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2009年世界半導体販売高/市場実態PickUp/グローバル雑学王−83

米SIAから発表された昨年、2009年の世界半導体販売高は$226.3Bで、前年比9%減と年後半にかけて世界を挙げて盛り返しに奮闘したお蔭でこのような小幅な落ち込みに留まったということと思う。前年、2008年は$248.6Bで、2007年の$255.6Bから2.8%減という推移であり、今年、2010年は大きなプラス伸長を期待したいし、産業規模として1ランク上の$300B到達にできるだけ早くという思いが沸いてくる。

≪2009年世界半導体販売高≫

米SIAからの発表内容は次の通りである。第四四半期、10-12月期の盛り返しぶりは、デバイス分野、エレクトロニクス機器ごとの販売高データ、各社の業績発表によく表れていると受け止めている。

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○2009年のグローバル半導体販売高は減少…2月1日付けSIAプレスリリース

2009年の世界半導体販売高は$226.3 billionで、2008年の$248.6 billionから9%の減少、とSemiconductor Industry Association(SIA)が本日発表した。2009年の販売高総計は、SIAが予測した$219.7 billionを上回っている。12月の販売高は$22.4 billionで、2008年12月の$17.4 billionから29%増加している。この12月販売高は前月、11月の$22.7 billionからは1.2%の減少である。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「2009年はグローバル半導体業界にとって予想以上に良い年となった。」とSIA President、George Scalise氏は言う。「supply chain全体で在庫に重点がしっかり置かれたため、世界経済不況によるインパクトが軽減され、グローバル経済の回復につれて我々の業界は伸びる位置づけとなった。」

「2009年最終四半期の販売高は、パソコン、携帯電話およびconsumer electronicsなどいろいろな末端市場での健全な需要に支えられている。半導体消費全体の約60%を占めるパソコンおよび携帯電話の2010年販売数量は、10%台前半から半ばの伸びで半導体販売の堅調な基盤が得られよう。consumer electronicsは、一桁半ばの伸びが見込まれる。」とScalise氏は続ける。「企業向け分野でも回復の効果が見えており、この流れは続くものと思う。」とScalise氏は特に言及した。SIAは、この第一四半期は多少の減少を示すという通常の季節パターンに戻ると見ている。

2つの鍵を握る新興市場、中国とインドがまた、需要を引っ張っている。
handsetsおよびコンピュータなどconsumer製品を買い求めるのに加えて、両地域では有線および無線インフラに引き続き投資を行っている。このようなインフラ投資が、広範囲の半導体製品需要を生み出している。

「技術に進展により、netbookおよびtabletコンピュータのような新製品開発が頻繁に可能となっている。」とScalise氏は言う。「これら製品の魅力的な価格が、これまでには存在してない新しい市場セグメントを作り出して、半導体需要の上乗せになっている。」

「世界全体に消費者信頼感が良くなり経済回復の兆候があって、2010年の半導体業界はかなり伸びる位置づけにある。」とScalise氏は締め括った。

※12月までの前年比伸び率推移のデータ図面、下記参照。
http://www.reed-electronics.com/articles/images/ENEWS/20100201/6717152_chart.jpg
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地域別の販売高データは次の通りである。何より目立つのは、日本市場の他地域に比べた後れである。特にここ何年か上回っていたアメリカ地域に逆転されている。下記の7- 9月平均と10-12月平均の間がその境目になっているかと思う。 

【3ヶ月平均ベース】
市場地域  Dec 2008 Nov 2009 Dec 2009 前年同月比 前月比
========
Americas2.703.893.8342.2-1.4
Europe2.553.022.9415.4 -2.5
Japan3.743.843.61-3.3-6.0
Asia Pacific8.4211.9612.0442.90.6
(うち中国4.724.812.1)
$17.41 B$22.71 B$22.43 B28.9 %-1.2 %

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市場地域  7- 9月平均  10-12月平均  change
Americas 3.49 3.83 10.0
Europe 2.62 2.94 12.4
Japan 3.64 3.61 -0.6
Asia Pacific 11.22 12.04 7.3
$20.96 B $22.43 B 7.0 %


我が国も景況が盛り返してきているという理解であるが、世界全体の動きの中でのデータとその位置づけをよく検証していって、伸びる市場への我が国ならではの技術、強みというものを最大限発揮して市場パイを拡大していかなければ、ということと思う。


≪市場実態PickUp≫

Intel社とMicron Technology社のNANDフラッシュメモリ連携タッグが、技術先行性をアピールしている。

【Intel & MicronのNAND攻勢】

◇Intel, Micron take NAND lead, roll 25-nm chip(1月30日付け EE Times)
→Intel社(Santa Clara)とMicron Technology社(Boise, Ida.)のNAND fab合弁、IM Flash Technologies LLCが、25-nmファミリーの最初のデバイスを展開、NANDフラッシュのプロセス技術で先行の旨。今回のデバイスは、multi-level-cell(MLC), 8-GB、167-mm2の旨。競合現状、次の通りの旨。
SanDisk-東芝          32-nm
Samsung Electronics Co. Ltd.   30-nm
Hynix Semiconductor      26-nm(待機)

