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米国の新たな対中輸出規制検討、人工知能(AI)半導体、分断深まる現時点

ブリンケン米国務長官が北京を訪問、米国と中国の接触の糸口がつかめるかというところであるが、こんどは生成AIを巡る熱い議論が引き続く中、AI半導体の対中輸出規制の検討の動きが出てきて、半導体関連株価が下落の反応である。AI半導体市場をリードするNvidiaは、昨年秋に最先端半導体の「A100」と「H100」を中国向けに輸出できなくなっており、その後中国に輸出可能なスペック品を開発して拡販しているとされている。米国の今回の検討の動きで、輸出規制がこれらに及ぶかどうか、今後に注目である。オランダ政府も、半導体製造装置の輸出に関する新たな輸出規制を来週にも発表する予定と伝えられ、EUVリソのASMLはじめ9月から政府の輸出許可を取得する必要があるとのこと、ほか分断が深まる現時点の状況を以下追っている。

長見晃の海外トピックス

≪AI注目の渦中の規制検討≫

今回の規制検討の動きを伝える記事が、次の通りである。

◇U.S. Considers New Curbs on AI Chip Exports to China―US eyes new limits on exports of AI chips to China―Restrictions come amid concerns that China could use AI chips from Nvidia and others for weapon development and hacking (6月27日付け The Wall Street Journal)
→米商務省は、ハッキングや兵器化の懸念から、人工知能(AI)に使用される半導体の中国への輸出について、特別ライセンスを含む追加制限を検討している旨。昨年10月に最初の規制が設けられた後、Nvidiaは中国市場向けに特別にA800半導体を開発したが、この半導体は、提案されている新たな制限の下ではライセンスなしで禁止される可能性がある旨。

同日の中国発の記事では、現下の米国の規制にも拘らず、NvidiaやAMDの該当先端品が店に出回っている、と次の通りである。

◇Tech war: strong demand in China for advanced chips used on AI projects creates growing market for smuggled Nvidia GPUs, despite US ban (6月27日付け South China Morning Post)
→*昨年8月に米国がAMDとNvidiaの特定製品の中国への販売を禁止したにもかかわらず、店頭取引は盛んである旨。
 *ある業者は、NvidiaのA100 GPUを入手できたと主張し、希望小売価格の約$10,000を上回る$17,709としている旨。

今回の米国の検討の動きに向けた背景が、以下端的にあらわされている。

◇Nvidia’s chips fuel A.I. ― here’s why the U.S. worries about China’s access (6月28日付け CNBC)
→*エヌビディアの強力な半導体は、人工知能(AI)を実現する能力がますます求められるようになったため、特に重要視されるようになった旨。
 *しかし、そのユニークな能力ゆえに、米国の中国タカ派は、それが悪用されることを恐れている旨。
 *バイデン政権が検討しているとされる新たな制限は、中国への輸出に関する商務省の以前の制限に適合するよう、エヌビディアが設計した半導体の販売を制限するもの。

検討の動きの業界各紙の取り上げが続いている。

◇US considering new restrictions on AI chip exports to China, Wall Street Journal reports (6月28日付け Reuters)

◇米、AI半導体の対中輸出に新規制検討=関係筋―エヌビディアなどの半導体、軍事転用を懸念 (6月28日付け The Wall Street Journal 日本語)
→米バイデン政権は、競合諸国の手中にある人工知能(AI)技術の威力に対する懸念の高まりを受け、中国へのAI半導体輸出に対する新たな規制を検討している旨。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした旨。

◇米政府、AI半導体の対中輸出規制を拡大;現地報道 (6月29日付け 日経 電子版 05:25)
→米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は米政府が中国への半導体輸出規制の範囲を拡大する方向で検討していると報じた旨。先端の人工知能(AI)に必要な半導体で対象を広げる旨。
米商務省は2022年10月、AI向けの先端半導体の輸出を原則禁じた旨。その後、米半導体企業が規制基準を下回る形で、中国向け製品を開発・輸出するようになったため、規制の網を広げる旨。

