米国の相互関税発動を巡る各国応酬、半導体業界関連への波及する動き
米国トランプ大統領を巡る動きに引き続き世界が翻弄される様相であり、相互関税が発動されて朝令暮改の推移に中国が都度報復と、応酬やりとりは欧州はじめ同様に見られている。我が国は同盟国先頭で、トランプ政権と回避に向けた交渉に臨む運びとされている。このような情勢のなか、半導体業界関連にもいろいろ波及する動きが見られており、関税インパクトをできるだけ避ける生産シフトに加えて、トランプ大統領との直接コンタクトも行われている模様である。米国第一を訴えるトランプ大統領に対し、対抗する中国、そして打開を図る同盟国、と今後の推移、成り行きに注目せざるを得ないところである。半導体関連に注目、現下の動きを以下取り出している。
≪相互関税圧力の中での現状≫
米中摩擦が今回の関税発動で再燃、つながる動きが以下の通り。
TSMCのチップレットが中国・Huaweiの製品に含まれていた件で、米国政府がTSMCに罰金を科す可能性との報道である。米国と台湾の政府間に緊張をもたらしている模様である。
◇TSMC faces $1 billion US fine for making chips for blacklisted Huawei―Reports: TSMC could be fined $1B for Huawei chip supply―The company is cooperating. (4月8日付け Tom's Hardware)
→TSMCは、第三者を通じてファーウェイにチップレットを不注意にも供給していたとして、米商務省から$1 billion以上の罰金を科される可能性があると報道された。このチップレットはファーウェイのAscend 910 AIプロセッサに使用されており、米国の輸出規制に違反していた。TSMCはSophgo(ソフゴ)への出荷を停止し、商務省に協力している。
◇TSMC could face US$1 billion fine over chip found in Huawei AI processor, sources say―Penalising TSMC comes at a critical moment for US-Taiwan relations after Trump slapped a 32 per cent levy on imports from the island (4月9日付け South China Morning Post)
→TSMCは、中国のSophgo向けに製造されたチップがファーウェイのAIプロセッサに搭載され、輸出規制に違反したかどうかを米国が調査しているため、$1 billion以上の罰金を科される可能性がある。この件は、米台貿易協議が再開される中で緊張を高めている。
◇TSMC could face US$1 billion fine over chip found in Huawei AI processor, sources say (4月9日付け South China Morning Post (Hong Kong)/Reuters)
→*トランプ大統領が台湾からの輸入品に32%の課税を行った後、TSMCへの罰則は米台関係にとって重大な局面を迎えている。
*TSMCは、同社が製造したチップがファーウェイ・テクノロジーズのAIプロセッサに搭載されたことをめぐる米国の輸出管理調査を解決するため、$1 billion以上の罰金を科される可能性があると、この問題に詳しい2人の関係者が語った。
米商務省は、世界最大の受託チップメーカーである同社が中国を拠点とするSophgoのために行った仕事を調査していたという。
◇Economics minister defends TSMC amid Huawei-linked fine report (4月10日付け Taipei Times)
→台湾のJ.W. Kuo経済相は、米国の輸出調査によってTSMCのチップとファーウェイのAIプロセッサーが関連づけられ、TSMCが$1 billionの罰金に直面する可能性があると報じられる中、TSMCを擁護し、世界的な法律を遵守していると主張した。
米中摩擦関連、ほかにも以下の通りである。
◇Chip war: Samsung denies halting foundry services for Chinese clients amid US pressure―Samsung operates one of the few foundries capable of rivalling industry-leading TSMC in producing advanced chips (4月9日付け South China Morning Post)
→サムスン半導体は、中国の顧客とのパートナーシップを停止しているとの報道を否定し、世界的なチップの緊張の中で正常なオペレーションを確認した。この声明は、中国がチップの自給自足を推し進め、米国の圧力が技術規制を強化する中、憶測に対抗するものである。
◇Microsoft、BGIに「Office365」提供停止 米中緊張影響か (4月9日付け 日経 電子版 10:00)
→米マイクロソフトが中国遺伝子解析大手の華大基因(BGI)に対してメールを含む業務ソフトの提供を停止したことがわかった。
複数の従業員と3日に社内で送信されたメールのスクリーンショットによると、BGIの従業員はマイクロソフトの業務ソフト「ワード」「パワーポイント」「エクセル」「チームズ」を含む多くの「オフィス365」サービスに接続できていない。
Nvidiaのトランプ大統領とのコンタクトがあらわされている。
