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米国の半導体supply chain関連情報要求への韓国、台湾の対応から

新型コロナウイルスによる累計感染者数は土曜13日午前時点、世界全体で2億5238万人に達し、8日前から約387万人増と、2億5000万人を突破、引き続く増加傾向である。我が国では、制限緩和の中、「第6波」対策が進められている。世界的な半導体の不足の中、半導体supply chainの問題打開に向けて、米国政府が関係各国の半導体メーカーはじめ、関連情報の提出を11月8日の期限で求めている件について、特に韓国および台湾の対応に注目させられている。いずれも敏感な顧客関連情報は除いての提出になっている模様である一方、韓国政府の通商トップが米国商務長官と直接接触するなど連絡強化の動きも見られている。引き続く事態の進展に注目である。

≪情報共有への歩み寄り≫

米国政府の通商トップ、レモンド商務長官、そしてタイ米通商代表部(USTR)代表の現下の動き関連である。ともに15日、来日とのこと。半導体も1つであるが、いくつかの日米間懸案である。

◇米商務長官、15日に初訪日へ、鉄鋼関税や半導体を議論 (11月8日付け 日経 電子版 04:21)
→米商務省は7日、レモンド(Gina Marie Raimondo)商務長官が15日に日本を訪れると発表、就任後初めての訪日となる旨。日本から輸入する鉄鋼とアルミニウムに課す追加関税の扱いや半導体のサプライチェーン(供給網)を話し合う旨。
米通商代表部(USTR)のタイ(Katherine C. Tai)代表も15日から日本を訪れる予定。日米政府間で協議して、鉄鋼・アルミ関税を巡る問題の解決で合意できるかが焦点になる旨。

世界の主要半導体メーカーすべてが情報共有への対応を確約、とレモンド商務長官である。

◇半導体不足に関する情報共有、主要メーカー全てが米に確約−商務長官-CEO全員が要請に応じ、米国が求めるデータを提供すると約束した-国防生産法発動の必要がないことを願うが、必要であればそうする (11月9日付け ブルームバーグ 日本語版)
→レモンド米商務長官は8日、半導体不足に関する情報共有の要請に世界の全ての主要半導体メーカーが応じることを約束したと明らかにした旨。この日が米政府への回答期限だった旨。
レモンド商務長官はインタビューで、「過去2週間にわたり内外全ての主要半導体メーカーの最高経営責任者(CEO)に個人的に電話した結果、全員が要請に応じてわれわれが求めるデータを提供すると確約してくれた」と語った旨。

◇米商務長官、半導体の情報収集「TSMCなど協力」 (11月10日付け 日経 電子版 05:36)
→レモンド米商務長官は9日の記者会見で、半導体のサプライチェーン(供給網)を把握するため企業に求めていた情報開示を巡り、台湾積体電路製造(TSMC)など主要メーカーから協力を得られたとの認識を示した旨。提供された情報をもとに需給改善につなげたい考え。

韓国政府の通商トップとはWashington, D.C.での会合が行われている。

◇U.S. top trade official says chip info sharing 'inevitable' under 'unprecedented' situation-"Unprecedented" chip shortages drove data request (11月10日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→Gina Raimondo米国商務長官が、韓国のIndustry Minister、Moon Sung-wook氏とWashington, D.C.で会合、いくつかの半導体ベンダーなどの会社が供給するデータを用いて重要コンポーネントの継続する不足を緩和する対策を話し合った旨。「Moon氏は、該対策は1回限りの出来事にすべき、と明らかにした。」と、韓国ministryが用意されたpress releaseにて。

韓国の半導体supply chain関連情報の米国政府への提出関連、時間順に次の通りである。

◇South Korea's semiconductor companies to partially hand over datato US-News comes with deadline just days away (11月5日付け Taiwan News)
→韓国の半導体大手が、来週月曜11月8日までに米国にデータを渡し、顧客とのnon-disclosure agreements(NDAs)を侵害しない範囲の旨。
韓国・Hankyoreh Newsによると、米国の要求に部分的に対応する該決定は、敏感な情報の露呈を最小にする狙いの旨。

high-level communicationに重きを置く動きが見られている。

◇S. Korea to expand high-level communication with U.S. on chip supply chain cooperation: gov't-Korea sets up links with the US on chip policy (11月7日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→ソウル政府、日曜7日発。韓国は、安定した半導体supply chainsの確保の上で双務的協力をさらに強化するために米国とのhigh-level communicationを拡大の旨。

