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摩擦最前線各様:米国政府、台湾政府、Huawei、Nvidia、およびASML

米国との半導体関税を巡る先行きも見通せないなか、各国&各社それぞれ摩擦最前線の現状があらわれている。米国政府は、主要半導体メーカーに対してこれまで米国製技術を中国に輸出することを認めている免除措置の撤回を検討する動きである。台湾政府は、中国のSMICとHuaweiを貿易ブラックリストに追加したが、米国の関税に対する危機感から減税交渉の推進があらわされている。各社で見ると、中国・Huaweiは自立化を進める一方、新型PCのプロセッサはこれまでと同じ7-nm品であり、Nvidiaは、好調な業績のなか、新機軸のphysical AIを打ち上げているが、米中の狭間で揺れ動く状況も続いている。先端装置のASMLは、中国での人材育成プログラム開始である。

≪立ち塞がる障壁&課題≫

米国政府が、中国に対して先端半導体技術の輸出を阻止する動きが、主要各社の中国の半導体工場で使われる製造装置に及ぼうとして、以下の通りである。

◇Chip stocks fall on report U.S. could terminate waivers for Taiwan Semi and others (6月20日付け CNBC)
→1)*ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、米国は一部の世界的な半導体メーカーに対し、米国製技術を中国に輸出することを認めている免除措置の撤回を検討していると報じられている。
  *同紙によると、商務省当局者は今週、サムスン電子、SKハイニックスおよびTSMCに対し、米国製半導体技術を各社の中国工場に輸出することを認めている免除措置を撤回する可能性があると伝えた。
  *この報道を受け、半導体株は金曜日に下落した。
 2)米国がサムスンやTSMCなどの半導体メーカーに対し、中国に技術を輸出することを認めている免除措置を撤回する可能性があるとの報道を受け、半導体株は下落した。この動きは貿易摩擦を深刻化させ、数十億ドル規模のAIチップの売上を脅かす可能性がある。

◇New US restrictions could prevent leading chip manufacturers from installing chipmaking tools in their China fabs - TSMC, Samsung, and SK hynix potentially impacted―US rethinks its validated end-user program for chip firms―Time to get afraid? Not for now. (6月22日付け Tom's Hardware)
→ロイター通信によると、米国政府は、大手半導体メーカーであるTSMC、サムスン電子およびSKハイニックスが中国の製造工場に先進的な半導体製造装置を導入することを阻止する規制の導入を検討しているという。検証済みエンドユーザープログラムが廃止された場合、これらの企業は、米国の輸出業者に対する現行の規制と同様に、出荷ごとに輸出許可の取得を義務付けられる可能性がある。

◇[News] If US Revokes Chip Tool Exemptions: Unpacking TSMC, Samsung, and SK hynix’s China Operations (6月23日付け TrendForce)
→米国はTSMC、サムスン、およびSKハイニックスといった半導体メーカーに対する輸出免除を取り消す可能性があり、中国における米国製装置へのアクセスが脅かされることになる。この動きは、主要な技術革新を遅らせ、承認手続きを長期にわたる個別審査へと移行させる可能性がある。

もう1つ、中国のDeepSeekを警戒する米国政府である。

◇DeepSeek aids China’s military and evaded export controls, US official says (6月24日付け Taipei Times)
→米国は、中国のディープシークが軍事および諜報活動を支援し、ダミー会社を利用して半導体輸出規制を回避し、そしてユーザーデータを北京に送信していると非難しており、プライバシー、セキュリティ、および米国技術の悪用に関する大きな懸念が生じさせている。

次に、台湾政府の関連であるが、中国のSMICとHuaweiをブラックリストに載せた一方、半導体関税への懸念の高まりがあらわされている。米国国内での半導体製造強化への協力が、台湾国内の弱体化を招かないか、と様々な問題意識の浮上である。

◇Why Taiwan's chip blacklist matters more to India than it seems (6月20日付け DigiTimes)
→1)台湾は、地政学的緊張の高まりを受け、SMICとHuaweiを自国の半導体産業から排除し、半導体輸出規制を強化した。専門家は、インドに対し、厳格な規制を制定しなければ台湾の先端半導体サプライチェーンから排除されるリスクがあると警告している。
 2)「米国と同盟関係にあるEUや西側諸国の数百の中国国外企業が、半導体供給の調達において中国企業の子会社として間接的に活動しているという理由だけで、台湾の半導体輸出規制対象エンティティリストに掲載されている」と、グリーンフィールドファブ、OSAT、および半導体投資アドバイザリーに特化した米国コンサルティング会社、Fab EconomicsのCEO、Danish Faruqui博士は述べた。

