米国政府高官訪中3回目の会談、現下の摩擦継続および各国半導体製造強化
米国政府のレモンド商務長官が8月27日から訪中、中国側と会談を重ねて、半導体はじめ諸問題打開に向けた協議体の設置、定期的な協議合意などの動きが見られている。米国から中国に問いかける形で、本年6月中旬のブリンケン国務長官、7月上旬のイエレン財務長官に続く、3回目の訪中&会談である。国内経済が落ち込んでいる中国からは、具体的な反応&動きには至らず、引き続きの注目である。通商摩擦については、米国内で共和党のさらなる対中突き上げが見られる一方、NvidiaおよびAMDのAI半導体の中東の一部の国々への輸出規制の動きが見え隠れしている現時点である。この摩擦下の各国半導体製造強化では、TSMCのドイツでの補助金にGlobalFoundriesが反対する立場が示されるなど、現下の動きを取り出している。
≪景況回復を図る中での摩擦打開≫
レモンド米国商務長官の北京での動き関連が、以下の通りである。
◇米中、貿易問題で協議体;半導体規制も情報共有 (8月28日付け 日経 電子版 21:30)
→米国のレモンド商務長官と中国の王文濤商務相は28日、北京で会談し、貿易や投資に関連する問題を解決するための協議体を設置することで合意、半導体などの輸出規制の状況について情報共有する枠組みも設ける旨。
米商務省が会談後に声明を発表した旨。協議体には次官級の政府高官と民間部門の代表者が参加する旨。2024年初めに米国で初会合を開き、年2回開催する旨。
中国でほぼ禁止されているメモリ半導体の購入について、懸念があらわされている。
◇US raises concerns by Micron, Intel with China―US, China discuss export controls, agree to open talks (8月28日付け Reuters)
→Gina Raimondo米商務長官と中国高官は今週北京で会談し、最近の輸出規制について話し合い、特に技術関連の通商問題について定期的に協議することで合意した旨。ライモンド氏は、中国のWang Wentao(王文涛)商務部長との会談で、メモリ半導体の購入がほぼ禁止されていることについて、マイクロン・テクノロジー社とインテル社からの懸念を表明した旨。
◇U.S. and China Agree to Broaden Talks in Bid to Ease Tensions―During a visit to Beijing, Gina Raimondo, the commerce secretary, said the two sides would meet to discuss export restrictions and intellectual property, among other issues (8月28日付け The New York Times)
メモリ半導体で痛手を受けているMicronは、中国への対応を考慮した人事を、米商務長官の訪中に合わせて行っている。
◇Micron names China government affairs director as chip firm seeks to mend ties with Beijing amid tensions (8月28日付け South China Morning Post)
→*マイクロン、中国政府関係責任者を任命
*マイクロンによると、Li Xinming(李信明)氏は30年以上にわたって政府部門と企業部門の両方で活躍してきた旨。
*今回の人事は、ジーナ・ライモンド米商務長官が注目の中国訪問を行う際に行われた旨。
◇US companies see China as ‘uninvestable’, warns Gina Raimondo―Raimondo urges China to take action on issues that make it "uninvestable" (8月29日付け Financial Times)
→ジーナ・ライモンド米商務長官は中国政府高官に対し、米企業が中国を「投資できない国」と見なす傾向が強まっていると指摘し、同国でのビジネスリスクを軽減するための行動を取るよう促した旨。ライモンド氏は、知的財産の窃盗、国営企業への補助金、適正手続きの欠如、不透明なデータとプライバシー規則などの問題の解決を求めた旨。
◇中国首相、米商務長官と会談;「貿易で対話・協力望む」 (8月29日付け 日経 電子版 22:35)
→米国のレモンド商務長官は29日、中国の李強(リー・チャン)首相と北京で会談、李氏は「中国は米国と経済貿易分野で対話・協力を深めることを望む」と述べた旨。レモンド氏は「中国の成長を止めて中国とデカップリング(分断)しようとしているわけではない」と語った旨。
訪中日程を終えたレモンド商務長官が、米中両国間の新しいアプローチ、"商業問題ワーキンググループ"に、以下の通り期待している。
◇Raimondo’s China Tour Offers Glimmer of Hope to Battered U.S. Businesses―Raimondo touts "new approach" to US-China business ―‘It feels like the machine has started again,’ says president of American Chamber of Commerce in China (8月30日付け The Wall Street Journal)
→ジーナ・ライモンド米商務長官は、水曜30日に中国への旅を終えて、新たに計画された"商業問題ワーキンググループ"は、米国企業と中国との間の商業上の相違を解決する上で、これまでのものより成功するだろうと述べた旨。「これは新しいアプローチの始まり。」とRaimondo氏。「米国のビジネス界には、これを成功させたいという強い意欲がある。」
