米国の半導体製造増強への台湾からの一石、思い起こす25年前の台湾
新型コロナウイルスによる累計感染者数は土曜24日午前時点、世界全体で1億4509万人を超え、8日前から約629万人増とむしろ拡大の度を高めている。我が国でも東京はじめ3度目の緊急事態宣言となり、我慢の大型連休を求められている。White Houseの半導体サミットが行われて、米国における半導体製造の増強が喫緊の課題対応として進んでいく情勢の渦中、TSMCの創業者で前CEOのMorris Chang(張忠謀)氏からの思いの丈を放ったと受け止める講演が報道されて注目している。台湾が半導体生産では優位にあり、ライバルは韓国、との主張である。25年前の1996年、台湾半導体産業協会(TSIA)の発足式典に出席した時の今も残る印象との強烈な差異を受け止めている。
≪数10年後の切り返し≫
Morris Chang(張忠謀)氏の台北で開催されたフォーラムでの講演についての記事が、以下の通りである。米国での半導体製造増強の流れを引っ張るIntelのArizonaにおける$20 billion半導体工場建設の打ち上げに対して、率直な言及が続いている。
◇Intelが半導体製造を踏み上げる動きの"皮肉"−IntelがかつてTSMCへの投資を拒否、半導体製造の重要性を軽視、と思い起こすMorris Chang氏 (4月21日付け Taiwan News)
→TSMCのfounderで前CEOのMorris Chang(張忠謀)氏が、アメリカの半導体大手、Intelの半導体製造に大きな投資を行う決定を"皮肉な"とあらわした。
半導体tycoonの同氏は、水曜21日の台北でのフォーラムにてそう述べた。同氏は、Intelがアジアの半導体製造における席巻に挑む狙いで、先端半導体のグローバルな不足の渦中、$20 billionを充ててArizonaにおいて半導体工場を建設するという3月の発表に言及していた。Chang氏によると、TSMCは、Intelがグローバル半導体市場を席巻していた数10年前にIntelの投資獲得を求めていた。その提案は、半導体製造の利益性の展望が"ほとんど見込めない"として、却下された、とCNAがChang氏の言として引用している。
89才のChang氏は、台湾の半導体業界における成功に寄与すると信ずる3つの要因を共有している。それらは以下とAnueが挙げている。
献身的なエンジニアおよびテクニシャン
現地の人々がもつ管理ポジション
何1000人のエンジニアを国中の異なる製造センターに効率的に配置換えが行える便利な輸送ネットワーク
TSMCのライバルについては、Chang氏は、同様の会社風土、人材poolなど製造優位性から、韓国の会社を最も強力な競争相手とみなす、としている。少なくとも5年半導体技術で後れている中国は、台湾にはライバルではないとのこと。
米国政府はアメリカの半導体会社を助成しているが、短期の支援では継続的投資を要する高コスト事業はほとんど維持できない、とChang氏。
◇TSMC's Morris Chang calls on Taiwan to defend its chip industry-Industry veteran says China 'not yet a competitor' despite hefty subsidies (4月21日付け Nikkei Asia)
TSMCの世界を主導する立ち位置維持に向けて、台湾の政府&社会の支援を求めている。
◇Morris Chang calls for government support-Morris Chang has called on the Taiwanese government and society to keep TSMC at the top of the world for chip manufacturing capability. (4月22日付け Electronics Weekly (UK))
ファウンドリー事業では、Samsungが最も手強い競合、とChang氏。
◇Samsung remains formidable competitor for TSMC, says Morris Chang (4月22日付け DIGITIMES)
◇Taiwan has edge over U.S., China in chip foundry battle: TSMC founder-TSMC founder urges government support for the foundry (4月22日付け Focus Taiwan)
→TSMCのfounderで前CEO、Morris Chang氏が、同ファウンドリーはmicrochip技術で中国および米国の先を進み続けなければならない、としている旨。同氏は、Samsung Electronicsがファウンドリー市場で強力なライバルになっていると認めている旨。
米国に対する該事業での優位、ライバルたる韓国が、語られている下りに以下改めて注目である。
◇「半導体生産、台湾が優位」、TSMC創業者が講演 (4月22日付け 日経)
→台湾積体電路製造(TSMC)の創業者の張忠謀(Morris Chang)氏が21日、台北市内で講演、半導体不足が深刻化するなか、張氏は引き続き、海外ではなく台湾での生産が重要との見方を強調した。「(例えば)米国は台湾に比べ製造業に望んで入る人が少なく、優秀な人材を大量に確保するのが難しい。コストも非常に高い」と理由を語った。
半導体不足が続き、各国政府の間では現在、TSMCなど台湾企業の誘致が活発化している。張氏はこうした各国の動きを発言で牽制し、台湾での生産の重要性を訴えた。「台湾には自ら進んで製造業に入る優秀な人材が非常に多い。これは(半導体生産に)非常に重要なこと。米国はそうではない」などと指摘した。・・・