◇Taiwan's chip gamble will spell its doom (6月21日付け China Daily)
→米国のCHIPS法は、台湾の半導体産業の米国へのシフトを促し、TSMCはアリゾナ州でウェハを生産している。しかし、この動きは台湾の半導体エコシステムを弱体化させ、人材を流出させ、そして経済の安定と戦略的自立を危険にさらすと批判する声もある。

◇EDITORIAL: Tariff deal needed for chip industry (6月25日付け Taipei Times)
→台湾は、米国との減税交渉を早急に進める必要がある。米通商法232条に基づく半導体関税が台湾経済に深刻な打撃を与える可能性があるからだ。輸出の80%が影響を受ける中、TSMCなどの半導体メーカーはコスト上昇と需要減少を警告している。

米国進出強化を検討するASEも、同じ心境がうかがえている。

◇ASE mulling US capacity expansion (6月26日付け Taipei Times)
→1)不確実性:世界最大の半導体パッケージング・テストのASEテクノロジーは、生産能力の調整を行う前に、米国の関税政策を注視していると、同社幹部は述べた。
 2)関税をめぐる不確実性の中、ASEテクノロジーは米国における先端パッケージング事業の拡大を検討している。傘下のSPILは、NVIDIAの$500B規模のアリゾナAI計画を支持している。一方、ASEはAI主導の力強い成長を予測し、$2.5Bの設備投資戦略を堅持している。

関連各社に転じて、まずは中国・Huaweiである。自主路線強化が謳われ続くなか、同社の新型パソコンのプロセッサが、5-nm品ではなく、従来と同じ7-nm品とする分解調査結果があらわされている。以下、同社関連である。

◇Huawei opens HarmonyOS 6 to developers, unveils AI agents and cloud architecture updates―Huawei debuts HarmonyOS 6, AI models (6月21日付け South China Morning Post (Hong Kong))
→1)同社は最新OSの正式リリース日を明らかにしなかったものの、よりインテリジェントでオープンなOSになると発表した。
 2)Huaweiは、米国の制裁措置を受けながらも自社製ソフトウェアを強化するため、年次開発者会議でHarmonyOS 6、新しいAIモデル、そしてCloudMatrix 384 AIラックアーキテクチャを発表した。AIエージェントを搭載したHarmonyOS 6のベータ版は開発者向けに公開されているが、一般ユーザー向けのリリース日は未定。

◇How Huawei’s silicon strategy defies US sanctions to advance China’s AI ambitions (6月23日付け South China Morning Post)
→1)みずほ証券の推計によると、Huaweiは2025年に約70万台のAscend AIプロセッサを出荷すると予想されている。
 2)Huaweiは米国の制裁をものともせず、Ascend 910CとCloudMatrixシステムでAIチップ開発に再び力を入れ、LLM性能ベンチマークでNVIDIAを上回り、世界のAIインフラにおける強力なライバルとしての地位を確立している。

◇Huawei, SMIC struggle to advance chips to 5-nm level, MateBook shows: report―Analysis: Huawei, SMIC lag rivals as MateBook uses 7nm chips (6月24日付け South China Morning Post (Hong Kong))
→1)Huaweiが新たに発売したMateBook Foldノートパソコンは、2年前のMate 60 Proスマートフォンと同様に、SMIC製の7nmプロセス技術を採用したKirinチップを搭載している。
 2)Huawei Technologiesは、最新のノートパソコンハードウェアの分析結果から、5nmプロセス技術への移行において依然として課題に直面していることがわかった。これは、米国の制裁措置が同社に及ぼす影響を浮き彫りにしている。
  カナダの調査会社、TechInsightsが先週発表したレポートによると、新たに発売されたMateBook Fold Ultimate Designノートパソコンには、中国のSMICが7nmプロセス技術を用いて製造したHuaweiのKirin X90 SoCが搭載されている。
 3)HuaweiのMateBook Foldは依然としてSMICの7nmチップを採用しており、5nm技術への移行は見込まれていない。米国の制裁措置はHuaweiのチップ製造の進歩を阻害し続けており、TSMCを採用したAppleのMシリーズといった競合製品に比べて数世代遅れをとっている。

