情勢を受け入り混じる動き:中国の米国依存脱却、台湾の内外基地展開
米国と中国の間の関税をめぐる応酬、米国製AI半導体の輸出規制など先々の摩擦の可能性を孕んだ情勢を受けて、中国および台湾それぞれに入り混じる動きの様相が見られている。HuaweiのAI半導体の中国顧客への出荷が来月にも予定され、性能もNvidiaに急迫するとのこと。中国はすぐ後ろに迫っていると、NvidiaのCEO、Jensen Huang氏の危機感溢れるコメントである。米国依存を脱却、規制強化で今後収まるかという動揺の空気である。台湾では、最先端は台湾でのみ行い、海外は少なくとも1世代遅らせる方向が改めてあらわされている。米国の関税に迫られる中、アリゾナ州では第3工場建設の取り組みと、狭間の内外基地展開が行われている。
≪制約を受ける中の強みの発揮≫
まずは中国について、米中摩擦からインテルの旧型半導体への需要の高まりが次のようにあらわされている。
◇Intel’s older chips get a second life from US-China trade tensions (4月25日付け South China Morning Post)
→1)経済見通しの悪化と米中間の関税により、顧客はより安価な旧型プロセッサーに頼るようになった。
2)インテルは、米中貿易摩擦、関税懸念、および経済不安により、顧客がより安価なプロセッサーを備蓄するようになったため、旧型のPCおよびサーバー用チップの需要が急増したと見ている。幹部は、この傾向はより新しいAI対応チップの採用に支障をきたす可能性があると警告した。
米国製半導体輸入への報復関税が控え目に免除されているとのこと。
◇China said to waive retaliatory tariffs on some US chip imports in sign of trade war thaw (4月26日付け MSN)
→Caijingが業界筋の話を引用して報じたところによると、中国は米国からの半導体輸入品に対する125%の報復関税を静かに免除した。この動きは、最近の出荷に対する払い戻しとともに、貿易摩擦の緩和とサプライチェーンの安定化を示唆している。
特に注目は、HuaweiのAI半導体関連の動きであり、以下の通りである。
◇China’s Huawei develops new AI chip, seeking to match Nvidia, WSJ reports (4月27日付け CNBC)
→ファーウェイは、NvidiaのH100に匹敵する強力な新型AIチップ「Ascend 910D」のテスト準備を進めている、とWall Street Journalが報じている。ファーウェイの先進的な910Cチップの中国顧客への大量出荷は、早ければ来月にも始まる可能性がある。
◇Huawei chip to take on Hopper―Reports: Huawei to sample AI chip to rival Nvidia Hopper (4月28日付け Electronics Weekly (UK))
→1)5月末に、ファーウェイは、Nvidiaの2022年ヴィンテージのHopperプロセッサ、H100に対抗することを目的としたAscend 910D AIプロセッサをサンプル出荷する意向である、とWall Street Journalが報じている。
2)報道によると、ファーウェイはNvidiaのHopper H100と競合することを目指し、5月にAscend 910D AIプロセッサをテストする予定だという。910Dは、SMICの7ナノメートルプロセスを使用して2026年の第1四半期に量産される予定であり、AIトレーニングのワークロードではH100に及ばないかもしれないが、AIの推論タスクで優れた性能を発揮し、データセンターの効率を向上させることが期待されている。
◇Huawei to start testing Ascend 910D AI chips next month (4月28日付け New Electronics (UK))
→ファーウェイ・テクノロジーズは、最新かつ最も強力な人工知能(AI)プロセッサー「Ascend 910D」のテスト準備を進めているという。
一方、Nvidia GPUsの備蓄について、次の通りあらわされている。
◇Tencent, Alibaba buy Nvidia GPUs from ByteDance stockpile, report says―Report: Tencent, Alibaba purchase ByteDance's Nvidia GPUs (4月29日付け South China Morning Post (Hong Kong))
→*中国への輸出が禁止されているNvidiaのH20チップ$13.7 billion相当をByteDanceのライバルが一部購入
*中国のテクノロジー大手、Tencent HoldingsとAlibaba Group Holdingは、TikTokのオーナーであるByteDanceから相当数のグラフィック・プロセッシング・ユニット(GPUs)を購入、ビジネス・ニュース・アウトレット・Caijingの報道によると、同社は以前、約1000億元($13.7 billion)相当のチップを備蓄していた。
