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1月の世界半導体販売高/市場実態PickUp/グローバル雑学王−87

今年の出だし、1月の世界半導体販売高が米SIAから発表され、前月の昨年12月からは微増、そして経済危機の影響で底に喘いだ昨年1月からは50%近い増加率となっている。これを今後に向けてどう読むか、今年、2010年の伸び率に大きな幅のある予測の見方を呼んでいる。

≪1月の世界半導体販売高≫

米SIAからの発表内容は次の通り。個人消費者市場に伸び如何が大きくかかるとする、このところ続くあっさりとした見方を受け止めている。

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○1月の半導体販売高、12月から0.3%増 …3月1日付けSIAプレスリリース

1月の世界半導体販売高が$22.5 billionで、12月の$22.4 billionから0.3%増加した、とSemiconductor Industry Association(SIA)が本日発表した。
2009年1月の$15.3 billionからは47.2%の増加である。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「1月の世界半導体販売高は1年前に比べて大きく増えており、現時点の該業界の事業環境改善を映し出している。」とSIA President、George Scalise氏は言う。「半導体業界およびエレクトロニクスメーカーはグローバル経済不況に素早く反応して、2009年の1月と2月は業界低迷のどん底であった。」

「半導体需要を牽引する分野であるパソコン、携帯電話、自動車および産業用などにわたって、現時点力強さが見えている。」とScalise氏は続ける。

「この現在の流れが続けば、2010年についての我々の11月時点予測である$242.1 billionを超えて伸びる可能性があるが、消費者購買が引っ張るグローバル経済の伸びがこれらの流れを維持する鍵になろう。」とScalise氏は締め括った。

※1月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/galleries/gsrfiles/GSR_1001.pdf
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先週までに、今年の世界半導体販売高の伸び率について、
 Future Horizons社     Malcolm Penn氏 → 22%
 半導体市場統計アナリスト Mike Cowan氏  → 40%
という奥深い二桁の見方がある一方、
The Information Network(New Tripoli, Pennsylvania) Robert Castellano氏  → 11%
はブレーキを踏んだ方の見方となっている。

さて、その後はどうかということで目に付いた記事、以下の通りである。

◇Semico: Good times are here for ICs (3月2日付け EE Times)
→Semico Research社のIC市場の見方:
 2009年  2010年  2011年
 $223B
 10.2%減  24%増  11.5%増
市場が伸びる理由トップ7:
1. Past conservative capex and plant closures have tightened capacity;
2. Increasing demand creating capacity shortages;
3. Aggregate ASP increases due to mix changes and tight supply;
4. End products have richer semiconductor content;
5. "Smart" inventory magnifies demand;
6. Consumer continues to spend especially on electronics;
7. Government spending will continue to stimulate economy.

◇Chip market to see 'modest' 2010 recovery, says iSuppli(3月5日付け EE Times)
→iSuppli社(El Segundo, Calif.)発。グローバル半導体売上げの推移&予測:
 2007年   2008年  2009年  2010年
 $273.4B  $258.9B  $230B  $279.7B
           9%減  21.5%増 (2009年比)
                 8%増 (2008年比)
                2.3%増 (2007年比)
長期スパンで見ると慎ましやかな回復、"壊れやすい"基調と見る旨。

ともに20%台となっているが、慎重な注意書き付きのようである。上記の米SIA発表を受けて上方修正の向きも見られる。

◇Chip market boom makes analyst hike forecast (3月2日付け EE Times)
→Carnegie ASA(Oslo, Norway)のアナリスト、Bruce Diesen氏。米SIAが発表した1月のグローバル半導体販売高の力強さを受けて、2010年半導体市場の伸長予測を13%から15%に上方修正の旨。

米SIAの3ヶ月移動平均でなく単月実績数値で見ると、次のようになるとのことである。

◇WSTS: January chip sales up 72% on a year ago(3月4日付け EE Times)
→World Semiconductor Trade Statistics(WSTS)の単月"actual"データ。
1月のグローバル半導体市場は$22.38B、2009年12月の$23.48Bから僅かながら減少、2009年1月の$13.02Bからは71.9%増の旨。

肝心の消費市場の方であるが、世界パソコン市場の見方が次の通り発表されている。半導体市場、消費市場両面からアップデート推移に引き続き注目である。

◇PC shipments to rise 20% in 2010, says Gartner-Mobile PCs to account for 70% of PCs by 2012(3月4日付け EE Times)
→Gartner社(Stamford, Conn.)による世界PC出荷最新予測速報:
 2009年   2010年
 305.8M台  366.1M  $245B
        19.7%増  12.2%増

