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半導体市場の交錯模様…最高更新、$600B突破視野、半導体不足関連

新型コロナウイルスによる累計感染者数は土曜3日午前時点、世界全体で1億8299万人を超え、1週間前から約273万人増と微増である。オリンピックを控える東京都も、"第5波"の兆しに備える対策&対応が日々続けられている。リモート業務&学習など巣籠もり需要に欧米などでのpandemicからの回復気運が加わって、半導体市場は随所で最高更新の業界データが見られ、勢いづいて本年販売高$500 billion突破の予測が繰り返されるとともに、2023年には$600 billionをも突破の見方があらわれている。その一方、半導体supply chainについては供給不足が織り成す厳しい状況について、悪化あるいは緩和と入り交じる見方が次々とあらわされている現時点である。

≪市場拡大の一方での供給不足≫

現下の半導体市場から、売上げおよび価格が大きく高まるメモリの状況である。

◇Global DRAM revenue surges 30% in 1Q21, says Counterpoint Research-Counterpoint: Q1 DRAM revenue rose 30% on year to $19B (6月29日付け DIGITIMES)
→Counterpoint Research発。2021年第一四半期のグローバルDRAM売上げが$19 billion、前四半期比9%増、前年同期比30%増。遠隔教育およびwork from home(WFH)が引き続きスマートフォンおよびlaptop DRAM需要を大きく推進、前四半期に対しbit出荷6%の伸び、ASPの3%上昇となっている旨。

◇DRAM, NAND flash prices to rise about 10% in 3Q21-Sources: DRAM, NAND flash prices to go up 10% during Q3 (6月29日付け DIGITIMES)
→業界筋発。DRAMおよびNANDフラッシュ価格が2021年第三四半期に前四半期比約10%上昇する見込み、しかし第四四半期についての価格見通しは依然不確かの旨。

半導体製造装置の販売額、そしてファウンドリー売上高について、最高更新の現下の推移である。

◇半導体装置販売22%増、今年度、2年連続で最高更新 (7月2日付け 日経)
→日本半導体製造装置協会(SEAJ)は1日、2021年度の日本製の半導体製造装置の販売額が2020年度比で22.5%増の2兆9200億円になるとの予測を発表、1月時点の予測を4200億円上回り、2年連続で過去最高を更新する旨。足元では半導体需要が急速に高まっており、供給不足が深刻化している旨。

◇半導体受託の売上高最高、10社4〜6月、5G向け需要増 (7月2日付け 日経産業)
→半導体供給における受託製造会社(ファウンドリー)の存在感が増している旨。台湾の調査会社、トレンドフォースによると、ファウンドリー10社の2021年4〜6月期の売上高は前四半期(1〜3月)から1〜3%増となる見通し。半導体不足を受けたメーカー各社の調達強化でファウンドリーの生産能力もひっ迫する旨。価格の引き上げが進むと見通す旨。
トレンドフォースのまとめでは、10社の2021年1〜3月期の売上高は前四半期(2020年10〜12月期)比1%増の227億5000万ドル。四半期の売上高として過去最高を更新したが、足元の生産能力は大きく増えておらず、供給不足は4〜6月も続くと予想している旨。

市場拡大の勢いを受けて、IC Insightsの半導体市場予測が、本年に$500 billion、そしてそして2023年には$600 billionの大台を突破、と今までにない飛躍のペースをあらわしている。

◇Worldwide IC Market Forecast to Top $500 Billion in 2021-Industry firing on all cylinders with robust and widespread demand for ICs. (6月29日付け IC Insights)

◇Five year boom for chips-IC Insights: Chip industry to see 5 straight boom years (6月30日付け Electronics Weekly (UK))
→IC Insightsの予測。世界半導体業界は、今年の$502 billionから2023年には$600 billionを上回り、今年の24%の伸びなど、昨年から2025年まで10.7%のcompound annual growth rate(CAGR)となる旨。自動車、computers、スマートフォン、テレビジョンなどの製品が、この来る成長を引っ張る見込みの旨。

◇Worldwide IC Market Forecast to Top $500 Billion in 2021 (7月2日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)

その一方、半導体の供給不足について、様々な見方、そして製造強化に向けた動きが続いている。

まずは、インテルのCEO、Pat Gelsinger氏の半導体需要が拡大する中での当面の不足の見方である。

◇Intel CEO Says Chip Shortage to Hit Bottom in Second Half-Intel CEO talks chip supply squeeze, when normal returns (6月25日付け Bloomberg)
→IntelのCEO、Pat Gelsinger氏が、microchipsの世界的不足が2021年後半の間に底を打つ、と予想の旨。「半導体業界は2023年まで健全な需給状況に戻ると思わない。いろいろな業界にとって、良くなっていく前に依然悪くなっていくと思う。」
*向こう10年にわたって成長の高まり維持を予想
*新市場の半導体用途が長期需要を牽引

◇Chip Shortage Will Get Worse, Intel CEO Says-Intel CEO anticipates ongoing issues with chip procurement (6月25日付け Transport Topics)

◇Intel CEO says chip shortage will hit bottom in late 2021 (6月25日付け Los Angeles Times)