◇South Korean chipmakers will submit semiconductor data to the U.S. by Nov. 8 deadline (11月8日付け TechCrunch)

◇韓国企業、半導体資料を米国に提出へ…産業部長官が今月訪米し会談も (11月8日付け コリア・エレクトロニクス)
→米国政府の半導体サプライチェーン情報要求提出期限が5日前に迫り、韓国企業が資料作成に追い込みをかけている。韓国メディア「聯合ニュース」が報じた。
3日、業界関係者によると、サムスン電子やSKハイニックスなど韓国半導体企業は営業上の秘密保持条項に抵触せず、敏感な内部情報を除く方向で、来る8日の期限に合わせて資料を提出することがわかった。・・・

我が国関連の対応を含め、以下の通りである。

◇サムスンやルネサスなど、米に半導体情報を開示 (11月9日付け 日経 電子版 16:28)
→米商務省が半導体のサプライチェーン(供給網)を把握するため企業に求めていた情報開示を巡り、8日に回答期限を迎えた旨。ルネサスエレクトロニクスや韓国サムスン電子などが回答した旨。半導体が世界的に不足するなか、同省は供給網の問題点を洗い出して安定調達につなげる狙い。
日本企業では車載半導体大手のルネサスやメモリ大手のキオクシアホールディングスなどが情報を提供した旨。ルネサスは回答状で「(米政府の)調査に貢献することを願っている」とコメントした旨。生産能力や在庫などを具体的にどこまで開示したかは不明。

メモリ製品は、不足の事態との関連は薄い、とSK hynixのコメントである。

◇SK hynix distances itself from global supply chain crisis in report to U.S. gov't (11月10日付け Yonhap News Agency)
→「メモリ製品は、下流のconsumersへの半導体不足の源ではない。」と、SK hynixが米国政府宛てレポートにて。

韓国の通商トップは、さらに追加の情報を米国側は求めない、との受け取りである。

◇U.S. unlikely to request additional information from S. Korean chipmakers: minister (11月10日付け Yonhap News Agency)
→韓国のcommerce chief、火曜9日発。米国が、半導体データをすでに供給している韓国の半導体メーカーから追加の情報を求めない様相の旨。

米国および韓国の本件についての会談が、12月にも予定されている。

◇(LEAD) S. Korea, U.S. to launch new dialogue on semiconductor partnership next month: minister-Minister Moon: Korea, US plan meeting over ICs on Dec. 8 (11月11日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→韓国産業通商資源部(Ministry of Trade, Industry and Energy[MOTIE])長官、Moon Sung-wook(文勝)氏が水曜10日、韓国と米国が、半導体supply chainについての協力強化で来月新たな二国間会談を行う旨。該meetingは、12月8日開催、両国からdirector-level officials、並びにビジネスなど関連機関からのofficialsおよび代表が参加の旨。

次に、台湾、すなわちTSMCについてであるが、米国の情報共有要求を遵守するスタンスについて、中国が強く反発している。

◇China boiling mad over Taiwan's TSMC handing over chip data to the US (11月8日付け Techwire Asia)
→台湾のTSMCが、米国の情報の要求を遵守する決定について、中国から非難を受けている旨。中国のsocial media上であらわれているこの怒りは、米国が該情報を北京の制裁に用いることを恐れて生じている旨。

TSMCは、予定通り11月8日までに米国政府に半導体情報を提示、ただし顧客情報は一切開示しなかったとしている。

◇TSMC responds to U.S. requests, emphasizes no customer data disclosed (11月8日付け Focus Taiwan)

◇Taiwan's TSMC says it responded to US request without revealing client data-TSMC, in response to US request, doesn't provide client data -Request aimed at solving chip shortage puts companies in quandary (11月8日付け Taiwan News)
→TSMCが月曜8日、米国のデータ要求に応答しているが、client情報は漏らされていないと強調の旨。