Nvidiaに対中国の取り組み、そして同社CEO、Jensen Huang氏の中国、特にHuaweiを意識したコメントが続いている。
◇Nvidia denies China joint venture report after CEO’s whirlwind visit to Beijing, Shanghai (4月29日付け South China Morning Post)
→1)合弁計画の否定は、米チップ大手の同社が激化する米中技術戦争を乗り切ろうとしている最中に行われた。
2)エヌビディアは、米国のチップ輸出規制を回避するために中国での合弁事業を計画しているとの報道を否定した。同社は、米国の規制強化に対応しながら中国市場シェアを維持しようとする努力の中で、この主張には「根拠がない」と強調した。
◇Nvidia CEO Jensen Huang warns China is ‘not behind’ in AI (4月30日付け CNBC)
→1)*NvidiaのJensen Huang CEOは、AIの分野で「中国は遅れていない」と述べ、ファーウェイは「世界で最も手ごわいテクノロジー企業のひとつだ」と語った。
*フアン氏はワシントンD.C.で開催されたテックカンファレンスで講演した。
*「中国は我々のすぐ後ろにいる。」とフアン氏。「我々は非常に近い。これは長期的で無限の競争であることを忘れないでいただきたい。」
2)Nvidiaのジェンセン・フアンCEOは、中国はAIで米国に僅差で遅れをとっているだけだと述べ、ファーウェイの急速な進歩を賞賛した。同氏は、米国のチップ輸出規制が裏目に出る可能性があると警告し、競争力と国内のAIインフラを強化する政策を促した。
◇Huawei AI server out-performs Nvidia’s most powerful AI server―Huawei's AI server delivers more power for a price (5月1日付け Electronics Weekly (UK))
→1)Nvidiaの最も強力なAIサーバーであるGB200 NVL72の3倍のコストと3.9倍のパワーを使用するものの、Ascend 910Cチップを搭載したファーウェイのCloudMatrix 384クラスタは、2倍の計算性能を実現する。
2)ファーウェイは、コンピューティング能力でNvidiaのGB200 NVL72を上回るCloudMatrix 384 AIサーバーを発表した。CloudMatrix 384は3倍の$8 millionで、4倍近い電力を消費するが、2倍の計算性能を実現し、中国のAI開発にとって資産となる。
◇Nvidia CEO urges Trump to change rules for AI chip exports to spread US tech globall (5月1日付け South China Morning Post (Hong Kong)/Bloomberg)
→*Jensen Huang氏はまた、中国が技術面で手ごわいライバルに成長しつつあると警告し、ファーウェイを特別視した。
*エヌビディアのジェンセン・フアンCEOは、トランプ政権がAI技術を米国から世界に輸出する際の規制を変更することで、米国企業が将来的にビジネスチャンスをより生かせるようになることを望んでいると述べた。
◇Nvidia's CEO says China is not far behind the U.S. in AI capabilities―Nvidia CEO points to narrowing AI gap between China, US―"There is no question that Huawei is one of the most formidable technology companies in the world" (5月2日付け Tom's Hardware)
→NvidiaのJensen Huang(ジェンセン・フアン)CEOは、AIソフトウェアとハードウェアの開発において、中国はアメリカとほぼ肩を並べていると述べた。「中国は誰よりも遅れているのではなく、中国は我々のすぐ後ろにいる。」とHuang氏。Huawei TechnologiesはCloudMatrix 384の出荷を開始しており、NvidiaのGB200 NVL72とは効率は劣るものの、ほぼ競合すると見られている。
米中関税戦争の中国市場での影響、そして中国の半導体メモリメーカーの台頭が以下の通り。メモリ価格の今後に注目を要するところである。
◇「世界の工場」中国・広東、関税戦争が直撃 減産や出荷停止―アジアVIEW (4月30日付け 日経 電子版 16:54)
→製造業が集積する中国南部の広東省を米中の関税戦争が直撃している。同省はスマートフォンからゴム草履まで様々な工場があり、中国の輸出をけん引してきた。トランプ米政権が中国製品に累計145%の追加関税を課し、中国も米製品に高関税を設定。地域を支える町工場への影響は大きく、長引けば社会不安を招きかねない。
◇半導体メモリー 中国が相場下げ、補助金政策で競合の5割安も 世界の大口価格に波及 (5月2日付け 日経)
→半導体メモリー市況で中国大手の存在感が増している。技術革新により供給先が中国国内を中心に拡大し、価格競争力も高まっているためだ。政府の補助金政策により中国国内では他国製に比べ5割程度安いケースもあり、世界の大口取引相場を下押しする一因になっている。