米国の国内半導体製造の強化に向けた法制化について、残る下院通過を急ぎ求める動きである。

◇U.S. Commerce chief urges Congress to act on chip funding by August-Raimondo calls for House to vote on chip funding (6月28日付け Reuters)
→Gina Raimondo米国商務長官が、議会メンバーに対し米国半導体業界への連邦出資$52 billionの提案の票決を完了するよう督促の旨。上院が今月始め該出資を承認、Raimondo氏は議会が8月に休会になる前に下院が該提案を票決するよう望んでいる旨。

◇SIA Calls for House Passage of Legislation to Advance U.S. Technology Leadership (6月28日付け SIA Latest News)
→Semiconductor Industry Association(SIA)が本日、President and CEO、John Neuffer氏ステートをリリース、
 National Science Foundation for the Future Act(H.R. 2225)
 および
 Department of Energy Science for the Future Act(H.R. 3593)
の下院通過を求めている旨。
該両法案は、米国の科学&技術leadershipの維持&構築に寄与、法制化進展、国内半導体生産、革新に向けた力強い出資を含むよう要求の旨。

◇SIA Calls for House Passage of Legislation to Advance U.S. Technology Leadership (6月29日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)

その下院では、R&D出資の使い道をもっと広範囲にとの枝分かれが見られている。

◇House Panel Opts for ‘Labs Over Fabs’ (6月29日付け EE Times)
→米国下院のscience panel、House Science Committeeが、米国技術leadership再生に向けて“labs over fabs”アプローチを受け入れ、上院の革新戦略から半導体など特定業界分野ではなく広範囲のR&Dへの出資に分岐の旨。

我が国では、通商白書でも半導体が代表的に重要な1つとしてsupply chainの強化が謳われている。これは、6月29日夜のNHK総合テレビ「ニュースウオッチ9」でも取り上げられている。

◇通商白書 半導体など重要物資の技術開発や生産基盤整備を提言 (6月29日付け NHK 15:15)
→政府はことしの通商白書をまとめ、米中の激しい覇権争いを背景に各国が経済安全保障の取り組みを強めるなか、日本としても半導体など重要な物資の技術開発や国内の生産基盤の整備を強化すべきだと提言している旨。ことしの通商白書では、米中の激しい対立を背景に、各国で半導体など重要物資の確保や軍事転用も可能な先端技術の管理といった経済安全保障の動きが強まっていると指摘した旨。
ことしの通商白書は、経済安全保障を強く意識したものになった旨。
アメリカと中国の技術覇権をめぐる争いや新型コロナウイルスの感染拡大で半導体などの重要な物資の供給網=サプライチェーンのぜい弱性が顕在化し、各国は経済安全保障への取り組みを強化している旨。白書では、こうした動きを「地殻変動とも言える大きなうねり」と表現し、各国の動向にも触れている旨。

車載用ICについて、供給不足が緩和し始めているとの観測である。今後に確認を要することである。

◇Automotive IC shortage starts easing-Auto chip shortages wane, sources say (7月1日付け DIGITIMES)
→業界筋発。自動車製造向け重要コンポーネントの供給不足が緩和しており、integrated device manufacturers(IDMs)およびシリコンファウンドリーが車載用ICsにより多くの生産capacityを委ねている旨。Infineon Technologies, NXP SemiconductorsおよびSTMicroelectronicsなどのIDMsがsupply chainにおけるgapsを埋めている一方、TSMCなど台湾の専業ファウンドリーも役割を担っている、と特に言及の旨。

これが現下の市場の実態かと感じるが、InfineonのCEO、Reinhard Ploss氏の見方である。

◇Chip supply situation 'still difficult' - Infineon CEO-Infineon CEO: Auto chip supply is still strained (7月2日付け Reuters)
→InfineonのCEO、Reinhard Ploss氏。半導体supply chainの負担がいくつかの領域で悪化、remote workingなどの流れが昨年のpandemic低迷からの産業回復と合わさって半導体需要を引っ張っている旨。

供給逼迫に乗じて、旧世代製品が大きく値上がりとのこと。またまた繰り返している市場の実態を受け止めている。

◇半導体「旧世代」値上がり、電子部品・材料価格動向 (7月3日付け 日経 電子版 02:00)
→電子部品の供給不足が価格に波及している旨。2021年4〜6月の電子部品・材料の取引価格は、半導体メモリを中心に上昇が続いている旨。巣ごもりでパソコンやゲーム機の需要が拡大し、液晶パネル向けを中心に価格が2倍に上昇しており、7月以降も同様の環境が続く見通し。供給制約が大きい旧世代製品向け部品の奪い合いが鮮明になっている旨。


コロナ対応のなかなか収まらない状況推移に対して、直面する事態への警戒感を伴った舵取りが各国それぞれに引き続き行われている世界の概況について、以下日々の政治経済の動きからの抽出であり、発信日で示している。

□6月29日(火)