◇TSMC answers US chip supply chain request (11月9日付け Taipei Times)

◇TSMC、米当局に半導体情報提供、「顧客」は開示せず (11月9日付け 日経)
→半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)は8日、米政府が半導体不足の解消を理由に、世界の大手メーカーに対して在庫などの詳細な情報開示を求めた件について、同日までに米当局に自社の情報を提供したと発表、ただ、顧客情報は一切開示しなかった旨。

このような情報共有の動きの中、半導体の不足関連の事態&動きが引き続いている。

改めて、インテルのSamsungおよびTSMCに追いつく取り組みがあらわされている。

◇How Intel plans to catch Samsung and TSMC and regain its dominance in the chip market-Intel to take on Samsung, TSMC in chip technology (11月6日付け CNBC)
→Intelの半導体技術は現在、TSMCおよびSamsungに後れを取っているが、Intelは新しい製造工場をもって2025年までに競合を抜く狙いの旨。IntelのCEO、Pat Gelsinger氏は、半導体の不足の中、製造の更新推進は明瞭に、明らかに緊急に行われるとしている旨。

米国と台湾の業界間で、弾力性のあるsupply chainについての話し合いが行われている。

◇Industry leaders discuss resilient supply chains for the future on NATEA US-Taiwan High-Tech Forum (11月6日付け DIGITIMES)
→弾力性のある半導体supply chainがグローバル経済に重要であり、世界はここ2年にわたってそれが困難な道と学んだ旨。North America Taiwanese Engineering Association(NATEA)主催のUS-Taiwan High-Tech Forum(UTHTF)で講演した業界リーダーたちが、post-pandemic時代におけるopportunitiesおよび課題の中で健全で弾力性のあるsupply chainをつくり出すやり方について経験と知恵で貢献の旨。

不足の事態の中での現実的な駆け引きが見えている。

◇Strategies for shortages-Chip shortage: Capex contributions and more (11月9日付け Electronics Weekly (UK))
→設備投資への前払い必要および発注キャンセル不可が、半導体業界が現状の不足の間に採用する2つの戦略である旨。

依然非常に供給逼迫、とInfineon発である。

◇Apple-supplier Infineon is still ‘far away’ from meeting chip demand (11月10日付け CNBC)
→*「車載、しかし他のverticalsでも、現在供給が非常に逼迫」と、InfineonのCEO、Reinhard Ploss氏が水曜10日、CNBCの“Squawk Box Europe”にて。
 *Appleは、2021 supplier listにInfineonを入れているが、どんな製品を買っているかは示していない旨。

厳しい中の一筋の光明となるかどうか、世界の自動車生産が復調に向かっているとのこと。

◇車生産、回復見込む、トヨタや日産、半導体確保メド、人手不足解消が焦点 (11月10日付け 日経)
→世界の自動車生産が復調に向かっている旨。トヨタ自動車は12月に過去最高水準の100万台規模の生産を計画し、ホンダや米ゼネラル・モーターズ(GM)も年末から来年1月にかけて増産に転じる旨。半導体確保に一定のめどが立ったほか、新型コロナウイルスの感染拡大が一服した旨。世界経済回復の重荷となっていた自動車の供給制約が改善する兆しが出てきた旨。

TIなどIDMsの生産踏み上げを求める論調である。

◇IC shortage unlikely to ease until TI ramps up output-Why TI must boost its chip output (11月11日付け DIGITIMES)
→業界筋発。世界最大のアナログICsのサプライヤ、Texas Instruments(TI)が、多くのelectronics製品に向けたmicrochipsにおける世界的不足の軽減に向けて、同社の半導体生産を高める必要がある旨。TSMCが顧客受注を満たすために最善を尽くしている一方、TIなどintegrated device manufacturers(IDMs)はoutputを踏み上げる必要があると特に言及の旨。