◇ファーウェイの新型PC「半導体は旧世代品」 カナダ調査会社が指摘 (6月25日付け 日経 電子版 16:38)
→カナダの調査会社テックインサイツは25日までに、中国の通信機器大手、華為技術がノート型パソコンの新商品に搭載する半導体は「従来と同じ旧世代品を使っている」との調査結果を発表した。米アップルなどに比べて数世代遅れ、技術の差が開いていると指摘した。ファーウェイは6日にノート型パソコンの新商品「MateBook Fold」など2機種を発表した。

次に、AI需要絶好調が続くNvidiaである。同社株主総会はじめいろいろな打ち上げが以下の通り行われているが、米中間のバランスに腐心する状況が引き続いている。

◇Nvidia’s ‘sovereign’ AI could win a prize for irony (6月21日付け Taipei Times)
→1)世界的な半導体チップ争奪戦は、ヨーロッパにおける新たな技術依存を強めるリスクをはらんでいる。
 2)NVIDIAのCEO、Jensen Huang氏は、ヨーロッパ全域で「主権AI」を推進し、NVIDIAのチップを搭載した国家データセンターの建設を訴えている。しかし、批評家たちは、ヨーロッパが米国の巨大IT企業に依存することで真の自律性が損なわれ、デジタル植民地主義のリスクが高まると主張している。

◇Nvidia CEO says robotics is chipmaker’s biggest opportunity after AI (6月25日付け CNBC)
→1)*エヌビディアのCEO、ジェンスン・フアン氏は、ロボティクスはAIチップメーカーである同社にとって二大成長機会の一つだと述べた。
  *5月、エヌビディアはロボティクス部門の四半期売上高が$567 millionで、全社売上高の約1%に達したと発表した。
  *フアン氏はエヌビディアの年次株主総会で、「私たちはとっくの昔に、自分たちをチップメーカーだと考えるのをやめた」と述べた。
 2)エヌビディアのCEO、ジェンスン・フアン氏は、ロボティクス、特に自動運転車がAIに次ぐ同社の次なる主要な成長エンジンだと述べた。現在の売上高は控えめだが、エヌビディアはロボティクスと自動車産業を、AIインフラを基盤とする数兆ドル規模のビジネスチャンスと捉えている。

◇Nvidia climbs to record high to become world’s largest stock again amid AI optimism―Nvidia surpasses Microsoft to become world's most valuable at $3.77T―With Wednesday’s gain, Nvidia overtakes Microsoft as the world’s largest stock (6月26日付け South China Morning Post (Hong Kong)/Bloomberg)
→AIチップのリーダーであるNVIDIAの株価は水曜25日に史上最高値まで上昇し、世界で最も価値のある企業の一つとしての地位を確固たるものにした。

◇Jensen Huang eyes physical AI as US manufacturing begins―Nvidia CEO offers vision for physical AI, US manufacturing (6月26日付け DigiTimes)
→エヌビディアのCEO、ジェンスン・フアン氏は、AIをロボット工学や製造業と統合する「フィジカルAI」の可能性について語り、アリゾナ州の新施設でエヌビディアのAIチップを生産する計画についても語った。「フィジカルAIはコンピューティングにおける最大の変革となるだろう」とフアン氏は述べ、「全く新しい産業を創出するだろう」と続けた。

◇NVIDIA、ファンCEOが総会でトランプ氏称賛 米中バランス苦慮 (6月26日付け 日経 電子版 11:00)
→米エヌビディアは25日、株主総会を開き、ジェンスン・ファンCEOが先端半導体の国内生産を推進するトランプ米政権の政策を称賛した。政権の対中輸出規制には反発しながらも生産拡大策を評価する――。ファン氏の言動には米中間でバランスを取ろうとする苦慮がにじむ。

そして、最先端半導体製造装置、EUVリソグラフィーのオランダ・ASMLである。米中の狭間の状況がここでもうかがえるが、中国での人材育成プログラムの開始が以下の通りである。