これら報道を受けて、市場株価の反応である。

◇Semiconductor industry sees stocks fall with possible new China export restrictions (6月28日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→バイデン政権が中国への人工知能(AI)半導体の輸出規制強化を検討しているとの報道を受け、半導体関連株は水曜28日の取引開始直後から下落を続けた旨。

◇Chip stocks smacked as U.S. mulls fresh curbs on AI access to China (6月28日付け Reuters)

波紋が続く、以下の内容である。

◇Nvidia sees permanent loss of opportunities from China export curbs (6月29日付け South China Morning Post)
→*米国当局は、中国へのAI半導体の流入を遅らせるために策定された輸出管理規則の厳格化を検討している旨。
 *昨年9月、Nvidiaは米国当局から、AI用の2つのトップ・コンピューティング・半導体の中国への輸出を停止するよう求められたとしていた旨。

◇THE AI POWER PLAYER―Nvidia soars as it holds a near monopoly on artificial intelligence chips. (6月30日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→いま最もホットなテクノロジー分野である人工知能の世界では、NvidiaのプロセッサーがAI市場を独占している旨。

◇AI chip bans cloud US-China trade talks―Yellen wants to go to Beijing but plans are up in the air in view of chip bans and threats from both sides (6月30日付け Asia Times)
→中国とアメリカの経済トップが7月上旬に北京で会談する可能性があるが、この会談の可能性は現在、双方からの半導体禁止の脅しによって曇っている旨。
ジャネット・イエレン財務長官は水曜日のテレビインタビューで、北京とワシントンの間に相違があるにもかかわらず、中国を訪問し、新しい指導者たちと再び連絡を取り合うことを望んでいると述べた旨。木曜29日夜の時点では、北京はまだイエレンの訪中を確認していない旨。

本年3月のロイター発記事によると、Nvidiaは、最先端半導体製品を米国の対中輸出規制に抵触せず中国に輸出できるよう再構成したと発表、とのこと。昨年中国向けに輸出できなくなっていた最先端半導体の「A100」と「H100」は、「ChatGPT」はじめ生成AI技術開発に不可欠とされているとのこと。中国に輸出可能なバージョンは、中国IT大手に採用と伝えられている。今後の推移に注目するところである。

各国・地域の半導体製造強化が進む中の米中摩擦により深まる分断の現時点について、関連する内容&動きを取り出している。

まずは、半導体製造装置の新たな輸出規制発表を間近に控えるオランダから。

≪オランダ≫

◇New China export curbs soon: ASML―Export limits: Following US pressures on Dutch chipmaker ASML, new export controls are to be published as soon as 30 June to limit Chinese high-tech advances (6月24日付け Taipei Times)
→オランダ政府は早ければ来週にも、ASML Holding NVの半導体製造装置の中国への輸出を制限する新たな輸出規制を発表する予定である、と情報筋が語った旨。
該政府は以前、夏までに公表すると約束していたが、この措置は中国やASMLについては言及していない旨。

◇Dutch semiconductor machine export restrictions to come into force in September―ASML, others to face new Dutch export limits (6月30日付け The Associated Press)
→ASML Internationalをはじめとする先端半導体向け装置マシンを製造する企業は、9月からオランダ政府から輸出許可を取得する必要がある旨。ASMLは、この制限による業績見通しへの影響はないと見ており、米国やEUからの輸出規制も遵守する予定である旨。

◇Dutch curb chip equipment exports, drawing Chinese ire (6月30日付け Reuters)

◇ASML Hit With New Limits on Chip Gear Exports to China (6月30日付け BNN Bloomberg (Canada))

以下、米国、中国および日米欧について示している。

≪米国≫

TSMCのアリゾナ工場について、中国発の記事および台湾から人材派遣の動きである。

◇Taiwan-Arizona ties: the history behind TSMC’s decision to build US$12 billion chip plant in southwestern US (6月24日付け South China Morning Post)
→*アリゾナ州は1960年代から長年にわたり台湾を支援しており、台湾にとってサブナショナル外交の重要性が増していることを浮き彫りにしている旨。
 *TSMCは政治的な目的でアリゾナ州に投資したわけではないだろうが、北京との関係が台湾のビジネス上の意思決定に影響を与える可能性があると専門家は指摘する旨。

