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Hot Chipsを軸に見るAI処理高速化はじめ最先端プロセッサの現時点

新型コロナウイルスによる累計感染者数は土曜28日午前時点、世界全体で2億1511万人に達し、1週間前から約458万人増と19万人増えている。我が国では、緊急事態宣言が21都道府県に拡大され、9月12日まで実施されている。例年はシリコンバレーで開催され最先端LSI技術の粋が披露されるHot Chipsが、新型コロナのために昨年に続いて今年もオンライン開催(8月22-24日)となり、各社から次世代に向けた技術&製品が披露されている。ソフトウェア傾斜の流れがあらわれた昨年から、AI処理の高速化を一層推進する様々な取り組みが今回あらわされている。会議の議題進行に対応させて、業界記事の取り上げに注目、以下示していく。

≪AIのさらなる高度化に向けて≫

1989年に第1回が開催されたHot Chips。今回はHot Chips(HC33)となるが、会議メニューに沿って、以下項目ごとに注目している業界関連記事を当てはめる形で示している。

◎初日(8月22日):チュートリアル
 →以下の各社からのプレゼン
  Nvidia, Google, Graphcore, Intel, Facebook, Amazon, Microsoft, TSMC, AMD, TechSearch International

◎本会議初日(8月23日)

〇「CPU」

・AMDの次世代コア

◇AMD Zen 4 Processors Could Offer Integrated Graphics Across More SKUs-AMD's Zen 4 processors will provide integrated graphics-Zen 4 cores and RDNA 2 graphics (8月23日付け Tom's Hardware)
→Advanced Micro Devices(AMD)が、Zen 4プロセッサに統合グラフィックスを収容、これまでは同社のaccelerated processing units(APUs)でのみ利用できるcapabilityの旨。AMDは、Zen 4 microarchitecture搭載の3つの型のプロセッサを出す計画、すべて統合グラフィックスをサポートの旨。

◇AMD's Zen 3 Ryzen Threadripper Pro 5995WX and 5945WX Pop Up-AMD floats Ryzen Threadripper Pro 5995WX, 5945WX chips -AMD's Ryzen Threadripper Pro 5000-series confirmed (8月26日付け Tom's Hardware)
→Advanced Micro Devices(AMD)が、同社のZen 3 microarchitectureに基づくRyzen Threadripper Pro 5995WXおよびRyzen Threadripper Pro 5945WXプロセッサの詳細を披露、この2つの半導体は、1対のPCsで今月テストされた旨。

・IBMの次世代CPU

◇IBM Unveils On-Chip Accelerated Artificial Intelligence Processor (8月23日付け Cision)
→IBMが、annual Hot Chips conferenceにて本日、新しいIBM Telum Processorの詳細を披露、リアルタイムでの詐欺行為対策対応に向けてdeep learning(DL)推論をenterprise workloadsにもってくるよう設計の旨。

◇IBM introduces Telum chips aimed at AI inferencing workloads like fraud detection-IBM debuts Telum chip line for AI inferencing workloads -Systems using the chips are expected to be ready for the first half of 2022. (8月23日付け ZDNet)
→IBMが、証券取引での不正検出などartificial intelligence(AI)推論workloadsを扱うTelum半導体ラインを投入の旨。Samsungが、該microchipをextreme ultraviolet(EUV) lithography技術を用いて7-nanometerプロセスで製造の旨。

◇IBM aims AI inference at anti-fraud for financial vertical (8月26日付け FierceElectronics)
→IBMが、今週のHot Chip conferenceにて、新しいプロセッサ、IBM Telumを発表、bankingなどの分野での詐欺防止応用向けAI推論のon-chip加速化を装備の旨。取引が行われている間に、"リアルタイムでの詐欺対応に向けdeep learning(DL)推論をenterprise workloadsに持ち込むよう設計されている"旨。

・インテルの次世代CPU

◇New Approaches For Processor Architectures-Processor architectures are seeing new approaches -Flexibility and customization are now critical elements for optimizing performance and power. (8月26日付け Semiconductor Engineering)
→プロセッサベンダーが、いろいろなtasks実行に向け半導体のmicroarchitecturesを工夫している一方、性能およびpowerも最適化の旨。
「より広い、深いそしてsmartなmachineを構築して、low-latency, single-thread性能の限界を押しやることが性能の目標」と、Hot Chips 2021 conferenceでのプレゼンでIntelのFellow、Efraim Rotem氏。

〇Synopsys講演

◇Synopsys CEO: AI-designed chips will generate 1,000X performance in 10 years-Synopsys CEO predicts AI-designed ICs will perform better (8月23日付け VentureBeat)
→EDAベンダー、Synopsysのchairman and co-CEO、Aart de Geus氏。
electronic design automation(EDA)が、microchips設計においてartificial intelligence(AI)技術を受け入れ、次世代半導体の性能を大きく改善する旨。この10年の終わりで1,000倍の性能が得られていく、と予想の旨。

◇Synopsys design software uses AI to make chips more power efficient-AI IC design tools from Synopsys boost power efficiency (8月23日付け Reuters)
→Synopsys発。同社の顧客が、artificial intelligence(AI)-ベースIC設計ソフトウェアを用いて半導体設計のpower効率を26%改善の旨。「設計が今や実際にこれまでより後援者がより多いのは大きいこと」と、Synopsysのchairman and co-CEO、Aart de Geus氏。