出だしは下げたものの上げの連続に転じて、好感する経済指標、そして雇用増を受け、2ヶ月ぶりの最高値を記録して締める今週の米国株式市場である。

◇NYダウ反落、150ドル安、ナスダックは最高値 (日経 電子版 05:44)
→28日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3営業日ぶりに反落、前週末比150ドル57セント(0.4%)安の3万4283ドル27セントで終えた旨。ダウ平均は5月につけた過去最高値に迫っており、足元で上昇が目立っていた景気敏感株に利益確定売りが膨らんだ旨。一方、米長期金利は低下し、ハイテク株など高PER(株価収益率)銘柄には買いが入り、指数を下支えした旨。

□6月30日(水)

◇NYダウ小反発、9ドル高、指標改善で消費関連株が上昇 (日経 電子版 06:07)
→29日の米株式市場でダウ工業株30種平均は小反発し、前日比9ドル02セント高の3万4292ドル29セントで終えた旨。米景気回復を示す経済指標の発表を受け、消費関連株が買われた旨。米長期金利が心理的節目の1.5%を下回って推移し、高PER(株価収益率)銘柄のハイテク株の一角も上昇した旨。ただ、ダウ平均は過去最高値圏にあり、利益確定の売りも出て上値は重かった旨。

米国の回復が引っ張るグローバルな株価が、以下の通りである。

◇GLOBAL MARKETS-World shares hover near record highs on recovery hopes-Share prices approach record highs worldwide (Reuters)
→グローバルな株価が最高記録に接近、今年前半で12%高となる軌道にある旨。該上昇は市場が5ヶ月連続で増大を意味し、大方は米国の消費者confidenceが牽引の旨。

我が国の昨年度の税収も、次の通り過去最高の見通しとなっている。

◇国の20年度税収、コロナ禍でも過去最高、60.8兆円に−巣ごもり需要など好調、企業の「K字」回復映す (日経 電子版 18:24)
→国の2020年度の税収が60.8兆円程度と過去最高を更新する見通しになった旨。懸念された新型コロナウイルスの影響は限定的で、法人税収や消費税収が見積もりを大幅に上回った旨。景気回復が進む外需の取り込みや通信機器関連などの巣ごもり需要が税収増を牽引した旨。

□7月1日(木)

◇NYダウ続伸、210ドル高、雇用改善で景気回復期待高まる (日経 電子版 05:47)
→6月30日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前日比210ドル22セント(0.6%)高の3万4502ドル51セントで終えた旨。朝方発表の雇用関連指標が市場予想を上回り、米労働市場の改善に伴う景気の回復期待が強まった旨。雇用増に伴い個人消費が強含むとの見方から景気敏感や消費感関連株への買いが目立った旨。

中国共産党の100年記念式典、香港に続いて台湾に対する強硬なスタンスが改めて打ち出されている。

◇中国・習氏「台湾統一は歴史的任務」、党創立100年式典 (日経 電子版 11:20)
→中国共産党は1日午前、北京市内の天安門広場で創立100年の記念式典を開いた旨。習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)は演説で「香港での全面的な管轄権を持ち、台湾独立のたくらみを断固として粉砕しなくてはいけない」と強調。米国を念頭に「外部勢力が私たちをいじめ、圧迫することも決して許さない」と米国に対抗する姿勢を鮮明にした旨。

□7月2日(金)

OECD加盟国をはじめとする法人課税の強化の合意であるが、GAFAはじめ巨大ITへの対策&対応が進められている。

◇法人課税強化、大枠で国際合意、130カ国・地域−2023年導入めざす、最低税率は「15%以上」 (日経 電子版 05:10)
→経済のデジタル化に対応した国際的な法人課税ルールを巡り、経済協力開発機構(OECD)加盟国を含む130カ国・地域が大枠合意した旨。最低税率を「少なくとも15%」とする旨。巨大IT企業を念頭に置くデジタル課税は「売上高200億ユーロ(約2.6兆円)、利益率10%」を基準とし約100社を対象にする旨。

◇NYダウ続伸、131ドル高、S&P500は連日の最高値 (日経 電子版 05:51)
→1日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続伸し、前日比131ドル02セント(0.4%)高の3万4633ドル53セントで終えた旨。多くの機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数が連日で過去最高値を更新し、市場では先高観が台頭している旨。新たな四半期に入り、新規の投資資金が流入するとの期待が広がった旨。引けにかけて買いが強まり、この日の最高値圏で終えた旨。

米国の労働市場、6月の予想を上回る雇用増が以下の通りである。予断を許さないところがあり、引き続き注目である。

◇U.S. adds 850,000 jobs in June, better than expected-850K jobs added to US payrolls in June (CNBC)
→*6月の米国非農業部門雇用者数が、706,000の予想に対し850,000に増加
 *失業率は、5.6%の予想に対し意外にも5.9%に上昇
 *賃金は前月比0.3%増、前年比3.6%増、ともに予想の線

□7月3日(土)

◇米就業者数6月85万人増、足りぬ人手、回復なお途上 (日経 電子版 05:22)
→米労働省が2日発表した6月の雇用統計によると、景気の変動を敏感に映す非農業部門の就業者数は85万人増えた旨。市場予測(70万人程度)を上回り、前月(58万3000人)より拡大した旨。米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和の縮小に向けた議論を控え、秋にかけて働き手の供給制約がどれだけ緩むかが雇用回復の持続力を左右する旨。

