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グローバルな激動:2009年/市場実態PickUp/グローバル雑学王−77

世界経済危機による落ち込み、世界各国・地域の回復に向けた必死の努力に追われた2009年、世界半導体販売高も年半ばでは21.3%の減少かと見られたが、1-10月までの累計では16.6%減となっていて(米SIAの3ヶ月平均データのベース)、食い止める各方面の努力が反映されてきている。緩やかな回復を続けている現時点で、半導体・デバイス業界のこの2009年を振り返る。

≪グローバルな激動:2009年≫

政治、経済はじめグローバルな激動に終始した2009年、手前勝手ながら小生の本欄の記述から見出し、キーフレーズを挙げていくと、次の通り。

1月
 ≪気になる市場実態把握≫ 長期連載にはしたくはないもの
 ≪台湾DRAM業界の動き≫ さらなる統合再編を模索
 ≪落ち込みの実態≫ 米インテルの10-12月期、純利益90%減
               サムスン電子、公表を始めた2000年以来、初の四半期赤字

※長期連載は避けたいとしたものの、4月から"市場実態PickUp"として定着せざるを得ない結果となっている。

2月
 ≪各社・地域の危機打開策≫ NEC、システムLSIで統合交渉
 ≪米中の今後≫ 米GDP 3.8%減、27年ぶりの下落幅
            中国GDP、10〜12月6.8%、減速さらに強まる
 ≪2008年半導体販売高≫ 2.8%減、$248.6 billion
 ≪市場&対策実態≫ 72兆円規模の米景気法案、上下両院が可決
 ≪米国景気対策への反応≫ 各方面のせめぎ合いの様相を予感

※当然ながら、第一四半期、1-3月に、各国・地域での経済浮揚策の決定、動きが集中しているところがあると思う。

3月
◇Micron agrees to release DRAM technology to Taiwan
 ≪懐かしのJEDEC≫ お互い30年前にも遡って共有する業界の推移
 ≪新たな再編・競合模様≫ 
  インテルがプロセッサ製造を初めて外部に委託し、その先がファウンドリー最大手、TSMC
  AMDが製造部門を分離、GlobalFoundries社(Sunnyvale, Calif.)
◇Taiwan proposes new DRAM venture
 ≪米国競争力維持の主張≫ SIAの政府への財政支援拡大要求
 ≪消費浮揚を図る動き≫ 
  台湾初の試み−−「旧正月特需」をもたらした消費券効果
  中国の各自治体における消費浮揚策
 ≪市場実態いくつか≫ 【底を打った?】いくつかのデータ例

※上記のJEDECは、小生が1980年代に出席していたメモリ標準化の会議のこと。当時は米国での話ながら、現在まで業界仲間としてグローバルな交流が続いている。

4月
 ≪隆盛の宴の後≫ 「沸騰都市」(ドバイ、ロンドン、ダッカ、イスタンブール)その後
 ≪続く業界再編≫ ルネサスとNECエレ統合、半導体世界3位
 【DRAM業界再編】 エルピーダとTMC提携、日台で支援確認
 ≪注目の経済地域≫ 
  アブダビ、大型都市開発の発表相次ぐ、ドバイは縮小
  中国、家電の農村への普及政策、大きな成果

※ここらあたりから、業界再編、新興経済圏の動きが活発になっていく。

5月
 ≪3月の半導体販売高≫ 2月から僅かながら立ち直り
 ≪台湾市場での好転≫ TSMC, UMC April sales improve in chip recovery
 ≪大幅ランキング変動≫ 第一四半期半導体販売高、トップ20の内17社の順位に変動
 【日本のスパコン】
 【EC対インテルの攻防】

6月
 ≪4月の半導体販売高&年央予測≫ SIA予測:2009年販売高は前年比21.3%減
 【IMEC Technology Forum(IMEC 25周年)】 台湾との連携に軸足を置くR&D活動
 【インテルのWind River買収】
 ≪ファウンドリー業界の激変≫ TSMC、Morris Chang氏復帰
 ≪またもやMoore則終焉論議≫ Intel社、ムーアの法則に徹する健在ぶり
 ≪立ちはだかるリソースの壁≫ 窮状と再生を図る内容の記事が相次ぐ
 【Windows 7】
 【インテル/ノキア 連携】