◇TSMC to send hundreds more workers to speed U.S. plant construction―TSMC sending extra workers to Ariz. to hasten chip plant construction ―World's largest contract chipmaker faces delays in Arizona project as market slows (6月29日付け Nikkei Asian Review (Japan))
→台湾積体電路製造股?有限公司(TSMC)とそのサプライヤーは、20年以上ぶりとなる米国での半導体工場建設を加速させるため、台湾からアリゾナ州へ数百人の追加労働者を派遣する計画であると、関係筋がNikkei Asiaに語った旨。

米国Chips Act関連である。

◇US DoC looking for foreign participants in sub-$300m semiconductor projects―Commerce Dept. lowers threshold for foreign chip projects to under $300M (6月27日付け Electronics Weekly (UK))
→米商務省によれば、秋には$300 million未満の半導体プロジェクトおよび商業用研究開発(R&D)プロジェクトに対する資金提供の機会が設けられる旨。

◇States are paying huge sums to lure semiconductor manufacturers, on top of CHIPS Act billions―N.Y. leads states adding billions to CHIPS Act incentives (6月28日付け CNBC)
→1)ニューヨーク州や他の州は、CHIPS法による$52 billionの連邦補助金に加えて、高額の優遇措置で半導体メーカーを誘致しようとしている旨。マイクロン・テクノロジーは、ニューヨーク州シラキュース(Syracuse)近郊のメモリー半導体工場に対して$5.5 billionの税額控除を受ける予定である旨。
 2)*連邦政府のCHIPS and Science Actは、米国内での半導体製造に数十億ドルの奨励金を提供している旨。州によっては、プロジェクト獲得のためにさらに数十億ドルを投入するところもある旨。
  *これまでで最大の案件はニューヨーク州で、マイクロン・テクノロジーのメモリーチップ工場を獲得するために$5.5 billionの税制優遇措置を提供している旨。
  *ニューヨーク州知事のキャシー・ホーチュル(Kathy Hochul)氏は、雇用と経済波及効果をもたらすという理由でこの契約を擁護しているが、批評家筋は、州は国民全員にお金を使ったほうがいいと言う旨。

≪中国≫

中国の半導体投資の大きな規模があらわされている。

◇Report: China's 2021-22 chip investments neared $291B (6月27日付け DIGITIMES)
→JW Consultingによると、中国は2021年から2022年にかけて700以上の半導体プロジェクトに$290.8 billionを投資した旨。同レポートによると、2022年のプロジェクトは2021年に比べて増加しており、該資金の約3分の1は材料と装置に対するものであった旨。

天津で開催の夏季ダボス会議関連である。

◇李強首相「5%成長は実現可能」;夏季ダボス会議開幕 (6月27日付け 日経 電子版 13:14)
→中国・天津市で27日、世界経済フォーラム(WEF)が主催する夏季ダボス会議が開幕、2019年以来、4年ぶりの開催となる旨。開幕式では、李強(リー・チャン)首相が演説し、2023年の5%成長率目標の達成に自信を示した旨。
李氏は「2023年4〜6月期の成長率は1?3月期(4.5%)を上回る見通し」としたうえで、「2023年通年の5%前後の成長率目標は実現可能だ」と述べた旨。

◇生成AIや脱中国議論;企業経営者、夏季ダボス会議閉幕 (6月30日付け 日経)
→中国・天津市で開かれていた夏季ダボス会議が29日、閉幕した旨。米中分断(デカップリング)や経済安定といった中国の課題について欧米など政府首脳らの議論が振るわなかった一方、生成人工知能(AI)や生産拠点の「脱中国」などの注目トピックを巡っては、参加した企業経営者らが活発な議論を行った旨。