半導体メモリーはパソコンやスマホなど電子機器の内部でデータを保存する記憶媒体だ。短期記憶を担うDRAMや、長期記憶を担うNAND型フラッシュメモリーなどがある。世界大手は米国のマイクロン・テクノロジーや韓国のサムスン電子、SKハイニックスなど。ただNANDは中国のYMTC、DRAMはCXMTがシェアを伸ばしている。
上記のNvidiaのCEO、Huang氏のコメントに関連してか、トランプ政権でのAI半導体輸出規制の動きが出始めている。
◇Exclusive: Trump officials eye changes to Biden's AI chip export rule, sources say (4月30日付け Reuters)
→Trump政権は、AIチップへの世界的なアクセスを制限するBiden時代のルールの変更に取り組んでおり、これには、一国が入手できる先端半導体の数を決定するのに役立つ世界を階層に分けることを廃止する可能性も含まれる、とこの件に詳しい3人の情報筋が述べた。情報筋は、計画はまだ議論中であり、変更される可能性があると警告している。しかし、もしこれが実現すれば、貿易交渉において米国製チップをさらに強力な交渉ツールとして使う道が開かれることになる。
◇Washington May Regret Overextended AI Chip Controls―Ever-tightening restrictions are boosting Chinese firms. (4月30日付け Foreign Policy)
→米国政府はチップの輸出規制を強化し、Nvidia、AMD、およびIntelがNvidiaのH20やAMDのMI308のような広帯域GPUsを無許可で中国に販売することを禁じており、先端AI技術へのアクセスの制限を狙っている。
◇Nvidia says Anthropic is telling ‘tall tales’ in its defense of U.S. AI chip restrictions on China (5月1日付け CNBC)
→1)*NvidiaとAnthropicは、米国のチップ輸出規制の発動を控え、AI政策で意見が分かれている。
*アマゾンを支援するAnthropicは、中国の密輸の手口は 「人工の赤ちゃんのこぶ」にチップを隠したり、「生きたロブスターと一緒に梱包する」ことだと述べた。
*Nvidiaの広報担当者は、この主張を「嘘っぱち」と呼び、競争力を制限するために政策を利用することを非難した。
2)Nvidiaは、Anthropicが米国のチップ輸出規制の強化を推進していることを非難し、その密輸の主張は馬鹿げていると述べた。Anthropicは、アメリカのAIのリードを守るために、より強力な執行を促したが、Nvidiaは、そのような政策はイノベーションを傷つけ、中国のようなグローバルな競争相手に力を与える可能性があると警告した。
米国のAI半導体規制がどう転ぶか、引き続き注目するところである。
次に、台湾について、最先端半導体プロセス技術は台湾の中で取り組み、海外展開は1世代古いものに限定と、次の通りである。
◇Taiwan's government strengthens 'silicon shield,' restricts exports of TSMC's most advanced process technologies―Reports: Taiwan set to bolster its "silicon shield"―Plus, tighter control of Taiwanese companies investing in overseas assets. (4月28日付け Tom's Hardware)
→台湾は、産業革新法(Industrial Innovation Act)の改正に基づき、先端半導体技術の輸出および対外投資の規制を強化しようとしている。該N-1政策は、TSMCの最新生産ノードの輸出を制限し、海外展開を1世代古いものに限定する。
TSMCの米国での取り組み&動き関連が以下続いていく。特に、米国政府を意識したアリゾナ州での第3半導体工場の建設である。
◇IFTLE 626: Rumors Swirl about Intel and TSMC; Update on Panel Level Processing (PLP) (4月29日付け 3DInCites)
→インテルとTSMCは、TSMCが20%の株式を取得し、資本の代わりにチップ製造のノウハウを共有する合弁会社を設立することで合意したと報じられている。米国政府は、苦境にあるインテルの製造事業を活性化させるため、この取引を開始したとされている。
◇TSMC committed to Arizona chip plant ahead of potential tariff impact―TSMC begins construction of third Ariz. chip plant―TSMC's investment is the biggest foreign investment ever (4月30日付け TechRadar)