◇Can AI Design a Better Chip Than a Human? (8月26日付け EE Times)
→完全に自立した半導体設計は可能か?AIは、半導体全体を設計&最適化する“artificial architect”として振る舞えるか?これがSynopsysのCEO、Aart de Geus氏がHot Chipsでの基調プレゼンで提起した質問であり、“yes”の答えが鳴り響いた旨。Synopsysは、初めて半導体設計プロセスのすべての面でAIを解き放ち、その結果は人間を上回った旨。

〇Infrastructure and Data Processors

→以下の内容:
 ・ArmのNeoverse N2プロセッサ
 ・NvidiaのData Center Processing Unit(DPU) 
  …データの入力部分に専用のプロセサを置いて、CPUの負荷をオフロードしてセキュリティ処理などを行うもの
 ・IntelのHyperscale-Ready SmartNIC for Infrastructure Processing

〇Enabling Technologies

→Samsungのmachine learning(ML) acceleratorsに向けたin-memory processing搭載HBM2-PIM

◇Samsung Teases 512 GB DDR5-7200 Modules-Samsung details 512GB DDR5-7200 modules at Hot Chips (8月22日付け AnandTech)
→annual Hot Chips 33(2021)半導体技術conference(8月22-24日:on-line)にて、Samsung Electronicsのメモリ事業部が、DDR5メモリの512GBモジュールの詳細を披露、DDR5-7200(最大データ転送速度が7.2Gbps)で動作、サーバおよびenterprise応用向け。該モジュールは、JEDEC DDR5-7200標準timings、1.1 volts動作の旨。

◇Samsung unveils advanced AI memory chips (8月24日付け The Korea Times)
→Samsung Electronicsが、メモリ半導体分野における技術リーダーシップを拡大、火曜24日、artificial intelligence(AI)技術を特徴とする新しいメモリ半導体を披露の旨。同社は、新技術を推進するannual半導体業界conference、Hot Chipsにて、該新製品が如何に使われるかを披露、データセンターにおけるサーバで用いられるAI処理能力を統合したhigh bandwidth memory(HBM)、HBM-PIMを開発の旨。

◇Samsung Expands PIM Ambitions-HBM2-PIM accelerator and acceleration DIMM target AI/ML workloads (8月25日付け EE Times)
→Samsung Electronics Co., Ltd.が、processing-in-memory(PIM)技術をより主流にするもう1ステップを発表、商用化されたacceleratorシステムへのPIM-enabled High Bandwidth Memory(HBM-PIM)の統合の初めての成功が、PIM技術を他の型のメモリに取り入れるビジョンの一環である旨。AI処理機能を同社のHBM2 Aquaboltに取り入れるAquabolt-XLの今年始めのニュースに立って、SamsungがHot Chips 33にてPIM技術の最新の進展を披露の旨。
Samsungは、power-hungry artificial intelligence(AI)およびmachine learning(ML)応用などより多くの用途にHBM-PIMメモリ技術をもってくる旨。

◎本会議2日目の最終日(8月24日)

〇クラウド向けのML Inferenceエンジン

・Esperanto Technologies

◇Esperanto Emerges From Stealth With 1,000-Core RISC-V AI Accelerator (8月24日付け EE Times)
→Hot Chips conferenceと符合して、startup、Esperantoが今週、これまでで最高性能の商用RISC-V半導体、hyper-scaleデータセンター向けに設計された1,000-コアAI acceleratorをもって表舞台に登場の旨。該startupのエネルギー効率の良い半導体は、データセンターにおける推奨モデルを早めるM.2 accelerator socketsを目指している旨。

◇Esperanto Emerges from Stealth with 1,000-Core RISC-V AI Accelerator (8月26日付け EE Times India)

・中国のstartup、Enflame
・QualcommのCloud AI 100

〇MLと計算プラットフォーム …高性能AIプラットフォームの開発を引っ張っているstartup、3社

・GraphcoreのColossus Mk2 IPU

・Cerebrasのマルチウェハのシステム

◇Cerebras Extends AI System to ‘Brain-Sized’ Algorithms (8月24日付け EE Times)
→CerebrasがHot Chipsイベントにて、同社第2世代CS-2 AI acceleratorに向けて新しいメモリ拡張方式を披露、単一wafer-scale半導体が120-trillionパラメータモデルの訓練を行える旨。比較のため、人間の脳のcapacityは約100 trillionパラメータの旨。

◇Cerebras' Tech Trains "Brain-Scale" AIs -A single computer can chew through neural networks 100x bigger than today's (8月24日付け IEEE Spectrum)

◇Cerebras Systems connects its huge chips to make AI more power-efficient-Cerebras boosts AI's power efficiency by connecting chips (8月24日付け Reuters)
→半導体startup、Cerebras Systemsが、同社の特大のmicrochipsを接続して、artificial intelligence workloadsの間の電力消費を削減の旨。同社はneural networksの訓練に192個の半導体のつなぎを報告、大きさおよび電力消費で利がある旨。

・SambaNovaのSN10 RDUとD.E.Shaw ResearchのAnton 3

〇Graphics and Video

・IntelのハイエンドGPU、Ponte Veccio
・AMDの第2世代のRDNA2グラフィックスアーキテクチャ
・Xilinxの7nm Edge Processors

〇New Technologies

・Mojo LensというARコンタクトレンズ
・全方向オートフォーカスレンズ
・指より高感度なナノタクタイルセンサ
・IonQ社の量子コンピュータ

以上、今回のHot Chips(HC33)について業界記事の取り上げを見てきたが、このタイミングに合わせてAIに大きく関わる新技術・新製品の記事があらわされており、以下に示していく。