上海で開催のSEMICON China関連である。米中摩擦そして脱グローバル化の問題意識があらわされている。

◇SEMICON China 2023 Opens Tomorrow With Innovation, Sustainability, Smart Manufacturing, Automotive and Talent in Focus (6月28日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→世界最大の半導体会議および展示会であるSEMICON China 2023が明日29日、Shanghai New International Expo Centreで開幕、持続可能性、スマート製造、自動車、イノベーションおよび人材など業界の重要テーマにスポットを当てる旨。6月29日から7月1日にかけて開催されるこのイベントには、エレクトロニクスサプライチェーン全体の最新開発およびトレンドに関する洞察のために業界のリーダーおよび先見者が集まる旨。
セミコン・チャイナ2023は、9万平方メートルの展示スペースに1,100社が出展し、4,200以上のブースが設けられ、いずれも最高を記録の旨。

◇中国最大規模の半導体展示会が開幕;上海市で (6月30日付け 日経)
→中国最大の半導体分野の国際展示会「セミコン・チャイナ」が29日、上海市で開幕した旨。米国が対中規制を強化する中でも、米アプライドマテリアルズ(AMAT)など米欧日の半導体製造装置大手がスポンサーなどとして参加し、世界最大の中国市場での事業拡大をめざす旨。

◇Tech War: US chip restrictions dominate debate among Chinese semiconductor veterans at Semicon industry conference (6月29日付け South China Morning Post)
→*上海で開催されたセミコン・チャイナでは、米国の新たな制裁措置が迫る中、専門家や関係者がこぞって脱グローバル化の影響について議論した旨。
 *国内産業をさらに発展させるために行動を起こすよう呼びかける声もあったが、先端半導体製造でのキャッチアップには十分な資金以上のものが必要である旨。

◇Tech war: chairman of YMTC, China’s top memory chip maker, warns of ‘turbulence and disorder’ in semiconductor sector amid geopolitical tensions (6月29日付け South China Morning Post)
→*YMTCのChen Nanxiang(陳南翔)会長は、Semicon Chinaにて、半導体業界の調和とバランスが崩れ、「重大な不確実性」が待ち受けていると述べた旨。
 *中国トップのメモリー半導体メーカーのヘッドとして、陳氏は米国主導の貿易制裁の中、同業界のビジネスの見通しについて直の印象を語った旨。

◇Chinese chip industry has to readjust to deglobalization―Deglobalization challenges seen ahead for chipmakers in China (6月30日付け DIGITIMES)
→SEMICON China 2023にて、清華大学での指導的学者で、中国半導体産業協会(CSIA)の副会長でもあるWei Shaojun氏が、半導体サプライチェーンのグローバル化が止まっていく中、中国半導体産業が直面する課題について見解を述べた旨。

ほか関連する動き、内容である。

◇中国外交、対抗措置に法的権限;対外関係法が7月1日施行 (6月29日付け 日経 電子版 18:53)
→中国は7月1日、外交政策の基本方針を定めた「対外関係法」を施行する旨。主権や安全を損ねる行為に対抗措置をとる権限を明記した旨。米国などとの対立を辞さない習近平(シー・ジンピン)指導部の外交姿勢を法的に裏付ける内容で、他国への制裁が増える可能性がある旨。

◇中国、「6G」主導権狙う;ファーウェイなど開発に力;米欧、5Gで中国製品排除強める;分断進めば規格分裂も (6月30日付け 日経)
→中国が次世代通信「6G」の規格づくりで主導権を狙っている旨。上海で開幕した見本市では華為技術(ファーウェイ)などが開発中の先端技術を披露した旨。ただ、米欧は安全保障上の観点から高速通信規格「5G」で中国製品を排除する動きを強める旨。分断が進めば、将来の通信規格が中国と米欧で分かれる懸念もある旨。

