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半導体の不足の一方、販売高の非常に積極的な読み、先行き一層注視

新型コロナウイルスによる累計感染者数は土曜21日午前時点、世界全体で2億1053万人に達し、1週間前から約439万人増と27万人減である。我が国では緊急事態が13都府県に拡大、9月12日までの実施を政府が決めている。諸々対策が施される中、自動車用半導体の不足が来年まで尾を引く見方が依然あらわされる一方、半導体販売高の現下のデータそして今後の読みが力強くなっている。4-6月販売高は、メモリ半導体が大きく引っ張って、2018年のスーパーサイクル再来を感じさせている。半導体年間販売高が、今年$500Bそして来年$600B突破の見方にもつながる所以であり、増勢が今後どうなっていくか、関連する情勢を踏まえて一層の注視を要するところである。

≪市況そして需給のいろいろな見方≫

DRAMのASPについて、先週あらわされた見方の1つである。

◇DRAM ASPs steadying-TrendForce: DRAM ASPs are stabilizing for second half (8月11日付け Electronics Weekly (UK))
→PC DRAMsの第三四半期の間の契約価格が、第二四半期の価格に比べて3% to 8%上昇、第一四半期から第二四半期にかけてより低下の旨。
TrendForce発で、業界筋はconsumer electronicsにとって鈍化の時節が始まる第四四半期に横ばいか僅かに下がるとしている旨。
※PC DRAM価格の前四半期比変化

1Q21
2Q21
3Q21
4Q21
約5%増
23-28%増
3-8%増
0-5%減

我が国の株価にも、以下の敏感な反応である。

◇Japanese shares slip as chip stocks take hit from outlook worries (8月12日付け Reuters)
→供給が戻ってきていて最善の日々は終わるかもしれない懸念を半導体関連株が受けて、日本の株価が木曜12日下落の旨。

◇<東証>半導体関連が安い 米マイクロン株急落が重荷 (8月13日付け 日経 電子版 13:18)
→半導体関連株が安い。東エレクは午前に一時、前日比1090円(2.4%)安の4万4250円まで下落。米株式市場で、主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が12日まで6日続落したのを背景に、国内の半導体関連株に売りが出ている旨。半導体メモリの米マイクロン・テクノロジーの株価が、証券会社による投資判断の引き下げを受けて前日に急落したことなどが投資家心理の重荷となった旨。

以下、基本的に続く時間順で、週末から今週の関連する動きを取り出している。

我が国の半導体強化に向けた自民党議員連盟の取り組みである。

◇半導体産業――自民・半導体戦略推進議員連盟事務局長関芳弘氏、開発支援へ基金創設を(政策を聞く) (8月14日付け 日経)
→国内の大手自動車メーカーが生産停止を迫られるなど半導体不足が続いた。巨額の研究開発資金を投じて日本企業の製造技術の強化を支援したり、優位に立つ台湾企業と協力を深めたりして体制を増強する必要がある。・・・
米欧や中国は幅広い産業に影響する半導体を国家産業に位置づけ、兆円単位で投資する。議連として2021年度の補正予算編成に向けて予算確保を訴えていく。

半導体不足是正に向けた米国における1つの論調である。

◇How to fix the semiconductor chip shortage (it's more than manufacturing)-Viewpoint: More fabs won't stop chip shortages (8月15日付け The Hill)
→さらなるウェーハfab拠点は自動車などの製品に向けたsupply chain問題のいくつかに対応しようが、米国半導体業界のleadershipを取り戻すためにアメリカの特許システムでさらに行わなければならないことがある旨。ビジネスおよび投資のリーダーは不利な法的決定に合わせられると繰り返し言うが、予想できない風に変わり続ける不安定なものは守れない旨。

中国の半導体業界の自立化に向かう時間軸の見方である。

◇China approaching chipset self-sufficiency in the battle for semiconductor innovation-China makes progress to semiconductor self-sufficiency-We spoke to Analysys Mason's research director, Caroline Gabriel, about the ongoing semiconductor supply crisis and how China's technical acceleration is affecting the market (8月16日付け Total Telecom Magazine (U.K.))
→Analysys Masonのresearch director、Caroline Gabriel氏。中国の半導体メーカーが、2021年に28-nanometer features搭載、2022年に14nmプロセッサにおいてmicrochips製造で自給自足になる旨。

中国の7月の半導体生産outputが、最高を記録している。生産増強の取り組みが行われる一方、自動車生産にはインパクトがあらわれている。

◇China's semiconductor output hits record high in July as new capacity added to meet strong demand (8月16日付け South China Morning Post (Hong Kong))
→中国・National Bureau of Statistics発。今年1-7月において中国のIC outputが203.6 billionに達し、前年同期比47.3%増。中国の7月の自動車生産が前年同月比15.8%減、半導体供給問題が1つにある旨。

◇中国の半導体生産量が2021年7月に過去最高を記録、需要に対応して生産ライン強化&企業買収 (8月17日付け Gigazine)
→世界的な半導体不足の中で、中国の2021年上半期における半導体の生産量が、前年同期比47.3%増の2036億ユニットに達したと、中国経済紙のSouth China Morning Postが報じている旨。一方で中国の2021年7月における自動車生産台数は、チップ供給の問題もあり、前年同期比で15.8%減となったことも。
半導体需要に応えて半導体の生産量を上げるため、中国の半導体企業はさまざまな取組みを行っている旨。例えば、中国の半導体ファブ・半?体有限公司(Huaian Imaging Device Manufacturer Corporation)は2021年5月30日に破産したが、2021年7月に16億6000万人民元(約280億円)で、国有企業であるRongxin Semiconductorに売却された旨。アナリストによれば、Rongxin Semiconductorは破産によって中断した半導体製造プロジェクトを再開する可能性があるとのこと。