◇Nvidia’s H20 AI chips may be spared from export controls - for now (4月9日付け TechCrunch)
→エヌビディアのJensen Huang CEOは、同社のAIチップ「H20」の輸出規制を回避するため、トランプ政権と取引したようだ。
H20は、米国から中国への輸出が可能な最先端のNvidia製AIチップだが、米国内の新しいAIデータセンターに投資するという黄氏の約束のおかげで免れたと伝えられている。NPRによると、フアンCEOは先週、トランプ大統領のリゾート地、Mar-a-Lagoでの夕食会でこの提案を行ったという。Nvidiaはコメントを控えた。
関税を巡る慌ただしい動き、そして各国&各社の対応について、以下基本時間順である。
◇Trump says tariffs on semiconductors will start 'very soon' (4月4日付け Yonhap News Agency)
→トランプ大統領は、半導体の輸入関税を「非常に近いうちに」開始すると発表し、特に韓国を標的とした貿易戦争の新たなエスカレーションを示唆した。また、前例のない医薬品関税についても警告を発し、米国の製造業を活性化させ、貿易赤字を削減する狙いがある。
◇Samsung Electronics seeks ways to cushion blow from US tariffs (4月6日付け The Korea Times)
→サムスン電子は、米国がベトナムからの輸入品に最大46%の高関税を課すと発表したことを受け、グローバル生産戦略を見直す可能性がある。ブラジルの関税率は10%と低く、地理的にも近いことから、ブラジルでプレミアム・スマートフォンの生産を拡大する可能性が高い。
◇Samsung Electronics to overcome U.S. tariff challenges through production allocation (4月7日付け Yonhap News Agency)
→サムスンは、グローバル・ネットワークで生産をシフトすることで、米国の新関税を乗り切る計画だ。サムスンは、米国で販売されるテレビのほとんどを関税の対象外であるメキシコ製とすることで、大きな影響を回避し、フラッグシップモデルの価格を引き上げることなく、ミッドレンジ製品のラインナップを拡大する。
◇Korea faces chip threats on all sides with possible U.S. tariffs, Japanese expansion (4月7日付け Korea Joong Ang Daily)
→米国が新関税で半導体の自給自足を推し進め、日本がファウンドリーの野心を加速させる中、韓国のチップ業界は高まる圧力に直面している。韓国企業は米国への生産シフトを余儀なくされる可能性があり、国内での雇用喪失や技術流出のリスクがある。
◇Apple、インド製iPhoneを米向け輸出 対中国関税を回避 (4月8日付け 日経 電子版 05:50)
→米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は7日、米アップルがインドで生産したスマートフォン「iPhone」の米国向け輸出を増やすことを計画していると報じた。トランプ米政権が中国にかける高関税を避けるための短期的な措置だとしている。
WSJがアップル関係者の話として報じた。アップルは米国で販売するiPhoneのほとんどを中国で組み立てて、同国からの輸入で賄っている。
◇Intel enforces strict tariff compliance for steel and aluminum shipments amid new U.S. tariffs―Intel mandates detailed material reporting from suppliers―Impact on costs is expected. (4月9日付け Tom's Hardware)
→インテルは、米国が新たに発動したステンレス鋼とアルミニウムに対する25%の関税に対応するため、サプライヤーに対して厳格なコンプライアンス・ポリシーを導入した。サプライヤーは、罰則や出荷遅延を避けるために、重量、金額および原産地など、材料に関する詳細を提供する必要がある。
◇US memory chipmaker Micron to impose tariff surcharge on some products, sources say―Report: Tariffs prompt Micron to add surcharge to select products―Micron’s overseas manufacturing sites are largely based in Asia, including mainland China, Taiwan, Japan, Malaysia and Singapore (4月9日付け South China Morning Post (Hong Kong)/Reuters)
→情報筋によると、マイクロン・テクノロジーは、米国の関税に対応するため、メモリモジュールとソリッドステートドライブ(SSDs)に課徴金を追加する見込みである。この課徴金はアジアで製造される製品に適用され、顧客に書簡で通知されて、関税コストを顧客に転嫁するとマイクロンが述べた決算後の電話説明と同じ内容である。
◇トランプ氏、TSMCに「米工場建設なければ100%課税」 (4月9日付け 日経 電子版 15:15)
→トランプ米大統領は8日、TSMCに対し、米国内に工場を建設しなければ最大100%の税金を支払うことになると伝えたと明らかにした。同日の政治関連イベントでの発言を、ロイター通信などが報じた。