日米欧での半導体での一層の協力である。

≪日米欧≫

◇半導体への補助金、日米欧で情報共有;生産すみ分け狙う (6月29日付け 日経 電子版 02:00)
→日本と欧州連合(EU)は政府の半導体支援策の情報共有を始める旨。経済安全保障を強化する必要性から各国は巨額の補助金を投じて半導体の自国生産を進めている旨。過剰供給などに陥らないよう支援の規模や内容を情報交換し、生産品目のすみ分けを狙う旨。
西村康稔経済産業相とEUのブルトン欧州委員(域内市場担当)が7月上旬にも会談して合意する見通し。

AI半導体の扱いが当面であるが、情勢&状況の推移に引き続き注目である。


コロナ「5類」移行とはいえ、用心怠りなくの現状と言えるかと思うが、コロナ前に戻る舵取りがそれぞれに行われている中での世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。

□6月27日(火)

インフレ懸念が和らいだり、重荷になったり、日々上下の展開から、最後2日は上げとなった今週の米国株式市場である。

◇NYダウ6日続落、12ドル安;ハイテク株の下げが重荷 (日経 電子版 05:55)
→26日の米株式市場でダウ工業株30種平均は6日続落し、前週末比12ドル72セント安の3万3714ドル71セントで終えた旨。米国の利上げ継続観測などからハイテク株の一角に売りが出た旨。一方で、このところ下げが目立っていた景気敏感株や消費関連株には値ごろ感からの買いが入り、ダウ平均の下げ幅は限られた旨。

ロシアの状況を反映するルーブルの下げである。

◇ロシアルーブル、2023年1割安;国民は外貨に逃避 (日経 電子版 19:18)
→ロシアの通貨ルーブルの下げが厳しい旨。通貨の総合的な強さを示す日経通貨インデックスの今年の下落率は12%と主要25通貨の中で最大。今週は民間軍事会社ワグネルによる反乱を受けて一段安となった旨。エネルギー輸出収入の減少や家計の外貨預金シフトが底流にあり、国内のインフレ懸念を強めている旨。

□6月28日(水)

◇NYダウ7日ぶり反発、212ドル高;景気悪化の懸念和らぐ (日経 電子版 05:47)
→27日の米株式市場でダウ工業株30種平均は7営業日ぶりに反発し、前日比212ドル03セント(0.6%)高の3万3926ドル74セントで終えた旨。27日に発表された米経済指標が軒並み市場予想を上回り、米景気悪化への懸念が和らいだ旨。ダウ平均は前日まで下げが続き、主力銘柄に値ごろ感からの買いが入りやすかった旨。

□6月29日(木)

◇NYダウ反落、74ドル安;インフレ懸念が重荷 (日経 電子版 05:35)
→28日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、前日比74ドル08セント(0.2%)安の3万3852ドル66セントで終えた旨。高インフレや米連邦準備理事会(FRB)の利上げが続くとの見方が消費関連株の一角やディフェンシブ株の重荷となった旨。一方、ハイテク株の一部は買われ、相場を下支えした旨。

米国の第一四半期のGDPが大きく上方修正されている。

◇First-quarter economic growth was actually 2%, up from 1.3% first reported in major GDP revision (CNBC)
→*木曜29日に発表された数値の最終修正によると、第一四半期のアメリカ経済は年率2%のペースで成長した旨。
 *これは前回予想の1.3%、ダウ・ジョーンズのコンセンサス予想の1.4%を大きく上回った旨。
 *個人消費と在庫が上方修正されたことが、この数字を押し上げた。

□6月30日(金)

◇1〜3月米GDP確定値、2.0%増;0.7ポイント上方修正 (日経 電子版 01:37)
→米商務省が29日発表した1〜3月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)確定値は前期比の年率換算で2.0%増えた旨。5月に公表した改定値(1.3%増)から0.7ポイントの上方修正になった旨。市場予想(1.4%増)も上回り、米経済の底堅さを示した旨。

◇NYダウ反発、269ドル高;銀行株や景気敏感株が上昇 (日経 電子版 05:47)
→29日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比269ドル76セント(0.8%)高の3万4122ドル42セントで終えた旨。28日公表のストレステスト(健全性審査)の結果を受け、銀行株が買われた旨。朝方発表の経済指標が米経済の底堅さを示したことも、主力株の支えとなった旨。一方、ハイテク株とディフェンシブ株の一部には売りが出た旨。