下記データからいけば、合わせると確固とした第3位の位置づけとなる。

◇Samsung, Toshiba retain lead in Q4 NAND ranking(2月1日付け EE Times)
→DRAMexchangeによるNANDフラッシュメモリ市場シェアデータ:
 [2009年間]
 Samsung   $4.575B  シェア37.9%
 東芝     $4.131B    34.2%
 Micron    $1.137B    9.4%
 Hynix     $1.103B
 Intel      $837M
 Numonyx   $297M

◇Micron VP: Five reasons to be bullish (2月2日付け EE Times)
→EE Timesとの仕事話から、Micron Technology社(Boise, Ida.)メモリグループVP、Brian Shirley氏が積極的である5つの理由:
1. The memory business is up.
2. The DRAM market recovers!
3. NAND is stable.
4. Killer app found?  →e-bookおよびiPad市場
5. NAND still scales. →15- to 10-nmが見えるという声の高まり

ブラジルでの半導体fabオープンの状況、次の通りである。

【ブラジルの半導体fab】

◇Veteran chip exec envisions Brazilian mega-fab(2月3日付け EE Times)
→今週後半、ブラジルの半導体startup、Ceitec SAが、ブラジル南部Porto Alegreのfabの正式テープカットの運び、記念式典には同国大統領はじめ政府officials数人が出席予定の旨。このPorto Alegre fabは、X-Fab Semiconductor Foundries AGからライセンス供与された0.6μmプロセス技術を用い、6インチ約1K枚/週の生産能力に留まるという足掛かりの位置づけ、3年以内にはブラジルでの大規模300-mm "TSMC-type fab"実現を目指していく旨。

半導体の世界でも検察との応酬沙汰が起きており、事実関係、実態解明を見るしかなしである。

【三星の半導体技術流出】

◇三星の半導体技術、米装備会社経由で外部に流出。−検察、19人摘発…3人拘束(2月4日付け 韓国・中央日報)
→ソウル東部地検が3日、「半導体製造工程に関する三星電子の核心技術が米国装備会社、AMATを通して流出した」とし、「このうち一部は国内競争会社のハイニックスなどに渡った」と発表した旨。
6年間にわたり流出した技術は、国家核心技術に指定されたDRAMとNAND型フラッシュメモリの製作工程など95件で、ハイニックスには13件が渡ったという旨。特に三星電子から流出した技術が米国など海外競合他社にも渡った可能性が高い、というのが検察の説明の旨。

上記の世界半導体販売高で、2010年のプラス伸長への大きな期待感があったが、製品カテゴリー別の伸び率見通しについて以下の予測が出ている。二桁伸長もかなり高めになっており、思いの丈が強く反映されている感じ方がある。

【2010年伸びる製品分野】

◇Double-digit growth returning for many IC products, including DRAM, 32-bit MCUs-According to IC Insights, DRAM, 32-bit MCUs, and flash memory are among the strongest growth segments for this year and will surpass the forecasted 15% growth for the total IC industry in 2010.(2月4日付け Electronics Design, Strategy, News)
→リリースされたばかりのIC Insights社2010 McClean Reportから、2010年IC製品カテゴリー別伸び率トップ10、次の通り。
1. DRAM.....................................31%
2. 32-bit MCU...............................18%
3. Automotive logic.........................18%
4. Flash memory.............................18%
5. Automotive analog .......................17%
6. Computer analog..........................16%
7. Comp & perif. Logic......................15%
8. Consumer analog..........................15%
9. Microprocessors..........................15%
10= Data conversion..........................14%
10= Voltage reg. & ref.......................14%
 [Source: IC Insights Inc.]


≪グローバル雑学王−83≫

今までに最もよく訪れている外国ではあるが、小生にもアジアシフトの流れが及んで最近は御無沙汰。それが米国。その最新事情を

『アメリカを知る』(実 哲也 著:日経文庫1213) …2009年12月 1版1刷

より、認識するとともに、分かっているようでちっともそうではないのでは、という危惧が多々であり、少しずつでも本書を読み進めながら、矯正していけたらと思う。


[はじめに]
・米国情報や米国論が溢れかえっている半面、認識不足や理解が一方的で偏っている論評や書籍も
・著者は、日経の記者としてニューヨークとワシントンに10年あまり駐在(2008年2月まで)、全米各地を取材、米国ウォッチを続けた