TSMCは3月初め、米国に新たに$100 billion(約15兆円)を投資するとトランプ氏と共同で表明している。トランプ氏はイベントでバイデン前政権時代にTSMCのアリゾナ工場向けに助成金を支出したことを批判。米国での投資や生産拡大を求めて圧力を強めている。
◇China Stands Firm Amidst Tariff Chaos―China is signaling a firm stance, emphasizing its “economic resilience" and readiness to endure the tariffs.―Apple looking for more iPhones from India (4月10日付け EE Times)
→経済的苦難と潜在的な世界的景気後退の脅威が迫っているにもかかわらず、中国は断固とした姿勢を示し、「経済の回復力」と関税に耐える用意があることを強調している。
米中貿易戦争は最近激化しており、一触即発の関税は前例のない水準に達している。ワシントンはほとんどの貿易相手国に対する徹底的な「相互」関税を一時停止しているが、中国に対しては関税を倍増させ、125%までエスカレートさせている。北京はこれに応え、アメリカ製品に対する関税を84%まで引き上げた。
◇Trump tariffs: Chinese chip firms shrug off trade war, as US already cut them off (4月10日付け South China Morning Post)
→*チップメーカーおよびアナリストは、装置およびコンポーネントを含む米国の新たな関税が中国のチップサプライチェーンに利益をもたらすと予想している。
*中国の上場半導体企業の多くが、中国の輸入関税引き上げの影響をほとんど受けていないと投資家を安心させており、緩和要因として以前の米国制裁を挙げている。
中国は最近、ドナルド・トランプ米大統領のいわゆる「相互」関税への報復として、すべての米国製品に対する関税を84%に引き上げ、木曜日の午後12時に発効した。その後、数十社の中国チップ企業が、自社事業への影響はほとんどないと述べている。
中国の対応が以下にあらわされている。
◇US chipmakers outsourcing manufacturing will escape China's tariffs―CSIA: Chipmakers outsourcing to TSMC avoid China tariffs (4月10日付け MSN/Reuters)
→中国半導体産業協会(CSIA)によると、TSMCに外注委託している米国のチップメーカーは、中国の報復関税の対象外となる。この動きは、クアルコムやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)などの企業が、チップの原産地が台湾に分類されているため、影響を受けないことを意味する。インテル、テキサス・インスツルメンツ(TI)およびオンセミなど米国で製造を行っている企業は、125%もの高関税に直面する。
次の通り、韓国も、中国向けにHBM供給可能とされている。
◇Trump reportedly suspends Nvidia H20 export ban plan after $1 million dinner with Jensen Huang―Reports: US lifts export ban on Nvidia H20 chip to China―What about the whole AI diffusion rule? (4月11日付け BusinessKorea (South Korea))
→報道によると、米国はNvidiaのAIチップ「H20」の中国への輸出禁止案を解除した。この決定により、サムスン電子やSKハイニックスなどの企業は、中国市場向けにNvidiaへの広帯域メモリ(HBM)の供給を継続できるようになった。
バイデン政権から持越しのCHIPS法へのトランプ政権の対応として、「US Investment Accelerator」が打ち出されている。
◇The old CHIPS Act is dead. Meet the new CHIPS deal.―US Investment Accelerator seeks to revamp CHIPS deals (4月4日付け Fierce Electronics)
→ドナルド・トランプ大統領は、CHIPS and Science Actの下で、より良い取引を交渉することを目的とした「US Investment Accelerator」を創設する大統領令に署名した。Howard Lutnick商務長官がこのイニシアチブを監督し、環境保護を変更し、ファブ建設への民間貢献を増やす可能性がある。
◇Trump’s Revamp of CHIPS Act Aims at Big Investments―Trump's overhaul of the CHIPS Act aims to boost U.S. chip investments and speed up regulatory processes. (4月7日付け EE Times)
→1)Donald Trump米大統領がCHIPS Actを改造する大統領令を出したことで、数週間前にTSMCが誓約した$100 billionの取引のようなチップ生産への大型投資が誘致される可能性がある、とEE Timesの取材に応じたアナリストが述べている。
