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米中摩擦の新たな局面か:米国務長官訪中、韓台への規制適用除外延長、他

米国の中国に対する規制の強化、米国主導の同盟国Chip4など半導体関連で見ても米中摩擦は強まる一途の状況が続く中、ここにきて新たな局面を迎えるか、関わりそうな動きが見られてきている。両国関係では、気球問題で中断していたブリンケン米国務長官の訪中が、この週末明けの6月18〜19日に行われる運びである。半導体関連では、米国が韓国および台湾への規制適用除外を延長するとし、1つとしてSamsungの中国での半導体製造事業が維持されることになる。米国では、対中規制のさらなる実施が続くとともに議会での突き上げが見られているが、両国の接触を図る動きが出始めて、冷えた市況の打開につながるか、今後に注目するところである。厳しい状況が伝えられるIntelについても、新技術、基地展開の動きなど、以下取り上げている。

長見晃の海外トピックス

≪米中摩擦の覆い払しょくに向けて≫

ブリンケン米国務長官の訪中関連が、次の通りである。

◇米国務長官、5年ぶり中国訪問へ;関係安定へ18〜19日 (6月14日付け 日経 電子版 22:28)
→中国外務省は14日、ブリンケン米国務長官が18〜19日に中国を訪問すると発表、国務長官の訪中は2018年10月にトランプ前政権のポンペオ氏が訪れて以来、約5年ぶり。2月に米本土へ中国偵察気球が飛来したのを受けて悪化する米中関係の安定をめざす旨。

◇中国、米主導の包囲網に危機感;国務長官の訪中合意 (6月15日付け 日経 電子版 17:42)
→米中両政府はブリンケン米国務長官の18、19日の中国訪問で合意した旨。中国が米国との対話を本格化するのは、安全保障や経済を巡る米主導の対中包囲網に危機感を抱くため。米中首脳会談の実現に向けた地ならしと位置づける旨。

◇Blinken heads to China this weekend on mission to salvage sinking ties and keep communications open (6月15日付け The Associated Press)
→米国務省が水曜14日に発表したところによると、Antony Blinken国務長官は、悪化したワシントンと北京の関係を修復し、コミュニケーションラインをオープンに保つというバイデン政権の推進の一環として、今週末に中国を訪問する予定である旨。

ブリンケン氏訪中に先立って、ビル・ゲイツ氏が習近平国家主席に会い、次の通りである。

◇Exclusive: Xi Jinping tells Bill Gates he welcomes U.S. AI tech in China (6月16日付け Reuters)
→中国の習近平国家主席は、金曜16日にビル・ゲイツ氏と人工知能(AI)の世界的な台頭について話し合い、マイクロソフトを含む米国企業が中国にAI技術を導入することを歓迎する、と述べたと、本会談に詳しい2人の関係者が語った旨。

一方、米国議会では次の通り警鐘が鳴らされている。

◇中国との対話優先は「危険」;米下院中国委トップが警鐘 (6月16日付け 日経 電子版 11:00)
→米連邦議会下院で中国問題を集中して扱う中国特別委員会のマイク・ギャラガー委員長(共和党)は15日、日本経済新聞の取材にバイデン政権が急ぐ米中対話の再開は「見当違いで危険だ」と警鐘を鳴らした旨。台湾を巡る紛争の恐れが高まっていると述べ、2027年より前に危機が起きる可能性に言及した旨。

米中摩擦に関連する現下の論調および内容である。

◇Chip industry would implode if China invades Taiwan (6月12日付け Asia Times)
→台湾は世界の半導体の60%以上、最先端の半導体の90%を製造しているが、米国は中国が攻撃した場合、その拠点を「爆破」する恐れがある旨。

対中制裁、禁輸リスト追加が続いている。

◇米国、中国の航空関連31社に禁輸;「ミサイル開発も」 (6月13日付け 日経 電子版 06:35)
→米商務省は12日、航空関連を中心に中国の31企業・団体を原則、輸出禁止の対象にすると発表、中国航空工業集団(AVIC)傘下の事業体などで、中国軍のミサイル開発や訓練に利用されていると断じた旨。

◇Tech war: new US sanctions against 31 Chinese entities put supercomputing under the spotlight (6月13日付け South China Morning Post) 
→*市自治体レベルのスーパーコンピューティングセンターに関連するShanghai Supercomputing Technology Coが、米国Entity Listに掲載された旨。
 *アナリストによると、該Shanghai Supercomputer Centreは、中国が推進するコンピューティングの自給自足に不可欠な部分を形成している旨。