◇ASML launches science project in China to discover new talent in lithography (6月26日付け South China Morning Post (Hong Kong))
→1)*同社によると、このコンテストは「参加者がリソグラフィー技術を深く探求するための機会」を創出することを目指している。
  *欧州の半導体製造装置大手、ASMLは、米国による先進的な半導体製造技術への規制強化にもかかわらず、中国市場へのコミットメントを示す新たな取り組みとして、中国における主要なエンジニアリング人材の発掘・育成を目的としたプロジェクトを開始した。
   オランダのリソグラフィーシステムメーカーであるASMLは、同社の公式WeChatアカウントへの投稿によると、シリコンウェーハに回路パターンをエッチングする重要なプロセスであるリソグラフィーに関する一般の理解を深め、中国における新たな技術系人材の育成を目的とした科学コンテストを開始した。
 2)ASMLは、米国の規制下にもかかわらず、リソグラフィーに関する理解を深め、半導体関連人材の獲得を目指し、中国で科学コンテストを開始した。受賞者は、面接の機会を得たり、ASMLの人材プールに加わったりする可能性がある。

◇Top semiconductor toolmaker launches talent competition in China - ASML is looking for 16 skilled lithography engineers―ASML launches talent program in China to find engineers―101 engineers will get their chance. (6月27日付け Tom's Hardware)
→ASMLは、中国におけるリソグラフィの知識を促進し、熟練エンジニアを発掘するための人材育成プログラムを開始した。業界の専門家と科学愛好家を対象としたこのオンラインコンテストでは、優秀な参加者に面接の機会が提供される。

先行き予断を許さない状況が引く続く中、当面は各国・地域、そして主要各社の動き&対応の推移に注目するところである。


激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。

□6月23日(月)

イラン攻撃、そして薄氷の合意、を受けて以下の推移である。

◇Shares advance, oil prices settle sharply lower as markets shrug off Iran conflict―Dollar, oil rise as Iran strike sparks safe-haven demand (Reuters)
→米国のイラン攻撃を受けて安全資産としての需要が再燃し、ドルが上昇し、原油価格も急騰した。市場は慎重な反応を示したものの、アナリストは、イランが報復措置を取れば、特に世界の原油供給にとって極めて重要なホルムズ海峡が脅かされれば、緊張が高まる可能性があると警告している。投資家は地政学的リスクと、影響の抑制と中央銀行による安定した支援への期待を比較検討しているため、株式市場の下落は抑制された。

□6月24日(火)

◇Stock Market Today: Oil Slides, S&P 500 Gains After Trump Brokers Truce―Markets mixed on confirmation of Israel-Iran cease-fire―Global stocks rally, despite Israel and Iran accusing each other of breaching the cease-fire (The Wall Street Journal)
→イスラエルがイランとの停戦を確認し、地域的緊張緩和の可能性を示唆したことを受け、世界市場は上昇した。しかし、両陣営によるミサイル発射が依然として続いているとの報道を受け、停戦の履行に疑問が生じ、上昇は抑制された。原油価格は火曜24日早朝も下落を続け、月曜23日の下落幅を拡大し、紛争開始前の水準に戻った。投資家がこれらの織り交ぜられたシグナルを注視する中、ダウ先物は小幅上昇した。

中東情勢の落ち着き具合、そして米国企業の突出した利益を受けて、以下の通り上げ基調で締めた今週の米国株式市場である。

◇NYダウ続伸374ドル高 限定的なイラン報復、原油下落が支え (日経 電子版 06:11)
→23日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前週末比374ドル96セント(0.88%)高の4万2581ドル78セントで終えた。中東情勢が緊迫する中、米軍による核施設への攻撃を受けたイランの報復がこれまでのところ限定的なものにとどまっている。米原油先物相場が急落し、投資家心理を支えた。ダウ平均の上げ幅は400ドルを超える場面があった。

□6月25日(水)

◇イラン・イスラエルともに「勝利宣言」 薄氷の合意、停戦初日は順守 (日経 電子版 05:08)
→トランプ米大統領が発表したイランとイスラエルの停戦合意初日となった24日、攻撃の応酬はひとまず沈静化した。イラン・イスラエルともに勝利宣言し、停戦を受け入れる姿勢を示した。ただ、イスラエルが強硬路線をどこまで修正したのかは不明で、混乱するイラン指導部の出方も読みにくい。SNSで一方的に発表された異例の合意は不安定さも抱える。

□6月26日(木)