◇US commerce secretary hails ‘new approach’ to handling China business frictions (8月30日付け Financial Times)
中国側の通商摩擦への戦略変更が論評されている。
◇China sets aside chip war, moves on with US―Top Chinese officials say it’s time for China and the US to ‘deepen consensus and extend cooperation’ (8月30日付け Asia Times)
→中国は、過去3ヶ月間の3回のハイレベル公式会談でワシントンに輸出禁止を解除させることに失敗した後、ダメージコントロールに重点を置くことで、対米半導体戦争における戦略を変更した旨。
ジーナ・ライモンド米商務長官は水曜30日に4日間の中国訪問を終えた旨。彼女の訪問は、アントニー・ブリンケン国務長官とイエレン財務長官がそれぞれ6月と7月に北京を訪問した後に行われた旨。
バイデン政権のパイプ作りを探るアプローチに対し、野党・共和党からは対中国強硬路線競い合いの様相が見られている。
◇米共和、大統領選へ対中国強硬競う;民主と広がる温度差 (8月31日付け 日経 電子版 03:22)
→2024年米大統領選挙に野党・共和党から出馬をめざす候補が中国に対する強硬路線を競っている旨。党派対立が深まる米国でも中国を地政学上の最大の試練とみなす基本は与野党問わず共有されているものの、中国との対話を探るバイデン民主党政権との温度差は広がった旨。選挙戦が進むにつれ、論戦は一段と過激に傾く可能性がある旨。
米中半導体摩擦の現時点がまとめてあらわされている。
◇US chip war not enough to deter China’s military ambitions―US curbs on cutting-edge semiconductors miss the mark as China’s defense industries run mainly on still accessible mature node chips (8月30日付け Asia Times)
→半導体は米中技術競争の激戦区である旨。2022年10月7日、バイデン政権は、この新興技術競争において米国が「可能な限り大きなリード」を維持するための一連の輸出規制を発表した旨。
この規制は、2つの方法で北京の新興技術開発を抑制しようとするものである旨。第一に、データ集約型の人工知能(AI)モデル、スーパーコンピューターおよび極超音速ミサイルに必要な先端半導体への中国のアクセスを制限する旨。
第二に、この措置は、先進的な半導体の設計に必要な電子設計自動化(EDA)ソフトウェアを含む、米国製の半導体設計・製造装置を中国が使用できないようにすることで、これらの最先端半導体を製造する中国の能力を抑制するものである旨。
最新の動きとして、一部中東の国々へのNvidiaおよびAMDのAI半導体輸出規制の動きが見え隠れしている。
◇U.S. restricts export of Nvidia, AMD AI chips to Middle East, elsewhere (8月30日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→この動きは、当局がすでに両社に中国での同様の半導体の輸出を制限してから1年後のことである旨。
◇US curbs AI chip exports from Nvidia and AMD to some Middle East countries―US expands chip export curbs to Middle East (8月31日付け Reuters)
→米国は、エヌビディアとアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)製品のAI半導体輸出制限に中東諸国を追加する旨。NvidiaのA100とH100半導体は該制限の対象となっている旨。
◇US restricts exports of Nvidia AI chips to Middle East―Controls apply to A100 and H100 chips, in escalation of US efforts to curb China’s access to products (8月31日付け The Guardian (London))
→アメリカは、エヌビディアの人工知能(AI)半導体の輸出規制を中国だけでなく中東の一部の国にも拡大した旨。
エヌビディアは、今回の規制が同社の業績に「直ちに重大な影響を与える」ことはないと述べた旨。また、中東のどの国に影響があるかは明らかにしていない旨。
中東への規制はない、と米商務省のコメントが見られる現時点である。
◇U.S. denies blocking chip sales to Middle East―Commerce Dept. says it hasn't blocked chip exports to Middle East (8月31日付け Reuters)
→バイデン政権は「中東への半導体販売を阻止していない」と、米商務省の報道官は木曜31日に述べた旨。ワシントンがエヌビディアとアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の人工知能(AI)半導体の輸出許可要件を拡大したことが明らかになった後である旨。
摩擦下の半導体製造強化に絡む動き&内容について、それぞれいろいろな問題含みであるが、全般そして各国別に取り出している。
≪全般≫