≪市場実態PickUp≫

台湾の南部で地震が発生、デバイス関係で以下の状況が見えている。世界各地での地震の報は、業界の非常事態への備え、調達面など危険分散のあり方を改めて問うていると感じている。

【台湾南部地震】

◇TSMC Loses 40k Wafers In Quake (3月4日付け ElectronicsWeekly.com)
→台湾現地時間3月4日8:18 am、南部でマグニチュード6.4の地震発生、TSMCで1日半の生産損失を起こし、約40K枚8インチウェーハ相当に上る旨。

◇TSMC, UMC lose production to quake (3月4日付け EE Times)
→TSMC、UMCともに約1.5日分のウェーハ損害の旨。

◇Earthquake rocks Taiwan's LCD makers (3月4日付け EE Times)
→iSuppli社発。台湾を襲った地震により、Tainan Science Parkの大画面LCDパネルベンダー数社が、生産を一時停止の旨。

何十年か前に100億円の半導体投資の思い切った決断の話を聞いたが、今や設備1台、IC設計コストが100億円に達する水準に近づいている。本当にどう回収していくのか、いろいろな業界が始めからタッグを組んで進めていかないと、とそんな思い巡らしがある。

【誰が使える?】

◇Who can afford EUV litho? (3月2日付け EE Times)
→ASML Holding NVからの''pre-production'' EUV scannerは約$86.9M/台かかり、生産対応EUVツールとなると$100M以上、対してASMLからの現在の193-nm immersion scannersは$40Mの旨。

◇Mentor CEO: IC design costs to hit $100M (3月3日付け EE Times)
→Mentor Graphics社のchairman and chief executive、Walden Rhines氏。
チップ設計コスト急騰の問題を打開する手段として、新しいEDA技術、embedded software automation(ESA)が必要の旨。IC設計コストは向こう3年以内に恐るべき$100Mレベルに当たる見込み(現在は$20M〜$50M)、もはや設計者がツールを買わない恐れの旨。

注目の高機能携帯電話(スマートフォン)分野であるが、Apple社による以下の提訴沙汰である。訴えられた台湾のHTCも早速反論している。

【AppleのHTC提訴】

◇Apple sues HTC, claims patent infringement (3月2日付け EE Times)
→Apple社(Cupertino, Calif.)が、いわゆるGoogle phoneメーカー、台湾のHTC社を相手取って提訴、iPhoneのユーザ・インタフェース、根底となるアーキテクチャーおよびハードウェアに関するApple特許約20件を侵害している旨。

◇アップル、台湾HTCを提訴 「iPhone特許を侵害」。(3月3日付け NIKKEI NET)
→米アップルが2日、台湾の高機能携帯電話(スマートフォン)大手、宏達国際電子(HTC)がアップルの特許20件を侵害したとして、米デラウェア州の連邦地方裁判所と米国際貿易委員会(ITC)にそれぞれ提訴したと発表の旨。
HTCはインターネット検索最大手の米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」や、マイクロソフトが開発したOSを搭載したスマートフォンなどを開発・生産。全世界向けに出荷、アップルの提訴は間接的にグーグルやマイクロソフトへの“宣戦布告”にもなる旨。

◇HTC insists it develops user interface and smartphones in house, not copying from Apple(3月3日付け DIGITIMES)

◇Apple/HTC suit signals smartphone patent war-Still unclear whether Apple can chill its many iPhone imitators(3月4日付け EE Times)
→AppleがiPhone模造者を威圧したり、あるいは新しい標準を置けるかどうか、2010年のsmartphone分野の大きな問題の1つである旨。

今後の展望を一気に切り開くブレイクスルーが欲しいという気分のところに、IBMからのon-chip光通信に向けた障害物レースで最後のハードルを飛び越えたとの以下の報である。今後の具体的な展開に心待ちである。

【on-chip光通信】

◇IBM jumps 'last hurdle' to on-chip optical communication-40-Gbps photodetector seen as keystone for enabling promising technology(3月3日付け EE Times)
→IBM Research(Yorktown Heights, N.Y.)が水曜3日、on-chip光通信の根本原理を達成、40-gigabit-per-second(Gbps) germanium avalanche photodetectorによりいわゆる"nanophotonic toolkit"が完成の旨。

◇IBM Nanophotonic Switch Promises Faster Energy-Efficient Computing-IBM researchers have created an ultrafast avalanche photodetector that uses light for communication between computer chips, which could be powered by a regular AA battery.(3月4日付け Semiconductor International)
→IBM Research(Yorktown Heights, N.Y.)発。コンピュータ半導体の間をcopper wires経由で通信する電気信号を、光パルスによる通信するシリコン回路に置き換える大きな1ステップの旨。
・電子&正孔avalancheを生じるnanophotonic germanium photodetector(Source: IBM)
http://www.semiconductor.net/photo/256/256688-Nanophotonic_germanium_photodetector_generating_an_electron_and_holes_avalanche_Source_IBM_.jpg