台湾のIT関連19社の10月売上げが、13カ月ぶり前年比マイナスである。

◇台湾IT、13カ月ぶり10月減収、主要19社、半導体不足で製品作れず (11月12日付け 日経)
→米アップルから多くの製品を受託生産する台湾企業の業績が落ち込んできた旨。半導体不足で製品が作れないため。台湾の主要IT、19社(アジア主要上場企業=Asia300)の10月の売上高合計額は前年同月比0.4%減の1兆3195億台湾ドル(約5兆4000億円)と13カ月ぶりにマイナスに転じた旨。

iPhoneをつくるFoxconnからも、今四半期の売上げ落ち込みの警告である。

◇iPhone Maker Foxconn Expects Supply-Chain Issues Until Second Half of 2022-Foxconn predicts microchip shortages into 2022-Component shortage prompts Foxconn to forecast consumer electronics sales decline in fourth quarter (11月12日付け The Wall Street Journal)
→iPhoneなどの製品をつくるcontract electronicsメーカー、Foxconn Technology Groupが、重要コンポーネントの世界的不足が2022年後半まで続くと予想の旨。同社は、同社の第四四半期consumer electronics売上げが2020年第四四半期を下回ると警告の旨。

好材料のあらわれ&強まりに期待しながら、事態の推移に引き続き注目である。


コロナ対応のなかなか完全には収まらない状況推移に対して、直面する事態への警戒感を伴った舵取りが各国それぞれに引き続き行われている世界の概況について、以下日々の政治経済の動きからの抽出であり、発信日で示している。

□11月6日(土)

米国のインフラ対策法案が、やっと下院を通過している。

◇Dems clear deadlock, House passes $1.2 T infrastructure bill for Biden's signature (FierceElectronics)
→$1.2 trillionインフラpackageは、8月に超党派票決で上院を通過、そして金曜5日、228-206でついに下院を通過してBiden大統領に預けられた旨。この下院票決では、共和党員13人の支持、民主党員6人の反対があった旨。

◇House passes $1 trillion bipartisan infrastructure bill that includes transport, broadband and utility funding, sends it to Biden-$1.2T bipartisan infrastructure bill clears House (CNBC)

□11月9日(火)

連日の最高値更新を受けた今週、中三日は下げたが、はじめと終わりは上げとなった米国株式市場である。

◇NYダウ104ドル高、最高値更新、ナスダックは11連騰 (日経 電子版 06:59)
→8日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前週末比104ドル27セント(0.3%)高の3万6432ドル22セントと連日で過去最高値を更新した旨。米議会下院が5日にインフラ投資法案を可決、建機のキャタピラーなど政策の恩恵を受ける銘柄を中心に買われた旨。前週末の米雇用統計を受けた米景気への楽観も相場を支えた旨。

□11月10日(水)

◇NYダウ反落112ドル安、長期金利低下で金融株に売り (日経 電子版 08:02)
→9日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3営業日ぶりに反落し、前日比112ドル24セント(0.3%)安の3万6319ドル98セントで終えた旨。前日まで連日で過去最高値を更新し、過熱感も意識されていたため、最近上昇が目立っていた景気敏感株を中心に利益確定売りに押された旨。米長期金利の低下を受け、金融株が売られたのも相場の重荷だった旨。

10月の消費者物価指数が30年あまりぶりの上げ幅、以下の株価にも影響している。

◇U.S. consumer prices jump 6.2% in October, the biggest inflation surge in more than 30 years-Consumer price index up 6.2% in Oct., the most since 1990 (CNBC)
→*10月の消費者物価指数が前年比6.2%増、1990年12月以降最大
 *変動の激しい食料・エネルギーを除いた物価上昇は4.6%、1991年8月以降最速
 *エネルギー、shelterおよび自動車が引っ張り、workersが当月得た賃金の増分を消した

□11月11日(木)

◇NYダウ、253ドル安で推移、インフレ懸念で売り (日経 電子版 05:24)
→10日の米ダウ工業株30種平均は続落し、午後3時(日本時間11日午前5時)現在は前日比253ドル28セント安の3万6066ドル70セントで推移している旨。朝方発表の10月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想以上に上昇し、インフレ懸念が改めて強まった旨。米長期金利が上昇し、相対的な割高感が意識されやすい高PER(株価収益率)のハイテク株を中心に売られている旨。