◇EdgeQ Samples 5G Basestation-on-a-Chip (8月22日付け EE Times)
→5G運用に向けたbasestation-on-a-chipシリコン&ソフトウェアをつくっているstartup、EdgeQ(Santa Clara, CA)が、このほど同社半導体およびphyソフトウェアをサンプル配布の旨。EdgeQのsoftware defined basestation半導体により、5GおよびAI機能の加速化が得られる旨。

◇Google幹部、AIの人知超え「前倒しも」、量子計算機で (8月24日付け 日経 電子版 05:09)
→米グーグルの量子人工知能(AI)研究部門を率いるエンジニアリングディレクター、ハルトムート・ネベン(Hartmut Neven)氏が日本経済新聞などの取材に応じた旨。2029年の完成を目指している実用的な量子コンピュータの開発状況を説明し、AIの能力が人類の知能を超える「シンギュラリティー(Singularity)」の到達が早まる可能性に言及した旨。
同社は2013年に次世代の高速計算機である量子コンピュータの開発を進めていると公表し、2019年には性能が最先端のスーパーコンピュータを上回る「量子超越(quantum supremacy)」を達成した旨。気候変動問題の解決や創薬など幅広い分野への応用が見込まれている旨。

Nvidiaのスーパーコンピュータ、Polarisの概要が以下の通りである。

◇Argonne taps Nvidia to power Polaris supercomputer (8月25日付け FierceElectronics)
→2,000個を上回るNvidiaのTensor Core GPUsが、該exascaleスーパーコンピュータに用いられる旨。

◇Nvidia-powered Polaris supercomputer to usher in a new era of ‘exascale’ AI -Exascale AI is enabled at lab's supercomputer (8月25日付け SiliconAngle)
→Argonne National Laboratoryの新しいsupercomputingシステム, Polarisが、NvidiaおよびAdvanced Micro Devices(AMD)製の半導体を用いている旨。Hewlett Packard Enterprise(HPE)がPolarisを構築、各nodeの4個のNvidia半導体および2個のAMD CPUsがある旨。

◇Nvidia and AMD-Powered Polaris Supercomputer: Preparing for Intel's Delayed Aurora-AMD and Nvidia plug the gap (8月25日付け Tom's Hardware)
→米国エネルギー省のArgonne National Laboratoryが、新しいPolarisスーパーコンピュータに向けてNvidiaのA100 GPUsをAMDのCPUsと対に採用、大方遅れているIntel-powered Auroraスーパーコンピュータにより必要と考えられる動きの旨。該システムは、IntelのSapphire Rapidsサーバ半導体での生産困難から思わぬ問題にぶつかった旨。

◇Brainchip looks at transfer and incremental learning - which is more efficient?-BrainChip ponders: Incremental or transfer learning? -The AI processor specialist, Brainchip, has looked at whether transfer learning is more efficient than incremental learning when it comes to training neural nets to perform AI/ML tasks. (8月25日付け New Electronics)
→artificial intelligence(AI)およびmachine learning(ML)応用向けプロセッサに特化するstartup、BrainChipが、neural networksの学習においてincrementalあるいはtransfer learningを用いるかどうか、検討の旨。

引き続き、Hot Chipsの時節に進展のほどの見直しである。


コロナ対応のなかなか収まらない状況推移に対して、直面する事態への警戒感を伴った舵取りが各国それぞれに引き続き行われている世界の概況について、以下日々の政治経済の動きからの抽出であり、発信日で示している。

□8月24日(火)

過去最高値をうかがう展開、情勢の推移を受け比較的小幅な上げ下げの今週の米国株式市場である。

◇NYダウ続伸、215ドル高、ワクチン正式承認を好感 (日経 電子版 05:41)
→23日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前週末比215ドル63セント(0.6%)高の3万5335ドル71セントで終えた旨。前週まで新型コロナウイルスのインド型(デルタ型)の拡大懸念で売られた景気敏感株が買い直された旨。ハイテク株も幅広く買われ、ナスダック総合株価指数は約2週間ぶりに過去最高値を更新した旨。

米国のコロナワクチン正式承認は初めてとのこと。ファイザー製である。

◇米当局、ファイザー製を正式承認、コロナワクチンで初 (日経 電子版 05:56)
→米食品医薬品局(FDA)は23日、米製薬大手ファイザーと独ビオンテックが共同開発した新型コロナウイルスワクチンを正式承認した旨。米国が新型コロナワクチンを正式承認するのは初めて。同ワクチンは昨年12月に緊急使用が許可されていた旨。
16歳以上への2回の接種が、正式に認められた旨。ファイザー製は米国でこれまでに2億回以上が接種されており、接種回数は新型コロナワクチンで最も多い旨。
同ワクチンについては、バイデン政権が9月下旬から3回目の追加接種(ブースター接種)を開始する計画。ファイザーは今回の正式承認を受け、ブースター接種についても正式承認にむけた申請手続きを進める旨。

□8月25日(水)

◇NYダウ続伸30ドル高、ワクチン普及に期待 (日経 電子版 06:08)
→24日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続伸し、前日比30ドル55セント(0.1%)高の3万5366ドル26セントで終えた旨。新型コロナウイルスのワクチン普及で経済再開が進むと期待され、景気敏感株を中心に買いが優勢となった旨。もっとも、米連邦準備理事会(FRB)による金融政策を見極めたいとのムードも強く、取引終了にかけて伸び悩んだ旨。