AI兵器規制については、米国が中国に協力を打診している。

◇米国、AI兵器規制へ中国に協力打診;国際ルール主導狙う (6月14日付け 日経 電子版 15:08)
→バイデン米政権は人工知能(AI)を使った兵器システムをめぐる国際ルールの策定に向け、中国に協力を働きかける方針。2軍事大国でおおまかな共通の立場をつくり、国際的な議論を主導する思惑がある旨。米中の相互不信を和らげる協力分野に浮上する旨。

韓国では、対中国の対峙姿勢が鮮明化している。

◇韓国、対中「依存から対峙」鮮明;大使発言に批判相次ぐ (6月15日付け 日経 電子版 15:12)
→韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が中国に対峙する姿勢を鮮明にしている旨。韓国の外交方針を暗に批判したケイ海明駐韓中国大使を「内政干渉」と断じ、中国政府に対処を求めている旨。歴代政権と一線を画す背景には、韓国企業の中国市場への依存度の低下や、国民の反中感情の高まりも背景にある旨。

次に、半導体対中規制についてであるが、韓国、台湾への規制適用除外延長を米国が以下の通り行っている。中国での半導体製造事業が維持されることになる。

◇U.S. to Allow South Korean, Taiwan Chip Makers to Keep Operations in China―US to exempt some chipmakers with operations in China ―Analysts say the move will weaken export-control measures aimed at curbing Beijing (6月12日付け The Wall Street Journal)
→米国は、台湾と韓国の一部の半導体企業に対し、輸出規制の適用除外を延長し、中国での半導体製造事業を維持することを認める旨。台湾積体電路製造公司(TSMC)とサムスン電子など、この免除延長の影響を受ける企業である旨。

◇米国の対中半導体規制、韓台への適用猶予を延長;米報道 (6月13日付け 日経 電子版 04:34)
→米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は12日、米政府が中国への半導体輸出規制を巡り、韓国と台湾の企業に適用を免除する措置を延長すると報じた旨。米商務省幹部が業界団体に伝えた旨。

◇Samsung, SK hynix on lookout for further developments in US chip export policy (6月13日付け The Korea Times)
→韓国の半導体業界は、中国の先端半導体技術へのアクセスを制限するために設けられたワシントンの輸出管理措置の適用除外の状況を、適用除外の延長が可能との報道を受けて注視している旨。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、産業・安全保障担当のAlan Estevez商務次官が先週、業界の会合で、米国は当分の間、既存の免除措置を延長するつもりだと語ったと報じた旨。

本件について、率直な論調が見られている。

◇Watering Down China Chip Restrictions Sometimes Makes Sense―Opinion: US needs its allies in chip war with China (6月14日付け The Wall Street Journal)
→米国がアジアのトップクラスの半導体メーカーに中国での生産を継続させるのには、それなりの理由があり、どうせ中国には効かないことの旨。

関連するいろいろな動き、事態を、広げて以下取り出している。

Samsungの元幹部による中国への技術流出である。

◇Ex-Samsung exec arrested for leaking chip tech to China (6月12日付け The Korea Herald (Seoul))
→Samsung Electronicsの元幹部が、中国に模倣半導体製造工場を建設するために、機密情報を漏らしたとして身柄を拘束された、と地元の検察当局が月曜12日に発表した旨。

◇半導体技術が中国流出;韓国検察、サムスン元常務ら起訴;図面入手し工場建設計画;技術者200人引き抜き (6月14日付け 日経)
→韓国検察がサムスン電子の半導体工場の図面資料を不正に入手し中国に流出させたとして同社の元常務(65)らを産業技術保護法違反などの罪で起訴した旨。元常務は中国で半導体工場を建設しようと200人ほどの韓国人技術者を採用していた旨。工場建設は頓挫したものの資料は中国に渡っており、技術流出を阻止できていない旨。

AIブームの中、中国におけるGPUs入手問題である。

◇China’s Big Tech firms scramble for advanced chips amid US sanctions and ChatGPT craze (6月14日付け South China Morning Post) 
→*GPUsの不足が、AIや大規模言語モデル(LLMs)の分野における中国の国家競争力を阻害していると、経済日報のオピニオン記事が報じた旨。
 *ByteDanceとBaiduは、NvidiaにGPUsを大量発注したと報じられているが、Nvidiaは中国国内の顧客にはあまり高度でない半導体しか販売することができない旨。