円が1ドル=145円台、7カ月ぶり円安水準である。

◇円下落、一時145円台;7カ月ぶり円安水準 (日経 電子版 10:45)
→30日の外国為替市場で円が対ドルで下落し、一時1ドル=145円台を付けた旨。
2022年11月以来、およそ7カ月ぶりの円安・ドル高水準となる旨。米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めが長引くとの見方から、ドルを買う動きが強まった旨。政府・日銀は2022年9月に145円台で円買い介入を実施しており、市場では警戒感が増している旨。

中国経済の低迷が長引き、懸念材料である。

◇中国、6月製造業景況感50割れ;3カ月連続 (日経 電子版 10:45)
→中国国家統計局が30日発表した2023年6月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.0、前月より0.2ポイント高かったが、3カ月連続で好調・不調の境目である50を下回った旨。経済の波及効果が大きい不動産市場の低迷など需要不足が目立ち、生産が伸び悩んだ旨。

□7月1日(土)

◇NYダウ続伸、285ドル高;インフレ懸念が後退 (日経 電子版 06:48)
→6月30日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸、前日比285ドル18セント(0.8%)高の3万4407ドル60セントで終えた旨。同日発表の5月の米個人消費支出(PCE)物価指数の伸びが鈍化し、米国のインフレに対する懸念が和らいだ旨。スマートフォンのアップルは時価総額が2022年1月以来1年半ぶりに3兆ドルを超え、主要ハイテク銘柄への投資意欲の強さを示したと受け止められた旨。


≪市場実態PickUp≫

【Oracle関連】

ビジネス用途に特化したソフトウェアのOracleについて、インテルから離れる動きが目立つ以下の内容である。

◇Rejecting Intel, Oracle pumps up Exadata beef cake with AMD protein―Oracle upgrades Exadata with X10M using AMD's Epyc ―Muscular system gets first update in two years with Epyc injection (6月23日付け The Register (UK))
→Oracleは、X10MにAdvanced Micro Devices(AMD)のEpycプロセッサーを搭載することで、Exadataデータベース・システムを強化している旨。オラクルは、旧システムと比較して、ストレージ・サーバーのデータ量が22%増加し、オールフラッシュ・ストレージ・サーバーの容量が2.4倍になったとしている旨。

◇Oracle spending 'billions' on Nvidia chips this year - Ellison―Oracle expects to spend billions on Nvidia chips for cloud (6月28日付け Reuters)
→Oracleの創業者で会長のLarry Ellison 氏が、同社はクラウド・コンピューティング部門を拡大し、Nvidiaの半導体にbillions of dollarsを費やすだろうと述べた旨。エリソン会長はまた、同社のデータベース・ソフトウェアが、市場をリードするインテルへの挑戦として、Ampere Computing社の半導体を搭載したサーバーでの使用を拡大していることも発表した旨。

◇Oracle Expands Database to Ampere Chips, Dealing a Blow to Intel (6月28日付け BNN Bloomberg (Canada))

◇Oracle is no longer buying Intel processors for its data centers (6月28日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→OracleのChairman、Larry Ellison氏によると、同社はデータセンター用にインテル製半導体をもはや購入しない旨。世界最大のデータセンター事業者のひとつが、インテル製半導体から撤退した旨。


【Micron関連】

インドでの組立・テスト工場関連について、以下の通りである。

◇What Led To Micron’s $2.75 Billion Semiconductor Bet On India? ―By setting up a memory chip assembly and testing unit in Gujarat, Micron becomes the first major global chipmaker to enter India’s nascent semiconductor ecosystem (6月23日付け Outlook India)
→ナレンドラ・モディ首相の訪米で決定された最も重要な投資案件のひとつが、グジャラート州におけるMicronの$2.75 billion規模の半導体拠点の設立である旨。提案されている半導体組立・テスト工場は、拠点が稼動すれば、5,000人近い直接雇用と約15,000人の地域雇用を生み出すと期待されている旨。