◇Global ‘Chips Acts’ Open Debate About Best Way Forward―These measures could bolster wide-spread collaboration in the industry. (8月28日付け EE Times)
→2022年に米国で成立したCHIPS and Science Act of 2022がきっかけとなり、各国政府が国内のコンピューター半導体産業育成のために数十億ドルに相当する補助金や投資予算を獲得しようとする世界的な競争が始まり、情報通のオブザーバーが、この現象について意見を述べている旨。
◇CHIPS and Science Act Anniversary: Progress Made but Work Remains (8月28日付け US Chamber of Commerce)
→1)Biden大統領が昨年8月法制化したCHIPS and Science Act of 2022は、米国の半導体産業に$53 billionを投資し、サプライチェーンを強化し、国内の研究開発(R&D)能力を強化し、そして国家安全保障を強化する画期的な超党派法案である一方、これらの措置は、米国の国際競争力を強化する上で極めて重要であるだけでなく、米国の創意工夫とイノベーションの重要性を強化するものでもある旨。
2)この歴史的な法律が施行されてから1年を迎えるにあたり、これまでの進捗状況を分析し、主要な条項がどのように組み合わされているかを理解し、そしてこの法律の可能性を最大限に発揮するためにはどのような追加措置が必要かを明らかにしなければならない旨。
≪中国≫
◇Tech war: China quietly recruits overseas chip talent as US tightens curbs (8月25日付け South China Morning Post)
→*中国政府は、半導体などの科学技術分野を対象とした「Qiming」と呼ばれる人材育成プログラムを推進している旨。
*LinkedInや中国のQ&Aプラットフォーム、Zhihuに、自称リクルーターによるQiming応募者の広告が掲載されている旨。
◇Chinese imports of ASML lithography chip-making machines have surged past the Dutch company’s 2023 estimates (8月26日付け South China Morning Post)
→*ASMLの重要な半導体装置の中国からの輸入は7月までの1年間で$2.58 billionに達し、ASMLが予測した$2.36 billionをすでに上回っている旨。
*オランダが来る9月から深紫外露光装置へのアクセスをさらに制限、中国半導体企業からの注文殺到を促している旨。
≪台湾≫
中国発の台湾に対する見方である。
◇Taiwan’s semiconductor sector faces offshore production dilemma as island struggles for water, power, people (8月25日付け South China Morning Post)
→*台湾積体電路製造股份有限公司(TSMC)は、2025年に米国に$40 billionの施設を開設する予定。
*しかし、半導体生産をオフショア化することで、世界一の半導体生産拠点としての地位と、$820 billionの経済規模が脅かされる可能性がある旨。
TSMCの米国アリゾナ工場についての論評である。
◇‘They would not listen to us’: inside Arizona’s troubled $53bn chip plant (8月28日付け The Guardian)
→*台湾のマイクロチップメーカーTSMC、フェニックス工場建設苦戦の原因は熟練労働者不足だが、労働者は無秩序と安全上の懸念を指摘
*世界最大の半導体メーカーである台湾積体電路製造(TSMC)は、熟練労働者の不足を理由に、フェニックス工場の建設計画を2025年まで延期した旨。TSMCは500人の台湾人労働者のビザ取得を急ごうとしている旨。一方、労働組合は、TSMCがより安価な外国人労働者を雇う口実として技能不足を捏造したと非難している旨。また、工場の安全上の問題を指摘する声もある旨。
ASMLが、台湾での工場設立の認可を得ている。
◇ASML secures approval to invest over NT$10 billion in Taiwan―ASML gets green light for $313M investment in Taiwan (8月30日付け Focus Taiwan)
→オランダに本社を置く半導体製造装置の大手グローバルサプライヤ、ASML Holding N.V.は、台湾に100億台湾ドル($313 million)以上を投資し、Linkou District, New Taipei(新北市林口区)に工場を設立する許可を得た旨。
≪ドイツ≫
ドイツでのTSMCへの補助金に対して、GlobalFoundriesが以下の通り反対している。ファウンドリー業界でのライバル同士である。
◇GlobalFoundries opposes German subsidies for Taiwanese rival TSMC―TSMC announced plans to build its first European fab in Germany earlier this month (8月29日付け Taiwan News)
→受託半導体メーカーのグローバルファウンドリーズ社は、ドイツがドレスデンに建設する台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング社(TSMC)の新工場に補助金を出す計画に反対していると述べた旨。