Huaweiなど中国の通信機器メーカーの米国での製品販売を一層厳しくする法案に、Biden大統領が署名している。

◇Biden signs legislation to tighten U.S. restrictions on Huawei, ZTE-Secure Equipment Act further restricts Chinese firms (Reuters)
→Joe Biden大統領が、Huawei Technologies, ZTEなど中国の会社による米国で開発された技術の利用を引き続き制限するSecure Equipment Actに署名、来週中国の習近平(Xi Jinping)国家主席とのmeetingを控えての旨。該法は、国家セキュリティを脅かすと見られるハイテク装置の認証をFederal Communications Commission(FCC)が認めないようにしている旨。

□11月12日(金)

◇米、中国製通信機器の排除法が成立、ファーウェイなど (日経 電子版 09:32)
→バイデン米大統領は11日、華為技術(ファーウェイ)など中国の通信機器メーカーの認証を禁じる法案に署名、同法は成立した旨。米国内での製品販売が一段と難しくなる旨。安全保障上の脅威が大きいとして国内市場からの排除を強める旨。

◇NYダウ、132ドル安で推移、ディズニーが大幅安 (日経 電子版 05:23)
→11日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続落し、午後3時(日本時間12日午前5時)現在は前日比132ドル90セント安の3万5947ドル04セントで推移している旨。前日に市場予想を下回る決算を発表した映画・娯楽のウォルト・ディズニーが大幅安となり、ダウ平均を押し下げている旨。一方、前日に長期金利の上昇を背景に売りが広がった主力ハイテク株には見直し買いが入り、相場を下支えしている旨。

□11月13日(土)

◇NYダウ130ドル高で推移、主力ハイテク株に買い (日経 電子版 05:09)
→12日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4営業日ぶりに反発し、15時現在は前日比138ドル44セント高の3万6059ドル67セントで推移している旨。米長期金利が落ち着いた動きだったこともあり、主力ハイテク株への見直し買いが続いた旨。12日朝に会社分割を発表した医薬品・日用品のジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)も買われ、相場を押し上げている旨。


≪市場実態PickUp≫

【TSMCの日本新工場】

我が国の先端半導体の生産企業を支援する法制度、最初の適用がTSMCになる運びのようである。

◇半導体国内生産に補助、政府法整備、TSMC第1号認定へ (11月7日付け 日経 電子版 17:30)
→政府は先端半導体の生産企業を支援する法制度を整える旨。需給逼迫時に増産に応じることなどを条件に国内での工場建設に補助金を出す枠組みを定める旨。台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に新設する工場が認定第1号になる見通し。経済安全保障上の重要性が増す半導体を国として安定して確保できるようにする旨。

TSMCがソニーと連携する取り組みが、以下の通り発表されている。

◇TSMC, Sony to Partner in $7B Fab in Japan-The two will establish a subsidiary to provide production at "specialty" nodes of 28nm and 22nm by the end of 2024. (11月9日付け EE Times)

◇Sony to invest $500 mln in TSMC's new Japanese chip plant venture-TSMC's Japan fab to get $500M boost from Sony (11月9日付け Reuters)
→ソニーが、TSMCの日本でのウェーハfab拠点に向けて約$500 million供給の旨。建設に約$7 billionかかる該合弁は、来年始まり、2024年からイメージセンサ生産の予定の旨。

◇TSMC board approves US$9bn budget, unveils Japan plant details (11月9日付け Focus Taiwan)
→TSMCが火曜9日、同社役員会がcapacity拡大に向けた$9 billion超のcapital適用を承認する一方、日本での工場建設の取引が確定の旨。

◇TSMC, Sony form IC fab joint venture-CHIP CRUNCH: TSMC is to hold a majority stake in the proposed US$7 billion facility in Japan's Kumamoto Prefecture, which is expected to start production at the end of 2024 (11月10日付け Taipei Times)