◇Micron Delivers Strong Forecast in Sign That Glut Is Easing (6月28日付け BNN Bloomberg (Canada))

◇Micron to Build Semiconductor Assembly and Test Facility in India (6月28日付け EE Times India)
→Micron Technology社が、インドのグジャラート州に新しい組立・テスト拠点を建設する予定、マイクロンのこの新しい拠点は、DRAMとNANDの両製品の組立とテスト製造を可能にし、国内および国際市場の需要に対応する旨。

◇Vedanta-Foxconn re-applies for chip incentive, scales down to only 40nm―Vedanta-Foxconn revises application for subsidy in India to focus on 40nm (6月28日付け DIGITIMES)
→マイクロンのインド・グジャラート州政府とのMoUが数時間後に迫っているため、同州でのウェーハ工場設立を計画しているVedantaとFoxconnの合弁会社は、申請書を再提出し、40nmノード技術のみのプロジェクトに縮小した旨。
Business Todayは情報筋の話を引用し、新たな申請はこれまで計画されていた28〜40nmノードではなく、40nmノードの技術であるとしている旨。

◇US chipmaker Micron, Gujarat govt ink deal for semiconductor plant, Ashwini Vaishnaw says, ‘historic day for India’―Micron signs deal to build a chip facility in India (6月29日付け LiveMint (India))
→マイクロン・テクノロジーとインド・グジャラート(Gujarat)州政府は、$2.5 billionの半導体製造工場に関する覚書(MoU)に調印した旨。また、マイクロンは第四四半期の売上高をアナリスト予想を上回る$4.1 billionと予想している旨。

中国の制裁はじめ現下の厳しい状況である。

◇Micron reports headwinds from China sanctions as memory growth falters (6月29日付け FierceElectronics)
→Micronが、中国で販売される同社のメモリー製品に課される政府制裁による「重大な逆風」と、2023年全体にわたるNANDとDRAMの需要減少を警告した旨。
Micronの株は、売上高が$3.7 billionと前年同期の半分以下となった最新の四半期決算報告を受けて4%下落した旨。これに対し、2023年通年の株価は27%以上改善したが、同社は中国と米国の間で続く貿易摩擦の結果による中国政府の制裁措置が同社製品に与える影響について懸念を示した旨。

一方、期待の新製品である。

◇Micron to Introduce GDDR7 Memory in 1H 2024―Micron gearing up for 2024 release of GDDR7 memory chips ―GDDR7 is getting closer, says Micron. (6月29日付け Tom's Hardware)
→Micron Technologyは、2024年の最初の6ヶ月間にGDDR7メモリ半導体を発売する予定、このsynchronous graphics RAM(SGRAM)デバイスは、GDDR6とGDDR6Xの性能を向上させる期待で、ピンあたりの帯域幅は36Gbpsを目標としている旨。


【東芝関連】

株主総会が開かれ、以下の通りである。

◇Toshiba shareholders re-elect board members promoting buyout plan―Toshiba gets shareholders' OK for board members who backed buyout (6月29日付け Kyodo News (Japan))

◇東芝社長、株主に非公開化説明;「中長期で価値向上」 (6月29日付け 日経 電子版 13:06)
→東芝は29日、定時株主総会を開いた旨。7月下旬にも投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)などが東芝株に対してTOB(株式公開買い付け)をかける見通し。
東芝の島田太郎社長兼最高経営責任者(CEO)は「東芝は技術のダイバーシティー(多様性)が強みだ。これを維持して中長期で企業価値を高めるため、株式非公開化という新たな枠組みを選んだ」と株主に理解を求めた旨。
TOBが順調に進めば、東芝は今回が上場会社として最後の株主総会となる公算が大きい旨。会社側が提案した島田社長ら11人の取締役の再任が賛成多数で可決された旨。