◇NYダウ2カ月ぶり最高値、3万4786ドル、雇用増を好感 (日経 電子版 07:08)
→2日の米株式市場でダウ工業株30種平均は約2カ月ぶりに最高値を更新、ダウ平均は4日続伸し、前日比152ドル82セント(0.4%)高い3万4786ドル35セントで取引を終えた旨。5月7日につけた過去最高値(3万4777ドル)を上回った旨。6月の雇用統計で非農業部門の就業者数が85万人増と市場予想を上回り、経済再開が順調に進むとの期待が強まった旨。


≪市場実態PickUp≫

【MWC 2021】

久しぶりに展示会の項目となるが、Mobile World Congress(MWC)が大方はvirtualとのこと、Barcelona, Spainで開催されている。

まずは、Qualcommのflagship Snapdragonについて以下の打ち上げである。

◇Qualcomm unveils Snapdragon 888 Plus for faster smartphone performance (6月28日付け FierceElectronics)

◇Qualcomm unveils Snapdragon 888 Plus 5G Mobile platform-Qualcomm debuts Snapdragon 888 Plus 5G Mobile platform (6月28日付け VentureBeat)
→Qualcommが本日、virtual Mobile World Congressイベントにて、同社のflagship Snapdragon 888プロセッサのアップグレードなどいくつかの5G半導体製品を披露の旨。Qualcommが、Snapdragon 888 Plus 5G Mobileプラットフォームをお披露目、今年後半のAsus, Honor, Motorola, VivoおよびXiaomiからのスマートフォンに入る旨。同社はまた、5G cellular通信技術の高速化variantでのtelecommunicationsシステムの30を上回るcarriersおよびプロバイダーとのコラボも発表の旨。

◇Qualcomm Enhances Snapdragon Performance (7月2日付け EE Times India)
→今年の(大方virtual) Mobile World Congressの初日に重要な発表を行った数社の1つ、Qualcomm。同社は、最新Snapdragon 888 Plusチップセットの詳細を説明、こんどは3GHz prime CPU coreおよび大きく改善されたAIエンジンが含まれる旨。

NvidiaがGoogle Cloudと協働、AI-on-5G Innovation Labの設立である。

◇Nvidia, Google Cloud to open AI-on-5G test lab (6月28日付け FierceElectronics)
→Nvidiaが本日、Mobile World Congress(Barcelona, Spain)にて、AI-on-5G Innovation Lab設立に向けたGoogle Cloudとの協働を発表、enterprises, smart citiesおよびsmart factoriesなどに向けてAI-ベースソリューションの開発&運用を加速していく旨。

コロナ禍での今回の開催の概要があらわされている。

◇モバイル見本市「MWC」開幕、欧州で大型イベント復活 (6月28日付け 日経 電子版 17:56)
→世界最大のモバイル関連見本市「MWC」が28日、スペインのバルセロナで開幕した旨。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大で中止となったが、欧州で感染者が減少傾向にあることを受けて2年ぶりに対面開催を復活させた旨。全参加者に72時間に1回の検査を義務付けるなど、コロナ対策に万全を期す旨。数万人規模が集まる大型イベントの開催が欧州で徐々に戻りつつある旨。

TeslaのElon Reeve Musk氏のまたも大規模な打ち上げである。

◇マスク氏、巨大通信衛星網に「最大3.3兆円投資」、MWC (6月30日付け 日経 電子版 05:33)
→起業家のイーロン・マスク氏は29日、自身が手掛ける巨大通信衛星網のプロジェクト「スターリンク」について「投資総額は200億〜300億ドル(約2兆2000億〜3兆3000億円)になる」との見通しを示した旨。世界に広く高速通信を提供することを目指す同プロジェクトは、異例の大規模投資となる旨。
スペインのバルセロナで開催中の世界最大の携帯関連見本市「MWC」に、オンライン形式で参加して明らかにした旨。キャッシュフロー(現金収支)を黒字にするまでには50億〜100億ドルの投資が必要になるとした旨。

【スパコンTOP500】

年に2回、6月と11月が通例のスーパーコンピュータの性能を競う「TOP500」で、「富岳」が3期連続の首位となっている。米中が猛追、目が離せないところがある。

◇Fugaku Holds Top Spot, Exascale Remains Elusive (6月28日付け TOP500 Supercomputer Sites)
→TOP500の第57版にほとんど変更なく、唯一新たなトップ10入りはDOE Lawrence Berkeley National LaboratoryのNERSCでのPerlmutterシステムで第5位に。

Fugaku(日)
HPL benchmarkスコア 442 Pflop/s
Summit(米)
148.8 Pflop/s
Sierra(米)
94.6 Pflop/s
Sunway TaihuLight(中)
93 Pflop/s
Perlmutter(米)
64.6 Pflop/s
Selene(米)
63.4 Pflop/s
Tianhe-2A(中)
61.4 Pflop/s
JUWELS Booster Module(独)
44.1 Pflop/s
HPC5(米)
35.5 Pflop/s
10 
Frontera(米)
23.5 Pflop/s