≪グローバル雑学王−87≫

今回の世界経済危機以降の米国の、そして日本でも、大企業の変貌、変遷ぶりには本当に驚かされていまだ余韻の残るところである。

『アメリカを知る』(実 哲也 著:日経文庫1213) …2009年12月 1版1刷

より、米国産業界の現状模様と新たな市場分野を世界に先駆けて開拓していく風土というものに当たってみる。


[V] 米国企業の光と影

1 加速する新陳代謝
(1)凋落する伝統的な製造業
・20世紀の米国経済や社会にとってのGM(ゼネラル・モーターズ)の重み
 …強い米国の製造業、豊かな米国社会を象徴する存在
・GMは2009年に破産法を申請、事実上国有化
 →20世紀に世界を席巻した米国の強い製造業種の最後の砦が陥落したとも
・企業や産業の新陳代謝が進みやすく、産業地図が素早く変わるのが米国の特徴
(2)株式市場で見る栄枯盛衰
・ダウ30種の銘柄入れ替え →そのときどきの米国産業界の主役たちの変遷
・自動車、鉄鋼などが衰退する一方で、ハイテク、医薬品・バイオ、新しいタイプの小売りなどにシフトしている最近の姿
(3)変身する大企業
・再編、合併、部門の売却など、姿の大きな変貌
 (例)IBM →ソフトウェア、ITビジネス・コンサルティング・サービスに
   GE  →環境関連ビジネスと医療分野に注力
(4)航空宇宙、防衛と石油は健在
・いまだ圧倒的な強さを維持 →航空宇宙・防衛業界と石油業界

※フォーチュン誌売上高ランキング5社が、次の通りであり、上記の内容を表していると思う。
 <1989年版>        <2009年版>
 1 ゼネラル・モーターズ   1 エクソン・モービル
 2 フォード・モーター     2 ウォルマート・ストアーズ
 3 エクソン・モービル    3 シェブロン
 4 IBM            4 コノコ・フィリップス
 5 ゼネラル・エレクトリック 5 ゼネラル・エレクトリック

2 伸び続くIT・バイオ企業
(1)巨人脅かすIT新興勢力
・未開の分野に好んで挑戦する風土、実績がなくても良いものなら受け入れる米国の風土
 (例)マイクロソフト
  グーグル
  アマゾン・ドットコム
(2)買収と研究開発で飛躍
・IT関連で健在 →(例)シスコシステムズ
           インテル
           ヒューレット・パッカード
           アップル
・アップル→他人の力をうまく使いながら新しいアイデアに基づく製品を素早く送り出すスタイル
(3)国も後押しするバイオ
・ITと同様にバイオ関連でさまざまな技術革新
 →政府が戦略分野として思い切った予算を投入
 (例)ジェネンテック
   アムジェン
(4)シリコンバレーの役割
・シリコンバレー →どんなに小さくても良い技術や発想なら評価する土壌が米国のどこよりも強い
・インド人や中国人を中心とした優秀な外国人が多く集まっている
・やり直しがききやすいのも特徴
(5)環境に目を向ける
・今シリコンバレーで急速に成長しているのは環境関連のベンチャービジネス。太陽光、新世代送電システム関連。

※如何に魅力があってもそのうち飽きられるし、ただ売っていくだけではそのうち市場のパイは限られてくる。ここはまったく新しい製品・サービスを生み出して市場開拓することであるが、米国のそれを受け入れる風土、活力というものを改めて感じている。

3 地殻変動進む金融と小売り
(1)変わる金融地図
・2008年に起きた経済金融危機
 →従来の大手投資銀行で独立した形で生き残ったのは、ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーだけ
・目先の利益極大化のためなら何でもありという土壌は変わるのでは?
(2)金融イノベーションは続く
・企業が事業の再編や合併をしながらダイナミックに変身していく米国経済
 →金融のイノベーションが不可欠
(3)短期主義の克服がカギ
・短期的に利益を出すよう無理な投資に
 →「短期主義」を克服、良い意味での金融イノベーションと新しいことに挑戦していくパワーを維持
(4)ウォルマートに続くのは
・圧倒的な力を誇る小売企業に発展 
 →ウォルマート …売上高は米企業全体で2位
          …全米最大の雇用主
・全米企業売上高ランキング −小売業者はウォルマートを筆頭に上位50社中10社

※米国で今起きていること、今問題でもあること、という受け取りである。

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