台湾のMOSFETサプライヤも、需要急増でファウンドリーに支援のアプローチである。

◇Taiwan MOSFET suppliers seek foundry support for increasing orders-MOSFET vendors want to boost orders to their foundries (8月17日付け DIGITIMES)
→Advanced Power Electronics, Excelliance MOS, Niko SemiconductorおよびSinopower Semiconductorなど台湾のMOSFET半導体サプライヤが、急増する受注遂行に向け追加のcapacity支援を求めてファウンドリーパートナーに最近アプローチの旨。

小型部類のICsの不足が、PC生産を混乱させている。

◇Small IC shortage disrupting PC supply-Sources: PC supply chain lacks small ICs, PMICs, logic ICs (8月17日付け DIGITIMES)
→業界筋発。power management半導体およびlogic ICsに加えてsmall ICsの不足が、しつこく逼迫するファウンドリーcapacityの結果としてPC組立メーカーおよびベンダーでの生産を混乱させている旨。

半導体製造装置メーカーは、空前の活況、次の通りである。

◇東エレク、純利益5割増、今期上方修正、年間配当408円上げ、半導体装置、空前の活況、国内外9社、合計で最高益 (8月17日付け 日経)
→世界の半導体製造装置メーカーの業績が急拡大している旨。直近四半期では、16日発表した東京エレクトロンなど主要9社の全社が前年同期比で増益となった旨。合計の純利益は過去最高。半導体需要が急増する中、半導体製造の高性能化なども重なり、顧客の半導体メーカーの投資意欲は一段と強まっている旨。東エレクは同日、2022年3月期の連結純利益予想と配当計画を上方修正した旨。

証券会社が少しでもマイナスの分析をあらわすと、即時敏感な反応があらわれる以下の動きである。

◇モルガンスタンレー「メモリ半導体市場に冬の到来」を予測 (8月18日付け コリア・エレクトロニクス)
→モルガン・スタンレーは11日(現地時刻)、「メモリに冬来たる(Memory-Winter is coming)」というタイトルの報告書を発表、メモリ半導体部門に冬が近づいている、という内容を韓国釜山日報が報じた旨。報告書はSKハイニックスに対する投資意見を「オーバーウェイト(比重拡大)」から「アンダーウェイト(比重縮小)」に下方修正し、目標株価を既存の15万6000ウォン(約1万4715円)から8万ウォン(約7546円)に下げた旨。
もちろん、外資系証券会社がいずれも否定的なわけではない旨。ゴールドマンサックスはサムスン電子とSKハイニックスの目標株価をそれぞれ10万7000ウォン(約1万93円)、17万7000ウォン(約1万6696円)で維持した旨。

◇Macronix says demand surprisingly strong-Macronix: NOR flash demand will be robust through 2022 (8月18日付け The Taipei Times (Taiwan))
→世界最大のNORフラッシュメモリ半導体のサプライヤ、Macronix International Co(旺宏)(新竹)が、需要は来年まで驚くほど力強く、年間契約を求める顧客もある、とMorgan Stanleyのメモリ株についての弱気な見方を却下の旨。

台湾の主要ITの売上げに7月の急ブレーキ、部品不足が謳われている。

◇台湾IT、7月急ブレーキ、大手6%増収どまり、部品が不足 (8月18日付け 日経産業)
→世界に多くのIT製品を供給する台湾企業の勢いが鈍ってきた旨。日本経済新聞社が主要IT、19社の7月の売上高を調べたところ、合計額の伸び率が前年同月比で6%増と小幅な伸びにとどまった旨。9カ月ぶりの低成長。旺盛な需要が続くが部品不足で製品が大量に作れず、出荷を伸ばせない状況となっている旨。

この情勢を受けてか、台湾のFoxconnも半導体に足を踏み入れようとしている。

◇Foxconn Enters Chip Production with Macronix Deal (8月19日付け EE Times)
→Foxconnが、グローバルな半導体の不足から生産休止に追い込まれている自動車メーカーに対する競争上の優位性を獲得、台湾のMacronix Internationalからの6-インチシリコンウェーハ工場&装置のNT$2.52 billion($90 million)での買収を最近発表の旨。

インテルとTSMCが最新工場建設を予定するArizona州の水不足の状況が、次の通りである。

◇Taiwan Semiconductor Manufacturing Co could face future water shortages in Arizona-Drought declared in Ariz.; new TSMC fab may be affected -TSMC, Intel both planning to build new fabs in state as drought worsens (8月19日付け Taiwan News)
→世界最大手半導体メーカーが、Arizonaでのプレゼンスを大きく高める備え、アメリカ西南部における数10年で最悪の干ばつの1つが今後のoperationsに影響を与える可能性の旨。史上初、米国政府当局が月曜16日、Colorado Riverについての水不足を宣言の旨。水の供給削減が、2022年1月1日からCalifornia, Nevada, およびArizona並びにMexicoで始まる旨。

トヨタ自動車が、半導体不足とコロナ拡大から、9月の世界生産を大幅に減らしている。

◇トヨタ、9月の世界生産4割減へ、半導体不足とコロナ拡大 (8月19日付け 日経 電子版 14:35)
→トヨタ自動車は9月の世界生産を計画比で4割減らす旨。7月下旬に策定した最新の計画では90万台弱の生産を見込んでいたが、これを50万台強に引き下げる旨。世界的な半導体不足に加え、東南アジアで新型コロナウイルスの感染拡大が深刻になり、部品調達が停滞していることが響く旨。