[I] 試練にさらされた米国

1 経済金融危機の爪痕
(1)重なり合う課題
・米国が抱える問題の一端を浮き彫りに
 →一つとして、金融機関が借り入れを増やして無謀な投資に走った
・サブプライム・ローン問題の背景
 …本来おカネを借り入れるだけの収入を持っていない人まで借金ができてしまう借金漬けの文化
・医療保険を持たない人の急増という問題も危機以前から深刻に
・テロや核兵器の拡散は米国にとって大きな脅威
(2)リーマン・ショックの衝撃度
・金融システムが崩壊の瀬戸際まで行った
・経済成長率、マイナス成長が4四半期も続いたのは戦後では例がなく、失業率も1982から1983年以来の10%台
(3)消費大国にきしみ
・今回の危機は米国経済の原動力である消費者が過剰な借り入れをしたことで消費バブルが起き、これが崩壊したところに特徴
・2007年には借り入れ残高が国内総生産(GDP)と並ぶ水準に
・危機の発端は住宅バブルの崩壊 …住宅価格は2006年を頂点に、その後3年で30%も下落
・本格的な経済回復に必要な調整 →消費者の借り入れ減らし
                →金融機関のバランスシートの立て直し
(4)財政赤字膨張の懸念
・オバマ政権の対応 →7800億ドルを超す大規模な財政刺激策
          →金融機関に対する公的資金の注入
・国債の発行増加 …主要な買い手は中国など海外の投資家
         →迫られる綱渡りの舵取り

※今回の経済危機の発信源である米国の実情を、再確認する内容と思う。
2006年以降の住宅価格の急激な下落には驚かされる。何処も同じことか、きめ細かい冷静な分析、調整・舵取りの必要性である。

2 高まる国民の不満
(1)金融機関に不信の目 
・オバマ大統領は、金融市場への監視の目が行き届いていなかったことが危機の一因と強調
・米国民が勝手気ままに動いてきた金融機関への不満を募らせているのは確か
(2)政府の介入強化には警戒論
・民間の経済活動への政府の介入に対する本能的な警戒感が根強いのも米国の国柄
 →政府の介入はあくまで危機対応、事業の再構築が進めば速やかに手を引くというのが基本方針
(3)不安定化する生活
・2000年代は景気が回復しても所得が少しずつしか伸びず。全体としては低所得層で所得が伸び悩んでいるのが特徴
・典型はコンピュータソフトのプログラマー。インドへのアウトソースで、賃金低下や失職が日常茶飯事に。
(4)グローバル化に矛先
・米国の人々の間では、生活の不満や不安の矛先をグローバル化やそれを促す政策に向けるムードも。
 →かつての「業界主導の保護主義」から、最近は「草の根の保護主義」台頭へ
・2000年代に急増した不法移民にも不満の矛先

※我が国でも、バブル崩壊、失われた十年、などと言われていまだに伸び悩み、停滞感が漂う現時点と感じるが、上記によると、米国では21世紀になってからの特にそのような傾向の強まりをグラフデータから感じさせられる。

3 影響力低下への懸念
(1)世界経済でのシェア下がる
・米国経済が圧倒的に持っていた影響力が、新興国の影響力の増大に伴う相対的な地位の低下へ
・米ゴールドマン・サックスのGDP水準(通常ドルベース)の見方
 −2027年までに米中が逆転する可能性
 −2050年には米国とインドの規模が並ぶ
・米国の輸入額はなお中国の2倍近い規模を維持、世界貿易の需要を生み出す力はいまだ健在
・米国は一定の潜在的な成長力はまだ維持できそう
(2)揺れるドルの地位
・米国の経済力の相対的低下がもたらす懸念
 第一: 基軸通貨であるドルの地位への悪影響
 第二: 米国の軍事力の圧倒的な優位性を揺るがしかねない
(3)安全保障でも不安感
・米国や世界の安全に対する米政権の現状認識が一層厳しくなっている
・核保有国自身が核軍縮に動くとともに、対話や相互理解促進でテロリストを増殖させない環境をつくることが不可欠
・「世界の警察官」の役割を単独で行うゆとりはもはやない
(4)中国の台頭
・中国がその実力に見合う形で世界の問題について、より責任ある役割を果たしてほしいというのが基本スタンス
・「中国が将来敵対的な動きをする可能性にも備えておく必要がある」という声は、米国の安全保障専門家の間ではよく聞かれるところ
(5)オバマ流現実主義の成否
・人の言うことを聞く姿勢。イデオロギーにとらわれないバランスのとれた解決策を考えるプラグマティズム(現実主義)
・バランスのとれた現実主義と個人的な人気に基づく指導力でどこまで立ち向かえるのか
 →その成否は米国の将来を大きく左右

※米国半導体業界も、SIAサイトで"米国競争力の強化"というコーナーを設けて数年になる。最先端技術をリードして、新しい世界需要を創出する牽引役は、米国しかないという強烈な自負心を感じるし、半導体には限らないが世界をリードしている経緯、実績からいって、日本など先進諸国との協力関係のもと、今後も先導役であることには間違いないことと思う。

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