半導体強化関連が入るインフラ法案の米下院採決が、来る9月27日までの約束である。

◇米下院、390兆円予算決議可決、インフラ法案は9月採決へ (日経 電子版 06:35)
→米議会下院は24日、子育て・教育支援などに10年で3.5兆ドル(約390兆円)の財政支出をめざす予算決議を賛成多数で可決した旨。民主党のペロシ下院議長が超党派のインフラ投資法案を9月27日までに採決すると約束し、予算決議よりもインフラ法案を先に採決するよう求めていた党内中道派の異論を抑えた旨。

□8月26日(木)

◇NYダウ続伸、39ドル高、ワクチン普及や財政支出に期待 (日経 電子版 05:50)
→25日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4日続伸、前日比39ドル24セント(0.1%)高の3万5405ドル50セントで終えた旨。過去最高値が近づき、高値警戒感から朝方は短期的な利益確定売りが先行した旨。だが、新型コロナウイルスのワクチンの普及や、米政権の大型の財政支出による景気拡大を期待した買いが次第に優勢になった旨。

□8月27日(金)

◇NYダウ反落、192ドル安、アフガン情勢悪化が重荷 (日経 電子版 05:24)
→26日の米株式市場でダウ工業株30種平均は5営業日ぶりに反落し、前日比192ドル38セント(0.5%)安の3万5213ドル12セントで終えた旨。朝方は高く始まったが、買い一巡後は高値警戒に伴う利益確定売りが次第に優勢となった旨。アフガニスタン情勢を巡る地政学リスクの高まりも投資家心理の悪化につながった旨。

我が国のコロナ対策緊急事態宣言が拡大され、一層の厳戒が求められている。

◇緊急事態宣言、21都道府県に拡大、9月12日まで−教育現場の対策強化 (日経 電子版 10:06)
→政府は27日、新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言に北海道や愛知など8道県を追加、宣言は計21都道府県となる旨。宣言に準じる「まん延防止等重点措置」は4県を加え12県となり、期間は現在発令中の宣言にあわせて9月12日までとする旨。
北海道、宮城、岐阜、愛知、三重、滋賀、岡山、広島の8道県を重点措置から宣言に切り替えた旨。重点措置に高知、佐賀、長崎、宮崎の4県を含めた旨。

□8月28日(土)

◇NYダウ242ドル高、「年内緩和縮小」も利上げ示唆なく (日経 電子版 08:30)
→27日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、終値は前日比242ドル68セント(0.69%)高の3万5455ドル80セントだった旨。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は同日、年内に資産購入の減額(テーパリング)を始めるのが適切だとの考えを示した旨。ほぼ市場の想定内だったほか、将来の利上げの示唆はなく、買い安心感が広がった旨。


≪市場実態PickUp≫

【インテル関連】

インテルの半導体戦略について、先端実装、TSMCとの連携、そして最先端微細化の取り組みである。

◇Intel Banks on Advanced Packaging to Help Put It Back on Top (8月21日付け Electronic Design)
→Intelが最近、同社先端実装playbookのさらに多くを披露、2つの新しい3D半導体stacking技術、Foveros DirectおよびFoveros Omniを投入、ともに2023年までに量産の備えの旨。

◇Intel details chip strategy, partnership with TSMC (8月21日付け Taipei Times)
→Intel社が木曜19日、ライバル、TSMCとの新しい種類の連携など、外部の工場から同社半導体のsubcomponentsの供給を受ける戦略方向転換の新たな詳細を述べた旨。
1つとして、TSMCから半導体のsubcomponents、“tiles”を受け、実装技術のあるIntel自身の工場で縫い合わせる旨。

◇Inside Intel's Ambitious Roadmap-Q&A: Intel's logic microchip roadmap explained -Five process nodes in four years, high-NA EUV, 3D-ICs, chiplets, hybrid bonding, and more. (8月23日付け Semiconductor Engineering)
→Intelのsenior vice president and general manager of technology development、Ann Kelleher氏が同社のロジックデバイスの今後について語るインタビュー記事。「2024年に計画しているIntel 20Aの開発において現状のEUV toolsを0.33 numerical aperture(NA)で用いている。」加えて、「2025年以降のプロセスについては、EUVに向けた次のnumerical aperture(NA)であるhigh-NA EUVについてすでにASMLと連携している。」

米国国防総省はじめ軍事応用向け半導体について、インテルの取り組みが以下の通りである。

◇Intel and partners win Defense award under domestic test chip program (8月23日付け FierceElectronics)
→IntelがIBM, Cadence, Synopsisなどとともに、RAMP-C(Rapid Assured Microelectronics Prototypes-Commercial)として知られる米国Defense Department awardのもと、国内半導体設計&製造をサポートの旨。

◇Intel Foundry Services gets a boost from $100M Pentagon award for US-made chips-Currently, no onshore foundry can meet the Pentagon's needs. (8月23日付け Ars Technica)

◇Intel lands deal that could help U.S. solve its semiconductor problem (8月24日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Intel(Santa Clara)が、IBM, Synopsys, Cadence Design Systemsなどに加わって、米国半導体製造強化に向けたPentagonプログラムに参画する旨。

◇Intel, Qualcomm win deal to design 7nm silicon for US defense agencies-NXTA selects Intel, Qualcomm to provide mil/aero chips-Chipzilla gets to make 'em and crow that it has a really prestigious foundry customer (8月24日付け The Register (UK))
→米国・National Security Technology Accelerator(NXTA)が、米国国防総省のRapid Assured Microelectronics Prototypes -- Commercial(RAMP-C)プログラムに向けたmicrochips設計でIntelおよびQualcommを選択、Intel Foundry Servicesが政府出資の$100 millionにおいて共有する旨。