Applied Materials(AMAT)が、中国資本のMattson社に対して機密流出で提訴している。

◇Top US Chip Gearmaker Accuses China Rival of 14-Month Spy Spree―Applied Materials accuses Chinese rival of stealing secrets (6月15日付け BNN Bloomberg (Canada))
→Applied Materials(AMAT)は、中国資本のMattson社が機密情報、設計および従業員を盗んだとして訴訟を起こした旨。Beijing E-Town Dragon Semiconductor Industry Investment Centerが2016年にMattsonを買収しており、Mattsonは該疑惑を否定している旨。

◇米アプライド、半導体製造の機密流出で中国系企業を提訴 (6月16日付け 日経 電子版 11:08)
→米半導体製造装置のアプライドマテリアルズが、自社の企業秘密が不正に持ち出されたとして、中国系の企業とアプライドの元社員を提訴していたことが明らかになった旨。米国が半導体の対中輸出規制を強める中、半導体業界は技術流出に目を光らせている旨。
米カリフォルニア州フリーモントに本社がある半導体製造装置のマットソン・テクノロジーと同社に移籍したアプライドの元社員に対して訴訟を起こした旨。マットソンは中国企業の子会社になっている旨。

我が国でも、中国へのデータ漏洩の1件である。

◇中国企業に研究データ漏洩か、産総研の中国籍研究員逮捕 (6月15日付け 日経 電子版 21:04)
→国立研究開発法人・産業技術総合研究所(茨城県つくば市)に所属する中国籍の研究員の男(59)が自身の研究データを中国企業に漏らした疑いが強まり、警視庁公安部は15日、男を不正競争防止法違反(営業秘密の開示)の疑いで逮捕した旨。

米国では、国内製造強化を図る動きの一環、GlobalFoundries(GF)とLockheed Martinの連携が以下の通りである。

◇GF, Lockheed Martin Pair Up to Improve National Security‐The partnership could mean less reliance on Asian suppliers. (6月12日付け EE Times)
→GlobalFoundries(GF)とLockheed Martinは、「米国の半導体製造と技術革新を促進し、国家安全保障システムのための国内サプライチェーンの安全性、信頼性および回復力を高める」ために共同作業を行うことを決定した、と両者は本日報道機関に発表した旨。

◇GlobalFoundries, Lockheed align on chips, supply, security (6月12日付け FierceElectronics)

◇Lockheed Martin and GlobalFoundries Collaborate to Advance Innovation and Resiliency of Chips for National Security (6月12日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→Lockheed MartinとGlobalFoundriesが本日、米国の半導体製造と技術革新を促進し、国家安全保障システムのための国内サプライチェーンのセキュリティ、信頼性および回復力を高めるための戦略的協業を発表した旨。

◇Lockheed Martin, GF team up for secure supply chain―GlobalFoundries, Lockheed look to lock down supply chain (6月13日付け DIGITIMES)
→GlobalFoundriesは、Lockheed Martinと協力して、米国の半導体サプライチェーンの確保に取り組んでいる旨。この取り組みには、シリコン上の窒化ガリウム(GaN-on-Si)、チップレット、シリコンフォトニクスおよび3Dヘテロジニアスインテグレーション(HI)などの先進的な半導体技術の革新と製造が含まれている旨。

市場データの現状であるが、台湾の対米半導体輸出の増加に対して、中国&香港輸出の減少ぶりである。

◇Nation extends two-year rise in US chip exports (6月13日付け Taipei Times)
→台湾の米国向け半導体輸出は、先月26ヶ月連続で増加し、世界の半導体市場の低迷をものともしなかった旨。
台湾の半導体に対する米国の購入額は前年比9%増加したが、中国と香港への出荷額はそれぞれ14.3%減少したことが財務省のデータで明らかになった旨。

両国間の対峙姿勢を上にも示したが、韓国から中国への半導体出荷の大きな落ち込みの現状である。

◇Tech war: China-South Korea tech trade slumps in May amid changes in Asia’s semiconductor supply chain landscape (6月15日付け South China Morning Post)
→*韓国から中国への半導体出荷、5月は前年同月比35.7%減。
 *この中には、中国の需要低迷によりメモリー半導体の出荷が53.1%減少したことが含まれている旨。

非常に敏感な推移に、引き続きの注目である。


コロナ「5類」移行とはいえ、用心怠りなくの現状と言えるかと思うが、コロナ前に戻る舵取りがそれぞれに行われている中での世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。

□6月13日(火)

米国、欧州および我が国ともに、金融政策引き締め如何の発表が以下続いている。

米連邦準備理事会(FRB)発表前後の模様見に揺れた今週の米国株式市場である。

◇NYダウ5日続伸、189ドル高;利上げ見送り観測で (日経 電子版 05:45)
→12日の米株式市場でダウ工業株30種平均は5日続伸し、前週末比189ドル55セント(0.6%)高の3万4066ドル33セントで終えた旨。4月28日以来の高値。米連邦準備理事会(FRB)が13?14日に開く米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送るとの見方が多い旨。引き締め継続による米経済の下振れ懸念が後退し、景気敏感株などに買いが入った旨。