TSMCの強みについては「経営の上層部を全て(相手を理解しやすい)台湾人が占めることだ。ライバルのサムスン電子も同じく上層部は韓国人が占めている」などと述べた。
米大手インテルについては「彼らは台湾のファウンドリー(受託生産)ビジネスが今、こんなに重要になるとは思わなかったはずだ」と指摘した。「TSMCを1987年に創業する際、出資を求めたが見下されて断られた。30年たちインテルは今ごろ、TSMCと同じビジネスに参入すると発表したが、それは思いもしなかったことだろう」と皮肉った。・・・
Chang氏の思いを存分に受け止めるところであるが、今となっては昔、四半世紀、25年前に、台湾半導体産業協会(Taiwan Semiconductor Industry Assiciation:TSIA)の発足の式典に出席する機会を得たときのメモから次の通りである。
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平成8年(1996年)12月9日付け週報より:
『今週は台湾の半導体工業会との密接なコンタクトに終始。当初は11月上旬と言われていた台湾半導体産業協会(Taiwan Semiconductor Industry Assiciation:TSIA)がこのほど発足の運びに。小生がEIAJの代表ということで出席のため、台湾に出張(1日〜4日)。米SIA、韓国KSIAからの方々と出席する形。
Celebration Partyの前日(3日)は、新竹に拡がる半導体産業地域の代表的な機関、会社を案内いただいた。まず中枢となるERSO/ITRI(Electronics Research & Service Organization / Industrial Technology Research Institute)。ITRIは1973年創立、政府がスポンサーとなり、ハイテク開発および競争力強化に努める非営利機関。ここを母体として、台湾の半導体メーカーがスピンオフしている点が興味深い。1974年に地域産業への技術サービスを行うERSOが創設されたのに続いて、1979年UMC、1987年TSMC、1994年Vanguardなど。長期にわたる非常に系統立った展開が窺えるが、2年後にはTainanに半導体、バイオを主テーマとして第二の科学工業地域が誕生するとのこと。
次にTSMC社、世界No.1のpure foundry会社ということで、製造主体の技術プレゼンと0.6μmラインの見学。0.35μmではDRAM Embeddedが経済的という見方をしていた。ISO9000(1993年)、ISO14000(1996年)取得のポスターが随所で目立つ。
UMC社ではビデオによる概略のプレゼン。新竹半導体産業地域の最初の会社。
このような歴史過程もあってか、TSIAメンバー会社の幹部が集まったこの日のディナーはお互い和気あいあいの雰囲気。台湾は日米韓に比べ会社規模が小さく、半導体産業はそれでも大きい方、という説明もあったが、一家団らんを感じた次第。
明けて4日午前、台湾半導体産業協会(TSIA)慶祝大会。太鼓やドラが打ち鳴らされる中、演壇の両端から獅子舞が登場してのスタート。TSIAの陣容の紹介に続いて、行政院政務委員の方、そして日米韓の工業会の面々のお祝いの挨拶。
TSIAのChairman of BoardにはITRIのPresident、Presidentには同じくITRIのVice Presidentが就任するとのこと。米国カラーの強い台湾と小生も見ていたが、米国に留学する学生も減って、国内完結の色合いが強まっているという話も聞いた。今後とも工業会を通したお付き合いも深めていって、両国の半導体産業の共栄の道を探らねばと思う。』
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この式典でMorris Chang氏が会場に登場した際に、参加者総立ち、歓呼の声で迎えた光景を思い出している。同氏と名刺交換&挨拶、丁寧な物腰が印象的であった。あれから何年、遠い昔のような、あるいはついこの前という感じ方もあるが、半導体業界の激動を改めて受け止めざるを得ないところである。
米国の半導体製造増強、とりわけIntelのファウンドリー事業再参入、そして台湾、韓国および中国における関連する現下の動き、状況について、以下取り出している。
◇Foundry Wars Begin-Foundries step up their game as Intel re-enters market -Intel's re-entry has kicked the competition into high gear, with massive spending on equipment and new fabs. (4月19日付け Semiconductor Engineering)
→Intelがシリコンファウンドリー事業での競合を計画、現状の各社がcapital expenditures(capex)を高め、さらに人材を採用している旨。2010年にファウンドリー市場に公に突入してから、Intelは市場シェア獲得に苦闘、基本的に2018年に断念、「彼らが失敗した理由は、ファウンドリーであるという思考態度を持たなかったから。」と、Semiconductor AdvisorsのRobert Maire氏。
◇[News Focus] Seoul moves to enact its own ‘chip act’-S. Korea crafts bill like CHIPS for America Act -Consensus is building for national support to help local chipmakers navigate global headwinds (4月19日付け The Korea Herald (Seoul))