→TSMCは、アリゾナ州で第3のチップ工場の建設を開始、関税の脅威と許可取得の容易さが原動力である。このプロジェクトはTSMCの米国半導体製造への$100 billion投資計画の一環である。第1工場はすでに量産を開始しており、第2工場の建設も完了している。
◇TSMC begins construction on third US semiconductor plant (4月30日付け Tech in Asia)
→TSMCはアリゾナで3番目のチップ工場に着工し、米国での投資総額を$165 billionに押し上げる。この動きは、国内の半導体製造を復活させ、重要なハイテク部品のアジアへの依存を減らそうとする米国の努力を支援するものである。
◇TSMC triples down on Arizona, begins construction on third US plant as tariffs loom―The world’s most advanced chipmaker announced the third phase of its US expansion the same day Commerce Secretary Howard Lutnick toured the site (4月30日付け South China Morning Post (Hong Kong)/Bloomberg)
→TSMCはアリゾナ州で第3のチップ工場の建設を開始し、トランプ政権がアメリカの製造業を活性化させるためにさらなる関税をかけると脅す中、アメリカでの事業拡大を加速させている。
世界最先端のチップメーカーであるTSMCは、Howard Lutnick商務長官がTSMCの現場を視察したのと同じ日に、米国進出の第3段階を発表、同社は米国史上最大の単一海外投資と呼んでいる。
◇Suppliers to follow TSMC’s US plans but may be years away, MOEA says (4月30日付け Taipei Times)
→TSMCのサプライヤーは、同社の米国進出に追随する見込みだが、あと7〜8年はないと関係者は述べた。現在の米国での生産レベルは、将来の成長がそれを変えるかもしれないが、サプライヤーの移転を正当化するには低すぎるままにある。
米中の狭間でのTSMCの基地展開に、引き続き注目である。
激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。
□4月26日(土)
上にも示したが、米国からの輸入品の一部について、中国は報復関税の対象から静かに外しているとのこと。
◇China Quietly Exempts Some U.S.-Made Products From Tariffs―China quietly waives tariffs on some US imports―Beijing has been canvassing companies and waiving duties on U.S. goods in sectors where it lacks alternatives (The Wall Street Journal)
→中国は、特定の半導体、医療製品および航空部品など、他国での調達が困難な商品を中心に、米国からの輸入品の一部を報復関税の対象から静かに除外し始めた。この動きは、中国が先端技術やその他の分野でアメリカ製品に依存していることを浮き彫りにしており、アメリカが特定の中国製品を免除しているのと同様のアプローチを反映している。
□4月29日(火)
関税交渉の成り行きを見据えながら、進展期待が優勢となって、連日続伸、この週末で9日続伸となった米国株式市場である。
◇NYダウ、続伸し114ドル高 関税交渉進展への期待で (日経 電子版 06:32)
→28日の米株式市場でダウ工業株30種平均は5日続伸し、前週末比114ドル09セント(0.28%)高の4万0227ドル59セントで終えた。トランプ米政権と貿易相手国の関税交渉が進展するとの期待が相場を押し上げた。
半面、人工知能(AI)向け半導体を巡り中国企業との競争激化が懸念されたエヌビディアが売られ、相場の重荷となった。
□4月30日(水)
◇NYダウ6日続伸、300ドル高 関税交渉の進展期待 (日経 電子版 06:01)
→29日の米株式市場でダウ工業株30種平均は6日続伸し、前日比300ドル03セント(0.74%)高の4万0527ドル62セントで終えた。6日続伸は昨年7月以来となる。米国と貿易相手国との関税交渉の進展期待が引き続き相場を支えた。決算を発表した銘柄に買いが入ったことも指数を押し上げ、ダウ平均の上げ幅は400ドルを超える場面があった。
関税インパクトで消費が大幅減速、3年ぶりマイナス成長となった米国の直近四半期GDP、当然の成り行きではある。
◇米GDPは3年ぶりマイナス成長、トランプ関税で個人消費大減速…1〜3月期0・3%減 (讀賣新聞オンライン 21:52)
→米商務省が30日発表した2025年1〜3月期のGDP速報値(季節調整済み)は年率換算で前期比0・3%減だった。24年10〜12月期(2・4%増)から悪化し、市場予想(0・2%増)も下回った。マイナス成長は3年ぶりとなる。
□5月1日(木)
◇NYダウ続伸、141ドル高 利下げ観測で引け間際に上昇 (日経 電子版 06:21)