ドイツの新聞、Handelsblattによると、GlobalFoundries社は、提案されている50億ユーロ(1,720億台湾ドル)の補助金は、TSMCの市場における主導的地位をさらに強化するものだと述べた旨。同紙によると、この計画は、法的懸念、ロビー活動、そしてGlobalFoundriesによるEU委員会への正式な提訴の可能性につながっている旨。
◇GF announces advancements in automotive and RF industries―GlobalFoundries upgrades automotive, RF tech solutions (8月30日付け DIGITIMES)
→グローバルファウンドリーズ社は、自動車技術プラットフォームを強化し、業界初と言われる300ミリウェハーでの高周波silicon on insulators(SOI)を提示している旨。このファウンドリーはまた、ドイツが計画している台湾セミコンダクタ・マニュファクチャリング社(TSMC)への補助金に反対している旨。
≪米国≫
◇Bosch CEO says US support needed for full expansion of California chip factory―Bosch seeks US subsidies for chip plant in Calif. (8月30日付け Reuters)
→ボッシュはカリフォルニア州にあるTSIセミコンダクターの半導体を買収する予定で、ボッシュのCEO、Stefan Hartung氏は、該工場拡張のために米国の補助金を求めていると述べた旨。ボッシュはこの工場で、2026年から電気自動車(EV)市場向けに炭化ケイ素(SiC)半導体を製造する計画の旨。
≪ロシア≫
以下のロシア関連の記事が見られている。
◇Russian Chipmaker Baikal Goes Bankrupt, Assets Valued at Only $5 Million―Reports: Chipmaker Baikal Electronics' assets, IP to be auctioned ―Baikal's assets set to be auctioned off (8月29日付け Tom's Hardware)
→ロシアの半導体メーカー、バイカル・エレクトロニクスの親会社であるT-Platforms社が破産を宣言し、ロシア発のCPUsとシステムオンチップ(SoCs)の数少ない設計者のひとつであるバイカル・プロセッサー関連の知的財産を含む資産を競売にかける、とCNewsが報じた旨。Kommersant(政治・経済記事を中心とするロシアの日刊全国紙)によると、これらの資産の総額は$5 millionと見積もられている旨。
さて、8月から中国が輸出を規制しているガリウムおよびゲルマニウムについて、駆け込みの様相がうかがえる内容である。
◇China exports of gallium and germanium surged before restrictions took effect in August, report shows (8月31日付け South China Morning Post)
→*ガリウムもゲルマニウムも、半導体やその他の電子機器の生産に欠かせないものである旨。
*「国家安全保障を守る」ための北京の動きは、中国に半導体規制を課した米国とその同盟国に対する報復と見られている旨。
世界の政治&経済情勢を受けて揺れ動く半導体関連、いろいろな切り口を、引き続き注目していく。
コロナ「5類」移行とはいえ、用心怠りなくの現状と言えるかと思うが、コロナ前に戻る舵取りがそれぞれに行われている中での世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。
□8月28日(月)
中国の経済低迷関連の内容が、以下の通り続いている。
◇中国、「不況」が招く対外強硬;日本たたきに拍車も―本社コメンテーター 秋田浩之 (日経 電子版 10:00)
→中国の経済が苦境に直面している。不動産が不況に陥り、金融リスクの火種がくすぶり出した。景気の減速により、16〜24歳の失業率は2割を超えた。国際通貨基金(IMF)の予測によれば、2023年の成長率は5.2%だが、2024年には4.5%に沈む。少子化で低成長を強いられることは、中国も分かっていた。だが、これほどの不動産不況や若者の失業は想定外だったはずだ。・・・・・
◇中国、相次ぐ株価対策;印紙税率下げや新規上場の抑制 (日経 電子版 16:30)
→中国が株価対策を相次いで打ち出している旨。株式取引に必要な印紙税の税率引き下げ、新規株式公開(IPO)の段階的抑制、上場企業の大株主による自社株売却の制限など。なりふり構わぬ株価対策で株式相場を活性化し、住宅不況による逆資産効果で落ち込みが危惧される個人消費の下支えを狙う旨。
□8月29日(火)
金融引き締め長期化の警戒が和らぐ指標材料が続いて、基本上げ基調の今週の米国株式市場である。
◇NYダウ続伸、213ドル高;追加利上げへの警戒和らぐ (日経 電子版 05:37)
→28日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前週末比213ドル08セント(0.6%)高の3万4559ドル98セントで終えた旨。25日に講演したパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が金融引き締めを継続する姿勢を示しつつも、政策判断に踏み込んだ発言をせず、追加利上げへの過度な警戒が和らいだ旨。米長期金利の上昇一服や中国の資本市場活性化策も米株式相場の支えとなった旨。
円安進行が取り上げられるこのところ、円の実力が以下の通りあらわされている。
◇円の実力、53年ぶり低水準;家計負担は20万円増―主要通貨で独歩安 (日経 電子版 20:31)