米国における消費者物価指数である。

◇Inflation rose at a 4% annual rate in May, the lowest in 2 years‐CPI drops to 2-year low at 4% in May (CNBC)
→火曜13日に発表された労働省のデータによると、5月の消費者物価指数は年率4%に低下し、2021年3月以来の低水準となった旨。消費者物価は前月から0.1%上昇し、コアインフレ率は前月から0.4%、前年同月比では5.3%上昇した旨。

□6月14日(水)

◇NYダウ6日続伸、145ドル高;CPI鈍化で利上げ見送り観測 (日経 電子版 05:50)
→13日の米株式市場でダウ工業株30種平均は6日続伸し、前日比145ドル79セント(0.4%)高の3万4212ドル12セントで終えた旨。2月13日以来4カ月ぶりの高値。朝方発表の5月の米消費者物価指数(CPI)を受け、物価上昇圧力は和らぎつつあるとの見方が広がった旨。米連邦準備理事会(FRB)が13〜14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を据え置くとの見方が改めて強まり、株式相場を支えた旨。

□6月15日(木)

米国・FRBの発表が、次の通りである。

◇FRB、11会合ぶり利上げ見送り;残り2回の追加を示唆 (日経 電子版 07:01)
→・2022年3月のゼロ金利解除以降で初めての見送り
 ・年内に2回分の追加利上げ示唆。予想より厳しく
 ・パウエル議長、物価の抑制「もっと必要になる」
米連邦準備理事会(FRB)は14日開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送った旨。据え置きは2022年3月のゼロ金利解除以降で初めてで、11会合ぶり。

◇NYダウ反落、232ドル安;利上げ長期化観測が重荷 (日経 電子版 08:15)
→14日の米株式市場でダウ工業株30種平均は7日ぶりに反落し、終値は前日比232ドル(0.7%)安の3万3979ドルだった旨。米連邦準備理事会(FRB)は同日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で2023年中に残り2回と市場予想を上回る追加利上げを示唆した旨。金融引き締めに積極的な「タカ派」姿勢を強めたと受け止められ、金利上昇と景気悪化懸念を誘った旨。

□6月16日(金)

欧州では、利上げの継続である。

◇ECB、8会合連続で利上げ決定;物価安定へ「7月も継続」 (日経 電子版 00:19)
→欧州中央銀行(ECB)は15日の理事会で、前回5月と同じく0.25%の利上げを決めた旨。8会合連続の利上げは初となる旨。欧州経済は景気後退に転落しても、インフレ基調の高止まりが続く旨。物価の安定を優先し、次回7月の会合でも利上げを続ける姿勢を示した旨。

◇NYダウ428ドル高、年初来高値更新;米消費の底堅さ好感 (日経 電子版 05:49)
→15日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比428ドル73セント(1.3%)高の3万4408ドル06セントで終えた旨。年初来高値を更新し、2022年12月以来およそ6カ月ぶりの高値を付けた旨。朝発表の5月の小売売上高が個人消費の底堅さを示し、米景気への過度な悲観が薄れた旨。米長期金利が低下したことも高PER(株価収益率)のハイテク株の買いを誘った旨。上げ幅は一時500ドルを超えた旨。

我が国では、大規模金融緩和が維持されている。

◇日銀、大規模金融緩和を維持;物価・賃金見極め (日経 電子版 12:33)
→日銀は16日に開いた金融政策決定会合で大規模な金融緩和策の維持を決めた旨。長期金利の許容上限は0.5%程度のままとし、マイナス金利政策や上場投資信託(ETF)の買い入れといった措置も維持した旨。物価や賃金の動向を慎重に見極める必要があると判断し、現行の金融政策を継続して経済の下支えを続ける旨。

□6月17日(土)

◇NYダウ反落、108ドル安;金融引き締め長期化を懸念 (日経 電子版 05:58)
→16日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、前日比108ドル94セント(0.3%)安の3万4299ドル12セントで終えた旨。米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めが長期化するとの懸念から売りが優勢だった旨。半面、米国の消費が底堅く推移するとの期待は相場を下支えした旨。