今週初めに発表されたTrump政権の 「Investment Accelerator 」は、米国に投資するチップメーカーが規制のハードルをより迅速にクリアし、米国での製造コストを10%も削減するのに役立つはずだ、とアナリストは述べている。
2)トランプ大統領のCHIPS法改正は、新たな「投資アクセラレーター」に支えられ、TSMCの$100Bの誓約のような大規模なチップ投資を呼び込むことを目的としている。アナリストによると、より迅速な許可、より少ない補助金、そして迫り来る関税により、米国の工場コストが削減され、製造が米国内にシフトする可能性があるという。
米中摩擦および今回の関税に関連する内容、動きを以下取り出している。
トランプ政権が後押しとされるインテルのTSMCとの合弁の報道についての記事が続いている。
◇How will Intel's joint venture with TSMC affect competition? (4月5日付け Tech in Asia)
→1)IntelのTSMCとの合弁の可能性は、半導体業界を再構築する可能性があり、米国のチップ生産を押し上げ、Samsungの支配に挑戦し、ファウンドリー競争を激化させる。この動きは、グローバルサプライチェーンシフトを巻き起こし、AIおよび先端コンピューティング全体のイノベーションを加速させる可能性がある。
2)インテルが提案するTSMCとの合弁事業は、米国のチップ生産を押し上げ、サムスンの優位に挑戦し、競合他社に圧力をかけることで、半導体の展望を再構築する可能性がある。この動きは、グローバルなサプライチェーンのシフトを引き起こし、業界全体のイノベーションを強化する可能性がある。
◇Intel, TSMC to join forces: report―ANTICIPATED MOVE: The companies reached a preliminary agreement to form a joint venture that would run Intel’s manufacturing plants, the Information reported (4月5日付け Taipei Times)
→インテルの株価は、TSMCとの暫定的な合弁事業に関する報道を受けて2%以上上昇した。この取引は、国内でのチップ製造を促進しようとする米国の努力に後押しされたもので、インテルが過半数の支配権を保持する一方で、TSMCは20%の株式を取得することになる。
◇Analysts question TSMC-Intel jv plan―Analysts raise doubts over proposed TSMC-Intel foundry JV (4月7日付け Electronics Weekly (UK))
→金融アナリストたちは、TSMCがインテルの工場を合弁で運営するという提案に冷や水を浴びせている。
◇An Intel-TSMC deal could reshape x86 future and enterprise chip supply chains―Possible Intel-TSMC deal raises questions about x86, chip supply landscape (4月8日付け Computerworld)
→*これは、インテルが製造とそのサプライチェーンに対する支配権を譲り渡そうとしているという懸念を抱かせるものだ。
*米国政府も主導するこの動きは、先進的なチップ製造において近年ライバルに追いつくのに苦戦していたインテルにとって、転機となる可能性を示している。
この提携が実現すれば、インテルの新CEOであるLip-Bu Tan氏は、台湾のファウンドリー大手に製造業務を委託する一方で、チップ設計の革新性を倍増させることができる。
パソコン市場の2025年第一四半期出荷データにも、関税の影響への備えがあらわれている。
◇The PC Market Enters Volatile 2025 on Strong Results, According to IDC―With Q1 Figures Unaffected By Tariffs, Vendors and End-Users Are Preparing for Its Impact (4月8日付け IDC)
→インターナショナル・データ・コーポレーション(IDC)のWorldwide Quarterly Personal Computing Device Trackerの速報によると、2025年第1四半期のPC出荷台数は前年比4.9%増、世界出荷台数は6,320万台に達した。2025年を見据えて、PC業界にはいくつかの追い風と逆風が吹いており、これらは厳しい見通しと困難な需要計画をもたらしている。
◇PC shipments increased in first quarter as companies braced for tariffs (4月9日付け CNBC)
→*調査会社Canalysによると、第1四半期のパソコン出荷台数は前年同期比9%増となった。
*多くの企業は、回復しつつあるパソコン・エレクトロニクス市場を圧迫しかねない関税の導入に備え、出荷を早めた。
*IDCは、アップルの第1四半期の出荷台数は前年同期比14%増、レノボの出荷台数は約11%増と推定している。
ほかにも、以下の通りである。
◇中国AI、米国製に性能差1.7%と肉薄 米大学が調査結果 (4月8日付け 日経 電子版 03:51)
→米スタンフォード大は7日、AIに関する年次調査を発表した。対話AIが適切な回答をしたか人間が投票して決めるテストで2024年1月に米国のトップAIは中国製にスコアで9.26%差を付けていたが、25年2月には1.7%まで差が縮んだ。高性能なAIモデル数や民間投資は依然米国がリードしているという。