→円の実力が下がっている旨。ドルやユーロなど様々な通貨に対する円の総合的な購買力を示す指標は、53年ぶりの低水準に沈む旨。要因はデフレや金融緩和。エネルギーなど輸入価格の上昇につながり、2022年度から2年間の家計の負担増は20万円に迫る旨。円の購買力を取り戻すには、物価と賃金の上昇の好循環を軌道に乗せる必要がある旨。
□8月30日(水)
◇NYダウ続伸、292ドル高;米労働市場の過熱感和らぐ (日経 電子版 07:28)
→29日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続伸し、前日比292ドル69セント(0.8%)高の3万4852ドル67セントで終えた旨。同日発表の米経済指標が労働市場の過熱感の和らぎを示し、米連邦準備理事会(FRB)による追加利上げ観測が後退した旨。米長期金利が低下し、株式の相対的な割高感が薄れて幅広い銘柄が買われた旨。ダウ平均の上げ幅は300ドルを超える場面があった旨。
□8月31日(木)
◇NYダウ続伸、37ドル高;追加利上げ観測が後退 (日経 電子版 08:04)
→30日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4日続伸し、前日比37ドル57セント(0.1%)高の3万4890ドル24セントで終えた旨。同日朝発表の米経済指標が労働市場の過熱感の緩和を示した旨。米連邦準備理事会(FRB)による追加利上げ観測が一段と後退し、株買いを誘った旨。半面、ダウ平均は前日までの3営業日で750ドルあまり上昇した後で、主力銘柄には持ち高調整売りが出やすく、小幅に下げる場面があった旨。
◇中国の8月製造業景況感、5カ月連続50割れ (日経 電子版 10:59)
→中国国家統計局が31日発表した2023年8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.7、前月より0.4ポイント高かったが、5カ月連続で好調・不調の境目である50を下回った旨。国内不動産市場の低迷や輸出の停滞が響いた旨。
□9月1日(金)
米国の台湾への軍事支援、米中にらみ合い、まず目が離せないところである。
◇米政府、台湾に初の対外軍事融資 中国抑止へ116億円 (日経 電子版 03:25)
→米政府は主に同盟・有志国など主権国家を対象にしてきた「対外軍事融資(FMF)」の枠組みを活用した台湾支援を初めて実施すると決め、29日に米連邦議会に通知した旨。融資規模は$80 million(116億円)。台湾の武力統一も辞さない中国を抑止するため、台湾の自衛力強化を支える旨。
◇NYダウ反落、168ドル安;雇用統計控え利益確定売り (日経 電子版 05:56)
→8月31日の米株式市場でダウ工業株30種平均は5営業日ぶりに反落し、前日比168ドル33セント(0.5%)安の3万4721ドル91セントで終えた旨。好決算を発表した銘柄の株高や、米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めが長期化するとの警戒が後退したことから買いが先行した旨。一方、あす9月1日には8月の米雇用統計の発表がある旨。利益確定や持ち高調整の売りに押され、買い一巡後に下げに転じた旨。
□9月2日(土)
米国も、製造業景況感は「不況」部類の指数となっているが、生産は改善とあらわされている。
◇8月の米製造業景況感、10カ月連続「不況」 生産は改善 (日経 電子版 06:08)
→米サプライマネジメント協会(ISM)が1日発表した8月の米製造業景況感指数は、前月から1.2ポイント上昇し47.6、好不況の分かれ目となる50を10カ月連続で下回った旨。依然として低水準が続くものの、雇用や生産活動は前月より改善の兆しをみせる旨。
◇NYダウ反発、115ドル高;引き締め長期化への警戒和らぐ (日経 電子版 06:14)
→1日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比115ドル80セント(0.3%)高の3万4837ドル71セントで終えた旨。朝発表の8月の米雇用統計では失業率が市場予想に反して前月から上昇した旨。労働需給の緩和を背景に、米金融引き締め長期化への過度な警戒が和らぎ、買いが入った旨。半面、米債券市場で長期金利が上昇し、株式の相対的な割高感が意識されたことが重荷となった旨。
≪市場実態PickUp≫
【ラピダス起工式】
2-nm半導体の量産化を目指すラピダスの北海道・千歳工場の起工式が、以下の通り行われている。多くの課題含みの進捗に、応援&支援の目での注目である。
◇半導体ラピダス、量産実現へ3つの壁;技術・顧客・資金 (9月1日付け 日経 電子版 11:45)
→最先端半導体の受託製造を目指すラピダスが1日、北海道千歳市で工場起工式を開く旨。2027年に回路線幅2ナノメートルを使った最先端半導体の量産開始を目指す旨。現状では国内に高性能の先端、最先端半導体をつくる工場はなく、台湾や米国など海外からの調達に頼っている旨。ラピダスの事業計画が順調に進めば、国内企業が高性能半導体を安定調達できる環境が整う旨。
◇ラピダス起工式に半導体大手トップがそろい踏み、岸田首相もメッセージ (9月1日付け 日経XTECH[クロステック])
→Rapidus(ラピダス)は2023年9月1日、同社の北海道・千歳工場の起工式を開催した旨。同社への国内出資企業8社の幹部に加え、ベルギーの半導体研究機関imec、半導体製造大手の米Lam ResearchやオランダASMLといった半導体関連企業のCEO(最高経営責任者)が出席。今後ラピダスとの連携を見込む企業がそろい踏みした旨。
【Hot Chips】
4年ぶりのリアルイベント開催とあらわされているが、高性能プロセッサの最新技術を披露する国際学会、Hot Chipsが、2023年8月27日〜29日(米国太平洋時間)、米国カリフォルニア州パロアルトのスタンフォード大学でのハイブリッド開催である。インテルはじめ各社の発表関連が、目にした範囲で以下の通りである。