◇BAE Systems furthers defence collaboration with Intel-BAE Systems has announced another strategic business agreement for its FAST Labs R&D organisation having early access to selected Intel technologies. (8月24日付け Electronics Weekly (UK))
→BAE Systems(英国)のFAST Labs research and development(R&D) organizationが、軍事応用向け半導体に向けてIntelとコラボの旨。

【Samsung関連】

Samsungのベトナム工場への投資である。

◇Samsung plans to invest more in Vietnam despite COVID (8月23日付け DIGITIMES)
→Samsung Electronicsが、ベトナム工場への投資を高めており、phonesなどelectronicsをつくる該拠点に以前に$17.5 billionを上回る投資を行っている旨。

NXPを買収するという噂が浮上したかと思えば断念の報道。まだ目が離せないところである。

◇Samsung second-guessing potential NXP acquisition-Will Samsung acquire NXP? (8月23日付け The Korea Times (Seoul))
→最近Samsungのリーダー、Lee Jae-yong氏が仮保釈され、同社がmicrochip portfolioの多角化に向けてNXP Semiconductors買収を演じるかどうか、噂が再び生じている旨。

◇「サムスンはNXP買収を断念した」海外紙、独占懸念も考慮か (8月25日付け コリア・エコノミクス)
→サムスン電子は25日、240兆ウォン(約22.5兆円)規模の大規模な投資を今後行うと発表したが、以前から噂されていた車両用半導体メーカー、NXP(オランダ)の買収は断念したとの報道が出た旨。
SamMobileは24日(現地時間)、サムスン電子がオランダの半導体メーカー、NXP買収戦から撤退すると消息筋を引用して報道した旨。
サムスン電子は、NXPの時価総額浄書により、その買収価格が680億ドル(約7.5兆円)まで上昇したことから買収放棄を検討している旨。
サムスン電子はそれでもNXP買収に足る十分な現金を保有しているが、各国政府が独占懸念から拒否権を行使する可能性も考慮したとみられる旨。

向こう3年にわたる戦略的な事業取り組みが、以下の通りである。

◇Samsung to spend $205 billion across 3 years for 'strategic businesses'-Samsung to invest $205B in "strategically important industries" (8月24日付け ZDNet)
→Samsungが火曜24日、"戦略的に重要な業界"におけるリーダーになる活動の一環、向こう3年にわたって240 trillion won, 約$205 billionを充てる旨。半導体、バイオ医薬品、およびテレコムなどの戦略的事業に向けた該計画は、COVID-19 pandemicに続く"非常に大きな変化"を予期して準備されている旨。

◇Samsung Group to spend $206 bn on chip and bio expansion over next three years-Samsung budgets $206B for expansions in through 2024 (8月24日付け Pulse by Maeil Business Newspaper (South Korea))

足元のDRAM事業、この第二四半期は急拡大、差を広げている。

◇Samsung expands lead in DRAM market in Q2: report (8月24日付け Yonhap News Agency)
→TrendForce発。本年第二四半期のグローバルDRAM市場でSamsung Electronics Co.が、力強い需要および半導体価格上昇から席巻の度を拡大、売上げが$10.51 billionで前四半期比30.2%増、シェアが43.6%で同1.6 percentage points増。

Teslaのスパコン用半導体の生産受託に、Samsungの名前が挙がっている。

◇サムスン電子、テスラのスパコンで使われる半導体「D1」の委託生産が有力か (8月25日付け コリア・エレクトロニクス)
→サムスン電子がテスラのスーパーコンピュータ「Dojo」の委託生産パートナー社として有力視されている旨。自立走行分野での協力を強化し、ファウンドリー市場での存在感を高めるものと見られる旨。韓国ニュースメディア、THE GURUが報じている旨。
23日、業界によると、テスラは今月19日(現地時間)、「AIデー」にスーパーコンピュータ、「Dojo」に使われる半導体、D1を公開した旨。D1は1秒当たり36TBのデータ処理速度を持ち、トランジスタ数は500億個、AMDのエピックローマ(Epyc Rome)に勝る旨。
D1は7-nm工程で生産され、7-nm以下の微細工程が可能なサムスン電子とTSMCが生産パートナー社として取り上げられている中、サムスン電子の受注が有力視されている旨。

【NvidiaのArm買収提案】

NvidiaによるArm Holdingsの$40 billion買収提案について、英国regulatorが時間をかけて厳格に調べるという動きが以下の通りあらわされている。最後にあるように、NvidiaはEUのantitrust承認を求める観測があらわされている。

◇Nvidia's $40 bln deal for ARM dealt blow by UK regulator (8月20日付け Reuters)

◇Nvidia's Takeover of Arm Raises Competition Concerns, U.K. Regulator Says -U.S. firm's proposed $40 billion deal for British computer-chip designer faces further scrutiny (8月20日付け The Wall Street Journal)

◇UK Regulator Says Nvidia-Arm Deal Could Stifle Innovation (8月23日付け EE Times)