増産に突進する半導体各社を反映、直近四半期の棚卸し資産が過去最高に達している。

◇半導体大手、増産急ピッチ、世界9社で棚卸し資産最高−設備増強、過熱に懸念 (8月20日付け 日経 電子版 05:06)
→世界の半導体メーカーが供給不足の解消へ増産準備を急ピッチで進めている旨。自動車業界などで深刻な不足に陥っており、19日にはトヨタ自動車が半導体を含む部品不足を理由に大幅な生産調整を発表した旨。半導体大手は需要に応じるため原材料などの積み増しに動いており、大手9社が抱える直近四半期の棚卸し資産は過去最高に達した旨。ただ顧客が必要量以上の発注を出す動きもあり、実需が読みづらくなっている旨。

日本製半導体製造装置の7月の販売高が、6月に続いて前月比減少、以下の理由であるが、今後に注目するところである。

◇7月の半導体製造装置販売高、3.5%減2407億円、SEAJ (8月20日付け 日刊工業)
→日本半導体製造装置協会(SEAJ)が19日発表した日本製半導体製造装置の7月の販売高(速報値、5-7月の3カ月平均)が前月比3.5%減の2407億4300万円で、2カ月連続のマイナスとなった旨。半導体市場の活況を背景に、例年より特に需要が旺盛だった4月単月の販売高を含まなくなったことが要因とみられる旨。ただ前年同月比では28.1%増となり、引き続き高水準を維持した旨。

この週末でも、自動車用半導体の不足の先行きが、以下の通りあらわされている。

◇Auto chip shortages may extend into Q2 2022-IHS Markit: Auto IC shortages might last into Q2 2022-The automotive semiconductor shortages are forecast to exten into Q1 2022 and possibly into Q2, says IHS Markit. (8月20日付け Electronics Weekly (UK))
→IHS Markitの予測。車載製造向け重要コンポーネントの世界的不足が、来年始めの3ヶ月も続き、たぶんに第二四半期にも及ぶ旨。

以上のような非常に旺盛な需要の一方で見られる半導体の不足という現状であるが、現下の市場データおよび今後の予測が各社からアップデートされている。

WSTSによる予測更新が、以下の通りである。2021年の半導体販売高について、春季予測の19.7%増を25%増としており、2022年は$600 billionを上回る見方となっている。2021年そして2022年と相次いで大台突破と、まさに空前の急増、急拡大ぶりとなる。

◇Semiconductor market to grow 25% in 2021, says WSTS (8月18日付け DIGITIMES)
→World Semiconductor Trade Statistics(WSTS)発。2021年の世界半導体市場が25%増の見込み、前回は19.7%増と見ていた旨。

◇Semiconductor market to expand 25 pct in 2021, grow further in 2022: WSTS-WSTS: World chip market will expand to $551B in 2021 (8月18日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→World Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationがこのほど予測、今年のグローバルmicrochip市場が25.1%増の$551 billion、前回予測、$527.2 billionを上回り、大方はメモリ半導体市場の力強さによる旨。2022年については、WSTSは該半導体市場が10.1%増の$606 billionと見ている旨。

◇半導体業況鈍化の懸念にも…WSTS、今年・来年の成長率を上方修正 (8月19日付け コリア・エレクトロニクス)
→メモリ半導体の業況が年末から鈍化するという懸念が出ている中、グローバル半導体需給動向調査機関が今年及び来年の半導体成長率を上方修正した旨。18日、業界によると、世界半導体市場統計機関(WSTS)は、最近発表した報告書を通じて、今年の半導体市場の成長率を既存の19.7%から25.1%に上方修正した旨。18日聯合ニュースが報じた旨。
WSTSは3月の報告書で、今年の半導体成長率を10.9%と見通していたが、今年6月には19.7%に上方修正し、最近の第2四半期業績を反映して追加調整した旨。
サムスン電子やSKハイニックスなど、国内半導体企業各社が主導するメモリ半導体の予想売上の伸び率は、従来の31.7%から37.1%へと上方修正された旨。今年のメモリ半導体予想売上は1千611億1千万ドル(189兆7千億ウォン、約17兆6859億円)で、半導体市場全体の29.2%を占めた旨。

Semiconductor Intelligence(SI)の予測、および第二四半期の売上高ランキングが以下の通りである。メモリが引っ張る2018年を彷彿とさせる内容であり、Samsungが首位を奪還している。

◇SI forecasts 26% semi growth for 2021-SI forecasts 15% gain in 2022 IC sales -The semiconductor market showed powerful growth in 2Q 2021, up 8.3% from 1Q 2021 and up 29% from a year earlier, according to WSTS. (8月19日付け Electronics Weekly (UK))
→Semiconductor Intelligence(SI)の予測。2021年の半導体市場が26%、2022年が15%の伸び、一桁半ばの長期的成長率と比べると健全。2021年の市場の勢いが2022年に持ち越される旨。
Semiconductor Intelligence(SI)による第二四半期半導体売上げ順位:

1 Samsung SC
$20.3 Billion
前四半期比 19.6%
2 Intel
19.6
-0.2
3 SK Hynix
9.2
21.5
4 Miron Tehnology
7.4
19.0
5 Broadcom
6.8
2.1
6 Qualcomm (IC)
6.5
3.0
7 Nvidia
6.3
11.3
8 Texas Instruments
4.6
6.8
9 Mediatek
4.5
16.3
10 AMD
3.9
11.8
11 Infineon Tehnologies
3.3
0.8
12 STMicroelectronis
3.0
-0.8
13 Kioxia
3.0
11.8
14 NXP Semiconductors
2.6
1.1