7月
 【Infineonのwireline事業売却】
 ◇サムスン電子、営業利益が回復、2009年4〜6月期、前年同期並に
 【インテル、IBM業績見通しの波紋】 大方の予想を上回る
 【DRAM価格】 7カ月半ぶり1ドル回復、採算ライン近付く
 【両岸関係】 中国と台湾の結びつきの強まり、"Chaiwan"
 【米国の新半導体fab】 Global FoundriesのFab 2
 【GDP伸長】 中国が盛り返し、韓国もウォン安が効いてか回復感

※ここでのサムスン電子はじめ、DRAM関連の業績回復が続くのを見るにつけ、"DRAMは基本"という意味を改めて考えている。

8月
 ≪"底打ち感"を巡る切実な声、本音≫ 我が国はどこで生き残るか
 ≪世界半導体販売高≫ 第二四半期は、前四半期比17%増加
 【Molex社のフランスでの紛糾事態】 フランスでのもめ事の深刻さ
 【ファウンドリーcapacity稼働率】【DRAM業界売上げ】弾みの期待

※今に始まったことではないが、我が国のあり方、グローバルな業界でのプレゼンスを問う論調の高まりを感じている。

9月
 ≪市場実態≫ 中国市場が世界半導体市場を反映するバロメータに
 【LED TVs】 LEDバックライトを採用した液晶テレビ
 ≪加速するグローバルな協調&競争≫ ATIC to buy, fold Chartered into GlobalFoundries
 【グローバルPC市場】 半年ぶりに前四半期比プラスの伸び
 ◎インテルの事業体制、MPU市場シェア、最先端技術ライン立ち上げの動き
 ≪IDFに見る最前線模様≫ "PC接続オール光"

10月
 【TIのアナログ300-mm fab】 Qimonda AGのfab(Sandston, Va.)からの半導体製造装置購入
 【モバイル機器プロセッサ】 インテルを追いかけるARM
 【Altera−MIPS】【ARM−GlobalFoundries】
 ≪半導体業界に迫る波動≫ 
  NXPが、今後は高性能mixed-signalに傾注
  ARM社の今後の有望性
  製造が中国から離れる流れ
 ≪伸びの話題総尽くし≫ 世界市場の浮揚を引っ張る中国

11月
 ≪急展開の新技術≫ 中国の電気自動車 米国でのsmart grid
 ≪第三四半期半導体販売高≫ 市場状況の改善を反映
 【大きな節目の米SIA】 Washington, D.C.に移転
 ≪ロングラン係争2件の決着≫ インテル 対 AMD:TSMC 対 SMIC
 【台湾震源のDRAM業界変動】
 ≪グローバル経済の激動≫ ドバイ失速、国際金融に影 新興国リスク再び

12月
 ≪仁義なきグローバル商戦≫ 中国を巡る動き、そして変化
 【対インテル訴訟】 FTC sues Intel, claims MPU leader abused dominant position

LED、新たなモバイル機器など伸びる材料を追い求める後半の強い市場の空気を感じている。まだまだ緩やかな回復行程の道半ば、じっくりとしぶとい目をもって迎える新年である。


≪市場実態PickUp≫

このところの普段に戻って、市場の動きに注目していく。

地震に見舞われた台湾、その被害を受けたTSMCであるが、2010年に向けて力強い意気込みである。

【景気づけの意気込み】

◇Quake costs TSMC half day of production (12月21日付け EE Times)
→週末に台湾を襲った地震で、TSMCにて半日以上(約0.59日)のウェーハ生産lossが発生の旨。

◇Report: TSMC to raise salaries 15% (12月21日付け EE Times)
→Reuters発。TSMCが、力強く非常に良い2010年の期待、来月から従業員のbase salariesを15%上げる旨。