◇Apple、時価総額首位転落 米関税響き4日で113兆円消失 (4月9日付け 日経 電子版 09:54)
→米アップルの株価が8日の米株式市場で前日比5%下落し、時価総額世界首位を米マイクロソフトに譲った。米中が関税で応酬を繰り広げるなか、スマートフォン「iPhone」の中国生産が多いアップルに打撃が大きいとの見方が広がった。トランプ米政権が相互関税を発表した2日以降、株価は4日続落し時価総額は$770 billion(約113兆円)消失した。
本当に慌ただしい情勢のなか、それぞれだんだんと落ち着いていく推移と然るべきあり様に引き続き注目するところである。
激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。
□4月7日(月)
相互関税を巡る激変、応酬の推移が、以下続いていく。
◇米商務長官、相互関税「延期しない」 9日に第2弾 (日経 電子版 00:43)
→ラトニック米商務長官は6日、米CBSテレビのインタビューで、全世界からの輸入品に追加で課す「相互関税」の実施は「延期しない」と話した。トランプ米政権は第1弾として5日に10%を一律に適用。9日には、貿易赤字の大きい国を標的に税率をさらに上乗せする第2弾の発動を計画している。
日本からの輸入品には5日、従来の通常の関税率に一律分10%を追加。9日にはさらに14%を上乗せし、計24%となる。
□4月8日(火)
米国株式市場も大きく乱高下、以下の今週の動きである。
◇NYダウ乱高下、一時1700ドル超下げ→終値は349ドル安 (日経 電子版 05:39)
→7日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続落し、前週末比349ドル安の3万7965ドルで終えた。下げ幅は一時1700ドルを超え、取引時間中として約1年4カ月ぶりに3万7000ドルを割り込んだ。トランプ米大統領の関税政策を巡る情報が錯綜し、一時800ドル以上上昇するなど、株価が乱高下した。
□4月9日(水)
◇NYダウ320ドル安、1400ドル高から一転 S&Pは5000割れ (日経 電子版 07:07)
→8日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4日続落し、前日比320ドル(0.8%)安の3万7645ドルで終えた。前日比での上げ幅が一時1400ドルを超える場面もあったが、米政権が9日に中国製品に累計104%の関税をかけると発表したことを受けて下落に転じた。S&P500種株価指数も79ポイント安の4982と2024年4月以来、約1年ぶりに5000の大台を割った。
ダウ平均は8日までの4営業日で計4500ドル以上下げた。ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は2%安となった。
◇トランプ関税、中国104%に 70カ国交渉も世界不況懸念 (日経 電子版 09:24)
→トランプ米政権による相互関税が日本時間9日午後1時1分(米東部時間9日午前0時1分)に発動する。中国製品には累計104%の関税をかける方針で、応酬は激しさを増す。打撃を和らげようと70カ国以上が個別交渉を申し入れるが、先行きは見通せず、世界経済への影響も計り知れない。
□4月10日(木)
◇NYダウ2962ドル高、4万ドル台回復 上げ幅史上最大 (日経 電子版 05:57)
→9日の米株式市場でダウ工業株30種平均は5営業日ぶりに反発し、前日比7.9%高の4万0608ドルで取引を終えた。上げ幅は2962ドルとダウ平均の算出開始以来、最大となった。トランプ米大統領が自身のSNSに相互関税の上乗せ部分を90日間停止すると記したことを受け、急騰した。日中値幅も3500ドルを超え過去最大となった。
◇中国、対米報復関税84%発動へ 「不況下の物価高」危機 (日経 電子版 06:40)
→中国政府は10日午後0時1分(日本時間同日午後1時1分)に米国からの輸入品への84%の追加関税を発動する。トランプ米政権が9日に84%の追加関税を発動したことへの報復措置だ。景気停滞のなか関税による輸入コストが上昇すれば中国経済の重荷になる。
◇米相互関税、上乗せ部分90日停止 対中国は125%に上げ (日経 電子版 08:12)
→トランプ米大統領は9日午後、同日発動したばかりの相互関税の上乗せ部分について、一部の国・地域に90日間の一時停止を許可すると発表した。5日に課した10%の一律関税は維持する。日本も含まれ、即時実施される。一方で報復措置を打ち出した中国に対しては、関税を125%に引き上げる。
□4月11日(金)
◇トランプ氏の急所、米国債なお不安 鎮まらぬ「米国売り」 (日経 電子版 06:22)
→金融市場で「米国売り」圧力が強まっている。10日はダウ工業株30種平均が一時2100ドル安と再び急落し、ドル売りも進んだ。米国債の投げ売りに伴う金利急騰に慌てたトランプ米政権が相互関税の一部を停止し、いったん落ち着いたかにみえた市場の安定は早くも崩れた。朝令暮改のトランプ政策が生む不確実性や信認の低下がマネーの米国離れを誘っている。
◇対中追加関税は計145% 混乱のホワイトハウスが訂正 (日経 電子版 09:37)
→米ホワイトハウスは10日、中国に対する追加関税の税率が合計で145%になると明らかにした。トランプ米大統領は9日「中国への追加関税を125%に引き上げる」と表明していた。
◇中国、米国への報復関税125%に引き上げ 12日発動 (日経 電子版 19:14)
→中国政府は11日、米国製品への報復関税を84%から125%に引き上げると発表した。12日に発動する。トランプ米政権が中国への相互関税を125%に引き上げたことに対抗した。関税の応酬が一段と激しくなり、米中経済の重荷になる。