→半導体に絡むグローバルな権力争いの展開の渦中での危機意識の高まり、韓国が現地半導体業界について最初の特別法案の法制化に動いている旨。施行されると、世界第1位および第2位のメモリ半導体メーカー、Samsung ElectronicsおよびSK hynixを擁する同国が、半導体メーカーおよび現地半導体ecosystemへの税額控除など実際的な支援および恩恵の供給に動く初めてとなる旨。
◇SIA Applauds Introduction of Endless Frontier Act to Advance U.S. Technology Leadership (4月20日付け SIA Latest News)
→Semiconductor Industry Association(SIA)が本日、超党派の法制化、Endless Frontier Act(S.1260)の議会投入を称賛、National Science Foundation(NSF)を再構築、科学&技術initiativesに$100 billionを上回る割り当て、半導体など米国科学&技術leadershipの維持&構築を図る旨。該法制化は本日、Chuck Schumer(D-N.Y.)氏およびTodd Young(R-Ind.)氏両上院議員および超党派cosponsorsグループにより上院に提起された旨。
◇[Exclusive] SK Telecom plans M&A, foray into nonmemory chip market: CEO-SK Telecom CEO: M&A on the menu as is chip design -CEO Park Jung-ho highlights cooperation with SK hynix, confirms acquisition plan (4月21日付け The Korea Herald (Seoul))
→SK TelecomのCEO、Park Jung-ho氏が、corporate成長に向けて買収を追求したいとする一方、SK Hynixとメモリ半導体市場を避けてコラボ、半導体設計に取り組み始めている旨。「SK Telecomには、システム半導体開発に向けた十分なworkforceがあり、何人かのSK TelecomおよびSK Hynix workersをnonmemory半導体の創出で一緒にさせる計画である。」と、インタビューで同氏。
◇中国、半導体の微細化足踏み、装置7社聞き取り、「自給」に壁 (4月22日付け 日経産業)
→中国が半導体の微細化に手間取っている旨。主要な製造装置7社に聞き取り調査したところ、大半が世界的に2〜3世代遅れとなる回路線幅14-nm〜28-nmが主力と答えた旨。さらに前の世代が中心との声も多い旨。米国の制裁で部材の調達に支障を来しているとの声が多く、国産品による代替も歩留まりに影響が出ているもよう。
◇Intel CEO to Wall Street: 'The innovation machine is fired up.' (4月22日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→IntelのCEO、Pat Gelsinger氏が、次世代7-nanometer製品についての取り組みが再び軌道に乗っているという木曜22日callにてWall Streetに対し、製造leadershipの取り戻しを誓っている旨。
◇Chipmaker TSMC approves $2.8 bln for capacity expansion-TSMC expands capex budget to $2.89B for more capacity (4月22日付け Reuters)
→TSMC、木曜22日発。TSMCの役員会が、capacity増強に向けた$2.89 billionの出資を承認、特に自動車メーカーに影響を与えているグローバルな半導体の不足に対応の旨。
◇What They're Saying: Fund the CHIPS for America Act (4月23日付け SIA Blog)
→米国産官学の幅広い階層を代表する多様な関係者が、米国議会に対しCHIPS for America Actへの出資を求めている旨。自動車メーカーおよびcloud companiesから米国商工会議所および地方政府まで、議会は半導体における誰もが認めるグローバルリーダーとしてのアメリカの役割を確固としなければならないという広く行き渡った認識がある旨。
◇インテル、米で受託生産「50社と協議」、業界に温度差も (4月23日付け 日経 電子版 12:33)
→米インテルのパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は22日、米国で始める半導体の受託生産事業について「50社超の見込み客がいる」と明かした旨。2021年の業績が6年ぶりの減収見通しとなるなか、「生産回帰」を掲げる米政権に寄り添って巻き返しを狙う旨。一方、米国生産への移行については業界内でも温度差がある旨。
本件、情勢の推移に絶えず注目するところである。
コロナ対応のなかなか収まらない状況推移に対して、直面する事態への警戒感を伴った舵取りが各国それぞれに引き続き行われている世界の概況について、以下日々の政治経済の動きからの抽出であり、発信日で示している。
□4月19日(月)
コロナ感染がまたぞろ拡大の度を高めている。
◇世界の新規感染、過去最多に、インドで変異型が猛威 (日経 電子版 05:28)
→世界で新型コロナウイルスの感染拡大第4波が鮮明になっている旨。1日あたりの新規感染者数(7日移動平均)は17日に76万6000人超と昨年12月のピーク時の75万人強を超え、過去最多となった旨。米英やイスラエルでワクチン接種が広がる一方、インドや南米、欧州などでは従来より感染力が強いとされる変異ウイルスの感染拡大が顕著。