◇Nvidia's bid for Arm dealt blow by regulator-Arm-Nvidia deal gets a closer look from UK regulator (8月23日付け New Electronics)
→1)英国が、Nvidiaが提案するArm Holdingsの$40 billion買収の厳格な評価を検討の旨。「Armを傘下に置くNvidiaが、重要技術へのアクセスを制限してNvidiaのライバルたちに実際の問題をつくり出し、いくつかの重要で伸びる市場に及ぶ革新を究極的に阻害することに懸念を持っている。」と、Competition and Markets Authorityのhead、Andrea Coscelli氏。
 2)英国regulatorが、Nvidiaによる半導体設計、ARMの$40 billion買収は競争を阻害、ライバルたちを弱める可能性、結果としてさらに長々しい調査を要する、としている旨。

◇Nvidia set to seek EU okay for $54 billion Arm deal -sources-Nvidia is reportedly set to go after EU approval for Arm buy (8月27日付け Reuters)
→本件事情通発。Nvidiaが来月始め、英国半導体設計のArmの$54 billion買収についてEUのantitrust承認を求める様相、regulatorsが予備見直しを経てfull-scale調査を打ち上げる見込みの旨。

【Western DigitalのKioxiaとの合併】

次のThe Wall Street Journalの記事に端を発しているが、Western Digitalが長年のパートナー、Kioxia Holdingsと合併する動きがあらわされている。当事者の確認はいまだの模様であるが、9月にも合意の可能性、とこれも目が離せない1件である。

◇Report: Western Digital pursues $20B merger with Kioxia (8月25日付け The Wall Street Journal)
→The Wall Street Journal発。Western Digitalが、依然東芝メモリとして知られ、長年の製造パートナーであるKioxia Holdingsとの合併、$20 billion株式交換に取り組んでいる旨。しかしながら両社ともに本件についてコメントしていない旨。「該取引は防御的であるが、分別があり、素早く統合していく半導体市場における競争力ある位置づけを強化するWesternによる動きである。」と、Morningstarのアナリスト、William Kerwin氏がresearch noteにて。

◇Western Digital-Kioxia in talks to create chipmaker giant -source-Report: US, Japanese chipmakers close in on $20B merger (8月25日付け Reuters)

◇Report of possible acquisition by San Jose-based Western Digital spikes stock (8月26日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→該取引はWestern Digital株で資金供給され、新しい合併会社はWestern DigitalのCEO、David Goeckeler氏が運営の旨。

◇米半導体WD、キオクシアと合併交渉、2.2兆円超と米報道 (8月26日付け 日経 電子版 08:12)
→米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は25日、米半導体大手、ウエスタンデジタル(WD)が同業のキオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)との合併に向けた交渉を進めていると報じた旨。買収額は200億ドル(約2兆2000億円)超で、早ければ9月中旬にも合意に達する可能性があるとしている旨。

◇半導体再興、日米で綱引き、キオクシア・WD統合交渉 (8月29日付け 日経 電子版 05:00)
→日米が半導体産業の再興を急ぐ中、キオクシアホールディングスと米ウエスタンデジタル(WD)の統合交渉が続いている旨。半導体はデータ社会の要諦で、安全保障面からも各国が振興策を打ち出す旨。供給網を共同歩調で整備し、巨額の補助金で台頭する中国を牽制したいとの思いは日米政府とも共通するが、自国産業を守りたいとの思惑も見え隠れする旨。再編の行方は新時代の経済同盟の試金石となる旨。

【現下の市場関連】

恒例のSEMI発表、北米半導体装置メーカーの7月の世界billingsがまたまた最高を更新、力強い増勢が健在である。

◇North American Semiconductor Equipment Industry Posts July 2021 Billings (8月23日付け SEMI)
→SEMIのJuly Equipment Market Data Subscription(EMDS) Billings Report。北米半導体装置メーカーの2021年7月の世界billingsが$3.86 billion(3ヶ月平均ベース)、前月、2021年6月の最終billings、$3.69 billionを4.5%、前年同月、2020年7月の$2.57 billionを49.8%上回る旨。
「北米半導体装置メーカーに向けて2021年後半のスタートは、力強い販売高の増勢をさらに伸ばしている。」と、SEMIのpresident and CEO、Ajit Manocha氏。「半導体製造supply chainにわたるcapacity需要は引き続き力強く伸びており、グローバルにdigital transformation(DX)のkey engineとしての半導体装置の役割を反映している。」
ここ6ヶ月の推移(金額:USM$):

Billings
Year-Over-Year
(3ヶ月平均)
February 2021
$3,143.1
32.4%
March 2021
$3,273.9
47.9%
April 2021
$3,428.9
50.3%
May 2021
$3,588.5
53.1%
June 2021 (final)
$3,690.2
59.2%
July 2021 (prelim)
$3,857.2
49.8%

[Source: SEMI (www.semi.org), August 2021]

◇SEMI billings up 50%-SEMI: July billings rose 50% to $3.81B -SEMI's July billings figure was up 49.8% y-o-y at $3.81 billion. (8月26日付け Electronics Weekly (UK))

NANDフラッシュメモリの先行きおよび現下の価格についてである。

◇NAND flash market to regain balance in 2022, says Silicon Motion president-Silicon Motion's Kou: NAND to be more balanced in 2022 (8月23日付け DIGITIMES)
→フラッシュデバイスコントローラspecialist、Silicon Motion Technologyのpresident、Wallace Kou氏。グローバルNANDフラッシュメモリ市場が、2022年に需給バランスに達する見込み、そこでの全体ビット供給伸長が約30%となる見込みの旨。

◇NAND型上昇、1年4カ月ぶり、3%高 (8月24日付け 日経)
→データを長期記憶する半導体メモリ、NAND型フラッシュメモリの7月の大口需要価格が1年4カ月ぶりに上昇、指標となるTLC(トリプル・レベル・セル)の256ギガビット品は前月比3%高い1個3.35ドル前後だった旨。主要な用途である記憶装置ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)はパソコン向けで需要が伸びたほか、データセンターのサーバ向けの引き合いも増えている旨。