中国は84%の対米報復関税を10日に発動しており、これを12日に125%に引き上げる。報復関税の引き上げ幅は米国が直近で上乗せした分と同じにした。
□4月12日(土)
◇NYダウ反発、619ドル高 FRB高官の「市場支援」を好感 (日経 電子版 06:35)
→11日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比619ドル05セント(1.56%)高の4万0212ドル71セントで終えた。週末を控え、主力株の一部への見直し買いが膨らんだ。ダウ平均の上げ幅は一時800ドルあまりになった。もっとも、米中の関税の応酬が経済活動を下押しするとの懸念が強まり、相場の重荷となった。
≪市場実態PickUp≫
【Google関連】
Googleのクラウドコンピューティング事業の年次技術イベント「グーグルクラウドネクスト」が、米国ネバダ州ラスベガスで開催ということで、関連する以下の内容に注目している。
◇Google’s new Ironwood chip is 24x more powerful than the world’s fastest supercomputer―Google Ironwood TPU's eclipses supercomputers (4月9日付け VentureBeat)
→Google Cloudは、AI推論用に設計され、最速のスーパーコンピューターより24倍強力とされる第7世代のテンソル処理ユニット(TPU)「Ironwood」を発表した。このチップの特徴は、42.5 exaflopsの計算能力と、メモリと帯域幅の改善である。
◇Google、クラウド万年3位脱却へ 半導体と通信でAI速く (4月10日付け 日経 電子版 11:01)
→米グーグルは9日、インターネット経由で様々なソフトを提供するクラウドコンピューティングの技術イベントを開いた。消費電力を半減できる高性能半導体と、従来より4割速い高速通信網を企業に提供する。AIインフラの性能を武器に米アマゾン・ドット・コムや米マイクロソフトに対抗する。
◇Google、AI半導体の電力消費半減 技術イベントで公表 (4月10日付け 日経 電子版 04:18)
→米グーグルは9日、生成AIを動作するのに使う半導体で、消費電力を従来と比べ半分に減らした製品を開発したと発表した。動画と画像に加え、文字で指示して音楽や音声を自動でつくれる生成AIも開発した。AI動作に欠かせない技術と新たなサービスを組み合わせ、顧客企業に売り込む。
◇GoogleクラウドCEO「DeepSeekより優位」 AI費用対効果 (4月11日付け 日経 電子版 04:57)
→米グーグルのクラウド部門のトーマス・クリアンCEOは10日、自社の生成AIの費用対効果は中国の格安AI「DeepSeek」を上回っていると説明した。コスト当たりの性能が高いと強調し、台頭する中国のAIと対して競争力が保っていると訴えた。
【SKグループ関連】
韓国・SKグループについて、半導体ウェーハ子会社、SK Siltronの売却検討、そしてHBMで躍進するSK Hynixについて、以下の通りである。特に、この2025年第一四半期DRAM市場で、SK Hynixが初めてSamsungを抜いたことに注目している。
◇SK Group considers selling chip wafer subsidiary SK Siltron: sources (4月8日付け The Korea Times)
→SKグループは、現在進行中の事業再編の一環として、SKシルトロンの株式70.6%を売却する可能性がある。持株会社であるSK Inc.はプライベート・エクイティ会社と交渉中である。アナリストはこのウエハーメーカーを5兆ウォンと評価している。
◇South Korea's semiconductor showdown: SK Hynix dominates with HBM4, Samsung languishes―SK Hynix leads in HBM4 as Samsung faces challenges (4月9日付け DigiTimes)
→韓国の半導体競争は2025年初頭に激化し、業界の主要プレーヤーであるサムスン電子とSKハイニックスは対照的な軌跡をたどることになりそうだ。
◇SK hynix rises to No. 1 in global DRAM market for 1st time in Q1 (4月9日付け Yonhap News Agency)
→SKハイニックスは、第1四半期にサムスンを抜いて世界DRAM市場のリーダーになり、36%の市場シェアを獲得した。同社の躍進は、同社の最先端HBM3Eチップに対するAI主導の需要が急増していることに起因しており、高性能メモリ競争において同社を優位に立たせている。
◇SK Group seeks to sell majority stake in semiconductor wafer maker SK Siltron―SK Group in talks to sell majority stake in SK Siltron, reports say (4月10日付け DigiTimes)
→SKグループは、半導体ウェハーメーカー、SKシルトロンの株式の過半数を売却しようとしている。同コングロマリットは2024年後半からプライベート・エクイティ企業と交渉を続けていると報じられている。
【TSMC関連】
2-nm開発、および1-3月四半期業績について、ともに好調な内容、以下の通りである。
◇IFTLE 624: TSMC widens lead on Samsung, Leads in 2nm Chip Production (4月7日付け 3DInCites)