◇台湾TSMC、日本工場に8000億円、ソニー570億円出資 (11月10日付け 日経 電子版 05:48)
→世界最大の半導体受託生産会社である台湾積体電路製造(TSMC)は9日、日本で初めてとなる工場を、ソニーグループと共同で熊本県に建設すると発表、当初の設備投資額は約70億米ドル(約8000億円)で、工場を運営する合弁会社にソニーが約5億米ドル(約570億円)を出資する旨。2024年末までに量産を始める予定。

本取り組みへの論評が、以下の通り見られている。

◇TSMC合弁、半導体再興へ一歩、外資誘致の試金石 (11月10日付け 日経)
→最先端の半導体技術を持つ台湾積体電路製造(TSMC)が、熊本県にソニーグループと合弁で新工場を建設することを決めた旨。日本はこの10年で失った演算用(ロジック)半導体の先進ラインを持つことになる旨。日本は外資大手の誘致を通じ、半導体産業の再興に向けて一歩踏み出す旨。

◇センサ拡大、用途開発カギ、ソニー・TSMC合弁、日本の半導体、3つの牙城 (11月11日付け 日経)
→ソニーグループと台湾積体電路製造(TSMC)は日本で半導体の合弁工場を新設する旨。ソニーが世界首位の画像センサ向けに、演算(ロジック)半導体を生産する旨。日本の半導体は世界を席巻した往時の勢いを失ったが、画像センサや記憶用半導体、動作制御に使うマイコンという3つの牙城を残す旨。新市場を創出する用途開発が半導体産業発展のカギとなる旨。

【3社、3事業への分割】

東芝が、いろいろ経緯、事業別に3社に分割してそれぞれ上場という運びが打ち出されている。

◇Toshiba to split up its businesses-Toshiba is to restructure itself into three separate entities, reports the Nikkei. (11月8日付け Electronics Weekly (UK))

◇Toshiba to split into 3 companies by 2023-Toshiba plans to divide into 3 -New entities to list separately to maximize shareholder returns and profit (11月9日付け Nikkei Asian Review (Japan))
→東芝が、2023年までに次の3つのenterprisesに分離する計画の旨。
 marketing devices
 infrastructure technology
 memory chips
3つの会社各々が公開上場となる旨。

◇東芝が事業別に3社に分割、総合電機に幕、それぞれ上場−インフラ・デバイス・半導体 (11月9日付け 日経 電子版 05:34)
→東芝が会社全体を主要事業ごとに3つに分割する検討に入った旨。本体とグループで手がける事業をインフラ、デバイス、半導体メモリに振り分けて3つの会社に再編成し、それぞれが上場する方針。2年後をめどに実現を目指す旨。収益構造や成長戦略が異なる事業を独立させることで各事業の価値をわかりやすくする旨。日本の大企業が会社を完全に分割し、上場する初の事例となる旨。

◇東芝・株主、問われる距離感、分割案、背後に「物言う株主」、長期の価値向上が焦点に (11月10日付け 日経)
→東芝が主要事業ごとに会社を3つに分割する検討に入った旨。企業価値向上を求める物言う株主(アクティビスト)の影響を受け、大企業が会社を完全に分割し、それぞれが上場する日本初のスキーム。米欧の例を見ると会社分割の成否は分かれている旨。長期的な企業価値の向上につなげられるかがカギ。

◇Toshiba to split into three units after pressure from activists-Toshiba to divide into 3 companies (11月12日付け Bloomberg)

◇東芝綱川社長、分割3社「株の持ち合いしない」 (11月12日付け 日経 電子版 18:20)
→東芝は12日、主要事業ごとに会社全体を3社に分割することを柱とした中期経営計画を発表、インフラとデバイスの2事業会社と、半導体メモリ大手のキオクシアホールディングス株などを管理する会社に分かれる旨。綱川智社長兼最高経営責任者(CEO)は2023年度下期に上場完了を目指す方針を表明し、分割後の3社は相互に株の持ち合いを「しない」と明言した旨。

米国でも、ゼネラル・エレクトリック(GE)が3事業に分割するとの発表である。

◇General Electric Stock Soars On Plans to Split Iconic Group Into Three Companies-GE to split into 3 firms for aviation, energy, health care (11月9日付け TheStreet)
→General Electric(GE)が、向こう2年にわたって3つの別々の会社に分離、象徴的な産業グループの同社130年の歴史において最大の改造となる旨。