◇Arm’s Hot Chip Reveal: Faster Silicon Development, Performance Uplifts―Arm touts speedier silicon development, performance lift (8月28日付け Forbes)
→Arm Holdingsは今週、スタンフォード大学で開催されたHot Chipsカンファレンス(8月27―29日)で、Neoverse Compute SubsystemsとNeoverse V2プラットフォームを発表した旨。Neoverse CSSは、カスタムシリコンをより早く市場に投入するために設計されたもので、V2は同社のV1から性能を向上させることを目的としているとアームは述べている旨。
◇Intel Details 144-Core Sierra Forest, Granite Rapids Architecture, and Xeon Roadmap―Intel spotlights upcoming Xeon processors at Hot Chips ―Intel shares P- and E-Core architectures at Hot Chips 2023. (8月28日付け Tom's Hardware)
→インテルが今週のHot Chipsカンファレンスで、来年発売予定の最新Xeonプロセッサー、Granite RapidsプロセッサーとSierra Forestプロセッサーの技術的詳細を発表の旨。該チップレットベースの設計は、インテルのEMIBブリッジ技術を使用し、柔軟性と拡張性に重点を置いている旨。
◇Hot Chips 2023: Intel Details More on Granite Rapids and Sierra Forest Xeons (8月28日付け AnandTech)
◇Intel’s ‘Meteor Lake’ CPU power will be controlled by AI―Intel details how AI will be used in Meteor Lake chip for power management ―Executives detailed the change to Meteor Lake at the Hot Chips conference. (8月29日付け PCWorld)
→インテルのMeteor Lake半導体は、PC上の特定のAIタスクのエンジンとして使用されることは間違いない旨。しかし、インテルは半導体の動作方法にもAIを適用している旨。具体的には、半導体の電力管理や、アクティブ状態と低電力状態の間の遷移方法にもAIを適用している旨。
インテル幹部はスタンフォード大学で開催されたHot Chipsカンファレンスで、AI(偶然かどうかはわからないが、しばしばインテルの「Centrino moment」と呼ばれる)はMeteor Lakeの電力管理にも大きく関わっていると述べた旨。
◇Samsung breaks through memory bottleneck; announces research results on HBM-PIM and LPDDR-PIM―Samsung details HBM-PIM research for generative AI (8月31日付け DIGITIMES)
→サムスン電子は今週開催されたHot Chips 2023で、high bandwidth memory/processing in memory(HBM-PIM)およびlow power DDR-PIM(LPDDR-PIM)に関する研究成果を発表した旨。サムスンは、生成AIアプリケーションにおけるHBM-PIMの性能と効率性をアピールしている旨。
◇Performance & Efficiency Cores For Servers―Server-class CPUs tailored for performance, efficiency ―Scalable, flexible architectures are coming to server-class processors to better address different market needs. (8月31日付け Semiconductor Engineering)
→アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)およびインテルなどが、今週開催されたHot Chipsカンファレンスで、様々な市場ニーズに対応するサーバークラスのプロセッサーを発表した旨。チップレットと差別化されたコアにより、プロバイダーは性能や効率の目標に合わせて製品をカスタマイズすることができる旨。
◇Intel shows off 8-core, 528-thread processor with 1TB/s of co-packaged optics―Intel unveils 528-thread processor for analytics workloads―'Embarrassingly parallel' protoype baked for DARPA to play Six Degrees of Kevin Bacon at massive scale (9月1日付け The Register (UK))
→インテルは今週開催されたHot Chipsカンファレンスで、1TB/秒のシリコンフォトニクス相互接続を備えた528スレッド・プロセッサを披露した旨。この8コアの設計は、グラフ解析と電力効率を目的として、国防高等研究計画局(DARPA)のHierarchical Identity Verify Exploitプログラムのために構築された旨。
【Google関連】