各社の2021年の伸長の見方:
 WSTS  25%増 2021年春季予測の最近の改定
 IC Insights  24%増 6月時点
 Gartner    22%増 6月時点
 SI      26%増 6月時点

IC Insightsから第二四半期のランキングが、以下の通りである。ここではファウンドリーも含まっているが、メモリが引っ張る内容に変わりなしである。

◇Samsung Passes Intel to Become World's Largest Semi Supplier in 2Q21-Top-10 semiconductor suppliers post 10% jump in 2Q21/1Q21 sales. (8月19日付け IC Insights)
→IC InsightsのAugust Update to the 2021 McClean Reportから2021年第
二四半期の半導体販売高ランキング:

1 Samsung
$20,297 Million
前四半期比 19%
2 Intel
19,304
3
3 TSMC
13,315
3
4 SK Hynix
9,213
21
5 Miron Tehnology
7,681
16
6 Qualcomm
6,472
3
7 Nvidia
5,540
14
8 Broadcom
4,890
1
9 Mediatek
4,496
17
10 Texas Instruments
4,299
7

◇Samsung re-takes No.1 spot-Samsung regains top spot in semiconductor sales (8月20日付け Electronics Weekly (UK))
→IC InsightsのAugust update to The McClean Report。第二四半期販売高でSamsungがIntelを抜いて首位に。トップ10サプライヤは、米国6社、韓国2社そして台湾2社。ファブレスが4社(Qualcomm, Nvidia, Broadcom, およびMediaTek)および専業ファウンドリー1社(TSMC)。

市場の見方そしてデータ更新にまさに暇なし、のここ当面である。


コロナ対応のなかなか収まらない状況推移に対して、直面する事態への警戒感を伴った舵取りが各国それぞれに引き続き行われている世界の概況について、以下日々の政治経済の動きからの抽出であり、発信日で示している。

□8月15日(日)

GDP成長率について、米国が中国をしばらく上回りそうな現状である。

◇U.S. Economy Likely to Outgrow China's Due to Contrast in Pandemic Responses -US GDP growth may continue to beat China's in near term -A faster short-term U.S. expansion would delay the day when China's economy overtakes America's in size (The Wall Street Journal)
→米国のGDP成長が第二四半期に中国を上回り、それぞれ12.2%および7.9%の伸び、エコノミストはこの傾向が少なくともさらに数四半期続く可能性、としている旨。1990年以来のこと、米国がある期間続けて中国の成長を上回る可能性の旨。

□8月16日(月)

我が国のGDP、2四半期ぶりプラス成長である。

◇4〜6月GDP、実質年率1.3%増、2四半期ぶりプラス成長 (日経 電子版 09:49)
→内閣府が16日発表した2021年4〜6月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.3%増、年率換算で1.3%増。プラス成長は2四半期ぶり。企業が手控えてきた設備投資が持ち直しプラスに転じたことなどが寄与したが、新型コロナウイルスの感染拡大で成長率全体は低めだった旨。

□8月17日(火)

先週からの史上最高値からスタートしたが、3日連続して下げとなり、最後に少し戻した今週の米国株式市場である。

◇NYダウ5日連続の最高値、110ドル高、小売り決算に期待 (日経 電子版 05:47)
→16日の米株式市場でダウ工業株30種平均は5日続伸し、前週末比110ドル02セント(0.3%)高の3万5625ドル40セントで終えた旨。中国の景気減速懸念やアフガニスタンでの地政学リスクの高まりから売りが先行した旨。ただ、値ごろ感などからヘルスケア関連株が物色されたほか、今週に相次ぐ小売りの決算発表に期待した買いも入り、ダウ平均は午後に上げに転じた旨。この日の高値圏で取引を終えた旨。

□8月18日(水)

感染拡大が深刻化、緊急事態宣言が拡大された我が国である。

◇緊急事態13都府県に拡大、政府決定、9月12日まで-変異型対策を強化 首相「最優先は医療体制の構築」 (日経 電子版 05:28)
→政府は17日、新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言に兵庫、福岡など7府県を追加すると決めた旨。期間は8月20日から9月12日までで、8月31日が期限の東京など6都府県の宣言も延長する旨。感染力の強い変異ウイルスのインド型(デルタ型)の拡大を受けた感染防止対策を強化し、百貨店など大型商業施設への入場を制限する旨。

◇NYダウ6日ぶり反落、282ドル安、低調な小売売上高嫌気 (日経 電子版 05:35)
→17日の米株式市場でダウ工業株30種平均は6営業日ぶりに反落し、前日比282ドル12セント(0.8%)安の3万5343ドル28セントで終えた旨。朝方発表の7月の米小売売上高が市場予想より減少した旨。米景気回復の鈍化が懸念され、小売り株や景気敏感株を中心に売られた旨。ダウ平均は前日までに連日で過去最高値を更新しており、高値警戒感の売りも出やすかった旨。

□8月19日(木)

◇NYダウ382ドル安、FOMC議事要旨公表、下げ幅広げる (日経 電子版 05:39)
→18日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続落、前日比382ドル59セント(1.1%)安の3万4960ドル69セントと2週間ぶりに心理的節目の3万5000ドルを下回って終えた旨。午後に公表された7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨で年内のテーパリング(量的緩和の縮小)開始が適当との見解が大勢を占め、金融緩和政策の縮小を警戒した売りが広がった旨。

□8月20日(金)