ハードディスク駆動装置(HDD)も、力強いパソコン需要から久々の値上がりである。

◇HDD、3年ぶり値上がり、7〜9月大口、5%高、半導体不足で部材高、パソコン需要増も下支え (8月24日付け 日経)
→パソコンなどのデータを保存するハードディスク駆動装置(HDD)の大口需要家向け価格が3年ぶりに上昇、指標品の7〜9月期価格は4〜6月期より5%ほど高い旨。世界的な半導体不足で部材の調達価格が上昇し、HDDメーカーが価格を転嫁した旨。パソコンなどの需要増も下支え要因。HDD向けは半導体不足の解消に時間がかかる見込みで、10〜12月も値上がりする可能性がある旨。

一方では、巣ごもり需要そして在宅勤務需要が一巡しているのでは、とのデータ。今後追っかけ&確認対応を要する内容である。

◇メモリ大手、業績懸念、巣ごもり需要一巡、DRAM市況変調、サムスンなど株安 (8月25日付け 日経)
→半導体メモリ市況のピークアウトと関連銘柄の業績減速に対する警戒感が高まっている旨。大手3社の24日の株価を6月末と比較すると、韓国サムスン電子が6%安、同SKハイニックスが18%安、米マイクロン・テクノロジーが16%安に沈む旨。引き金はDRAM市況の変調。新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要が一巡しつつあり、パソコン向けの取引価格が頭打ちしている旨。

◇パソコン出荷4%減、国内、7月、在宅勤務の需要一巡 (8月25日付け 日経産業)
→電子情報技術産業協会(JEITA)が24日に発表した2021年7月のパソコン(PC)の国内出荷台数は前年同月比4%減の58万8千台、4カ月連続のマイナスとなっている旨。
2020年7月には新型コロナウイルスの感染拡大に対応して在宅勤務を始める人が増え、ノートPCを中心に需要が急速に高まっていた旨。
現在もテレワークは続いているが、1年前に比べれば新規需要は落ち着いている格好。

TSMCはじめファウンドリーの製造対応の値上げ通告が相次いでいるが、台湾のIC design housesの顧客筋からは当然ながら渋い反応である。

◇IC design houses see customers become reluctant to accept higher prices-Customers balk at higher prices by IC design firms (8月27日付け DIGITIMES)
→台湾のIC design housesが、製造コスト上昇を反映するよう半導体製品のさらなる値上げについてclientsと交渉しているが、特にnotebookおよびFPD顧客が値上げ受け入れを渋っている旨。


≪グローバル雑学王−686≫

各国の中国に対する視点、それもマイナーな顔ぶれからのそれに、ルポライターの著者の目を通して迫っていく書、

『中国vs.世界 呑まれる国、抗う国』
(安田 峰俊 著:PHP新書 1260) …2021年5月27日 第一版第一刷

より、今回はナイジェリアである。アフリカのほぼ中央に位置、南部は大西洋のギニア湾に面する連邦制共和国でイギリス連邦加盟国。面積が日本の約2.5倍、人口が2億96万人(2019年)でアフリカ最大、世界でも第7位。首都がAbuja、最大の都市がLagos、と改めての認識である。1960年に独立、1971年に中国と国交樹立。
2000年代初めに広州市内にアフリカ人のコミュニティができ始め、2005年に大統領訪中で関係が急接近。2014年に中国が高速道路建設に131億ドルを投資、という経過のところに新型コロナウイルスによる大規模黒人差別事件が勃発、以下の内容に入っていく。ナイジェリアへの援助で、「中国人酋長」という恩返しの厚遇が見られているとのこと。石油の利権が狙いの中国のアプローチであり、差別感情の火種が今後に向け気になるところである。


第二章 vs.ナイジェリア
 差別と利権と「中国人酋長」

◇大規模黒人差別事件、勃発
・2020年4月上旬、広東省広州市内ではアフリカ系の外国人が新型コロナウイルスを媒介しているとする偏見が強まっていた
 →広東省では2020年3月以来、海外からの入国者に対してコロナ感染予防を目的とする強制隔離措置
 →4月7日には、広州市内のレストラン関係者のナイジェリア人5人の新型コロナウイルス感染が判明
・結果、広州市内で表面化したのが、アフリカ系外国人に対する露骨な差別的待遇
 →さらには、広州市の防疫職員がナイジェリア人男性3人を無理矢理拘束し、パスポートを没収する動画も
  →こちらは外交問題に
 →アフリカの約20ヵ国が中国政府に抗議を申し入れる共同書簡を発表することと
・ナイジェリア国内では、中国資本の工場が焼き討ちされる事件も
 →新型コロナウイルスの問題が同国内の対中感情に大きな影を投げかけた
・ナイジェリアは、2050年には、インドと中国に次いで世界第3位の人口を擁する国に躍り出る見込み
 →地域大国として、「アフリカの巨人」の異名も