→4月30日の米株式市場でダウ工業株30種平均は7日続伸した。前日比141ドル74セント(0.34%)高の4万0669ドル36セントと、2日以来の高値で終えた。7日続伸は昨年5月以来となる。同日発表の米物価指標を受け、米連邦準備理事会(FRB)が早期に利下げを決めるとの観測が相場を支えた。月末の買いも入って、引けにかけて上げ幅を広げた。
上に取り上げた特にAI半導体関連であるが、中国の当面の動きはいろいろ注視を要するところがある。関税交渉のお膳立ての進展が最大の関心となる。
◇China Signals Readiness to Respond to U.S. Trade Overtures―China opens door to US trade talks―Beijing again seeks end to Trump’s tariffs and calls for ‘sincerity’ (The Wall Street Journal)
→中国は、米国との間で続いている関税戦争に雪解けの可能性があることを示唆し、トランプ政権に誠意を求める一方で、ワシントンの協議のための働きかけを評価していると述べた。中国は、交渉は米国が一方的な関税引き上げを撤回するかどうかにかかっていると警告したが、市場はポジティブに反応した。「中国が交渉に応じると確信している。そして申し上げたように、これは多段階のプロセスになるだろう」とScott Bessent米財務長官は語った。
□5月2日(金)
◇NYダウ1年ぶり8日続伸、警戒緩和 「短期的な反発」か (日経 電子版 06:17)
→1日の米株式市場でダウ工業株30種平均は前日比83ドル(0.2%)高の4万0752ドルで終えた。8日続伸し、2024年5月以来、約1年ぶりの続伸記録となった。トランプ政権の関税の緩和期待やFRBのパウエル議長の解任要求の取り下げなどが市場の警戒感を和らげた。ただ、政策の不透明性は変わらず「短期的な反発に過ぎない」と慎重な見方も多い。
□5月3日(土)
◇NYダウ終値、9日続伸し564ドル高 米中協議に期待 (日経 電子版 06:09)
→2日の米株式市場でダウ工業株30種平均は9日続伸した。前日比564ドル47セント(1.38%)高の4万1317ドル43セントと、4月2日以来の高値で終えた。9連騰は2023年12月以来、約1年4カ月ぶり。関税政策などを巡って米中の協議が進み、米中貿易摩擦が緩和に向かうとの期待が投資家心理を支えた。2日発表の4月の米雇用統計が労働市場の底堅さを示したことも買いを誘った。
≪市場実態PickUp≫
【インテル関連】
インテルの「Foundry Direct Connect 2025」イベントはじめ、新規巻き直しを図る取り組み&動きが以下の通り。基本時間順の取り出しである。特にTSMC対抗の意識がうかがえる14Aプロセスに注目している。
◇Intel Financial Risks, Layoffs, Foundry Ambitions (4月24日付け EE Times)
→インテルの2025年第1四半期の業績は予想を上回ったが、同社は深い課題に直面している。Lip-Bu Tan CEOは、従業員の20%以上をレイオフする可能性を含む大規模なリストラを推進する一方、インテルはTSMCに対抗する受託チップ製造大手へと積極的にシフトしている。
◇New Intel Corp CEO Tan’s bid to revive company overshadowed by bleak outlook (4月26日付け Taipei Times)
→インテル社のLip-Bu Tan CEOは木曜24日、投資家に対し、該チップメーカーの問題点を厳しく診断し、その解決には時間がかかるとの見解を示した。
インテルの官僚的な企業文化には改革が必要で、人員削減を行い、管理職の層を取り除き、全員をオフィスに強制的に戻すつもりだとタン氏は語った。インテルの苦境にあるファウンドリー事業など、他の不振分野に対する同氏の処方箋はもっと漠然としていた。
◇Intel Foundry Roadmap Update - New 18A-PT variant that enables 3D die stacking, 14A process node enablement―Intel Foundry advances with 14A, 18A nodes, die stacking - Smaller, faster, better. (4月29日付け Tom's Hardware)
→インテル・ファウンドリーは、高NA EUVリソグラフィを擁して、2027年にリスク生産を開始する14Aプロセス・ノードの進捗状況を明らかにしている。18Aノードはリスク生産に入り、今年後半には量産が開始される予定である。インテルはまた、Foveros Direct 3D技術で3Dダイ・スタッキングを可能にする18A-PTバリアントも発表しており、TSMCの対応能力に対抗する。
◇Intel names new Taiwan head to boost partnerships (4月29日付け Taipei Times)
→インテルは、現地パートナーとの関係を強化し、製品開発と販売を推進するため、インテル台湾のジェネラル・マネージャーにTasha Chuang氏を任命した。Chuang氏は長年インテルに勤務してきたベテランで、5月のLip-Bu Tan CEOの訪問に先立ち、取り組みを指揮する。