◇NYダウ続落66ドル安、量的緩和縮小への警戒続く (日経 電子版 05:49)
→19日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続落、前日比66ドル57セント(0.2%)安の3万4894ドル12セントで終えた旨。米連邦準備理事会(FRB)がテーパリング(量的緩和の縮小)を前倒しし、景気を冷やしかねないとの警戒がくすぶった旨。景気敏感株への売りが目立った旨。もっとも、ハイテク株やディフェンシブ株は買いが優勢で、ダウ平均は上昇に転じる場面もあった旨。

□8月21日(土)

◇NYダウ反発、225ドル高、ハイテク株が相場押し上げ (日経 電子版 06:00)
→20日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4営業日ぶりに反発し、前日比225ドル96セント(0.6%)高の3万5120ドル08セントで終えた旨。ソフトウエアのマイクロソフトなどハイテク株が買われ、ダウ平均を押し上げた旨。前日まで下げが目立っていた消費関連株や景気敏感株の一部にも押し目買いが入った旨。


≪市場実態PickUp≫

【インテル関連】

上記の通り、直近四半期の販売高ではSamsungに抜かれたインテル。いろいろ挽回であるが、製造強化に向けたCEO、Pat Gelsinger氏の動きから。

◇Intel CEO Pitches Pricey Chip Plants to Officials at Home and Abroad -U.S. semiconductor maker's appeal for subsidies plays on national security fears during chip shortage; ‘Never let a good crisis go to waste’ (8月14日付け The Wall Street Journal)

◇Gelsinger bangs the drum for governments to invest in chips-Intel CEO talks national security issues, IC funding -Intel CEO Pat Gelsinger is on a mission to get governments to invest in chip manufacturing, reports the Wall Street Journal (8月16日付け Electronics Weekly (UK))
→IntelのCEO、Pat Gelsinger氏が、ウェーハfab拠点建設のさらなる政府出資を督促、米国などの国々に向けて半導体製造に手を出す理由として国家セキュリティを挙げている旨。Gelsinger氏は、Samsung ElectronicsおよびTSMCがmicrochipsをつくる世界市場を席捲と主張の旨。

◇Seeking Subsidies from Governments to Build Plants:-Intel Trying to Hold Samsung Electronics and TSMC in Check (8月16日付け BusinessKorea)
→IntelのCEO、Patrick Gelsinger氏が、助成を求めて米国など複数の政府に働きかけの旨。

インテルはやはり新技術&新製品に注目。PC gaming GPU市場への参入である。

◇Intel's Arc GPUs will compete with GeForce and Radeon in early 2022-Intel to launch its Arc GPUs in Q1 2022-"Alchemist" will be Intel's first serious dedicated gaming GPU. (8月16日付け Ars Technica)
→Intelのgraphics processing units(GPUs)、Arcラインが、来年の第一四半期の間に市場に登場、たぶんにグラフィックスカード事業におけるAdvanced Micro Devices(AMD)およびNvidiaとの競合が高まっていく旨。
該Arc-ベース"Alchemist" GPUsは、desktop PCsおよびnotebook computersでのgaming応用に向けた構成の旨。

◇Intel Video Cards Get a Brand Name: Arc, Starting with "Alchemist" in Q1 2022 (8月16日付け AnandTech)

◇Intel enters the PC gaming GPU battle with Arc-Arc is the new brand for Intel’s gaming GPUs (8月16日付け The Verge)

インテルのvirtualイベント、Architecture Day 2021から、非常に多彩な興味深い発表、およびCEOのPat Gelsinger氏注目のコメントである。

◇Intel Brings Chiplets to Data Center CPUs (8月19日付け EE Times)
→Intel社が、Architecture Dayイベントにて、4つのchipletsから成る第4世代Xeonプロセッサ, コード名Sapphire Rapidsを披露の旨。Sapphire Rapids CPUsは、IntelのEMIB(embedded multi-die interconnect bridge)技術によりつながる4つのdiesに分かれる旨。

◇Intel opens up vault of new chip architectures, including Performance-core, Alder Lake (8月19日付け FierceElectronics)
→Intelが木曜19日、新しい半導体アーキテクチャーを巡らせて、1世代で最大の移行とあらわす次期CPUs, GPUs, およびIPUs(Infrastructure Processing Units)に向けた目が回る発表一式の旨。IntelのArchitecture Day 2021はvirtually開催、幾人かのIntel architectsを盛り込み、Raja Koduri氏(senior vice president and general manager of the Accelerated Computing Systems and Graphics[AXG] Group)は、半導体アーキテクチャーは"与えられたエンジンに向けて最善のトランジスタを調合する"1種の"ハードウェアとソフトウェアの錬金術"と告白の旨。

◇Intel details mixed-source chip strategy and TSMC partnerships-Intel CEO makes big changes, wants to buy chip firms (8月19日付け Reuters)
→Intel Architecture Day 2021からのたくさんのニュース、Intelの半導体設計の中でTSMCのtilesを用いるTSMCとの連携、および次期"Alder Lake" & "Sapphire Rapids"プロセッサの発表など。「業界では統合があるだろう。」と、CEOのPat Gelsinger氏。加えて、「その流れは続き、我々はconsolidatorになっていくと思う。

◇Intel takes the lid off its biggest chip designs for the coming years (8月19日付け VentureBeat)

◇Intel CEO Calls Chip Maker ‘Willing Buyer’ as Semiconductor Industry Consolidates -The economics of the industry make deals among chip makers likely, Pat Gelsinger says (8月19日付け The Wall Street Journal)