◇スパコン富岳、計算速度で3連覇、防災や車設計に活用拡大 (6月29日付け 日経 電子版 05:23)
→理化学研究所と富士通が開発したスーパーコンピュータ「富岳」が、28日に公表された世界のスパコンの能力ランキングで首位を維持した旨。2020年6、11月に続き3期連続で米国や中国の計算機を上回った旨。高い計算能力を車の設計などの産業用途や防災対策に活用する動きが広がっている旨。

◇「富岳」創薬・素材でも期待、米中猛追、逆転の恐れも (6月29日付け 日経)
→スーパーコンピュータの計算速度を競う世界ランキングで「富岳」が3連覇を達成。3月に本格稼働した富岳は創薬や素材など産業用途で活用が進む旨。だが性能競争では国を挙げて高速コンピュータ開発を急ぐ米中が猛追、2021年後半にも首位を奪われる可能性がある旨。

低消費電力性能を競う「GREEN500」でも、日本勢、Preferred Networksのシステムが以下の通り首位である。

◇GREEN500: Trend of steady progress with no big step toward newer technologies. (6月28日付け TOP500 Supercomputer Sites)
→Green500では着実な進展の流れはあったが、より新しい技術への大きなステップは見られなかった旨。第1位は、日本のPreferred NetworksからのMN-3。

◇プリファード、スパコン電力効率で世界一、1年ぶり (6月30日付け 日経)
→スーパーコンピュータの性能を競う最新の世界ランキングが28日公表され、人工知能(AI)スタートアップのプリファード・ネットワークス(東京・千代田)が開発したスパコン「MN-3」が、エネルギー効率部門で首位となった旨。2020年6月以来、1年ぶり2回目。

【NvidiaによるArm買収提案関連】

本買収案件について、BroadcomはじめArmの顧客3社が支持を表明している。

◇Nvidia's Planned Arm Takeover Gets Boost From Chip Giants-Nvidia's $40B purchase of Arm wins some industry support (6月27日付け Bloomberg)
→Broadcom, Marvell Technology GroupおよびMediaTekが、NvidiaによるArmの$40 billion買収提案を支持していく、とSunday Times発。3社すべてArmの顧客と特に言及の旨。

◇Nvidia's takeover of Arm gets support from Broadcom and other chip heavyweights (6月28日付け CNBC)

上記のMWC 2021にあるNvidiaのAI-on-5G Innovation Labであるが、Armプロセッサ統合が以下の通りあらわされている。

◇Nvidia integrates Arm processors with its 5G edge infrastructure platform (6月28日付け SiliconAngle)
→Nvidiaが、Arm CPU coresを同社のAerial A100 AI-on-5Gプラットフォームに統合、Aerialソフトウェア開発をNvidia BlueField-2 A100 cardと結びつけの旨。

【最先端微細化凌ぎ合い】

IBMの2-nm発表のすぐ後に続くTSMCの“1nm”訴求である。

◇A Claim That TSMC Has a 1nm Process Hits the Headlines (6月28日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→IBMが2-nanometer CMOS技術を発表して2週間足らず、英国のwebsite、Verdictのheadlineに「TSMCが“1nm”訴求でIBMの“2nm”半導体技術を負かす」。Nature刊行の“Ultralow contact resistance between semimetal and monolayer semiconductors”を参照の旨。

Samsung Foundryが、Synopsysと連携、「ゲートオールアラウンド」(GAA)構造の3-nmの取り組みがあらわされている。

◇Synopsys, Samsung Foundry extend partnership to 3nm GAA technology-Samsung Foundry gets first-pass silicon with Synopsys aid (6月30日付け DIGITIMES)
→SynopsysからのFusion Design Platformが、Samsung Foundryの3-nanometer gate-all-around(GAA)プロセス技術搭載のworking半導体実現を支援の旨。
「我々の最新先端3nm GAAプロセスは、Synopsysとの広大なコラボから利益を被っており、3nmプロセスの効率的な実現可能に向けたFusion Design Platformの対応加速が、該重要アライアンスの重要性および利点の証左である。」と、Samsungのファウンドリー設計技術チームVP、Sangyun Kim氏がSynopsysまとめのステートメントにて。

◇サムスン電子、3ナノ半導体「GAA」新工程のテープアウトに成功か…韓国紙報じる (7月2日付け コリア・エレクトロニクス)
→サムスン電子が「ゲートオールアラウンド」(GAA)構造の3-nm半導体の量産に一歩近づいたとの報道が出ている旨。 GAAはサムスン電子が世界の半導体業界で初めて量産に挑戦する次世代半導体。
1日、ETNEWSによると、「サムスン電子は、半導体、電子設計自動化(EDA)企業であるシノプシスと協力して、GAA 3ナノ工程のテープアウトに成功した」と報じた旨。
テープアウトは、半導体の設計が完成されたという意味であり、GAAベース3ナノ半導体の設計を完了し、生産段階に進むことができるようになったという意味。

TSMCの3-nmは、より間近な製品の期待であるが、Appleそしてインテルが最初のユーザか、と以下の見方である。

◇Apple and Intel first to use TSMC 3nm-Apple and Intel will be the first customers for TSMC's 3nm process, reports the Nikkei, with Intel securing the higher volume. (7月2日付け Electronics Weekly (UK))