□4月20日(火)
米国株式市場は、過去最高値を更新した後の低下からワクチン普及、増税などに反応、上げ下げが続く展開である。
◇NYダウ反落123ドル安、景気敏感株に利益確定売り (日経 電子版 05:37)
→19日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4営業日ぶりに反落し、前週末比123ドル04セント(0.4%)安の3万4077ドル63セントで終えた旨。ダウ平均は前週に連日で過去最高値を更新しており、最近上昇が目立っていた消費関連など景気敏感株が売られた旨。米長期金利が上昇し、高PER(株価収益率)のハイテク株の一角も下げた旨。
□4月21日(水)
◇NYダウ続落、256ドル安、景気敏感株に売り広がる (日経 電子版 05:43)
→20日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続落し、前日比256ドル33セント(0.8%)安の3万3821ドル30セントで終えた旨。新興国を中心に世界の新型コロナウイルス感染者数の増加基調が続き、世界景気の足を引っ張りかねないとの見方から景気敏感株を中心に売りが広がった旨。
□4月22日(木)
◇NYダウ反発、316ドル高、ワクチン普及に期待 (日経 電子版 05:34)
→21日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3営業日ぶりに反発し、前日比316ドル01セント(0.9%)高の3万4137ドル31セントで終えた旨。新型コロナウイルスのワクチン普及への期待から景気敏感株中心に買いが優勢だった旨。IBMなど好決算を発表した銘柄への買いが強まり、ダウ平均は取引終了にかけ上げ幅を広げた旨。
□4月23日(金)
◇NYダウ反落321ドル安、株譲渡益への増税報道で売り (日経 電子版 05:45)
→22日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、前日比321ドル安の3万3815ドルで終えた旨。バイデン政権が富裕層を対象に株式譲渡益(キャピタルゲイン)への課税を従来の約2倍に引き上げる考えだと複数の米メディアが報じ、株の売りが強まった旨。
米国主催の気候変動サミットでの動きである。
◇バイデン氏「持続可能な未来へ行動を」気候変動サミット−先進国と途上国で溝も (日経 電子版 05:56)
→バイデン米大統領は22日に開幕した気候変動に関する首脳会議(サミット)で演説し「持続可能な未来に向けて行動すべきだ」と呼びかけた旨。「今後10年で気候変動危機による最悪の結果を避けるための決断をしなければいけない」と述べ、各国・地域の首脳に温暖化ガスの排出削減に向けた協力と行動を求めた旨。先進国は相次いで新たな削減目標を表明したが、途上国からは経済成長への配慮や支援を求める声も上がった旨。米政府が主催するオンライン形式のサミットには40の国と機関などの代表が出席、バイデン氏は米国の2030年のCO2排出量を2005年に比べて50〜52%減らす目標を打ち出した旨。温暖化対策でトランプ前政権の消極的姿勢から転換し、中国に次ぐ世界2位の二酸化炭素(CO2)排出国として脱炭素をめぐる国際協調を主導する旨。
□4月24日(土)
◇気候サミット閉幕、パリ協定修復へ世界再始動 (日経 電子版 05:15)
→米国主催の気候変動に関する首脳会議(サミット)が23日、閉幕、米国や日本など先進国は相次ぎ地球温暖化ガスの新たな削減目標を表明した旨。国際的な枠組み「パリ協定」の修復とその目標の達成に向けて世界は再始動したが、実効性をどう確保するかが問われ続ける旨。
東京など3度目の緊急事態宣言発令となる我が国である。
◇我慢の大型連休、緊急事態で百貨店など休業へ (日経 電子版 05:19)
→緊急事態宣言の発令に合わせ、多くの百貨店や外食企業が25日から東京など1都3府県で休業や時短に踏み切る旨。自治体は往来の自粛を呼びかけており、観光業への影響も大きい旨。プロ野球などは試合は続けるが無観客とする旨。2年連続でゴールデンウイークを挟む期間に事業の制約を受け、経済への打撃は避けられない旨。
◇NYダウ反発、227ドル高、株売却益への増税懸念和らぐ (日経 電子版 05:44)
→23日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比227ドル59セント(0.7%)高の3万4043ドル49セントで終えた旨。バイデン米政権が富裕層を対象に、株式などの売却益にかかるキャピタルゲイン課税を引き上げるとの22日の報道をきっかけに売りが先行した旨。売り一巡後は増税が相場に与える影響は限定的との見方から、前日に大きく下げたハイテク株中心に買いが広がった旨。
≪市場実態PickUp≫
【Apple関連】
Appleが新製品のオンライン発表、自前設計M1プロセッサ搭載iMacおよびM1-ベースiPad Proなど、以下の概要である。
◇Apple launches new iPad Pro with M1 processor-Better, more powerful chip (4月20日付け The Verge)
◇Apple rolls out new products as it faces new challenges (4月20日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Apple社が火曜20日、podcast subscriptionサービスおよび失われたitemsの位置づけに役立つtagsとともに、新しいiPadsおよびiMac computersを披露の旨。該streamingイベントで見られないのは、今後の成長を脅かす可能性のあるいくつかの事項についての言及の旨。