≪市場実態PickUp≫

【インテル関連】

厳しい状況が次の通りあらわされているインテルである。

◇The U.S. Wants American-Made Chips. Can Intel Deliver? (6月8日付け The Wall Street Journal)
→かつてハイテク業界の巨人であったインテルは、現在、CEOが「ぬかるみの穴」と表現するところから這い上がろうとしている旨。台湾や韓国のライバル企業が先進的な半導体製造でインテル社を追い抜き、インテルの顧客になるはずだった企業がプロジェクトから手を引いている旨。WSJのAsa Fitch氏が、インテルの復活計画の利害関係を解き明かす旨。

今週は、同社を巡る様々な動きが見られて、粗い分類ながら、以下取り出して分けて示していく。

≪新技術、事業戦略関連≫

◇Intel Is All-In on Backside Power Delivery ―The company’s PowerVia interconnect tech demonstrated a 6 percent performance gain (6月8日付け IEEE Spectrum)
→最先端のコンピュータ半導体に新しい技術を導入することは、多くのリスクを伴う旨。そのため、インテルの幹部が、来年、新しいトランジスタ「RibbonFET」および新しい電力供給方法「PowerVia」の両方を同時に導入する計画の実行に慎重なのは当然である旨。

◇Intel in cooler chips project―Energy Dept. picks Intel for data center cooling effort ―The U.S. Department of Energy (DOE) has announced its selection of Intel as one of 15 organizations tasked with developing high-performance, energy-efficient cooling solutions for future data centers. (6月14日付け Electronics Weekly (UK))
→米国エネルギー省は、Advanced Research Projects Agency-Energyの支援のもと、COOLERCHIPSイニシアチブの一環としてインテル社を選定した旨。15団体がデータセンター向けのエネルギー効率の高い冷却システムの開発に取り組むことになる旨。

◇Intel continues to pave its own quantum path with Tunnel Falls (6月15日付け FierceElectronics)
→インテルは今週、Tunnel Falls量子プロセッサの限定リリースを発表、この12量子ビット半導体は、インテルラボの量子ハードウェア担当ディレクター、James Clarke氏によると、研究コミュニティが自らのニーズに合わせて評価・探求できるように公開されている旨。この発表は、インテルが昨年末にその進捗状況を報告して以来、量子コンピュータに関する初の大きなニュースであった旨。

◇Intel Announce 'Tunnel Falls' Quantum Research Chip―Intel debuts latest quantum chip, drops "i" in naming ―12-qubit silicon chip for the quantum research community (6月16日付け Tom's Hardware)
→インテルは、最新の量子半導体である12量子ビットのシリコンベース「Tunnel Falls」を投入の旨。また、同社は「i」の製品名からCore 3、5、7および9のブランディングにシフトしている旨。

◇intel-new-core-branding-for-meteor-lake-no-i-new-ultra-tier (6月15日付け AnandTech)

◇Intel Bets on Glass for Chip Substrate―The material’s properties give it an edge over organic substrates. (6月16日付け EE Times)
→先端実装を目指すインテルが、半導体基板の新素材として目を付けたのがガラスである旨。

≪ドイツ、ポーランドの工場について≫

◇Germany Refuses to Increase Subsidies for Intel's Fab―Intel may not get all the money it needs for the Magdeburg fab. (6月11日付け Tom's Hardware)

◇Intel German fab in doubt‐Germany denies Intel's subsidy request for fab complex‐Intel may not be building a fab complex in Germany after it asked for higher subsidies from the German government. (6月12日付け Electronics Weekly (UK))
→Intelがドイツで計画している数十億ドルのファブコンプレックスは、ドイツ当局が同社からの補助金増額の要求を拒否したため、実現しないかもしれない旨。Intelは、2027年までに20A、2ナノメートルプロセスを生産する予定だったMagdeburg拠点の計画価格の変更について、建築費とエネルギー費の増加に加えてインフレを理由に挙げている旨。

◇Intel Set to Gain $11 Billion in Subsidies for German Chip Plant (6月15日付け BNN Bloomberg (Canada))

◇Intel to invest $4.6 billion in new chip plant in Poland―Intel to expand in Europe with $4.6B facility in Poland (6月16日付け Reuters)
→インテルは、ポーランドに半導体のテストと組み立ての拠点を計画し、最大$4.6 billionの投資をして、ヨーロッパでの事業に取り組んでいる旨。同社は、ドイツにある半導体コンプレックスに対して、ドイツから約$11 billionの補助金を得ようとしている旨。

◇Intel Plans Assembly and Test Facility in Poland (6月16日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→インテルは本日、ポーランドのWroc?aw(ヴロツワフ)近郊に、最先端の半導体組立・テスト拠点を新設することを決定したと発表した旨。