◇Apple and Intel become first to adopt TSMC's latest chip tech-Apple, Intel set plans to use TSMC 3nm chip-Taiwanese company remains vital partner for American tech giants (7月2日付け Nikkei Asian Review (Japan))
→Appleが、TSMCの3-nanometer半導体を最初に用いる1社に、来年からiPhoneに続くiPadからの様相の旨。また該半導体を用いるのは、Intelがnotebook PCプロセッサおよびデータセンターCPUsに、そしてGraphcore(Bristol, UK)が100 billion個を上回るトランジスタ搭載のプロセッサをつくるのに該技術てこ入れの旨。

【中国半導体関連】

Huaweiの自前の半導体生産について、賛否のスタンスの論調があらわされている。

◇Huawei's HiSilicon moving into advanced 5G chip production -Digitimes report claims Huawei will build its first wafer fabrication facility in Wuhan with production starting in 2022 (6月27日付け Asia Times)
→Huaweiが、自国のチップセット業界構築に向けて奮闘しており、北京の支援で今後がずっと明るく見えている旨。

◇Huawei should not be forced to make its own semiconductors-If left alone, global supply chains can be mutually beneficial (6月28日付け Nikkei Asia)
→中国のベンチャー&ハイテク分野を追うメディアプラットフォーム、China Money Networkのfounder、Nina Xiang氏記事。同氏は、"Red AI: Victories and Warnings From China's Rise in Artificial Intelligence"の著者。

中国国内での大学での半導体関連プログラムの推進拡大である。

◇US-China tech war: mainland universities rush to expand semiconductor programmes in drive for self-sufficiency -China's universities push IC R&D programs amid tech war (6月28日付け South China Morning Post (Hong Kong))
→*中国のMinistry of Educationが、半導体科学&技術を最優先academicプログラムとしている旨。
 *そのため、同国のより多くの大学がintegrated circuits(ICs)関連分野に集中する新しい学校を設けている旨。

半導体人材獲得に向けてのSMICの奮闘の実態である。

◇China's chip champion SMIC offers executives US$3.7 million in shares in effort to retain semiconductor talent (6月28日付け South China Morning Post)
→*SMIC従業員の4分の1に及ぶdiscounted shares schemeの一環、TSMCからの2人のトップexecutivesおよびcompany chairmanにはそれぞれ400,000株提示
 *SMICは半導体自己充足達成での中国最善の希望と考えられるが、米国の制裁および人材不足がそれを困難な目標にしている

【FTCの巨大IT追及】

独占禁止法違反の疑いでFacebookを訴えていたFTC(米連邦取引委員会)に対して、米連邦地裁が以下の通り棄却している。

◇Facebook独禁法違反訴訟、米連邦地裁が訴状を棄却 (6月29日付け 日経 電子版 08:14)
→米首都ワシントンの連邦地裁は28日、米連邦取引委員会(FTC)が米フェイスブックを反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで訴えていた訴訟で、FTCの訴状を棄却した旨。フェイスブックが個人向けのSNS(交流サイト)で支配的なシェアを握り独占に当たるとの主張に対し、十分な証拠を示していないなどと結論づけた旨。

◇SNS市場の「支配者」認定難しく、Facebook独禁法訴訟−米連邦地裁「証拠が不十分」 (6月29日付け 日経 電子版 15:22)
→「インスタグラム(Instagram)とワッツアップ(WhatsApp)を分離・売却せよ」。米連邦取引委員会(FTC)がフェイスブックを相手取って、2020年12月に起こした反トラスト(独占禁止法)訴訟の一審は、フェイスブックがデジタル市場の「支配者」の座に居座り続けるというFTCの主張を退ける結果となった旨。

◇米巨大IT規制、難路に、Facebook訴訟で「門前払い」−独禁法改正の議論加速へ (6月29日付け 日経 電子版 20:00)
→反トラスト法(独占禁止法)を活用して米巨大IT企業の独走に歯止めをかける動きが難路に直面している旨。米首都ワシントンの連邦地裁が28日、米連邦取引委員会(FTC)などがフェイスブックを訴えた訴訟で、原告側の主張の多くを退ける判断を下した旨。現行法の限界が明らかになり、法改正の議論が加速する可能性がある旨。
「FTCはフェイスブックが独占企業体であるという社会通念に裁判所が黙ってうなずくことを期待しているかのようだ」。米首都ワシントン連邦地裁のジェームズ・ボースバーグ(James Boasberg)判事は28日に公表した文書で、FTCの姿勢を批判した旨。

Biden政権で指名されたFTC委員長、リナ・カーン氏を独禁調査から外すよう、AmazonがFTCに求めている。なんともストレートな動きである。

◇Amazon wants FTC Chair Lina Khan recused from all its cases-Amazon formally requests FTC Chair Lina Khan stay off its cases (6月30日付け CNN)

◇Amazon、「カーン委員長外し」を嘆願、FTC独禁調査で (7月1日付け 日経 電子版 05:19)
→米アマゾン・ドット・コムが米連邦取引委員会(FTC)に対し、同社批判の急先鋒として知られるリナ・カーン委員長を同社に関連する反トラスト法(独占禁止法)調査などから除外するよう求める嘆願書を提出したことが30日、明らかになった旨。米巨大ITへの規制強化に向けたバイデン米政権の人事に、「結論ありきだ」として待ったをかけた旨。