2010年がどうなるかを見回して、良さそう、悪そうそして願望のあげつらえである。

【2010年の眺望】

◇2010: 20 good and bad signs for electronics biz(12月22日付け EE Times)
→2010年に向けての市場の兆候、良きも悪しきも。いろいろなアナリストの見方をまとめて次の通り。
[良い兆候]
 1. Seasonal demand for ICs is better than expected.
 2. Companies are raising guidance
 3. Demand to pick up in 2010.
 4. PCs up in 2010.
 5. A DRAM rebound?
 6. NAND to grow.
 7. LEDs are another bright spot.
 8. Solar is sunny.
 9. TVs in cars?
 10. Connected cars roll.
[悪い兆候]
 1. Prices to rise in analog?
 2. Application processor war is coming.
 3. Touch screens notebooks not taking off yet.
 4. NOR is a bore.
 5. Fab tool downturn continues.
 6. Backend capacity remains tight at Amkor and others
 7. More backend woes.
 8. Solar shakeout hits.
 9. Chinese firms ride vertical integration to solar cost leadership.
 10. Netbooks to slow?

◇Seven things to fix in 2010. Join the conversation-Our list spans nano-lithography to manned space travel(12月21日付け EE Times)
→どんなエレクトロニクスの混乱を2010年にはエンジニアが収束するよう願うか、EE Timesのeditorsが挙げる7項目:
 1. Wanted: next-gen lithography
 2. Plug me in to wireless power
 3. Plug me into the smart grid
 4. It's time for Apollo 2.0
 5. Easier to use ease-of-use
 6,7. Better keyboards, displays

米SIAの月次発表に先行する見通しである。

【11月の世界半導体販売高 速報】

◇Global sales were strong in November, says analyst(12月23日付け EE Times)
→Carnegie Group(Oslo, Norway)の見方。11月のグローバル半導体販売高(9-11月の3ヶ月平均値)は$22.5B、前月、10月は$21.7B、前年同月比は7.7%増となる旨。11月のactual販売高では、前年同月比26%増になりそうな旨。

次の件、台湾および韓国政府のスタンスに今後も注目である。

【中国でのLCD工場建設】

◇AUO, CMO urge Taiwan to lift ban, as Korea lets Samsung, LGD set up LCD plants in China (12月25日付け DIGITIMES)
→AU Optronics(AUO)が中国のLCD工場建設準備完了を示唆、台湾政府がcross-strait投資禁止を解除するのを待つのみ、一方、Chi Mei Optoelectronics(CMO)は台湾政府に対し該政策を緩和するよう督促の旨。
韓国政府は木曜24日、Samsung ElectronicsとLG Display(LGD)の中国のLCD工場建設申請を承認の旨。

中国に次いで、インドでの普及の凄さを感じている。

【インドの携帯電話】

◇インド、携帯加入5億件、11月末、7カ月で1億件増える。(12月26日付け NIKKEI NET)
→インドの携帯電話加入件数が累計で5億件を突破、インド電気通信規制庁(TRAI)によると、11月末時点の加入件数は5億600万件、4億件に乗せた4月以来、7カ月で加入が1億件以上増えた旨。近年の経済成長に伴う堅調な個人消費や、通話料金の値下げなどが追い風になり、農村部を中心に加入者が急増している旨。
インドの加入件数は中国(2009年5月時点で約6億8千万件)に次ぐ世界2位、2億5千万件だった2008年2月から2年弱で倍増した旨。月間純増数は世界1位とみられ、11月は1764万件と過去最高を更新した旨。