◇NYダウ反落106ドル安、持ち高調整の売り優勢 NVIDIAは最高値 (日経 電子版 05:52)
→25日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4営業日ぶりに反落し、前日比106ドル59セント(0.24%)安の4万2982ドル43セントで終えた。イスラエルとイランの停戦合意を受けて投資家心理が改善し、前日に主要株価指数がそろって大幅高となった後で、短期的な持ち高調整の売りが優勢となった。半面、ハイテク株への買いは相場を支えた面もあった。

 □6月27日(金)

◇NYダウ反発、404ドル高 ナスダックは年初来高値 (日経 電子版 06:41)
→26日の米株式市場でS&P500種株価指数は前日比0.8%高の6141で引けた。2月につけた最高値(6144)に迫った。ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数も前日比1%高となり、年初来高値を更新した。中東情勢や関税を巡る過度な懸念の後退が相場を支えた。ダウ工業株30種平均も反発し、前日比404ドル(0.9%)高の4万3386ドルで引けた。S&P500とナスダックは、取引時間中に最高値を上回る場面があった。

米国の「報復税」撤回という顛末である。

◇米、報復税「899条」撤回 国際最低法人税率の米企業例外でG7合意 (日経 電子版 07:55)
→ベッセント米財務長官は26日、「報復税」と呼ばれる内国歳入法899条の新設を見送るよう米連邦議会に要請した。議会指導部は即日受け入れた。問題視していた国際的な最低法人税率の枠組みで、G7が米国の意向に沿う合意に至ったことを評価した。

米中の貿易協定の最終決定が、次の通りあらわされている。落ち着き具合の確認を要するところである。

◇China confirms details of U.S. trade deal―US, China finalize trade agreement (CNBC)
→1)*中国は、輸出管理規則の対象となる品目について、適格なライセンスを審査・承認すると述べている。
  *声明によると、米国はこれに対応して、北京に対して課している既存の一連の制限措置を撤廃する。
  *ドナルド・トランプ米大統領は木曜26日、「我々は昨日中国と署名したばかりだ」と述べた。
 2)Howard Lutnick米商務長官によると、米中はジュネーブで初めて概要が示された貿易協定を最終決定した。ラトニック長官によると、この合意には、米国が対抗措置を解除する見返りに、中国が希土類元素を供給するという約束が含まれている。この合意は、7月9日の期限を前に、主要10カ国との貿易協定を確保するためのホワイトハウスの広範な取り組みの一環となる。

□6月28日(土)

AI需要が引っ張る米国企業の業績拡大の状況が、改めてあらわされている。

◇S&P500とナスダック最高値 突出する米企業利益、マネー回帰 (日経 電子版 06:21)
→27日の米株式市場で、主要な株価指数S&P500種株価指数が約4カ月ぶりに史上最高値を更新した。相互関税の発表直後に起きた「米国資産売り」から一変し、マネー回帰を促したのは米主要企業の継続的な利益成長だ。関税影響や米経済の減速という逆風下でもAI関連などがけん引する業績拡大が日欧を圧倒する。
 ダウ工業株30種平均は、前日比432ドル高の4万3819ドルで引けた。


≪市場実態PickUp≫

【Micron関連】

今回は、メモリ半導体の3社にまず注目している。
最初に、四半期業績発表を行った米国・Micronである。AI関連が引っ張って好調な結果&見通し、そして最新のHBM4対応、と以下の通りである。

◇Micron reports earnings, revenue beat and issues strong forecast (6月26日付け CNBC)
→1)*マイクロンは第3四半期の売上高と利益が予想を上回った。
  *株価は時間外取引で上昇したが、その後上昇幅の大部分を縮小した。
  *同社の業績見通しも市場予想を上回った。
 2)マイクロンは、AI関連の堅調な需要を背景に、1株当たり利益$1.91、売上高$9.3Bとウォール街の予想を上回った。データセンターの売上高は倍増し、第4四半期の売上高はアナリスト予想を大きく上回る$10.7Bと予想した。

◇Micron shares rise on bets of strong demand for AI-related memory chips―Micron forecasts robust growth on AI memory chip demand (6月26日付け Reuters)
→マイクロン・テクノロジーの株価は、AIデータセンターを支えるメモリチップの需要が急増していることを受けて、同社が第4四半期の売上高について力強い見通しを示したことを受け、木曜26日の市場前取引で2%上昇した。同社は第3四半期に、高帯域幅メモリ(HBM)チップの売上高が約50%増加した。