◇ビアフラ紛争からチャイナ・ビジネスへ
・広州は、中国で最大のアフリカ人コミュニティを擁し、「チョコレート・シティ」「東洋のブルックリン」などの異名も
 →広州市内でアフリカ系の住民が特に多い地域、最も有名なのは地下鉄五号線の小北駅付近
・かつて私が2017年2月に現地を取材した際、アフリカ各国の人たちが小北地区に集まっているのを確認できた
 →小北地区から直線距離で800mほど離れた場所、瑶台西街も、もう1つのアフリカ・スポット
・2019年12月25日時点、広州市内の在住外国人総数8万6475人のうち、アフリカ系住民は1万3652人
 →複数の欧米メディアは広州のアフリカ人口を5万〜10万人と試算
 →彼らの多くはビジネスマン、中国で電化製品や電子部品・衣料品などを買い込んで自国で売っているよう
・私が現地取材をしていた際に聞いた話
 →広州のアフリカ系外国人全体のなかでも人数が突出して多いのがナイジェリア人
  →全体の約半数
・ナイジェリア人は日本においても、在日外国人のアフリカ各国出身者のうち国籍別で最多
 →著名な例:タレントのボビー・オロゴン、プロ野球のオコエ瑠偉
・大国ナイジェリアでは、北部に住みイスラム教徒が多いハウサ=フラニ族、南西部に住むヨルバ族、南東部に住みキリスト教徒が多いイボ族の3つの民族が有力
 →ハウサ族には軍人が多く、現在のブハリ大統領も
 →対してイボ族は「黒いユダヤ人」の異名を持つ商才豊かな民
  →近年になってからもビアフラ独立運動を活発に行うなど、現在もハウサ族中心の連邦政府とは折り合いが悪い
  →積極的に海外に進出、中国とのビジネスで一攫千金を夢見ている

◇たび重なる援助と借款ラッシュ
・ナイジェリアは、政情の混乱と内戦の影響から、中国との国交樹立はビアフラ紛争が終結した後の1971年までずれ込み
 →21世紀に入るころから中国が対アフリカ外交を再強化
 →産油国であるナイジェリアに対しても熱心に接近
・両国関係は2005年3月のオバサンジョ大統領(当時)の訪中を契機に急接近
 →中国の国営石油会社や通信大手のZTE(中興通訊)の工場進出が、この年に決定
 →2014年にはナイジェリアの高速鉄道建設に131億ドル(約1.4兆円)を投資
・中国からのたび重なる援助と借款ラッシュ
 →ナイジェリアは2017年、ついに台湾の出先機関から「中華民国」の名前を外させた

◇中国人青年、ナイジェリアの「酋長」になる
・中国とナイジェリアとの接近を象徴する興味深いエピソード
 →2018年12月30日、新華社発:
  27才の中国人の若者・李満虎(リイマンフウ)が、ナイジェリア南部の地元部族の「酋長」に
 →酋長はとても尊敬される存在
 →現地では通常、小さなトラブルの解決は公的機関ではなく酋長の仕事
・李満虎は、中国の国有企業、中地海外集団(CGCOC Group)ナイジェリア公司で働く入社3年目の社員
 →もっとも「酋長」といっても儀礼的なもの
 →CGCOCの建設が現地に多大な経済的恩恵をもたらし、ナイジェリア政府が中国人酋長の誕生を要請した模様

◇オバサンジョ政権に食い込んだナイジェリア華人リーダー
・ほかにも、近年、ナイジェリアにおける中国人の「酋長」就任のニュースがいくつか
 →所属先の中国企業や中国政府に対する現地社会からの贈り物という側面が強いのだろう
・一連のナイジェリア華人酋長たちの草分け
 →ナイジェリア在住歴が40年以上、上海出身の胡介国(フウジエグオ)という人物
  →父親がナイジェリアで綿紡績事業を営む在アフリカ華僑
  →文化大革命直後の1978年に現地へ渡航
  →1997年に同国最大の都市、ラゴス市内にゴールデンゲートホテル(金門大酒店)を作った
・中国が経済発展とともに中国企業の海外進出政策「走出去」を打ち出し
 →胡介国の重要性は上昇
 →中国政府からも「愛国」的な海外華人として認められ、統一戦線工作に関わる要職を与えられるように
・胡介国の事業も成功
 →現在は金門グループとして、多方面に事業を展開中
・そんな彼が中国人としては最初とされる「酋長」に任命されたのは2001年のこと
 →オバサンジョ大統領(当時)の経済顧問として政府中枢に食い込み
 →中国メディアによると、現在の胡介国は500人の屈強な武装コマンドー(経費はナイジェリア政府が負担)に護衛されてラゴス市内の豪邸で暮らしているとされる

◇「広州 黒人」で検索すると……
・話を冒頭の広州における差別問題に
 →広州の街のナイジェリア人コミュニティは、かねてから地域住民や地元公安当局との摩擦をしばしば起こしてきた
・暴動や感染症の強制検査、公安局との摩擦といった一連のトラブル
 →アフリカ系の人々に対する中国人の根強い差別感情や不信感も大きく関係
・中国では公共の場においても、欧米圏や日本では間違いなく自粛の対象になるような、露骨な人種差別的な言動がなされるケースが少なくない
 →こうした傾向はネット空間ではより顕著
→ヘイトスピーチと見なしてよさそうな文言が大量に引っかかる
・国内のさまざまな問題を解決しきらないままアフリカ各国にカネをばらまく中国政府の政策
 →庶民から評判が悪く、忌み嫌われている
・広州市内でアフリカ系外国人のみを対象に実施された新型コロナウイルスの強制検査と隔離
 →中国人の差別感情や偏見ゆえに、現場でより過激な運用がなされてしまった結果
 →石油利権をめぐる援助攻勢という、中国側の国策によって生み出されたナイジェリアとの友好関係に、小さくないヒビ

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