≪グローバル雑学王−77≫

西から東に動く世界の重心を取り上げたのに続いて、アメリカがどうしてこけたのか、最近またテレビでよく目にする著者の切り口が入っている。

『知らないと恥をかく世界の大問題』(池上 彰 著:角川SSC新書 081)
 …2009年11月 第1刷

より、著者の主観、客観的知識・事項など織り交ざるが、以下の取り出しである。

第2章 20世紀の覇権国家・アメリカを転落させたもの

■アメリカは日本をバカにしていたくせに……
・今は「アメリカの覇権の終わり」という大きな歴史的転換点
・アメリカを支えてきた金融の"かじ取り役" 
 →「FRB」(連邦準備制度理事会)
 →「金融機関を救済する銀行」
・全米50州を12の地区連銀が分担して管轄
 →1ドル紙幣の左側の円内に「A」から「L」までの12のアルファベット
  A ボストン連邦準備銀行
  B ニューヨーク連邦準備銀行
  C フィラデルフィア連邦準備銀行
  D クリーブランド連邦準備銀行
  E リッチモンド連邦準備銀行
  F アトランタ連邦準備銀行
  G シカゴ連邦準備銀行
  H セントルイス連邦準備銀行
  I ミネアポリス連邦準備銀行
  J カンザスシティー連邦準備銀行
  K ダラス連邦準備銀行
  L サンフランシスコ連邦準備銀行
これら12のを統括する仕組みが必要に ⇒FRB
・アメリカの金融政策の最高意思決定機関となるのがFOMC(連邦公開市場委員会)
 …FRBの理事7名と地区連銀の総裁5名
・2009年10月時点で「ゼロ金利政策」を続行

※次項と合わせ、我が国に非難めいて言ってたアメリカが、今は同じことをやっている、という論調。

■バーナンキは日銀に「ケチャップを買え!」と言った
・ゼロ金利政策には限界 …ゼロ以下には下げられない
 →代わるものとして「量的緩和政策」
 ⇒我が国の場合、日銀という金庫に「タンス預金をしておく」というイメージ
・景気をよくするには、金融政策と「財政出動」(公共投資など)しかない
 ⇒今回、世界はどちらの手段も動員、金融不安の解消に努めた
・バーナンキ現FRB議長のかっての日本に対する弁「ケチャップを買え!」
 …"国債だろうが株だろうが何でも買って、市場に金を"
 ⇒今や、アメリカでも

■世界恐慌の引き金を引いたのは……
・プライムローンの金利が年6%程度、サブプライムローンの金利は10%を超えるものも
・リーマン・ブラザーズは「債権」を「債券」に証券化する商売が得意だった
・この「金融の闇鍋」に世界中の金融機関が手を出した

■大きかったサブプライムローン問題の余波
・余波 ⇒住宅価格が下がり、金融機関の破綻・再編が加速
・2008年9月15日、150年の歴史を持つ老舗のリーマン・ブラザーズは連邦破産法の適用を申請 →アメリカ史上最大の倒産劇
・金融危機の発生 →AIGのような保険会社の支払い急増を意味
            ⇒FRBは850億ドルもの緊急融資を決定

※以上、今回の経済危機の発端、経緯を改めてレビューである。

■アメリカは一番得意な分野でコケた
・アメリカの自動車業界ビッグ3がダメになった3つの理由
 1.アメリカ特有の市場環境が競争力を低下させた 
   …低い高性能ニーズ、国内巨大市場
 2.アメリカの自動車業界は労働組合が強い    
   …高給、福利厚生充実
 3.国の保護に頼ったために競争力が低下
・今後、世界の自動車産業は、低価格、高性能、低燃費、環境配慮をテーマに切磋していくしかない

■世界恐慌を引き起こしたのは"第2のフーバー"?
・Bush前大統領は、"世界恐慌"を起こした「第2のフーバー」と呼ばれた
・共和党は、伝統的に「小さな政府」主義、国家の経済介入には抑制的
 民主党は、「大きな政府」を許容、景気対策のためには国家の介入が必要という考え方
・ルーズベルトの「ニューディール政策」
 …政府が積極的に経済介入、雇用を創出して景気浮揚
 オバマ大統領は「グリーン・ニューディール政策」 
  ⇒どんなチェンジかに期待
・アメリカの弱体化はもう止められないだろう 
 …「アメリカの覇権の終焉」を意味

※まさに現時点の政治、経済のお話。上記の自動車産業は、半導体・デバイス産業といろいろ合わさってくるものを感じている。

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