≪ArmのIPOへの投資≫

◇Intel in talks to be anchor investor in Arm IPO - source‐Is Intel a potential anchor investor in Arm's IPO? (6月12日付け Reuters)
→Intelは、Armが今年新規株式公開を行う際のアンカー投資家となるべく、Armと交渉していると言われている旨。ArmはNasdaqで株式公開する際に、最大$10 billionの資金調達を目指している旨。

◇Intel Is in Talks to Be an Anchor Investor in Chip Designer Arm’s IPO (6月12日付け BNN Bloomberg (Canada))

◇Intel is reporteldy considering taking a big stake in Arm as part of Arm's IPO (6月13日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→CEOのRene Haas氏のもと、ArmはIntelとの間で、IntelがArmのIPOに参加することについて協議していると伝えられている旨。
インテルは、Armベースの半導体を他社に提供することで、発展途上のファウンドリー事業を強化することができると考えている旨。

◇インテル、英アームのIPOで投資参加を協議;米報道 (6月13日付け 日経 電子版 13:11)
→米インテルが、英半導体設計アームが進める米国での新規株式公開(IPO)に投資参画する協議を進めていることが分かった旨。米ブルームバーグ通信が12日に報じた旨。インテルはアームの技術を使った受託生産を始めるとも発表しており、投資が実現すればさらに関係性が強まることになる旨。

◇Intel in talks to be anchor investor in chip firm Arm’s IPO (6月14日付け Taipei Times)
→ソフトバンク・グループの支援を受ける英国の半導体設計会社、アーム社は、今年最大の新規株式公開(IPO)のひとつになると予想されるIntel社を含む戦略的投資家の候補と交渉していると、本件に詳しい関係者が明らかにした旨。
アーム社は、他の企業ともIPOへの参加について協議しているとのこと、秘密ゆえに同定はできない旨。

≪VLSIとの特許係争≫

◇US patent tribunal sides with Intel again in $2.2 billion VLSI case―Intel wins another bid to invalidate patent in VLSI case (6月13日付け Reuters)
→米国特許商標庁のPatent Trial and Appeal Board(特許審判委員会)は、VLSI Technology社との訴訟でIntel社に有利な判決を下し、$1.5 billionの特許を無効とした旨。取り消された半導体関連特許はこれで2件目となる旨。

◇Intel scored a win in its multi-billion-dollar patent battle with VLSI (6月15日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→VLSIは、少なくとも3回にわたってインテル社を提訴し、これまでに$3 billion以上の損害賠償を受けている旨。今回の米国特許庁の裁定は、このうち約$1.5 billionの損害賠償に相当するVLSI社の特許を無効とするもの。


【Apple関連】

今回のWorldwide Developer Conference(WWDC)(2023年6月5日〜9日)での注目、半導体のM2 UltraおよびヘッドセットのVision Proについてのその後の評価である。

◇Apple M2 Ultra GPU Outpaces RTX 4070 Ti in Early Compute Benchmarks‐Apple's M2 Ultra processor formidable in early tests ‐M2 Ultra with Metal API versus RTX 4070 Ti and RTX 4080 using OpenCL (6月10日付け Tom's Hardware)
→Apple M2 UltraのGPUのベンチマークがネット上に流出したよう。今日、Geekbench GPUコンピュートスコアとGFXBench Aztec Ruinsのスコアを共有する様々なソーシャルメディアの投稿を発見した旨。これらの結果は、表面的には、新しいM2 UltraのGPUが非常に強力で、NvidiaのGeForce RTX 4070 TiとRTX 4080の中間のGPU計算性能を提供していることを示しているように見える旨。しかし、少し下がって、見ているものが何であるかを正確に説明する必要がある旨。

◇Apple Vision Pro: Disrupting beyond the headset? (6月12日付け FierceElectronics)
→Appleは、Vision Proのユーザーがヘッドセットを装着した状態で見えるものを重ねて表示した画像を掲載している旨。visionOSでは、アプリがユーザーの周りの空間を埋め尽くすことができる旨。職場での使用例がAppleによって示されているが、アナリストのLeonard Lee氏は、没入型のスポーツやその他のエンターテインメントがクリエイターにとって重要になると考えている旨。


【AMD関連】

AIブームの中、牽引するNvidiaに対抗、AMDが新しいAI半導体を披露、業界各紙の取り上げが他の製品アップデートとともに以下の通り続いている。

◇AMD targets generative AI, LLMs, and Nvidia with new accelerator (6月13日付け FierceElectronics)
→AMDのCEO、Lisa Su氏は、NvidiaのAIへの動きに対するAMDの回答について数カ月に及ぶ憶測を経て、MI300xアクセラレーター半導体を正式に発表した旨。
CPU/GPU統合モデルではなくGPUのみの製品であるInstinct MI300Xアクセラレーター半導体を発表した際、AMD CEO、LIsa Su氏は、これを "生成AIのための世界最先端のアクセラレーター "と表現している旨。それはまだわからないが、このGPUは同社のCDNA 3アクセラレータアーキテクチャで構築されており、最大192GBのHBM3メモリをサポートして、ますます巨大化するLLMワークロードを手なずけている旨。