◇Apple unveils new M1-powered iMac and Apple TV 4K-Apple rolls out iMac with M1 chip, Apple TV 4K with A12 (4月21日付け DIGITIMES)
→Appleが、同社custom-設計のM1プロセッサ搭載iMacモデルおよびM1-ベースiPad Proを披露、同社は、A12 Bionic microchipを使用するApple TV 4Kモデルもお披露目の旨。
◇Apple、新型iPad Proを5月発売、自社開発半導体を採用 (4月21日付け 日経 電子版 05:27)
→米アップルは20日にオンラインで開いたイベントで、タブレット端末「iPad Pro」の新モデルを5月後半に発売すると発表、価格は799(日本での価格は税込み9万4800円)から。同社が自社で設計開発したパソコン向けの半導体を搭載し、画像処理などの性能を高めた旨。ProはiPadシリーズの最上位機種で、新モデルの発表は約1年ぶり。従来機種ではスマートフォン「iPhone」向けの半導体を改良した「A12Z」を搭載していた旨。2020年10月に発売した下位機種の「iPad Air」がより新しい世代の半導体「A14」を採用したことで、Proとの性能差が縮まっていた旨。
◇Intel入ってないiMac登場、Apple、初代以来の多色展開も (4月21日付け 日経 電子版 07:57)
→米アップルは20日に開いたオンラインイベントで、5月後半に発売するデスクトップパソコン「iMac」の新モデルを披露、CPUを米インテル製から高性能の自社設計品に切り替えるとともに、7種類の本体色を用意した旨。在宅需要の拡大が続くパソコン市場で攻勢に出る旨。
巨大IT追求の米国議会の動きで、Appleの自社優遇への批判が行われている。
◇Appleの自社優遇に批判、米議会、アプリ独占で公聴会 (4月22日付け 日経 電子版 12:53)
→米議会上院は21日、スマートフォンのアプリ配信サービスに関する公聴会を開いた旨。米アップルや米グーグルのサービス運営に不満を持つアプリ開発企業の幹部が出席し、自社の優遇など独占の弊害を指摘した旨。両社幹部は「アプリ経済圏」が広がった効果などを訴え、理解を求めた旨。
【Intel関連】
Intelが、VLSI Technologyから訴えられていた特許侵害の件で、陪審裁判の勝ちを得ている。
◇Intel defeats VLSI Technology in $3.1 bln patent trial (4月21日付け Reuters)
◇Jury sides with Intel in $3.1B patent suit by VLSI (4月22日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→VLSI Technology LLC(San Jose)がIntel社を相手取って特許侵害で$3.1 billionを求め訴えていた訴訟で、水曜21日、Intelが陪審裁判を勝利の旨。VLSIは2019年に該訴訟を起こし、"Speed Shift"技術を用いる製品が特許侵害としている旨。
◇Intel wins patent trial, dodging more than US$1bn blow (4月23日付け Taipei Times)
Intelの第一四半期業績および今後の見通しが、以下の通りあらわされている。直後の株価は下がる反応となっている。
◇Intel Q1 beats expectations, data center takes a hit, stock slides (4月22日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
◇インテル、第2四半期利益見通しなどが市場予想下回る、株価下落 (4月22日付け ロイター)
→米半導体大手インテルは22日、通期の売上高見通しを引き上げた旨。ただ、第1・四半期のデータセンター向け半導体事業の売上高や第2・四半期の利益見通しがアナリスト予想を下回った旨。インテルは半導体の高速化により競合他社に対し巻き返しを図ろうとしているが、前途の厳しさが示された旨。2021年の調整後売上高見通しは$72.5 billion、リフィニティブのアナリスト予想$72.32 billionを上回った旨。第2・四半期の調整後売上高見通しは$17.8 billionとアナリスト予想の$17.59 billionを上回った旨。これを受け、インテル株価は引け後の取引で2.2%安の61.17ドルとなった旨。
◇Intel PC chip sales rise, but profit forecast falls short on manufacturing costs (4月22日付け Reuters)
【NvidiaによるArm買収提案】
世界中で遍く使われているArm設計ということで、NvidiaによるArmの
$40 billion買収提案について、英国政府が、安全保障面の影響懸念から調査に乗り出している。
◇UK invokes national security to investigate Nvidia's ARM deal-UK cites national security in Arm-Nvidia deal investigation (4月19日付け Reuters)
→英国政府が、NvidiaによるArmの$40 billion買収提案を調査、国家セキュリティ検討点があるか確認の旨。英国のcompetition regulator、Competition and Markets Authorityが、調査を行い、その知見レポートを今夏リリースの運びで準備する計画の旨。