◇米GE、会社3分割、航空エンジン・医療機器・電力に (11月10日付け 日経 電子版 08:07)
→米ゼネラル・エレクトリック(GE)は9日、会社全体を航空機エンジンと医療機器、電力の3事業に分割すると発表、2023年に医療機器、2024年に電力部門を分社化、本体で航空機エンジンを担う旨。多角化によって企業価値が抑えられる「コングロマリット・ディスカウント」を避け、事業の専門性を高めて投資を呼び込む旨。

【NvidiaのGTCイベント】

NvidiaのGPU Technology Conference(GTC)は今回もvirtual開催、同社CEO、Jensen Huang氏により、以下の通りプレゼンが行われている。Facebookが社名をMetaに変更したばかりであるが、以下でもmetaverse(《meta(超越した)とuniverse(世界)の合成語》:インターネット上に構築される仮想の三次元空間。利用者はアバターと呼ばれる分身を操作して空間内を移動し、他の参加者と交流する。)の概念が随所にあらわれている。

◇Nvidia creates digital twin of Earth to battle climate change-Nvidia takes on climate change, creates digital Earth 2 (11月9日付け VentureBeat)
→Nvidiaが、気候変動から生じる問題に対応、地球のdigital twin(現実の世界から収集した様々なデータを、まるで双子であるかのように、コンピュータ上で再現する技術)、Earth 2を開発の旨。気候変動の予測に向けて、「この新しいスーパーコンピュータは、E2、Earth 2、地球のdigital twinであり、Omniverseにおいて100万倍の速度でModulus-created AI physicsを動かしていく。」と同社CEO、Jensen Huang氏。

◇Virtual world builder: Nvidia positions Omniverse Enterprise as its metaverse creation platform (11月9日付け FierceElectronics)
→NvidiaのGTC Fallイベント基調講演にて、同社のCEO and co-founder、Jensen Huang氏が、プラットフォーム、Omniverse Enterpriseを発表、年間加入プランが$9,000(個人用は無料でダウンロード可能)。該プラットフォームで可能になる同氏のおもちゃサイズのvirtual avatarの例。

◇Nvidia builds out its Omniverse with Avatar and Replicator tools (11月9日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Nvidia社のCEO、Jensen Huang氏が火曜9日、同社のannual GPU Technology Conference(GTC)(San Jose McEnery Convention Centerではなくまたもvirtual開催)での基調講演にて、約1年になるOmniverseプラットフォームが、開発者たちに"新しい3D worldsをつくり出し、あるいは我々の物理的世界をモデル化できる"よう、いくつかの新しいartificial intelligence(AI) toolsを入れて拡大した、としている旨。

◇Nvidia makes massive language model available to enterprises-Nvidia embraces the "omniverse," offers huge language model (11月9日付け VentureBeat)
→Nvidiaが、巨大な言語モデル、Megatron 530Bを作成、530 billionのパラメータを通してcommonsense reasoning, 自然言語推論および読解に用いられる旨。artificial intelligence(AI)半導体設計の同社はまた、同社"Omniverse"シミュレーション技術の一部、車載メーカー向けDrive Conciergeシステムへのアクセスを供給の旨。

◇Nvidia launches new products to plug cars, factories into its Omniverse (11月9日付け Reuters)

◇Nvidia Touts Computing at Both Ends of the Scale (11月10日付け EE Times)
→NvidiaのCEO、Jensen Huang氏が同社のfall conferenceにて、原子レベルから地球のdigital twinまでGPU-driven応用を推進の旨。

◇Nvidia Touts Computing at Both Ends of the Scale (11月12日付け EE Times India)

◇Nvidia CEO says metaverse is ‘not hype’ and outlines massive Earth digital twin (11月10日付け FierceElectronics)
→ロボットおよび自動運転車とともに、NvidiaのCEO、Jensen Huang氏は、気候科学リサーチで用いられるようOmniverseおよび地球のdigital twinという意欲的な概念を導入の旨。metaverseをマーケティングhypeあるいは科学的fictionに過ぎないと言及しないよう、同氏は水曜10日、記者たちとのcallでそのような考え方を素早く吹き飛ばした旨。