Googleが運営するCSP(クラウドサービスプロバイダー)部門、Google Cloudの年次イベント、Next '23が、8月29日午前(米国時間)から米国カリフォルニア州サンフランシスコ市のモスコーン・センターで開催、これも4年ぶり対面のイベントとのこと。Nvidia関連はじめ半導体視点での以下取り出しである。
◇Google says over half of AI startups use Google Cloud, plans bold Nvidia partnership (8月29日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→グーグルは現在、AIスタートアップの50%が同社のクラウド上で稼働していると主張している旨。
◇Google unveils enterprise AI tools, new AI chip ―Google offers new AI tools; A3 GPU coming soon (8月29日付け Reuters)
→グーグルは、特注半導体や企業向けツールなど、AI技術のアップデートをいくつか発表した旨。新しいA3グラフィック・プロセッシング・ユニット(GPU)は、NvidiaのH100とグーグルの200Gbpsインフラストラクチャー・プロセッシング・ユニット(IPU)を搭載し、来月リリースされる予定。
◇Google sharpens AI toolset with new chips, GPUs, more at Cloud Next―TPU v5e, A3 VMs, and GKE Enterprise headline first in-person shindig since pandemic (8月29日付け The Register (UK))
→グーグルは今年のCloud Nextで、TPUのアップデートやGPUのオプション、そしてすべてを機能させるソフトウェア・ツールの数々など、ハードウェア・プロジェクトの数々を発表し、AIに鋭く焦点を当てている旨。
サンフランシスコの巨大なモスコーン・センターで開催された、パンデミック前以来の対面式イベントにおいて、グーグルはTensor Processing Unit(TPU) AIアクセラレータの最新版であるCloud TPU v5eの詳細と、Nvidia H100 GPUによる仮想マシン・インスタンスを公開した旨。
◇Google’s new A3 GPU supercomputer with Nvidia H100 GPUs will be generally available next month (8月29日付け TechCrunch)
→3万ドルを超える価格にもかかわらず、NvidiaのH100 GPUsは注目の商品である旨。今年初め、Google Cloudは、H100を搭載したA3 GPU仮想マシンのプライベート・プレビューの開始を発表した旨。この仮想マシンは、Nvidiaの半導体とGoogleがカスタム設計した200Gpbsのインフラストラクチャ・プロセッシング・ユニット(IPUs)を組み合わせたもの。現在、グーグルはCloud Nextカンファレンスで、A3を来月から一般提供すると発表した旨。
◇Google、訪問「1000億回」が変えた世界;AIは福音か―Google25 テック覇者の未来(上) (8月29日付け 日経 電子版 02:00)
→・米グーグルは9月、会社設立から25年を迎える
・検索や広告の経済効果は米国だけで約100兆円に
・生成AIの礎を築き、テック産業の成長の壁を打破
米グーグルが9月、会社設立から25年を迎える。世界シェアの9割超を握ったインターネット検索サービスを軸に事業領域を拡大し、四半世紀で社会や経済に対する影響力を飛躍的に高めた。世界を変えたグーグルの光と影を追う。・・・・・
◇米グーグル、生成AIによる業務支援提供 (8月31日付け 日経)
→米グーグルは29日、文書作成やビデオ会議などを組み合わせた企業向けサービス「グーグル・ワークスペース」に、生成人工知能(AI)を活用した業務支援機能を追加すると発表、1人当たり月30ドル(約4400円)で提供する旨。同様の機能を開発している米マイクロソフトなどとの競争が激しくなりそう。
【Apple関連】
Apple恒例の新製品発表会に今からの注目である。
◇Apple sends invites for Sept. 12 launch event, new iPhone 15 expected (8月29日付け CNBC)
→*アップルは火曜29日、9月のプレスイベントの招待状を送付した旨。
*アップルはiPhone 15と新しいアップルウォッチを発表する予定。
*発表会の模様はアップルのウェブサイトでストリーミング配信される旨。
◇Apple、9月13日に発表会;「iPhone15」披露か (8月30日付け 日経 電子版 05:07)
→米アップルは29日、日本時間9月13日午前2時(米西部時間12日午前10時)から米カリフォルニア州の本社で特別イベントを開くと発表、オンラインでも配信がある旨。「iPhone15」シリーズとされる次期スマートフォンなどの発表が予想されている旨。
Apple製品の筐体製造での3Dプリンティング技術使用の検討が、次の通りである。
◇Apple reportedly tests 3D printing to manufacture the new Apple Watch (8月31日付け CNBC)
→*アップルは、次期Apple Watch Series 9の筐体の製造に3Dプリンティング技術を使用するテストを行っていると報じられている旨。
*Bloombergは、最初のテストがうまくいけば、アップルは他の製品の製造にも3Dプリントを展開すると報じている旨。
*該報道によると、アップルのMacやiPadのラインナップに使われている3Dプリントのアルミニウム製筐体は、まだ量産できていない旨。
【Huawei関連】