◇UK to investigate Nvidia's Arm acquisition on national security grounds-The deal has already attracted scrutiny on competition grounds (4月19日付け The Verge)
◇エヌビディアのアーム買収、英が調査、安保面の影響懸念 (4月20日付け 日経 電子版 05:35)
→英政府は19日、米半導体大手エヌビディアによる英半導体設計大手アームの買収について、安全保障上の問題が無いか調査すると発表、英国の競争当局である競争・市場庁(CMA:Competition & Markets Authority)は、買収が市場競争上問題ないか調べている旨。アーム設計の半導体が世界で幅広く使われていることなどから、英政府は安保面でも精査することを決めた旨。
【台湾メーカーの工場関連】
Foxconnが、Macronixの6-inch fab買収に関心との見方である。
◇Foxconn reportedly eyeing Macronix 6-inch fab-Report: Foxconn may buy Macronix's 6-inch wafer fab (4月20日付け DIGITIMES)
→Foxconn Electronics(Hon Hai Precision Industry)のchairman、Young-Way Liu氏が、同社がMacronix Internationalからの6-inch fab買収を図っているという憶測に対して、同社は6-inchあるいは8-inch半導体fabsの買収に関心がある旨。しかし、Liu氏は、Macronixが売りに出している6-inch fabの買収入札にFoxconnが参加するかどうか、確認を控えた旨。
DRAMメーカー、Nanya Technologyが、新しい12-inchウェーハfabの建設を打ち上げ、市場シェア堅守に努める、としている。
◇DRAM maker Nanya to build new 12-inch fab-Nanya plans a 12-inch wafer fab for DRAM production (4月20日付け DIGITIMES)
→台湾のDRAMメーカー、Nanya Technologyが、新しい12-inchウェーハfabを設立する計画、社内開発の10nm-classおよびEUV-ベースプロセス製造に向けて設計の旨。台湾北部、New Taipei Cityの該新fabは、12-inchウェーハ45,000枚/月の処理が行える旨。
◇Nanya to defend market share with new chip plant, says president-Exec: Nanya will boost market share with new wafer fab (4月21日付け DIGITIMES)
→Nanya Technologyのpresident、Pei-Ing Lee氏。同社のDRAM市場におけるシェアは約3%、追加の12-inchウェーハfabが2024年に稼働の運び、グローバル市場シェア堅守に努めていく旨。
◇南亜科技、1.2兆円投資、DRAM生産増強、7年で (4月21日付け 日経)
→半導体メモリのDRAM大手、台湾の南亜科技(ナンヤ・テクノロジー)は20日、拡大する半導体需要に対応するため、今後7年間で3000億台湾ドル(約1兆2000億円)を投じ、新工場の建設など能力増強に充てると発表、新工場は2021年末に着工し、2024年から順次、量産を始める旨。
Foxconnについては、鳴り物入りであった米国の工場建設の話が頓挫の結末となっている。
◇台湾・鴻海「米1兆円工場」が頓挫、トランプ政権終幕で (4月20日付け 日経 電子版 20:40)
→台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が米国で予定していた1兆円を超える新工場の建設計画が頓挫した旨。進出予定先の州政府は19日、工場の建設が今も進んでいないとし、40億ドル(約4400億円)の税優遇措置を実行しないと発表、華々しい発表から4年弱、新工場計画は大幅な縮小を余儀なくされた旨。関係者を翻弄し、政争の具ともなった巨大プロジェクトはようやく幕を下ろした旨。
【ルネサスエレ関連】
火災から1ヶ月、ルネサスエレクトロニクスの回復状況、今後の見通し、など以下の通りである。
◇Renesas says to restore full capacity at fire-damaged chip plant by end-May-Fire-damaged Renesas fab restarts IC production (4月19日付け Reuters)
◇ルネサス生産再開、出荷正常化、最短でも6月 (4月19日付け 日刊工業)
→ルネサスエレクトロニクスは火災で停止していた那珂工場(茨城県ひたちなか市)300-mmウエハーラインの一部で、半導体の生産を17日再開した旨。3月19日の火災発生から1カ月以内の生産再開を目標としており、これまでの復旧作業はほぼ計画通りに進んでいるよう。製造装置の入るクリーンルームは9日にいち早く運転を再開していた旨。取引先や製造装置メーカー、部材メーカーなどから1日当たり最大約1600人が現地入りし、復旧作業にあたっている旨。
◇ルネサス那珂工場、生産は5月中に火災前水準回復へ (4月19日付け 日経 電子版 16:30)
→ルネサスエレクトロニクスは19日、那珂工場(茨城県ひたちなか市)での生産再開を受けたオンライン会見を開いた旨。同工場での火災から1カ月。「東日本大震災以上のダメージ」(柴田英利社長)から、まずは計画通りの生産再開までこぎ着けた旨。今後は製品の品質を確認しながら、生産量を引き上げていく段階に入る旨。早期の出荷量回復と安全対策という両にらみの復旧作業は、まだ予断を許さない旨。