【Samsungの製品展開】

SamsungのDRAMの先端開発、および製品世代更新の運びがあらわされている。

◇Samsung Develops Industry's First LPDDR5X DRAM (11月9日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→Samsung Electronics Co., Ltd.が、業界初の14-nanometer(nm)-ベース16-gigabit(Gb) Low Power Double Data Rate 5X(LPDDR5X) DRAMを開発と発表、5G, artificial intelligence(AI)およびmetaverseなど高速データサービス応用全体にわたってさらなる成長を引っ張るよう設計されている旨。

◇Samsung to discontinue DDR3 product line in 2 years (11月9日付け DIGITIMES)

◇Samsung Electronics introduces the LPDDR5 DRAM chip-Samsung shifts to LPDDR5 DRAMs (11月9日付け JoongAng Daily (South Korea))
→Samsung Electronicsが、DDR2 DRAMsの製造を止め、DDR3メモリを2年で段階的に止める計画の旨。同社は、LPDDR5メモリの先端版、LPDDR5Xを開発、14-nanometerプロセスでつくられ、実質的に同社のLPDDR4 DRAMsを置き換えていく旨。

最新の2.5D実装ソリューション、Hybrid-Substrate Cube(H-Cube)の取り組みが、SK Hynixの同様のそれとともに以下示されている。

◇Samsung Announces Availability of Its Leading-Edge 2.5D Integration ‘H-Cube’ Solution for High Performance Applications (11月11日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→Samsung Electronicsが、Hybrid-Substrate Cube(H-Cube)技術の開発を発表、高性能および大面積実装技術を要するHPC, AI, data center, およびnetwork製品向けの半導体に特化した最新の2.5D実装ソリューションである旨。

◇SK Hynix Demos 24GB HBM3 at 6.4 Gbps and Samsung Works on Cheaper H-Cube-SK Hynix and Samsung each unveil HBM3 memory products-HBM is developing, just not for consumers. (11月11日付け Tom's Hardware)
→SK Hynixが、12-Hi 24GB HBM3-6400メモリstacksを投入、through-silicon vias(TSVs)で繋がれた十数のDRAMsを収めている旨。これとは別に、Samsung ElectronicsがAmkor Technologyと協働、Hybrid-Substrate Cube(H-Cube)技術をつくり出し、6個以上のHBM stacksが入れられる実装の旨。

【AMD関連】

Advanced Micro Devices(AMD)の来年に向けた性能強化の取り組みがあらわされている。

◇AMD boosts performance of datacenters, technical computing, HPC, and AI-AMD readies "Milan-X" EPYC processors with 3D V-Cache (11月8日付け VentureBeat)
→Advanced Micro Devices(AMD)から2022年における市場開拓、3D V-Cache搭載"Milan-X" EPYCプロセッサ、技術用computing向け、およびartificial intelligence(AI)およびhigh-performance computing(HPC)応用向けInstinct MI200 graphics processing units(GPUs)。「我々は、exascale computingに向けてCPUs, GPUs, およびソフトウェアを統一システムアーキテクチャーに一緒にもってきている。」と、AMD corporate vice president, product management、Ram Peddibhotla氏。

AMDが、前FacebookのMetaを半導体顧客として獲得、サーバプロセッサでインテルのシェアをさらに奪うかどうか。

◇AMD shares close up 10% after company wins Meta partnership, announces new chips (11月8日付け CNBC)
→*AMDが、Facebookとしてこれまで知られるMetaを半導体顧客として獲得と発表、株価が月曜8日上昇の旨。
 *AMDはまた、同社のAccelerated Data Center Premiereの基調講演にて、一連の新しい半導体を披露の旨。
 *同社の株価は、10%上昇で締めた旨。

◇AMD rallies after landing Meta in server chip win (11月10日付け Taipei Times)
→Advanced Micro Devices社(AMD)が、前Facebook社のMeta Platforms社にサーバプロセッサを供給開始、その儲かる市場でのIntel社の持ち分をさらに侵食の旨。

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