米中摩擦を上に取り上げているが、米国の厳しい制裁下にあるHuaweiが、最新スマホのフラッグシップモデル、Mate 60 Proを発表、関連する論評、動きが以下の通りである。
◇China chip stocks rally after Huawei's low-key launch of new Mate 60 Pro phone (8月30日付け Reuters)
◇Tech war: Huawei’s silence over its latest Mate smartphone’s advanced chip raises speculation on where and how it was made (8月30日付け South China Morning Post)
→*中国のベンチマークサイト、AnTuTuは、HuaweiのMate 60 Proの中央演算処理装置(CPU)を、5GをサポートするHiSilicon設計のKirin 9000sと特定した旨。
*ファーウェイがこのCPUについて意図的に沈黙を守っていることは、米国による制裁の中、同社がスマートフォン事業を静かに復活させるために取った長さを反映している旨。
◇Huawei unveils flagship smartphone with satellite connection support (8月30日付け DIGITIMES)
→中国を拠点とするファーウェイは、意外にも最新のフラッグシップモデル「Mate 60 Pro」を発表した旨。ファーウェイは米国の制裁下にあるが、この新型スマートフォンはSMICのN+2テクノロジーを搭載し、5Gネットワークに対応する可能性があると報じられている旨。
◇Huawei’s new phone juices Chinese chip stocks―IT experts are debating whether Huawei’s Kirin 9000s comes purely from inventory or has used SMIC’s technology (8月31日付け Asia Times)
→米国から制裁を受けていたファーウェイ・テクノロジーズが、自社開発の中央処理装置(CPU)を採用したフラッグシップ・スマートフォンを発売したことを受け、中国の半導体メーカーとそのサプライヤーの株価は8月30日(水)に急上昇した旨。
【半導体市場関連データ】
半導体主要10社の直近業績、そしてパソコンおよびスマホの世界出荷のデータが、以下の通りである。
◇世界半導体10社、49%減益、4〜6月最終、SKなど赤字転落 (8月26日付け 日経)
→半導体業界の不況が長引いている旨。主要10社の2023年4〜6月期決算(一部は3〜5月期、5〜7月期)は、合計純利益が$15.1 billion(約2兆2000億円)と前年同期から49%減り、3年ぶりの減益だった旨。7〜9月期も開示する4社全てが悪化を見込む旨。
ただ、米エヌビディアの2023年5〜7月期純利益は9.4倍の$6.188 billionとなった旨。同社は英調査会社オムディアによると人工知能(AI)向け半導体で8割のシェアを握る旨。同社の売上高の約8割がデータセンター向けで、AI の学習などに同社の半導体が使われている旨。エヌビディアを除く9社では最終減益率は69%まで膨らむ旨。
◇Global PC Shipments Expected to Return to Growth in 2024 Albeit Below 2019 Pre-Pandemic Levels, According to IDC (8月28日付け IDC)
→パーソナルコンピュータ(PC)の回復への道のりは、2020年と2021年の爆発的な落ち込みから厳しいものとなっていたが、ようやく成長の兆しが戻りつつある旨。
International Data Corporation(IDC)のWorldwide Quarterly Personal Computing Device Trackerによると、2024年のPC出荷台数は前年比3.7%増の2億6,140万台に達すると予測されている旨。この出荷台数は2018年の2億5,960万台を上回るが、2019年の水準を依然下回る旨。この業界は、消費者市場のリフレッシュサイクルに関する懸念、デバイス購入を前倒しする企業、そして多くの市場で回復していない教育予算など、依然として課題に直面している旨。その結果、2023年の出荷台数は前年比13.7%減の2億5,200万台と予測される旨。
◇Worldwide Smartphone Shipments Forecast to Reach Lowest Volume in a Decade While iOS Share Climbs to Record Levels in 2023, According to IDC Mobile Phone Tracker (8月30日付け IDC)
→International Data Corporation(IDC)のWorldwide Quarterly Mobile Phone Trackerによると、2023年の世界のスマートフォン出荷台数は前年比4.7%減の11億5,000万台となり、過去10年間で最低となる見通しである旨。これはIDCの前回予測である-3.2%から下方修正されたもので、経済見通しの悪化とインフレの進行が消費者需要を減退させ、更新サイクルを長期化させていることが要因となっている旨。
◇2023年世界スマホ出荷、過去10年で最低に;iPhoneは増加 (8月31日付け 日経 電子版 10:00)
→米調査会社IDCは30日、2023年のスマートフォンの世界出荷台数が2022年比4.7%減の11億5000万台と、過去10年間で最低となりそうだと発表した旨。世界的なインフレや経済成長の見通しが弱いことが背景にある旨。
IDCはこれまで2023年の出荷台数を2022年比3.2%減としていた予想を下方修正した旨。