at US plant in 2026―TSMC's Arizona chair to step down; management changes expected (7月2日付け DigiTimes)
→TSMCは、子会社、TSMCアリゾナの臨時株主総会における重要な決議を発表した。TSMCアリゾナのコーポレート戦略開発担当シニアバイスプレジデント兼会長であるRick Cassidy氏は、本日付けで顧問に就任した。
【Samsung関連】
10nmプロセスを用いた第6世代DRAM(1c DRAM)、そして第4世代高帯域幅メモリ(HBM4)と、最先端メモリへの取り組みが以下の通りである。
◇Samsung's chip biz eyes rebound with new processes (7月2日付け The Korea Times)
→サムスン電子のDS部門は、長期にわたる収益低迷からの回復を目指し、1c DRAMや3nm、2nmノードなど、より微細なプロセスでチップ生産を進め、競争力を回復し、AI、ゲーム、およびモバイル向けチップの受注を獲得している。
◇Samsung completes development of 1c DRAM, paving way for HBM4 rollout―Samsung readies HBM4 with 1c DRAM developed on 10nm (7月3日付け DigiTimes)
→サムスン電子は、10nmプロセスを用いた第6世代DRAMの開発に成功した。この製品は社内のProduction Readiness Approval(PRA:生産準備承認)を取得し、主要な品質および性能基準を満たしたことを示しており、現在は量産前の最終段階にある。このマイルストーンにより、サムスンは2025年後半に第4世代高帯域幅メモリ(HBM4)の量産開始という目標に一歩近づいた。
【UMC関連】
台湾のファウンドリー、UMCが、先端6-nmそして先端実装への移行を検討と、以下の通りである。インテルとの連携も噂されている。
◇UMC floats 6nm ambition as 12nm with Intel inches forward―Reports: UMC explores 6nm process (7月1日付け DigiTimes)
→中国が半導体の自給自足を加速し、SMICなどのファウンドリを支援する中、台湾に拠点を置くUMCは、成熟ノード市場における圧力の高まりに直面している。競争力維持のため、UMCは6nmの取り組みを検討していると報じられている。
◇Taiwan’s UMC eyes advance chip market amid Chinese pressure (7月1日付け Taiwan News)
→UMCは、中国のSMICからの圧力が高まる中、競争力維持のため、6nmチップ生産と先進パッケージングへの移行を検討している。同社はAIと次世代チップのビジネスチャンスを模索する中で、コスト分担のパートナーを探している。
◇[News] UMC Reportedly Mulls Rejoining Advanced Node Race via Rumored Intel 6nm Tie-Up (7月2日付け TrendForce)
→UMCは、インテルとの提携拡大などを通じて、6nmプロセスによる生産も視野に入れ、先端チップ製造への回帰を目指している。2025年の設備投資を削減する一方で、成熟ノードの供給過剰リスクが高まる中、資産抑制戦略を模索し、先端パッケージングを強化しています。
【Nvidia関連】
現下の製品関連の動きについて、以下の通りである。製品世代更新の早さも受け止めている。
◇Nvidia's latest DLSS revision reduces VRAM usage by 20% for upscaling - optimizations reduce overhead of more powerful transformer model―Nvidia cuts VRAM use in DLSS transformer model 20%―VRAM optimizations apply strictly to Nvidia's transformer model, not frame generation. (6月28日付け Tom's Hardware)
→1)NVIDIAの最新のDeep Learning Super Sampling(DLSS)ソフトウェア開発キットには、メモリ最適化が含まれており、トランスフォーマーモデルのビデオランダムアクセスメモリ(VRAM)使用量を20%削減し、従来の畳み込みニューラルネットワーク(CNN)モデルとの整合性を高めている。1080pでは、新しいトランスフォーマーモデルのVRAM使用量は106.9MBから85.77MBに減少し、CNNモデルは60.83MBを使用している。
2)…こうしたメリットがあるにもかかわらず、実際のアプリケーションではVRAM使用量の改善はほとんど感じられないであろう。DLSSのメモリ容量が20%削減されても、4K解像度ではわずか80MBの削減にしか相当しない(1440pや1080pではなおさらである)。80MB(あるいはそれ以下)は、最新のグラフィックカードのVRAM容量と比較するとほぼ無視できるほどである。唯一の例外は8K解像度で、DLSSトランスフォーマーモデルは(NVIDIAの新しいVRAM最適化を適用しても)1GB以上のメモリを消費する。
◇Nvidia to axe Maxwell, Pascal, and Volta GPUs with end of driver support - 580 series drivers will be the last to support GTX 900 and 1000 cards―Developers: Nvidia to end driver support for older GPUs―Only a handful of Turing ‘GTX’ cards will remain supported after the 580 drivers. (7月1日付け Tom's Hardware)
→Unixグラフィックス機能の廃止スケジュールによると、NVIDIAは580ドライバシリーズのリリース後、GeForce GTX 700、900および1000シリーズのGPUsおよびVoltaクラスのカードのドライバサポートを終了する予定。580ドライバシリーズは、これらの古いGPUs向けのアップデートを含む最後のシリーズとなる。NVIDIAがアーキテクチャのサポートを終了したのは、2021年のKeplerベースのGTX 600およびGTX 700シリーズが最後。