◇Intel says ‘turbo cells’ will boost PC CPU and GPU speeds in 2027―Intel touts 14A's "turbo cells" for power efficiency ―Intel shows off key features of its 18A and 14A manufacturing lines that will be used to manufacture (4月30日付け PCWorld)
→インテルは火曜29日、同社のアリゾナ工場がPanther Lakeチップの製造技術であるインテル18Aウェハーの最初のロットを稼動させたと発表し、同時に高性能派生プロセスを発表した。インテルはまた、より速いクロックスピードのための「ターボセル」を含む次世代製造技術である14Aプロセスのsneak peekを提供した。
◇Synopsys and Intel Foundry announce EDA and IP collaborations―Intel Foundry, Synopsys partner on EDA, IP for 18A nodes ―Synopsys has announced EDA and IP collaborations with Intel Foundry. (4月30日付け New Electronics (UK))
→この契約には、インテルの18Aプロセス・ノード向けの認定済みAI駆動デジタル/アナログ設計フロー、およびRibbonFETゲート・オールアラウンド(GAA)トランジスタ・アーキテクチャとPowerViaバックサイド・パワー・デリバリの業界初の商用ファウンドリ実装を備えた18A-Pプロセス・ノード向けの量産対応EDAフローの提供が含まれる。
◇Intel attracts interest for test chips using new manufacturing process (4月30日付け Reuters)
→インテルは、複数の顧客が、先進的な高NA EUV ツールを備えて開発中の14Aプロセスを使用してテストチップを製造する予定であることを発表した。Lip-Bu Tan CEOは、ファウンドリ事業へのコミットメントを再確認し、過去の戦略的失策にもかかわらず、TSMCに対抗することを目指した。
◇Intel Foundry executive: customers need more foundry options; Intel strives to earn their trust (4月30日付け Digitimes)
→インテルは、トランプ大統領が推し進める「メイド・イン・アメリカ」に合わせてファウンドリー事業を刷新している。Naga Chandrasekaran副社長は、顧客主導のイノベーションと深い協力関係が今後の成功の鍵であると強調した。
◇Intel Foundry: We Are Listening and Learning from Our Customers―Intel Foundry shifts to customer-centric strategies and advanced packaging. (5月1日付け EE Times)
→1)今週カリフォルニア州サンノゼで開催された第2回Intel Foundry Direct Connectイベントでは、確かに大きな変化が感じられた。新たにインテルのCEOに就任したLip-Bu Tan氏と、インテル・ファウンドリーの主要幹部がオープニングトークで語った中心的なメッセージは、次のようなものだった:「我々は顧客の声に耳を傾け、顧客が必要とするものを提供するエコシステム・アプローチを採用していく。」
2)インテルのファウンドリー・ダイレクト・コネクト・イベントで、新CEOのリップ・ブー・タン氏は、顧客第一主義、エコシステム主導のアプローチを強調した。出席者は、先端パッケージングにおけるインテルのリーダーシップと、増大するチップ需要に対応するためのパートナーとの新たな協力関係を強調し、企業文化の転換を指摘した。
◇Intel and UMC unite on 12nm to boost US chip supply―Intel, UMC to develop 12nm chips to increase US supply (5月2日付け DigiTimes)
→インテルの「Foundry Direct Connect 2025」イベントで、United Microelectronics Corporation(UMC)とインテルの幹部が初めて壇上に上がり、12nm半導体の共同開発の概要を説明した。
【Samsung関連】
高帯域幅メモリー(HBM)でSK Hynix追い上げを図るSamsungについて、現下の動きから以下の通りである。トランプ大統領の声掛けの気配もうかがえている。