◇Micron jumps on AI chip demand, strong Q4 forecast―Micron ups investment in HBM to meet AI chip demand (6月26日付け Tech in Asia (Singapore)/Reuters)
→マイクロン・テクノロジーの株価は、同社が第4四半期の好調な売上高見通しを発表したことを受け、6月26日の市場前取引で2%上昇した。この見通しは、AIデータセンターで使用されるメモリチップの需要増加に牽引されている。

◇米マイクロン、最新世代HBMをサンプル出荷 (6月26日付け 日刊工業)
→米マイクロンテクノロジーはHBMの最新世代「HBM4」のサンプル出荷を始めた。DRAMの積層数は12層。前世代のHBM3Eに比べ、60%以上の性能向上となり電力効率も20%以上高めた。量産開始は2026年を予定する。HBM4ではシェア首位の韓国SKハイニックスが先んじてサンプル出荷を開始。韓国サムスン電子も開発を進め、競争が激しい。

◇[News] Can Global Fab Expansion Keep Up with Micron’s HBM Surge? Timeline Update from U.S., Japan & India (6月27日付け TrendForce)
→マイクロンの2025年度第3四半期の売上高は、HBM売上高の50%増により急増し、年末までに市場シェア25%獲得という野心的な目標を後押しした。
 同社はニューヨークでの生産遅延にもかかわらず、米国、日本、およびインドでの生産を急速に拡大している。


【Samsung関連】

次に、メモリではSK Hynix、ファウンドリーの先端ロジックではTSMCと、相対する立て直しが求められるSamsungについて、以下の通りである。

◇Samsung Electronics seeks turnaround in HBM in biannual strategy meetings: sources (6月22日付け Yonhap News Agency)
→サムスン電子は、SKハイニックスに後れを取ったHBM市場でのリーダーシップ奪還に向けた戦略を練っている。AI需要の急増を受け、HBM4の生産を含む取り組みを強化し、NVIDIAのサプライチェーンに再参入し、DRAM市場シェアを奪還しようとしている。

◇1.4nm put on ice: Samsung reportedly reroutes foundry push to 2nm yield gains―Reports: Samsung delaying 1.4nm test line to focus on 2nm yield (6月24日付け DigiTimes)
→サムスン電子は、1.4nmテスト生産ラインの構築計画を延期し、2025年後半までに量産開始が見込まれる2nmノードの歩留まりと生産能力の向上に重点を移すと報じられている。

◇[News] Samsung Pushes for 2nm Breakthrough as Industry Bets on TSMC’s 3nm FinFET (6月25日付け TrendForce)
→サムスンはTSMCに対抗すべく2nmプロセスの開発を加速させているが、性能差への懸念は依然として残っている。一方、TSMCは3nmプロセスのラインナップを強化し、主力SoCsで圧倒的なシェアを獲得し、顧客需要の高まりを受けて米国での生産を拡大している。

◇[News] Samsung Nears Qualcomm 2nm Deal as Foundry Recovery Gains Momentum (6月26日付け TrendForce)
→サムスンは、苦戦するファウンドリ事業の立て直しに向けた重要な動きとして、クアルコムとの2nmプロセスを用いたハイエンドチップ生産に関する契約締結に近づいていると報じられている。歩留まりの向上とプレミアムSnapdragonチップのテストは、今後の進展と競争力の回復を示唆している。


【SK Hynix関連】

そして、この第一四半期ではSamsungを抜いてメモリ半導体No.1になったとされるSK Hynixである。HBM需要でどこまで引っ張れるか、今後に注目である。

◇SK Group teams up with AWS for Korea's largest W7tr AI data center (6月22日付け The Korea Herald)
→*2027年に稼働開始予定のこの巨大プロジェクトは、李在明大統領就任以来最大の企業投資となる。
 *SKグループは日曜22日、Amazon Web Servicesと提携契約を締結し、UlsanにAIデータセンターを共同建設することで、韓国におけるクラウドインフラの拡充を図ると発表した。
  SKはAWSからの投資による$4 billionを含む7兆ウォン($5.1 billion)を投資する計画だ。このデータセンターは2027年までに稼働を開始し、事業拡大に伴い最大7万8000人の直接・間接雇用を生み出す予定だ。