◇NVIDIA Is Cutting Off Driver Support For GTX 700, 900, and 1000 GPUs After Driver Series 580―NVIDIA to End the GPU Driver Support for Maxwell, Pascal, and Volta GPUs After 580 Series Drivers (7月1日付け Wccftech)
→NVIDIA開発者チームは、NVIDIA GPUドライバー580ブランチから、これら3世代のGPUsの最後のドライバー アップデートを取得することを発表した。
◇Nvidia is giving trusty GTX 10-series GPUs the boot (7月1日付け XDA Developers)
→NVIDIAは、Pascal、Volta、およびMaxell GPUsのサポートを正式に終了する。NVIDIAのGame Readyドライバーの次期メジャーブランチ(580以降)以降、GTX 700、900、および10シリーズGPUsのサポートは終了する。また、VoltaベースのTitan Vのサポートも終了するが、Titan Vは8年近く前にリリースされた当時でさえニッチな製品であった。NVIDIAは現在ドライバー576.80を使用しており、580ブランチの開始時期は未定であるが、近いうちに開始される可能性が高い。
◇Nvidia's 16GB RTX 5060 Ti reportedly 16x more popular than its 8GB variant - German retailer figures suggest customers are steering clear of lower spec model―Higher VRAM drives gamers' GPU purchasing decisions―The people are gaining consciousness. (7月2日付け Tom's Hardware)
→現代のゲームがより多くのリソースを必要とし、ray tracingなどの機能が標準装備されるにつれ、8GB GPUsは対応に苦戦していると、Contributing WriterのHassam Nasir氏は記している。Mindfactory.deの販売データによると、NVIDIAのRTX 5060 Ti 16GBは8GB版よりも人気が高く、販売台数は16倍に上回っている。同様に、AMDの16GBカードは8GB版を上回っており、Radeon RX 9060 XT 16GBは8GB版の30倍以上の販売台数を記録している。
【DAC 2025】
第62回Design Automation Conference (DAC)(6月23−25日:サンフランシスコ)は、The Chips to Systems Conferenceとあらわされ、Agentic AI設計および3D-ICs, multi-die,チップレットがキーワードとなる様相。関連内容が以下の通りである。
◇Agentic AI platform automates three stages of design―Moores Lab AI debuts agentic AI tools for chip design (6月24日付け Electronics Weekly (UK))
→*Moores Lab AIは、チップ設計の3つの段階すべてが自動化・加速されると述べ、エージェントAIを活用した4つの設計ツールを発表した。
*エージェントAIは、サンフランシスコで開催された今年のDACで話題となったキーワードの一つだ。ジェネレーティブAIがコンテンツを生成するのに対し、エージェントAIは自動化プロセスである。人間の介入をほとんど必要とせず、自律的に意思決定を行い、それに基づいて行動する。
◇Arm: Chiplets Can’t Deliver on TCO Without an Ecosystem (6月27日付け EE Times)
→1)*EE Timesのチップレットイベントにおいて、ArmのEddie Ramirez氏は、今日のセミカスタムチップレットがテクノロジーのTCOメリットを制限していると警告した。
*DACで開催されたEE Times主催の「チップレットの未来」イベントで、ArmのEddie Ramirez氏は、業界に対し、堅牢な標準規格を採用し、真のチップレット市場を構築するよう呼びかけ、現在のセミカスタムアプローチでは、分散型SoCの経済的実現可能性が制限される可能性があると警告した。
2)Armのエディ・ラミレス氏は、チップ業界に対し、標準規格を採用し、真のチップレット市場を構築するよう強く求めた。ラミレス氏は、現在のセミカスタムアプローチはコスト効率を低下させていると警告し、協業、モジュール型ソフトウェア、そしてエコシステム全体にわたる導入の必要性を訴えた。
◇DAC 2025: Agentic AI In EDA Is Just Getting Started, And Chiplets Are All The Rage―Panel: Agentic AI emerging as key tool in EDA ―Agentic AI design and 3D-ICs, multi-die, and chiplets were a key part of this year’s DAC - The Chips to Systems Conference. (6月30日付け EE Times)
→1)先週サンフランシスコのMoscone Centerで開催された第62回DACで、特に印象に残った点を挙げるとすれば、チップ設計におけるエージェントAIの活用、そしてもちろん3D-ICs、マルチダイシステム、そしてチップレットといった最新トレンドであろう。
マイクロソフトのミッションシステム担当バイスプレジデント、William Chappell氏によるオープニング基調講演は、チップ設計におけるエージェントAIへの大きな関心を呼び起こしたことは間違いない。
2)DAC 62では、エージェンティックAIが注目を集めた。マイクロソフトとシノプシスは、チップ設計における協調型AIを展示した。専門家たちは、人間による監視、将来の価格モデル、そしてAI駆動型、マルチダイ、およびチップレットベースのシステムへの信頼の高まりを強調した。
3)DAC 62では、チップ設計におけるエージェントAIが重要なトレンドとして浮上し、MicrosoftとSynopsysが自律エージェント連携を展示した。議論は3D-ICs、チップレット、そしてAI主導設計における人間の役割とビジネスモデルの進化にも焦点が当てられた。