◇Samsung in talks to supply customized HBM4 to Nvidia, Broadcom, Google―Samsung eyes HBM4 chip supply for Nvidia, Google―The Korean chipmaker has already shipped HBM3E samples to its customers, with sales likely to begin in the second quarter (4月30日付け The Korea Economic Daily (South Korea))
→サムスン電子は、ブロードコム、エヌビディアおよびグーグルなどのAIチップメーカーに第6世代のカスタムHBMチップを供給する方向で協議している。サムスンは2026年前半までにHBM4の供給を開始し、SKハイニックスと競合することを目指している。
◇Samsung memory earnings plunge on HBM export ban to China (4月30日付け The Korea Times)
→サムスン電子の第1四半期のメモリーチップ利益は、米国のHBMチップの中国向け輸出規制により前年同期比42.4%減となり、家電製品の利益を相殺した。関税の上昇と需要の先食いが下半期の見通しに影を落としている。
◇AI半導体活況、サムスン・SK生産増強急ぐ トランプ関税で需要減退も (4月30日付け 日経 電子版 16:48)
→韓国のサムスン電子とSKハイニックスが、生成AI向けの高性能メモリー半導体「HBM」の生産増強を急ぐ。サムスンは半導体事業の巻き返しへ出荷を増やし、SKも生産設備をフル稼働させる。旺盛な需要の取り込みを狙うが、トランプ米政権の高関税政策で需要が下振れするリスクも出ている。
◇Samsung chips profit hurt by export controls and falling prices (5月1日付け Taipei Times)
→サムスンのチップ利益は、米国の輸出規制とHBMチップの販売不振により、第1四半期に40%急落した。スマートフォンの回復にもかかわらず、サムスンはNvidiaの注目を集め、AIメモリと高度なファウンドリ技術でTSMCと競争するという課題に直面している。
◇Trump says he heard Samsung will build 'massive' production facilities in US (5月1日付け The Korea Times)
→トランプ大統領は、サムスンが関税を回避するために「大規模な」米国施設を建設する計画だと主張し、自身の貿易政策を評価した。GDPが0.3%縮小したにもかかわらず、トランプ大統領は関税を擁護し、関税が投資を呼び込み、まもなく米国の製造業ブームを巻き起こすと主張した。
【欧州関連】
EUの世界半導体市場シェア目標、欧州チップス法(European Chips Act)およびSEMICON Europa 2025、というキーフレーズで以下の記事に注目している。我が国と同様の状況にあり、プレゼンス向上に向けた展開&推移には目が離せないところである。
◇EU chip strategy needs a reality check says EU auditor―EU auditors cast doubt on Chips Act effectiveness (4月28日付け Electronics Weekly (UK))
→1)EUが2030年までにマイクロチップの世界市場シェア20%という目標を達成する可能性は極めて低いと、European Court of Auditors(欧州監査院)が指摘。
2)欧州監査院は、EUが2030年までにマイクロチップの世界市場で20%のシェアを獲得するという目標を達成する可能性は極めて低いとし、現在の進捗状況は不十分であり、Chips Act(チップス法)には明確性と協調性が欠けていると指摘した。欧州委員会(EC)はチップス法の資金の5%しか管理しておらず、残りは加盟国と産業界からの出資を見込んでいる。
◇Imec to coordinate development of EU Chips Design Platform―Imec leads initiative for EU Chips Design Platform―A consortium of 12 European partners, coordinated by imec, has been selected in the framework of the European Chips Act to develop the EU Chips Design Platform. (4月30日付け New Electronics (UK))
→欧州チップス法(European Chips Act)の一環としてチップス共同事業が資金を提供するプロジェクトにおいて、Imecは、EUチップス・デザイン・プラットフォームを開発するため、12団体からなるコンソーシアムを率いている。このプロジェクトは、ファブレス半導体の新興企業や中小企業に設計インフラ、資本およびトレーニングへのアクセスを提供することを目的としている。同プラットフォームは2026年初頭に最初の新興企業を受け入れる予定である。
◇Imec co-ordinates 12 EU chip design partners (5月1日付け Electronics Weekly (UK))
→欧州チップス法の枠組みで、imecがコーディネートする、欧州の12パートナーからなるコンソーシアムが、EU Chips Design Platformを開発することになった。