◇SK Hynix reportedly clinches custom AI memory orders from Nvidia, Microsoft, Broadcom (6月23日付け DigiTimes)
→The Korea Economic DailyとHankyungによると、SKハイニックスは、AIに最適化されたメモリを供給する競争においてライバルのサムスンを上回り、NVIDIA、Microsoft、およびBroadcomからカスタム高帯域幅メモリ(HBM)の注文を獲得した。

◇SK hynix's market cap tops 200 tln won for 1st time on optimistic chip demand (6月24日付け Yonhap News Agency)
→SKハイニックスの時価総額は、HBMの堅調な需要、中東情勢の緩和、そしてAIチップにおけるリーダーシップに牽引され、初めて200兆ウォンを突破した。株価は7.13%上昇し、サムスンに次ぐ地位を確固たるものにした。

◇SK hynix considering building new back-end process plant in S. Korea: sources (6月24日付け Yonhap News Agency)
→SKハイニックスは、Cheongju(韓国の清州市)に古い施設に置き換えて、新たなチップパッケージング工場を建設する。この最新鋭の「P&T 7」工場は、革新的な半導体パッケージングに対する需要の高まりを受け、高帯域幅メモリ(HBM)の性能向上に貢献する。

◇SK Hynix debuts 16-layer HBM4, set to power AI chips in 2026―SK Hynix introduces HBM4 with 16 layers (6月27日付け DigiTimes)
→SK HynixはHPE Discover 2025(6月23−26日:Las Vegas)で16層の第6世代高帯域幅メモリ(HBM4)を初めて公開し、HBM4分野での技術的リーダーシップの維持を目指し、幅広い注目を集めている。


【インテル関連】

インテルの最先端技術、そして事業再構築の取り組みが、以下の通りである。

◇Intel details 18A process technology - takes on TSMC 2nm with 30% density gain and 25% faster generational performance―Intel sizes up 18A process tech against TSMC's 2nm (6月23日付け Tom's Hardware)
→インテルは、TSMCの2ナノメートルプロセスと直接競合すると予想される18Aプロセス技術の詳細を発表した。同社によると、18AはIntel 3と比較してトランジスタ密度が30%向上し、消費電力は36%削減される。18Aを採用した最初の製品は、インテルのPanther Lake CPUとなる。

◇[News] ASML’s High-NA EUV May Play a Smaller Role in Future Chipmaking, Intel Director Reportedly Claims (6月23日付け TrendForce)
→インテルは、GAAFETやCFETといった新しいトランジスタ設計の進展に伴い、将来のチップ製造はリソグラフィーよりもエッチングに大きく依存するようになるだろうと示唆している。一方、中国企業がエッチング装置の開発を進める中、TSMCとサムスンは高開口数EUVの採用を遅らせている。

◇[News] Intel Reportedly Braces for Major Layoffs on July 15, Closes Automotive Unit (6月25日付け TrendForce)
→インテルは7月15日より大規模なレイオフを開始し、従業員の最大20%を削減する可能性がある。同社はまた、より広範なコスト削減とリストラ戦略の一環として、自動車部門の閉鎖とマーケティング業務のアウトソーシングも実施する。

インテルCEOを退任したPat Gelsinger氏の現況が、以下の通りあらわされている

◇日米半導体協業に意欲 インテル前CEO、VCに転身 (6月25日付け 日経)
→米半導体大手インテルのCEOを2024年12月に退任したパット・ゲルシンガー氏が24日、都内で講演し「米企業と日本企業のパートナーシップを構築する」と語った。同氏は3月にベンチャーキャピタルに転じた。投資先企業を支援する一環で、日本の半導体や素材メーカーとの協業に意欲をみせた。
 米VCのプレイグラウンドグローバルのゼネラルパートナーとして来日した。最先端半導体の量産を目指すラピダスについては「TSMCに追いつこうとするなら根本的な差異化技術が必要だ」とした。

◇Former Intel CEO Gelsinger has some advice for Japan's Rapidus―Ex-Intel CEO: Rapidus needs unique tech to compete (6月27日付け The Japan Times)
→インテルの元CEO、Pat Gelsinger氏は、ラピダスに対し、先端半導体市場で競争するために独自の技術を開発するよう助言した。ゲルシンガー氏は日本によるラピダスへの支援を称賛する一方で、技術面での差別化がなければ、TSMCのような企業に追いつくのは困難だと警告した。