【Samsung関連】

こんどは第二四半期販売高で首位になっているSamsungに関連する現下の動きから。最後の3-nmの取り組みは、先行するTSMCとの距離感はじめ注目である。

◇Samsung Has Its Own AI-Designed Chip. Soon, Others Will Too-Samsung used AI for chip design; other IC firms follow -Synopsys, which sells software for designing semiconductors to dozens of companies, is adding artificial intelligence to its arsenal. (8月13日付け Wired)
→Samsung Electronicsが、artificial intelligence(AI)技術搭載microchips設計に向けてSynopsysからの新しいソフトウェアtoolsを使用の旨。「ここにあるのがAI搭載の実際の商用プロセッサ設計の最初のもの」と、Synopsysのchairman and co-CEO、Aart de Geus氏。

◇Samsung Display's low-power OLED panels inside latest foldable phone -New foldable phone has low-power OLEDs (8月16日付け The Korea Herald (Seoul))
→Samsung Displayが、Samsung Galaxy Z Fold3折り畳みスマートフォンに向けてorganic light-emitting diode(OLED)パネルを供給、該低電力Eco2 OLEDディスプレイ技術によりpowerが25%ほど減らせる旨。

◇Samsung unlikely to move 3nm GAA process to volume production until 2023-DigiTimes Research: Samsung won't make 3nm GAA before 2023 (8月18日付け DIGITIMES Research)
→Digitimes Research発。Samsung Electronicsが、3nm gate-all-around(GAA) FET技術を量産にもっていくのは2023年以降の様相、最先端半導体競争では不利に置かれる可能性の旨。

【TSMC】

インテル、Samsungときて、やはりTSMCの動きに目が行くところ。Arizona工場についていろいろ多難と感じるとともに、Apple向けが売上げの2割、そして中国の巨大IT規制強化から東アジアでの時価総額首位、と認識の更新である。

◇TSMC's new US chip plant facing delay over supplier's boardroom shakeup-JASIC's woes may delay TSMC's Ariz. wafer fab-The semiconductor shortage drags on (8月16日付け TechRadar)
→TSMC向けにクリーンルーム装置を扱うJiangxi Hantang System Integration Co.(JASIC)において、JASIC創業者の2015年死去以降boardroomの揉め事が続いている旨。TSMCのArizonaにおけるウェーハfab拠点が、JASICでのcorporate闘争が続いて遅れに直面する可能性の旨。

◇Apple orders account for over 20% of TSMC total wafer revenue-Sources: 20% of TSMC's wafer revenue comes from Apple (8月16日付け DIGITIMES)
→業界筋発。TSMCがAppleのiPhone, iPadおよびApple Watch製品向けにつくる半導体が、TSMCによるウェーハ売上げの20%を上回る比率の旨。AppleはTSMCの最大の顧客であり、Advanced Micro Devices(AMD)が続く、と特に言及の旨。

◇台湾TSMCが時価総額首位に、東アジアで (8月19日付け 日経)
→半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が18日までに時価総額で東アジアトップに立った旨。中国当局による規制強化懸念を背景に、中国ネット大手2強のアリババ集団と騰訊控股(テンセント)の株安に歯止めがかからず、棚ぼた的に首位に躍り出た旨。

【M&A関連】

英国・Newport Wafer Fabの中国資本傘下、Nexperia(オランダ)による買収の件、英国政府の待った!がかかったの一方で、すでに取引無事終了との報道が以下の通り見られている。

◇U.S. chip start-up says its work with UK's biggest plant came to a ‘screeching halt’ after Chinese takeover-Ideal Semiconductor cut off orders to Newport Wafer Fab (8月13日付け CNBC)
→*Ideal Semiconductor(Pennsylvania)がCNBCに対し、Newport Wafer Fab(Wales)がWingtech Technologies(上海)が100%所有するオランダの会社、Nexperiaに買収されるまでシリコンウェーハ処理をそこで行っていた旨。
 *Ideal SemiconductorのCEO, Mark Granahan氏は、該処理が"突然中止され"ており、同氏の会社は今や行ってもらえるところを見い出すよう"奔走"しなければならない旨。
 *Newport Wafer Fabの売却は当初英国Business Secretary、Kwasi Kwarteng氏が承認したが、Boris Johnson首相が英国national security advisor, Stephen Lovegrove氏に見直しを命令、判断が向こう数週間で見込まれる旨。

◇UK's Newport Wafer Fab now under Chinese ownership-Government's promised review hasn't emerged, but Wingtech and Companies House say the deal is done (8月17日付け The Register)
→物議をかもしたNewport Wafer Fabの中国スマートフォン組立関連、Wingtech Technologiesへの売却が、無事終了の旨。イギリス会社登記所が、Wingtech傘下のオランダ法人、Nexperiaへの株式譲渡をあらわす確認ステートメントを掲示の旨。月曜16日にWingtechが、該取引の完了をShanghai Stock Exchangeに申告の旨。

インテルによる買収の可能性の噂が流れたGlobalFoundriesであるが、IPO filingに向かうとのこと。何もなかった模様である。

◇EXCLUSIVE Chipmaker GlobalFoundries files confidentially for U.S. IPO -sources-Report: GlobalFoundries files IPO paperwork with SEC (8月18日付け Reuters)
→本件事情通引用、Reuters発。GlobalFoundriesが、米国でのinitial public offering(IPO)に向けてSecurities and Exchange Commission(SEC)にconfidential申請の旨。同社はIntelと合併する話し合いにあると言われたが、IPO filingはそのような取引は提案されていないことを示す可能性の旨。

◇GlobalFoundries reportedly files for IPO, suggesting Intel acquisition isn't in the cards-Chip manufacturer that spun off from AMD years ago had reportedlybeen talking to Intel, but new report says it plans to go publicinstead (8月19日付け MarketWatch)