◇AMD reveals new A.I. chip to challenge Nvidia’s dominance―AMD unveils AI chip in challenge to Nvidia (6月13日付け CNBC)
→1)Advanced Micro Devices(AMD)は、人工知能(AI)向けの最新グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)で、マーケットリーダーのNvidiaに挑戦するMI300Xを投入の旨。また、AMDはZen 4コアを搭載した中央演算処理装置(CPUs)、EPYC Bergamoの詳細を発表している旨。
 2)*AMDは、次期人工知能(AI)向け最先端GPU、MI300Xが、今年後半に一部の顧客向けに出荷を開始する、と火曜13日発表した旨。
  *AMDの火曜日の発表は、現在AI半導体の市場を支配しているNvidiaに対する最も強い挑戦となるものである旨。

◇AMD Details EPYC Bergamo CPUs With 128 Zen 4C Cores, Available Now―Dropping the hammer. (6月13日付け Tom's Hardware)

◇AMD Ryzen Pro 7000 and 7040 Series Processors: Zen 4 for Commercial Deployments (6月13日付け AnandTech)
→最新のRyzen Pro 7000(デスクトップ用)とRyzen Pro 7040 HSおよび7040 Uシリーズ(モバイル用)は、コンシューマー向け製品群をベースに、追加のセキュリティとリモート管理機能を追加するいくつかの「Pro」ベースの機能を追加し、よりコンシューマー向けのシリコン兄弟と一線を画す製品になっている旨。

◇Advanced Micro Devices has outlined its new AI chips as it beefs up fight with Nvidia (6月13日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→AMDは、生成AIアプリケーションのパワーアップに役立つ人工知能(AI)半導体の詳細を説明した旨。
AMDのこの新しい半導体は、今年$424 million、2024年には$823 millionを生み出すと、あるアナリストは述べている旨。

◇AMD、AI向け半導体を2023年内に投入;NVIDIA1強に対抗 (6月14日付け 日経 電子版 06:14)
→米半導体大手、アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)は13日、生成AI(人工知能)向けの最新の半導体を2023年後半に投入すると発表、対話型AI「ChatGPT」などAI開発に使う半導体の市場が拡大しており、8割のシェアを握る米エヌビディアに対抗する旨。価格競争につながる可能性もある旨。
AMDが投じるAI半導体「MI300X」は複雑なデータを並列で計算する画像処理半導体(GPU)。

◇Can AMD’s MI300X Take On Nvidia’s H100?―AMD unveils its best bet to compete with Nvidia’s flagship H100. (6月15日付け EE Times)
→AMDの幹部は、火曜日にサンフランシスコで開催されたイベントで、データセンターのCPUとGPUの新製品を含む、AIに関するビジョンを発表した旨。AIを実行できる同社のポートフォリオのほとんどすべてを展示し、スーパーコンピュータやハイパースケールでの成功という点を強調するために、ハイパースケールの顧客を次々と呼び寄せた旨。しかし、誰もが本当に知りたいのは、次のこと:AMDの新GPUは、競合するNvidiaのフラッグシップGPU「H100」に対抗できるのか。そして、生パフォーマンスではH100を上回るようだが、それで十分なのだろうか?


【Samsung関連】

Samsungのメモリ投資再開は気になるところ。本年後半の市況盛り返しにつながるかどうか。

◇Samsung Electronics approves first chip investment in six months‐Samsung signals chip investment in hopes of turnaround (6月12日付け Pulse by Maeil Business Newspaper (South Korea))
→Samsung Electronicsの委員会が、メモリー半導体への投資の再開を確認しており、半年ぶりに言及した旨。2023年後半に半導体市場が改善することを見据えているよう。

TSMCに対抗、ファウンドリーIPパートナーとの動きが以下あらわされている。

◇Samsung Electronics to hoist foundry IP portfolio to narrow gap with TSMC―Samsung to take on rival TSMC with IP partners (6月14日付け Pulse by Maeil Business Newspaper (South Korea))
→Samsung Electronicsは、業界トップのTaiwan Semiconductor Manufacturing Co.(TSMC)に対抗するため、知的財産パートナーと協力してポートフォリオを構築し、ファウンドリーエコシステムを育成している旨。Cadence社、AlphaWave社およびSynopsys社がパートナーに名を連ねており、Samsungは設計手法やプロセス設計キットなど、IP開発のためのファウンドリプロセス情報を共有する計画の旨。