【AI関連】

いろいろな切り口で激動&激変を受け止めるAI関連である。アップデートの明け暮れで終わってしまいそうな、改めての雰囲気ではある。

◇AI規制、欧州が「変節」 安全から開発重視へ 米中と格差懸念 (6月23日付け 日経)
→世界のAI規制を先導していたEUが、厳格な規制から開発重視にかじを切った。安全性や消費者保護を重視してきた欧州の方針転換で、他の国々のAI関連ルールも自国の産業振興を優先したものになっていく可能性が高まっている。

◇AI拠点、ベトナム活況 クアルコム、東南ア初研究所 エヌビディアも新設 (6月26日付け 日経)
→世界の半導体大手がベトナムでAIの研究開発拠点を整備する。米クアルコムはこのほど東南アジア初の拠点を開き、米エヌビディアも新設を計画。ベトナムはIT人材が豊富でAIの技術者も輩出している。各社はAI開発競争の激化を受け人材囲い込みを急ぐ。

◇メタ、OpenAI研究者3人引き抜き 「超知能」開発に移籍金140億円提示 (6月27日付け 日経 電子版 05:39)
→米メタが高度なAI「スーパーインテリジェンス(超知能)」の開発に向け、米新興オープンAIから研究者3人を引き抜いたことが明らかになった。メタは人材獲得に向けて$100 million(約145億円)の移籍金を提示したケースがある。一部のAI人材を巡りテクノロジー企業間の争奪戦が激しくなっている。


【キーワード】

日進月歩の半導体の世界で一概に評定が難しいところであるが、現下の動きの中から今後に向けたキーワードと受け止めている。

[high-NA EUV]

◇Are Larger Reticle Sizes On The Horizon?―High-NA EUV faces stitching challenge―The stitching process for 1nm litho faces yield challenges with high-NA EUV. (6月19日付け Semiconductor Engineering)
→高開口数EUVリソグラフィーへの移行は、露光フィールド間の回路のつなぎ目に関する課題を浮き彫りにし、設計、歩留まりおよび製造性に関する懸念を引き起こしている。解決策の一つとして、レチクルサイズを6インチ×6インチから6インチ×11インチに拡大することが挙げられる。これによりつなぎ目はなくなりますが、インフラの大幅な変更が必要になる。

◇Disruptive Changes Ahead For Photomasks?―Transition to larger mask formats could disrupt industry―Evolving lithography demands are challenging mask writing technology, and the shift to curvilinear is happening. (6月25日付け Semiconductor Engineering)
→1)HJL Lithography、D2S、Micron TechnologyおよびPhotronicsの専門家が、フォトマスク業界が直面する課題、特に高開口数極端紫外線(NAEUV)リソグラフィーにおける6×12インチマスクへの移行に伴う潜在的な混乱について議論している。この移行は、マスク製造インフラの変革を迫り、マスク描画装置から検査装置に至るまで、あらゆるものに影響を及ぼす可能性がある。
 2)半導体専門家は、個々のマスクのコストはチップの総生産量に比べれば小さいように見えるかもしれないが、複雑性の増大、EUVレチクルの磨耗、そして新しい大型マスクがマスク製造インフラ全体に破壊的でコストのかかる変化をもたらしていると強調している。

[ファウンドリー2.0]

◇TSMC’s 35% Market Share Makes It World’s Biggest Chipmaker With Intel In 2nd Place, Shows Data (6月24日付け wccftech)
→1)TSMCは、AIチップの需要と先進的な製造技術の発展に牽引され、2025年第1四半期に $72.3B規模のファウンドリー2.0市場において35%のシェアを獲得し、市場をリードした。フォトマスクとパッケージングにおける同社の優位性は、IntelとSamsungに対する優位性をさらに強固なものにしている。
 2)TSMCは、AIチップの需要と高度なパッケージングに牽引され、ファウンドリー2.0市場で35%のシェアを維持し、首位を維持している。Counterpoint Researchによると、インテルが2位につけ、サムスンは製造歩留まりに苦戦している。

◇Global Semiconductor Foundry 2.0 Market’s Q1 2025 Revenue Jumps 12% YoY Driven by AI Chip Demand (6月24日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→世界の半導体ファウンドリー2.0市場の収益は、2025年第1四半期に前年同期比13%増の$72.29 billionに達した。その主な要因は、AIおよび高性能コンピューティング(HPC)チップの需要急増で、先進ノード(3nm、4/5nm)および先進パッケージング(CoWoSなど)のニーズが高まったことである。

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