【JSR買収】

政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)が半導体材料大手、JSRを買収すると発表、以下の通りである。今後注目する動きに加わることになる。

◇JSRを革新機構が買収;TOB価格1株4350円、35%上乗せ (6月26日付け 日経 電子版 18:33)
→政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)は26日、TOB(株式公開買い付け)を通じて半導体材料のJSRを買収すると発表、買い付け価格は1株当たり4350円で、買収が明らかになる直前の23日終値に35%の上乗せ幅(プレミアム)をつける旨。半導体材料の競争力を維持するため、国の関与の下、積極投資をしやすい環境を整える旨。

◇Japan-backed fund to buy chip materials maker JSR for $6.4 billion (6月26日付け Reuters)

◇Japan Unveils $6 Billion Deal to Buy Out Chip Linchpin JSR―Japan plans to buy out JSR for $6.3B to solidify chipmaking materials (6月26日付け BNN Bloomberg (Canada))
→日本政府は、$6.3 billionを投じてJSR社を買収し私営化することを発表、米中の緊張が$550 billionの世界半導体産業を分断する恐れがある今、半導体製造化合物の世界的リーダーであるJSR社を直接支配することになる旨。

◇JSR買収、半導体供給網を国がてこ入れ;革新機構が発表 (6月27日付け 日経 電子版 02:00)
→JSRが政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)の傘下に入る旨。半導体市場の投資急拡大に対応するため1社だけで生き残れないと判断し、同業他社との事業再編を目指す旨。国は半導体素材産業を支え、製品までの半導体サプライチェーン(供給網)を強化する旨。国主導の支援体制が確立できるか問われる旨。


【Samsung関連】

TSMCに追いつき追い越すべく、Samsungが、プロセス技術ロードマップをあらわしており、以下の通りである。

◇Samsung Beefs Up Chip Foundry Business as It Looks to Challenge TSMC (6月27日付け BNN Bloomberg (Canada))

◇samsung Updates Foundry Roadmap: 2nm in 2025, 1.4nm in 2027 (6月27日付け AnandTech)
→Samsung Foundryが本日、年次SFF(Samsung Foundry Forum) 2023で最新のプロセス技術ロードマップを明らかにした旨。同社のSF2(2nmクラス)製造ノードは2025年の予定であり、後継のSF1.4(1.4nmクラス)は2027年の予定である旨。一方、同社はSF2製造プロセスに期待される特性の一部を公表している旨。

◇Samsung to begin making world’s most advanced mobile chips in 2025 as battle with TSMC heats up―Samsung outlines chip strategy with sights on TSMC (6月28日付け CNBC)
→1)サムスン電子が、業界トップの台湾半導体製造(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd.:TSMC)を追撃するため、2025年から2ナノメートルプロセスによる半導体量産を含む半導体製造の拡大を計画している旨。サムスンは、2026年に高性能コンピューティング(HPC)向け、2027年に自動車向けに同社SF2の最適化を目指している旨。
 2)*サムスン電子は水曜28日、最先端半導体を含む半導体製造事業を拡大し、首位のTSMCに追いつくためのロードマップを示した旨。
  *サムスンは、2025年にモバイル・アプリケーション向けに2ナノメートル・プロセスの量産を開始し、2026年には高性能コンピューティング(HPC)に、2027年には自動車向けに拡大すると述べた旨。
  *サムスンは、韓国の平沢(Pyeongtaek)とテキサス州テイラー(Taylor)に工場を建設し、半導体製造能力の拡大を続けていると述べた旨。

◇Samsung unveils foundry road map to take on TSMC―Tech giant seeks wider adoption of 2nm technology for mobile chips by 2025, automotive chips by 2027 (6月28日付け The Korea Herald)
→世界最大のメモリー半導体メーカーであるサムスン電子は火曜27日、新しいファウンドリー・ビジネス・ロードマップを発表し、2025年までにモバイル・アプリケーションに、2026年までにハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)に、そして2027年までに自動車用半導体に、段階的に2ナノメートル製造技術の採用を拡大すると述べた旨。

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