懸案のNvidiaによるArmの$40 billion買収の1件、時間がかかりそうなとともに、英国政府から「深刻な懸念」があらわされている。

◇Nvidia admits acquisition of British chip designer Arm may take longer than 18 months (8月19日付け The Verge)
→NvidiaのCEO、Jensen Huang氏が、提案しているArmの$40 billion買収について法制承認を得るのに18ヶ月を上回る時間がかかると認めた旨。

◇英当局、米エヌビディアのアーム買収に「深刻な懸念」(8月21日付け 日経 電子版 07:51)
→英国の競争・市場庁(CMA)は20日、米半導体大手、エヌビディアによる英半導体設計大手、アームの買収について「競争上の深刻な懸念がある」とする報告書をまとめた旨。英政府は報告書を受け、最大400億ドル(約4兆4千億円)の大型買収を阻止するかどうかを精査する旨。

【Teslaの運転支援システム安全性】

Tesla車の発生事故について、米国政府の調査が行われようとしている。これに対して、TeslaもAI Dayイベントにて優れた能力を訴えている。

◇Feds probe Tesla Autopilot over 11 crashes, one fatal (8月16日付け FierceElectronics)

◇U.S. highway safety agency launches formal probe of Tesla's Autopilot system (8月16日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→米国・National Highway Traffic Safety Administration(NHTSA)が、AutopilotあるいはTraffic Aware Cruise Controlを用いているTesla車での2018年以降11件の衝突事故を調査の旨。

◇米当局、テスラの運転支援システムを正式調査 (8月17日付け 日経 電子版 05:13)
→米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)は16日、米テスラの約76万5000台の電気自動車(EV)について、運転支援システムの安全性を正式に調査すると発表、不具合が認められればリコール(回収・無償修理)につながる可能性がある旨。

◇Tesla's AI Day butts against blast from senators and fed probe (8月18日付け FierceElectronics)
→Teslaが木曜19日遅く、主にエンジニアに向けて同社のAIの優れた能力の推進に向けてAI Dayを主催、米国上院議員がFederal Trade Commission(FTC)に対し同社のself-drivingの主張の審査を督促している中。


≪グローバル雑学王−685≫

各国の中国に対する視点、それもマイナーな顔ぶれからのそれに、ルポライターの著者の目を通して迫っていく書、

『中国vs.世界 呑まれる国、抗う国』
 (安田 峰俊 著:PHP新書 1260) …2021年5月27日 第一版第一刷

を今回から読み進めていく。本書の帯には、以下の内容:
 *政界の「中国化」が進むカナダ、人権問題に抗議する豪州
 *中国に対峙する12ヵ国のリアル
 *日本にもある「スパイ養成機関(?)」潜入記も収録
 *アフリカ借金鉄道が走る(中国からの巨額の借款で敷設)
 *中国人の酋長が何人もいるナイジェリアなど、中国に親しみを持つ国の一方、中国に対抗する姿勢を貫く国もコロナ禍で対中感情が悪化している現時点であるが、中国とのいろいろな接触経緯、そして今までの歩みを国別に見ていくことに。第1回の今回は、イスラエル。「開封のユダヤ人」というものへの新たな認識を得ている。


≪はじめに≫

・私たち日本人が中国に抱く警戒感や不信感は、世界標準では決して「常識」ではなかった
 →2018年10月時点での各国世論の対中感情の割合
  →日本の対中国感情だけが突出して悪い
 →中国は、このような優しい世界のなかで勢力を伸ばしてきた
・2013年9月、国家主席に就任して半年目の習近平、カザフスタンで、シル
 クロード経済ベルト構想を提唱
 →「一体一路」構想に発展、世界を覆っていくことに
・中国は1990年代末から、中国資本の海外進出を後押し
 →強力な習近平政権のもとで景気のいい新政策
 →中国の海外進出は加速、世界における中国のプレゼンスは大幅に上昇
・多くの国で(日本人が想像するほどには)対中感情は悪化していない
 →中国を強く嫌っているのは、日本やベトナムなど、直接的な政治的摩擦や領土問題などを抱えるごく少数の国
 →これが、概ね2018年ごろまでの世界の姿

◇嫌中化する世界
・世界が大きく変わり始めたのはそれ以降
 →2018年から米中貿易摩擦が深刻化するなかでアメリカの対中警戒心が表面化
・2019年末にコロナ禍が世界を大混乱に陥れた
 →コロナ発生国である中国に対する不信感が決定的に
・2020年10月調査からも、先進各国における対中好感度の暴落ぶり
 →発展途上国では対中感情がそこまで悪化していない国も多い
 →コロナの影響でアフリカにおける中国の評判は傷ついた
・日本の場合は、2005年前後から一貫して対中感情が悪い

◇外から見えてくる中国の姿
・世界には約190ヵ国以上の国家があり、それぞれの立場で中国と付き合っている
 →本書で選んだ国の多くは、ナイジェリア、カザフスタン、セルビア、スリナムなどのマイナーな面々
・中国の視点から世界を眺め、また各国の視点から中国を眺めなおしてみるのが、本書の試み