→サムスンの米国でのチップ開発は、遅延や歩留まりの悪さから補助金の削減やプロジェクトの中止を余儀なくされ、壁に突き当たった。一方、ライバルのTSMCはアリゾナでの早期量産を開始し、両巨頭の性能と信頼性の差を広げることに成功した。
◇The 'World's Most Advanced Microchip' Has Been Unveiled (4月7日付け Science Alert)
→1)TSMCは2025年4月1日、世界最先端の2nmマイクロチップを発表し、高速化、高効率化、およびAI、スマートフォン、そしてデータセンターへの変革の可能性を約束した。セキュリティと製造上の懸念があるなか、量産は今年後半に開始される。
2)TSMCは2025年4月1日、世界最先端の2nmチップを発表し、スピードとエネルギー効率の大幅な飛躍を約束した。今年後半に量産が開始されるこのチップは、世界中のAI、スマートフォン、および自律システムに革命をもたらす可能性がある。
◇Taiwan's TSMC says first quarter revenue up 42 percent―TSMC's Q1 revenue surged 42% on strong AI tech demand (4月10日付け Tech Xplore/Agence France-Presse)
→TSMCは、AI技術需要に牽引され、第1四半期の売上高が42%増の$25.5 billionに達したと発表した。ドナルド・トランプ大統領の関税による世界的な不確実性にもかかわらず、アナリストの予想を上回る結果となった。TSMCは以前、$100 billionの対米投資計画を発表している。
◇TSMC、売上高41.6%増 1〜3月最高 AI半導体が好調 (4月11日付け 日経)
→半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)が10日発表した2025年1〜3月期の売上高(速報値)は、1〜3月期として過去最高の8392億台湾ドル(約3兆8000億円)だった。前年同期に比べ41.6%増えた。AI向けのサーバーなどに搭載する先端半導体の販売が好調だった。
◇TSMC sales beat estimates on demand for AI, phones (4月11日付け Taipei Times)
→TSMCの四半期売上げは41.6%増の8,392億5,000万台湾ドルに達し、米国の潜在的な関税を前にAIとスマートフォンの需要が活況を呈している。備蓄と過去最高の3月売上高により株価は9.94%上昇し、TSMCの世界的なチップ製造の優位性が強化された。
【Samsung関連】
Samsungの課題含みの第一四半期業績、そして将来に向けた1-nmの取り組みが、以下の通りである。
◇Samsung Q1 profit to drop 21% on weak AI chip sales, foundry losses (4月7日付け Reuters)
→サムスンは、AIチップ販売不振と契約チップ損失継続で第1四半期利益21%減を予想している。SKハイニックスの後塵を拝しているサムスンは、DRAMとNANDの価格下落、ハイエンド市場シェアの縮小、そして世界的な貿易摩擦の高まりに苦しんでいる。
◇サムスン、「会話する家電」で収益改善へ AI搭載品3倍に (4月8日付け 日経 電子版 11:44)
→韓国のサムスン電子が家電事業の立て直しを急ぐ。2025年1〜3月期の全社の営業利益は前年同期比ほぼ横ばいとなり、主要事業である家電の稼ぐ力の低下が響いた。巻き返しに向け冷蔵庫など白物家電でAI搭載モデルを3倍に増やす。利用者と「会話」する高付加価値の家電で採算を高める。
◇Samsung forecast beats market expectations for first quarter (4月9日付け Taipei Times)
→サムスン電子は、好調なギャラクシーS25とサーバー用DRAMの需要に牽引され、第1四半期の売上高が過去最高の79兆ウォンになると予想した。利益は前年同期比で若干減少したものの、業績は予想を上回った。アナリストは、米国の関税と地政学的緊張が将来の成長を妨げる可能性があると警告している。
◇サムスン、AI家電に磨き 1〜3月増収減益 半導体は不振 搭載3倍、「会話」で競争力 (4月9日付け 日経)
→韓国のサムスン電子が家電事業の立て直しを急ぐ。2025年1〜3月期の全社の営業利益は主要事業である家電の稼ぐ力の低下が響き、前年同期比ほぼ横ばいとなった。巻き返しに向け冷蔵庫など白物家電でAI搭載モデルを3倍に増やす。利用者と「会話」する高付加価値の家電で採算を高める。
サムスンが8日発表した25年1〜3月期の連結決算速報値は、売上高が前年同期比9.8%増の79兆ウォン(約7兆9000億円)、営業利益は0.2%減の6兆6000億ウォンだった。
◇Samsung going for 1nm―Reports: Samsung aims for 1nm process by 2029 (4月9日付け Electronics Weekly (UK))
→1)サムスンが、2029年の量産を目標に、高NAのEUV装置を使った1nmプロセス技術を開発するチームを立ち上げたと、Seoul Economic Dailyが報じている。
2)報道によると、サムスン電子は、high-numerical-aperture(高開口数)EUV装置を使った1nmプロセス技術を開発するチームを立ち上げ、2029年の量産を目指している。サムスンがASMLの高NA EUV装置を使用する計画かどうかはまだ決定していない。
【2024年半導体販売高】