◇工場火災、なぜ全国で多発?、コスト競争で安全後手に−ルネサス、再稼働直後に発煙 (4月23日付け 日経 電子版 05:08)
→ルネサスエレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)で、21日午後に発煙があり一時生産を停止した旨。生産復旧には影響がなかったが、3月の火災からの再稼働をしてまもなくのトラブルとなった旨。ルネサスに限らず全国の工場施設での火災件数が増え続けてきた旨。厳しいコスト競争にさらされる中、安全面への投資が後手に回っている旨。
ルネサスエレクトロニクスが、RISC-V instruction set architecture(ISA)に基づくcustomizedシリコンを構築する最初のファブレス、SiFive(San Mateo, CA)との連携を発表している。
◇Renesas and SiFive link on RISC-V cores for auto ICs-Renesas teams with SiFive on RISC-V cores in auto chips-Renesas and SiFive are to co-develop RISC-V-based chips for automotive applications. (4月21日付け Electronics Weekly (UK))
→Renesas Electronicsが、open-source RISC-V instruction-set architecture(ISA)搭載設計coresのportfolioを提示するstartup、SiFiveと車載用半導体に向けたソリューション創出でコラボの旨。
◇Renesas and SiFive to jointly develop RISC-V solutions for automotive applications (4月21日付け New Electronics)
→Renesas ElectronicsとRISC-Vプロセッサ&シリコンソリューションのleader、SiFiveが、車載応用向け次世代, high-end RISC-Vソリューションを共同開発する戦略的連携を披露の旨。
≪グローバル雑学王−668≫
富裕層の文化、生活ぶりについて、衣食住の新展開 ビジネス化する「見せびらかし文化」を、
『スーパーリッチ――世界を支配する新勢力』
(太田 康夫:ちくま新書 1524) …2020年10月25日 第2刷発行
より、5回に分けて示していく1回目である。一部に限られていた富裕層ビジネスが、多くの人に見せびらかして、次の富裕層を取り込もうとするビジネス戦略が展開されている認識に立って、まずは、衣食住の身にまとうもの、身につくるものから入っていく。以下、ひたすら読み進めて認識を新たにする心境が続いていくことになりそうであるが、ファッション業界、そして時計業界ともに、時代の流れに即応してM&A、コングロマリット化が展開していく状況経緯があらわされている。我が半導体業界も、時間軸の情勢変化を受けてM&Aはじめ大きなうねりが繰り返されるところに、相通じるものを受け止めている。
第三章 作られる新貴族文化 …6分の2
(2)衣食住の新展開 ビジネス化する「見せびらかし文化」
・かつてニッチ・ビジネスだった富裕層ビジネスは、有力なビジネスへと変貌しつつある
→多くの人に見せびらかして、次の富裕層を取り込もうとする戦略
1)衣
◇寡占化進むファッション、LVMHが作り出したラグジュアリー文化
〇ノートルダムの寄付競争
・2019年4月、パリのノートルダム大聖堂で大規模な火災
→再建に寄付、目立ったのはファッションの支配者たち
・火事が起きた当日、ファッション業界おおて「Kering S.A.」が、持株会社のARTEMISから再建に1億ユーロを寄付すると表明
→対抗するかのように、ファッション大手、LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ
・ヴィトン:Moet Hennessy ‐ Louis Vuitton SE)が2億ユーロの寄付を表明
→化粧品大手の仏ロレアル(LOreal Paris)とその筆頭株主が1億ユーロ、さらに一族の慈善団体を通じて1億ユーロを追加で寄付すると発表
・「国家の有事には経済人として相応の負担は当然」という構えを示した
〇富裕層を飾ったオートクチュールの時代
・1868年、富裕層向け衣裳を手掛ける高級仕立て店のフランス・クチュール組合を結成
→この組合に加盟するオートクチュール(haute couture)を舞台、ジャンヌ・パキャンやココ・シャネルがベル・エポック(Belle Epoque:「良き時代」)のパリを飾った
・戦後、クリスチャン・ディオールのニュールックといわれるファッションが流行、オートクチュールは息を吹き返した
〇女性の社会進出が促したプレタポルテの台頭
・戦後、米国が突出した経済力を維持、その文化が世界的な広がりを見せた
→若者がファッションの先端を走る時代が幕を開けた
・オートクチュールのメゾン(maison:フランスのオートクチュール店)は、そうした変化に対応
→プレタポルテ(Pret a porter:フランス語で「着ていくための準備ができて いる」:高級既製服)の分野に進出
→プレタポルテ参入の先鞭をつけたのはピエール・カルダン
→その流れを決定づけたのはイヴ・サンローラン
→若者の街こそが流行の発信地であることを強く印象付けた
・現在、パリではオートクチュールが年2回コレクションを開催
→プレタポルテも年2回開催
→規模はプレタポルテの方が大
〇ファッション・ブランド集約の時代――ロエベなども傘下に
・日本の1980年代のバブル期
→高級ファッションはまだそれぞれのブランドの創設者やそれを引き継ぐ後継者などがプレタポルテの形で独自経営
→その後、富裕層を対象にしたファッション業界は様変わり