FTCは、Broadcomにも相次ぐ矛先である。

◇FTC: Broadcom illegally monopolized semiconductor markets for TV and broadband services (7月2日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Federal Trade Commission(FTC)が、Broadcomがtelevisionおよびbroadbandインターネットサービスに用いられるコンポーネントに関して"排他的商取引"などの行為をしていると告訴の旨。


≪グローバル雑学王−678≫

世界中が基本遵守の対応を余儀なくされているコロナ禍であるが、それ以後の時代をどう見るか。グローバルにあちこち行き来した、ついこの前の世界の先にある今後について、

『つながり過ぎた世界の先に』
 (マルクス・ガブリエル 著:PHP新書 1251) …2021年3月30日 第一版第一刷

より考えていく。人とウイルスのつながりの中、今回はまず、統計的世界観による幻想を取り上げている。ドイツでのコロナ対策、「AHA」戦略は、距離、衛生、マスクと、我が国と同様に受け取れる中身である。日々、コロナ禍の度合いの数字が発表されていくが、ウイルスと闘うためにはウイルス学の知識は必要だが、ウイルス学者に戦略を立ててもらうべきではない、という下りがある。我が国でも連日、政府対策分科会の尾身会長がテレビに登場されるが、立場&スタンスの難しさを感じるところである。いろいろ数字は統計的から質的にブラッシュアップしていかなければとの主張、確かにすべての我が身にふりかかること、その意味をしっかり納得していくことと思う。次に、コロナ後のビジョンがあらわされている。本当にどうなっていくか。著者は、環境への配慮が行き届いた、技術的に進んだ世界を思い描いており、もっとゆったりしたスピードでグローバリゼーションが起き、倫理的に人々が行動できる社会でなければ、としている。最低所得保障政策によって、最低の階級が中産階級になるというモデルが描かれている。


第I章 人とウイルスのつながり

5 統計的世界観による幻想

◇ドイツのコロナ禍への対策は正しいものだったのか
・私は、現時点(2020年8月27日)ではコロナ禍に対するドイツの戦略は、かなり良かったと思っている
 →ドイツのロックダウンは緩く、比較的速やかにビジネスが再開
・だが問題も。ナショナリズムが台頭、イデオロギーが重視されるようになり、民主主義を蝕む動きが出てきている
 →例えばコロナウイルスに関するデモ
 →ドイツではかなり大勢の人がマスクの着用に反対
 →着用を強制する法律に反対している
・私の視点は、必ずしも批判的な視点ではない
 →ドイツでは自国の戦略を最高の戦略だとして称えるか、逆に最低の戦略だと貶めるかのどちらかがほとんど
 →平凡な戦略は、両極端を避けるという意味で最善の戦略である場合も
・倫理的観点から見て重要なのは、Collateral Damage(巻き添え被害)
 →比較すべきなのは、ウイルス対策をとらなかった場合に亡くなったであろう人の数と、対策をとった上で実際に亡くなった人の数
 →経済のことを考えるのは悪いことではない
 →ウイルス対策が社会にどんな長期的影響を与えたか、という点も考慮すべき
・複雑な統計情報をできるだけ早く入手して、今後とるべき方向を議論する必要

◇ドイツの「AHA」戦略
・ドイツが実施しようとしている「AHA」戦略
 →AHAはドイツ語で距離、衛生、マスクを指す
  …1.5メートルの対人間隔確保(Abstand halten)
   保健衛生措置(Hygienemassnahmen)
   日常マスクの着用(Alltagsmasken tragen)
 →ドイツ語「aha」…「そうか、わかった!」という意
・AHA戦略は基本的に日本がこれまでにやってきたことと同じ
 →とるべき対策は、良いマスクを用いたAHA戦略だけかも

◇統計的世界観の最悪のバージョン
・現在、科学者やウイルス学のCOVID-19に関する見解が各国の政治的決断に大きく影響
 →極めて危険な傾向だと思う
・人間の倫理と福利にとって、統計的世界観は最大の脅威の1つだと思う
 →今、統計的世界観の最悪のバージョンが出現
  →ウイルス学者が政治家になってしまった
・ウイルス学者は意思決定に不可欠なウイルスに関する情報を持っている
 →ウイルス学者はどんな政策をとればよいのかはまったくわからない
・ウイルスと闘うためにはウイルス学の知識は必要だが、ウイルス学者に戦略を立ててもらうべきではない

◇統計上重視すべきデータとは
・統計の数字の取り扱いには注意が必要
 →私は常に死者数が一番大事だと思ってきた
 →ドイツの死者数は一貫して低く、過去7-8週間、1日に15人以下のレベルを維持(2020年8月27日現在)、判明している感染者の数は増えている
・重要なのは死者数とICUの病床数だけ
 →より重要なのは死者数、人に死んでほしくない
・集団免疫に到達できれば一番良いのは確か
 →もともとワクチンの目的は集団免疫を促進すること
 →集団免疫が唯一の戦略