第一章 vs.イスラエル
 サイバー外交に水を差す「開封のユダヤ人」問題

◇イスラエル国防軍に入隊した中国系男性
・2014年12月15日、イスラエルの日刊紙に興味深いニュースが掲載
 →2人の中国系男性がイスラエル国防軍の徴兵に応じた
 →いずれも、最精鋭部隊、ゴラニ歩兵旅団への参加を希望
・彼らはいずれも2009年に中国河南省開封(かいほう)市からアリヤー(イスラエルの地への帰還)を果たした「ユダヤ人」
・他にもイスラエルに移住した中国系ユダヤ人たちのニュースがときおり
 →2016年2月、開封市から女性5人が移住、エルサレムの嘆きの壁で祈りを捧げた写真
・彼らは「帰還者」と呼ばれ、免税・減税などの優遇措置に加えて、イスラエルへの定住にあたって至れり尽くせりのサポート
・現在、イスラエルに「帰還」する中国系ユダヤ人のほぼ全員が、かつて北宋王朝の首都が置かれたこともある華北の都市、河南省開封市の出身者
 →「開封のユダヤ人」と呼ばれる氏族の末裔であると見なされる

◇中国史のなかのユダヤ人
・中国では前近代からシルクロード貿易や海上貿易が盛ん
 →ユダヤ人商人の来航がみられ、一部が中国に定住しはじめたのは、おそらく11世紀ごろから
・現在は開封市博物館に保存されている明の弘治二年(1489年)の石碑の碑文
 →ユダヤ人たちが彼らの信仰習俗を守って開封付近に居住することを許可した旨
 →「開封のユダヤ人」のコミュニティが生まれたきっかけ
・17世紀はじめの明の時代、当時の開封のユダヤ人は数千人ほど
 →中国社会に適応しつつある集団に
・明代後期の時点では開封のみならず、浙江省の杭州、さらに寧夏、寧波、揚州などにもユダヤ人の集団がいた模様

◇歴史の闇に消えた民族
・清代の記録、中国各地の土着のユダヤ人コミュニティはほとんど消滅
 →開封だけが残される状態に
・20世紀に入ったころには、彼らは言語・文化・外見の各方面で他の中国人とほとんど区別がつかなくなってしまった
・中華人民共和国の成立後、彼らの末裔は少数民族の「猶太族(ヨウタイズウ)」を名乗った
 →「猶太族」の大部分は「漢族(漢民族)」か「回族(イスラム教徒の少数民族)」に編入
 →豚肉食をタブー視するなどの固有の習慣すらもほとんど失った
・1980年代後半になっても、100〜200人ほどの住民は自分たちの先祖がユダヤ人だったという自己認識を辛うじて
 →彼らはついに中華の大地に飲み込まれ、「普通の中国人」に変わってしまった
・ナチスの絶頂期、1937〜1940年には2万人のユダヤ人難民が上海に上陸したという
 →中国国内のユダヤ人コミュニティは、イギリス領の香港を除き1950年代までに、ほぼ消滅

◇シオニズム団体、中国へ
・「開封のユダヤ人」たちは、今世紀に入ってからかなり無理矢理に復活させられた存在だろうと思われる
 →その仕掛け人になったのが、エルサレムに本拠を置くシオニストの財団組織「シャーベイ・イスラエル」のリーダー、ミハエル・フロイント
  →ニューヨーク出身のユダヤ人
  →ヘブライ語で「シャーベイ」は帰還を意味
 →イスラエルへの移住を推進しようとしている団体
・イスラエルは約900万人の人口のうちおよそ20%は、ユダヤ教を信仰していないアラブ系住民
 →人口逆転に歯止めをかける目的もあって、「帰還」支援を行っている
・注目されたのが、中国史のなかに埋もれかけていた「開封のユダヤ人」
 →一度は滅びたはずの「開封のユダヤ人」のアイデンティティを現代に復活させることに成功
・今や開封には「約1000人」のユダヤ人の子孫が存在しているという
 →街にはシャーベイが設立したユダヤ教学習センターが開校、民営の開封ユダヤ人博物館も
・シャーベイの援助によってイスラエルに「帰還」していった開封出身の元中国人も、100人以上に及んだとみられている

◇中国のユダヤ人、迫害される
・ところが近年、こうした「開封のユダヤ人」たちは苦しい状況に置かれている
 →現在の習近平政権は、中国社会に対する海外の宗教や民間組織の浸透を強く嫌っている
 →政府の公認を受けないキリスト教教会への強力な弾圧が進められている
・シオニズム団体、シャーベイの活動や、「開封のユダヤ人」たちの信仰や文化活動も、習政権の時代になると制限を受けるように
 →開封の公安当局ははやくも2014年の時点で、シャーベイに対して市内のユダヤ人コミュニティセンターの閉鎖を命令していたとされる
 →ほかにも開封では、国外のユダヤ人からの訪問の制限、ユダヤ教徒住民に対する公安の監視や尋問も行われている模様
・中国では政府による民族識別工作を通じて、55の少数民族の存在が公認
 →「開封のユダヤ人」たちはこの中に含まれていない
 →ユダヤ教は公認された組織を持たず、党による支配が事実上及んでいない
・イスラエル最大の英字紙「エルサレム・ポスト」、現在の中国におけるユダヤ人迫害の様子について
 →往年のポグロムやホロコーストを連想させる筆致

 ◇両国の蜜月関係に刺さる棘
・中国とイスラエル
 →最近10年間の世界において、デジタル・イノベーションの風潮に最も上手く乗ることができた国家
・2013年のネタニヤフ首相の訪中と習近平との会談を境に両国関係は急転回
 →イスラエルのstartupの提携先に中国が選ばれるケースが大幅に増え始めた
 →AlibabaやHuawei、Xiaomiなどの中国の大手IT企業はこぞってイスラエルにR&D拠点
・21世紀になってから蘇った古き氏族の末裔たち
 →蜜月関係にある中国とイスラエルの両国間に刺さる意外な棘となるかもしれない

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