このほどGartnerより2024年世界半導体販売高、およびサプライヤランキングがあらわされている。Nvidiaの際立つ伸長に、改めての注目であり、現下のAIが牽引する市場を確認している。
◇Nvidia becomes No.1 (4月11日付け Electronics Weekly (UK))
→Gartner社によると、世界の半導体売上高は2023年の$542.1 billionから21%増の$655.9 billionに達し、Nvidiaが、サムスンやインテルを抜いて第1位となった。
◇NVIDIA Surpasses Samsung and Intel, Becoming Top Semiconductor Company Globally―Global semi revenue hit $655.9B in 2024; Nvidia was on top (4月11日付け BusinessKorea (South Korea))
→Gartnerによると、エヌビディアがサムスン電子とインテルを抜き、世界半導体売上高でトップになった。2024年の世界半導体売上高は21%増の$655.9 billion。サムスンはDRAMとフラッシュメモリの価格回復の恩恵を受けて2位の座を守り、インテルは売上高が0.8%増にとどまったため、それまでの1位の座を失い3位に転落した。
◇2024年の半導体市場は21%成長 NVIDIAが初の首位に―メモリ企業も好調 (4月11日付け EE Times Japan)
→米国の市場調査会社であるGartnerは、2024年の世界の半導体売上高が$655.9 billionとなる見込みだと発表した。2023年の$542.1 billionからは21%増となる。半導体企業の売上高ランキングは、NVIDIAが初めて1位となった。
以下のデータ、金額:USM$。
2024年 | 2023年 | ベンダー | 2024年 | 2024年 | 2023年 | 成長率 |
順位 | 順位 | 販売高 | シェア | 販売高 | (24/23) | |
1 | 3 | NVIDIA | 76,692 | 11.7% | 34,846 | 120.1% |
2 | 2 | Samsung Electronics | 65,697 | 10.0% | 40,868 | 60.8% |
3 | 1 | Intel | 49,804 | 7.6% | 49,427 | 0.8% |
4 | 6 | SK hynix | 44,186 | 6.7% | 23,077 | 91.5% |
5 | 4 | Qualcomm | 32,976 | 5.0% | 29,229 | 12.8% |
6 | 5 | Broadcom | 27,801 | 4.2% | 25,613 | 8.5% |
7 | 12 | Micron Technology | 27,619 | 4.2% | 16,153 | 71.0% |
8 | 7 | AMD | 24,127 | 3.7% | 22,307 | 8.2% |
9 | 8 | Apple | 20,510 | 3.1% | 18,052 | 13.6% |
10 | 13 | MediaTek | 15,934 | 2.4% | 13,451 | 18.5% |
― | ― | その他 | 270,536 | 41.2% | 269,031 | 0.6% |
合計 | 655,882 | 100% | 542,054 | 21.0% |
[出所:Gartner(2025年4月)]
【2024年半導体製造装置市場】
2024年の半導体製造装置市場について、SEMIより以下の通りあらわされている。
◇Global Semiconductor Equipment Billings Surged to $117 Billion in 2024, SEMI Reports (4月9日付け SEMI)
→2024年、世界の前工程半導体装置市場は顕著な成長を遂げ、ウェーハプロセッシング装置の売上高は9%増、その他の前工程セグメントは5%増となった。この成長は、最先端ロジックと成熟ロジックの両方、先端パッケージング、およびHBMの生産能力拡大への投資が活発化したことと、中国からの投資が大幅に増加したことが主な要因である。後工程の装置部門は、2年連続の減少の後、AIとHBM製造の複雑化と需要の増加により、2024年には力強い回復を見た。組立・パッケージング装置の売上高は前年比25%増、テスト装置の売上高は前年比20%増となり、先端技術のサポートに向けた業界の動きを反映している。
◇Global Semiconductor Equipment Billings Surged to $117 Billion in 2024, SEMI Reports (4月10日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→世界のエレクトロニクス設計および製造サプライチェーンを代表する業界団体、SEMIは本日、半導体製造装置の世界販売高が、2023年の$106.3 billionから2024年には$117.1 billionへと10%増加した、と報告した。このデータは、Worldwide Semiconductor Equipment Market Statisticsレポートに掲載されている。
地域別では、中国、韓国、および台湾が半導体装置支出のトップ3市場であり続け、合わせて世界市場の74%を占めている。中国は最大の半導体装置市場の地位を固め、投資が前年比35%増の$49.6 billionに急増、積極的な生産能力拡大と国内チップ生産強化に向けた政府支援イニシアティブがその原動力となっている。