◇統計は、行動経済学の「ナッジ」を行うためのツール
・現在、メディアは毎日感染者数を発表
 →メディアが数字を報道するのはそもそも間違っていると思う
・数字だけを頼りにするのは間違い
 →数字は1つの情報に過ぎない
・ウイルスの話では、問題は何人が感染したかではなく、どのくらい重い症状が出るか
 →なぜ発熱率を調べないのか?
・今統計は、世間の行動を操作するため、つまり行動経済学でいう「nudge:「人々の行動を誘導する」を行うためのツールとして使われているのではないか

◇コロナの危機は、統計的世界観による幻想
・我々は数字、統計を見るのに慣れ過ぎてしまっている
 →GDPは典型的な例
 →ドイツの2018年のGDP成長率はわずか1.5%
 →GDP成長率6.6%といわれている、中国より遥かに進歩
 →街がきれいかどうか、自由な社会かどうか、食べ物の質、空気の質、そういったことが重要
・ウイルスはもちろん存在するし、危険
 →だからこそ私は質的・倫理的経験や感情に焦点を当てて、ウイルスに対する見方を変えようとしている

◇ビジネスにおける、統計的モデルから質的モデルへの転換
・出版業、売れる本を出版したいから統計を見る
 →ただ良い本を売ればよいのではないか?
・読者をもっと雇用してはどうか
 →彼らの仕事は本を読むこと、ただそれだけ
 →良い本を見つけ出してもらう
 →読者に任せれば、たくさんの本が売れるようになると思う
・数字と洞察力の両方が必要
 →数字だけに頼っていたのでは、人類は滅ぶ

◇政治家が正しい判断を下すためには、何が必要か
・政治家はこのような危機において、どうすれば正しい決断ができるか
 →複数の分野にまたがった専門家の集団が必要
 →哲学、社会科学、人文学、医学、物理学、数学などの専門家だけでなく、実践者が絶対に必要
  →COVID-19の患者を直に診ている医師など、第一線で働いている人たち
・数10名ほどから成る専門家集団が、ニュースやデータを分析し、お互いに話し合う
 →毎日議論した内容を政府にブリーフィング
 →政府はデータを見て、これらの情報を元に決定を下す
・ウイルス学者は哲学的な質問や政治的な質問には決して答えない
 →テレビでウイルス学者に話を聞くのはやめなければ

6 コロナ後のビジョン

◇すべての人間が先住民族のように生きる社会
・この危機を経た後のビジョン
 →私は環境への配慮が行き届いた、技術的に進んだ世界を思い描いている
 →もっとゆったりしたスピードでグローバリゼーションが起き、人々が敬意と感謝の念を持って生きている
・私の思い描く世界では、すべての人間が先住民族のように生きている
 →すべての人間を先住民族と考え、人の移動もまた自然現象
 →先住民である我々が、近代以前の自然観に回帰、それに近代知識を組み合わせたとする
 →非常に進んだ哲学と経済が生まれるのでは
・今の日本は、他の多くの場所と同じように非常にアメリカナイズされてきたという問題
 →彼らと対立するのではなく、互いに学び合うべき
・これが私の思い描く世界
 →感謝の気持ちに溢れた、「ネイチャー・ポジティブ(nature-positive)」(自然を優先する)な経済体制が、人に倫理的、哲学的洞察をもたらす世界

◇人々が倫理的に行動できる「ジットリッヒカイト」の社会
・人々が倫理的に行動できる社会の条件は何か
 →ヘーゲルが『人倫』(Sittlichkeit)と呼んだ倫理的な社会が必要
  …人生の意味をより多く引き出す意思決定プロセスを重視する倫理的な社会
 →あらゆる人が、貧困のラインを越える基本となる最低限の所得を得る必要
 →人生でどんなことが起きても、誰もが一定の生活水準を保てる社会
・私が提唱するモデルでは、最低所得保障政策によって、最低の階級が中産階級になる
 →このような基盤の上に経済を築く
 →このような社会では倫理感がとても重要に

◇持続可能な資本主義
・今私が夢見ているのは、哲学トレーニングのためのセミナールームを併設したホテルの建設
 →社会に必要な仕事はできるだけ自動化を進め、その上で市民による奉仕活動でカバーする必要
・互いに感謝し合う文化、このような理想的な社会システムは実現可能だと思う
 →環境に優しく、持続可能な、完全な資本主義

【Column:哲学者と現代のつながり〈1〉】

・トマス・ホッブズ(Thomas Hobbes:1588年 - 1679年)
 →法の基盤は暴力
 →契約の反対は暴力
  →契約は行動を規制するので、契約がなければカオスが生じる
 →自然状態(人為的に政治体を構成する以前に、人間が置かれていた状態)にある人間にはカオスと暴力しかなく、社会契約が秩序を生み出すと考えた
・マックス・ヴェーバー(Max Weber:1864年 - 1920年)
 →国家が正当な物理的暴力の行使を独占
 →人類・先住民族は無秩序でも暴力的でもないということを理解しなければならない
 →自然状態などというものは存在しない
 →ホッブズの空想全体が間違った概念に立脚

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