◇SEMICON Europa 2025 Call for Abstracts Opens for Advanced Packaging Conference and MEMS & Imaging Summit (5月1日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→SEMI Europe)は、11月18日から21日までドイツ・ミュンヘンのメッセ・ミュンヘンで開催されるSEMICON Europa 2025のアブストラクト募集を開始すると発表した。選ばれた講演者は、アドバンスト・パッケージング・カンファレンス(APC)、MEMS & イメージング・センサ・サミット、および展示会場でのプレゼンテーションで専門知識を披露する。
【マイクロソフト関連】
ここでも量子コンピューターについて対中国の意識、そしていまやコード作成の30%を担うAI、と以下の通りである。
◇Microsoft says U.S. can’t afford falling behind China in quantum computers (4月28日付け CNBC)
→1)*マイクロソフトのBrad Smith社長は月曜28日、量子コンピューターの実用化競争で米国が中国に遅れをとることは許されないと述べた。
*ドナルド・トランプ大統領と米国政府は量子研究のための資金を優先させる必要があり、そうでなければ中国が米国を追い抜き、経済競争力と安全保障を危険にさらす可能性がある、とスミス氏は書いている。
*マイクロソフトの立場は、大手ハイテク企業の間で量子コンピューティングの研究が熱を帯び始めていることを示す最新の兆候である。
2)マイクロソフトのブラッド・スミス社長は、トランプ政権に量子研究資金の増額を求め、中国が米国を追い抜き、国家安全保障を脅かす可能性があると警告した。スミス社長はまた、リーダーシップを維持するために、移民制度改革、教育の拡充および米国のサプライチェーンの強化を求めた。
◇Satya Nadella says as much as 30% of Microsoft code is written by AI (4月29日付け CNBC)
→1)*マイクロソフトのSatya Nadella CEOは火曜29日、同社のコードの30%もが今や人工知能(AI)によって書かれていると述べた。
*ナデラCEOは、ソーシャルメディア企業のAI開発者向けイベント「LlamaCon」で、メタ社のMark Zuckerberg CEOとライブで会話した際にこのように述べた。
*ザッカーバーグ氏は、メタ社は来年中に他のAIモデルの半分を構築できるAIモデルの開発に注力していると述べた。
2)マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは、現在同社のコードの30%をAIが書いており、この数字は着実に上昇していると明らかにした。MetaのLlamaConでは、ナデラ氏もザッカーバーグ氏も、近い将来AIがソフトウェア開発の半分を担うようになるだろうと予測していた。
【半導体市場データ関連】
昨年、2024年の世界半導体材料市場、そして2025年第一四半期のシリコンウェーハ出荷面積が、以下の通りあらわされている。
◇2024 Global Semiconductor Materials Market Posts $67.5 Billion in Revenue, SEMI Reports (4月28日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→エレクトロニクスの設計・製造サプライチェーンを代表する世界的な業界団体であるSEMIは、本日、Materials Market Data Subscription(MMDS)において、2024年の世界の半導体材料市場の売上高が3.8%増の$67.5 billionになると報告した。半導体市場全体の回復に加え、高性能計算およびHBM製造用の先端材料への需要増が2024年の材料売上げの伸びを支えている。
◇Worldwide Silicon Wafer Shipments Increase 2% Year-on-Year in Q1 2025, SEMI Reports (4月29日付け SEMI)
→SEMI シリコンマニュファクチャラーズグループ(SMG)は、シリコンウェーハ業界に関する 四半期分析で、世界の2025年第一四半期シリコンウェーハ出荷枚数が前年同期比 2.2%増の 2,896 百万平方インチ (MSI) となり、前年同期の 2,834 MSI から増加したと発表した。前四半期比では、昨年第4四半期に記録した3,182MSIから9.0%減少した。これは主に、季節性とサプライチェーン全体の累積在庫水準による影響である。
※世界シリコンウェーハ出荷(MSI[100万平方インチ])
4Q23 | 1Q24 | 2Q24 | 3Q24 | 4Q24 | 1Q25 | |
MSI | 2,996 | 2,834 | 3,036 | 3,214 | 3,182 | 2,896 |
YoY(%) | -16.5 | -13.2 | -8.9 | 6.8 | 6.2 | 2.2 |