◇Synopsys Expands Collaboration with Samsung on Broad IP Portfolio to Reduce Design Risk and Accelerate Silicon Success (6月15日付け EE Times India)
→Synopsys社は、Samsung Foundry社との合意を拡大、車載、モバイル、ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)およびマルチダイ設計の設計リスクを低減し、シリコンの成功を加速させる幅広いIPポートフォリオを開発する旨。

◇Cadence and Samsung Foundry Ink Multi-year Agreement to Expand Design IP Portfolio (6月15日付け EE Times India)
→Cadence Design Systemsは、サムスン・ファウンドリー社と複数年契約を締結、サムスン・ファウンドリー社のSF5Aプロセス技術、すなわち自動車アプリケーションをサポートする最新の5nmプロセス派生におけるCadence社のデザインIPポートフォリオの利用可能性を拡大していく旨。

先々までのYongin(龍仁)半導体クラスターでの水問題の対応である。

◇Securing enough water critical for Samsung's envisioned chip cluster in Yongin (6月14日付け The Korea Times)
→Samsung Electronicsが2042年までに京畿道龍仁市に300兆ウォン($236 billion)を投じて建設する予定の超大型半導体工場への大量の水供給が困難になる可能性について、政府は火曜13日、懸念を払拭しようとしたと関係者は述べている旨。半導体生産に不可欠な水調達のためのインフラを準備する計画が進められているとのこと。


【TSMC関連】

我が国での第2工場について、以下の通りである。

◇Japan to get Taiwan chip maker TSMC’s help to revolutionise its semiconductor sector amid economic, security concerns (6月9日付け South China Morning Post)
→*日本は先進的な半導体の製造に巨額の費用を投じ、台湾半導体製造会社(TSMC)は日本国内で2番目の工場を建設する予定。
 *アナリストによると、post-Covidの成長は、ウクライナ戦争と台湾の緊張を考慮する必要があり、台湾からの半導体供給が遮断される可能性がある旨。

◇TSMC「第2工場」も熊本濃厚;足りぬ用地、造成急ピッチ‐シリコンアイランド (6月13日付け 日経 電子版 05:00)
→半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が、熊本県菊陽町で建設を進める工場に続き、国内で検討している第2工場の立地も熊本を優先する考えを明らかにした旨。熊本ではTSMCのほか、ソニーグループも新たな大型工場建設に向けて用地取得する方針を示している旨。関連サプライヤーの集積も進むなか、企業が求める用地をいかに確保するかが大きな課題になっている旨。

◇TSMC第2工場誘致へ熊本動く;検討受け、用地確保へ (6月14日付け 日経)
→半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が、熊本県菊陽町で建設を進める工場に続き、国内で検討している第2工場の立地も熊本を優先する考えを明らかにした旨。関連サプライヤーの集積も進むなか、企業が求める用地をいかに確保するかが大きな課題になっている旨。

TSMCの5月の売上げ状況である。

◇TSMC revenue grows for second straight month‐CHANGED OUTLOOK: While sales are tipped to drop in the first half from the same period last year, product launches should provide a bump in the second half, it said (6月10日付け Taipei Times)
→世界最大の契約半導体メーカー、台湾積電(TSMC、台積電)は昨日、2ヶ月連続で売上げが増加し、先月5月はNT$176.54 billion($5.75 billion)と、2月以来最高の結果を出した、と発表した旨。
4月のNT$147.9 billionから19.4%増加したが、昨年5月のNT$185.71 billionからは4.94%減少している旨。

AIブームに乗っていく期待から、TSMCの時価総額が$500 billionを回復している。

◇TSMC Nears $500 Billion Value as Investors Pile Into Chips―TSMC's value approaches $500B amid shift to AI computing (6月13日付け BNN Bloomberg (Canada))
→台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)は、投資家が予想されるAIブームに乗るのに最も適した技術リーダーへの投資を強化した結果、時価総額$500 billionを回復した旨。

◇TSMC regains US$500 billion market cap―AI RUSH: Investors, including Cathie Wood, remain upbeat about AI, and TSMC is seen as a key enabler for its growth, given its technology leadership, an analyst said (6月14日付け Taipei Times)
→台湾積電(TSMC)は、投資家が予想される人工知能(AI)ブームに乗るのに最も適したハイテク企業への投資を強化したことで、時価総額$500 billionを回復した旨。

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