・仕掛けたのは、ベルナール・アルノー(Bernard Jean Etienne Arnault)
→クリスチャン・ディオールを傘下に持っていた繊維のマルセル・ブサック(Marcel Boussac)・グループを買収
→1987年、LVMH(Moet Hennessy ‐ Louis Vuitton SE)を結成
→LVMHの潜在力に目を付けたアルノーがマルセル・ブサック・グループを売却、その資金でLVMH株を買い、1989年に経営権を握った
→活発なM&Aで、ファッション界のコングロマリット形成へ動き始めた
→M&A攻勢は続き、2019年11月には、LVMHが米国のティファニーを買収することで両者が合意
→2020年になって新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大、LVMHは9月に買収断念を発表
→LVMHは、傘下に収めたブランドを生かしながら運営する基本方針
・ファッション・ブランドのグループ化の動きは、LVMHにとどまらない
→「Kering S.A.」も仕掛ける1つ
→ピノ・プランタン・ルドゥート(Pinault- Printemps-Redoute : PPR)が、1999年、イタリアのファッション・ブランド、グッチの株式の42%を取得
→ファッション・ハウスのイヴ・サンローラン買収など続き、フランス、イタリアの最高級ファッション・ハウスを擁する一大ファッション・コングロマリット、Keringに
・資本面からの統合が進んだブランドの、商魂のすごさを目の当たりに
→2020年2月、サウジアラビアの首都、リヤドにある超高層ビル、Kingdom Centreを訪れた
→サウジアラビアで女性は外出時に黒い衣裳のアバヤの着用が義務付けられる
→LVMHグループのジパンシィのショーウインドーの中のアバヤが、上から下まで黒一色、シルクのような素材、刺繍が施されている
→富裕層の夫人のブランド志向を捕えようとしている
・かつて超富裕層の王侯貴族が囲い込んでいたファッション
→いまや資本主義を勝ち抜いた超富裕層が富裕層向けビジネスとして抱え込み、そこで先端ファッションが生み出される新しい時代に
・LVMHの株式時価総額は、世界では28位、フランスでは最大、日本で最大のトヨタ自動車を上回る
◇資本の論理で再編される高級時計、ハイエクが仕掛けたコングロ化
・古くから富裕層に好まれてきた時計の世界も大きく変わりつつある
→高級時計の歴史を切り開いてきたのが「プレゲ(BREGUET)」
→「ブレゲ様式」と呼ばれる新しいデザインも生み出した
・現在、欧米で世界一の高級時計ブランドと言われることが多いのがパテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)
→このブランドの凄さを印象付けたのが、1999年にオークションハウスのサザビーズ(Sotheby's)が開いたオークション
→時計のモナ・リザとも呼ばれる「ヘンリー・グレーブス・スーパーコンプリケーション(Henry Graves Supercomplication)」
→2014年、この懐中時計が再びオークションに出品、約28億円という史上最高値で落札
〇オメガの復讐
・2019年7月、東京駅丸の内中央広場に東京五輪開幕までの時間を示すカウントダウン時計が設置
→表示されたオフィシャルタイムキーパー、オメガ(OMEGA)の文字
→オメガは1932年のロサンゼルス五輪以降、正確さとデザインで、スイスの代名詞のように
→ところが、1964年、東京五輪で、セイコーがオフィシャルタイムキーパーを務める
→当時の最先端の水晶振動子を用いたクオーツ時計
→その後、セイコーはクオーツ時計を低価格化し、市場を席巻
→日本メーカーの躍進は、スイス勢を苦境に追い込んでいた
→取引銀行から管財相談を持ち掛けられたのが、ニコラス・ハイエク(Nicolas George Hayek)
→ハイエクは、再生策で、ソシエテ・スイス・ドゥ・マイクロエレクトロニック・エ・オホロジェリー(SMH)を創業
→同社が送り出した「スウォッチ」、色とりどりで状況に応じて使い分けするようなコンセプト
・正確なクオーツ技術では優れていた日本勢だが、ファッション・メーカー顔負けのファッション性ではかなわなかった
→2020年のライバルの本拠で開く東京五輪でも傘下のオメガがその地位を日本に渡さなかった
〇ハイエクが仕掛けた高級時計のコングロ化
・スイスの高級時計は立て直しの過程で、大きな構造変化
→力をつけたSMHは、M&Aの手法を使って拡大路線を突き進んだ
→現在SMHは、数多くの時計ブランドを保有する世界最大の時計グループに
→スイス伝統の時計の良さを生かす形でグループ傘下に旧勢力を取り込んでいき、結果的にスイスの時計産業の地位を取り戻した
・時計界でスウォッチのコングロマリット化に対抗するのが、スイスのリシュモン(Compagnie Financiere Richemont SA)
・18世紀以来のスイスを中心に栄えてきた高級時計
→現在ではスウォッチ、リシュモンの両グループが多くのブランドを抱える
→この両グループに入らないのは、ロレックス(ROLEX)、オーデマピゲ(AUDEMARS PIGUET)などごくわずか
〇揺れる富裕層の社交の場、バーゼル見本市
・毎年3月終わりから4月の初めにかけて、富裕層のあかしともいえる宝飾品や高級時計の世界最大の見本市「バーゼル・フェア」
→始まったのは1972年、一般の人も入場料を払えば入れる
→筆者は1991年に訪れ、ひたすら豪奢を追求しようとする富裕層の性を見たような気
・2000年代になると中国人の高級時計購入が増え業界は拡大
→2015年ごろから中国勢の購入が頭打ちに
・時代の変化に対応、バーゼル・フェアは2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大で中止に
→今後、富裕層の時計の祭典がどうなっていくのかに注目