米中IT巨人の戦略展開の渦中、半導体分野のそれぞれ備える動き
中国・Alibabaの「独身の日」セールの最高取扱高に続いて、今度は色が黒い商品や名前に黒が入っている商品を特別価格で販売するAmazonのBlack Friday。米国・GAFA(Google:Apple:Facebook:Amazon)そして中国・BATH(Baidu:Alibaba:Tencent:Huawei)、米中IT巨人のそれぞれさまざまな戦略的展開に目を奪われる中、1つとして半導体も大きく関わって、米中摩擦に煽られる中での各社の備える動きに注目させられている。新興市場へのスマホ、5GそしてAIの展開とすでに見えているものに加えて、金融サービスへの参入など新たな機軸に向けた動きのうねりが見られて、半導体分野にどんなインパクトとなるか、目が離せないところである。
≪それぞれの市場ブレイクスルー≫
米中IT巨人を巡る現下のさまざまな動きを追って、まずは米国・GAFA。
Googleについて、金融サービス参入およびantitrust調査である。
◇Google in talks to move into banking (11月13日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Googleが、同社顧客への現状口座提示について米国の銀行に話しており、シリコンバレーの金融サービスへの突然の参入を加速、Appleのクレジットカード打ち上げおよびFacebookのディジタル通貨、Libraの提案に続く旨。
◇Report: Google antitrust probe to expand into search and Android businesses (11月15日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→CNBC発。Google(Mountain View)へのantitrust調査を打ち上げている50州 の司法長官が、以前はオンライン広告事業にのみはっきり重点化とした後、同社の検索およびAndroid事業も含めて範囲を拡大する備えになってきている旨。
Appleのクレジットカードである。
◇Apple card investigated after gender discrimination complaints (11月11日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→AppleとGoldman Sachsが連携、8月に米国でお披露目のカードについて。
該Apple Cardが用いているcriteriaが現在、New York State Department of Financial Servicesにより精査されている旨。
Facebookの新しい決済サービス、Facebook Payについてである。
◇Analyst says Facebook Pay will dominate competitors like PayPal, Apple Pay (11月12日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Facebook、火曜12日発。同社が、新しいFacebook Payサービスでonline決済に襲撃をかけており、PayPalおよびApple Payのビジネスを大きく食っていく可能性の旨。
◇facebookペイ、米国で週内開始、リブラより先行 (11月13日付け 日経 電子版 07:53)
→米フェイスブックは12日、新たな決済サービス「フェイスブックペイ」を週内に米国で始めると発表、フェイスブックや「メッセンジャー」などのアプリを通じて決済や送金ができるようにする旨。クレジットカードや電子決済サービスのペイパルなどを活用し、円滑なサービスの立ち上げにつなげる旨。
Amazonについては半導体関連、台湾・MediaTekとの連携である。
◇MediaTek, Amazon Aim to Lead in Smart Homes (11月14日付け EE Times)
→MediaTekとその顧客、Amazonが、統一smart homeビジョン創出を目指している旨。MediaTekの半導体は、いくつかのsmart機器を制御できるvoice-actuated, cloud-based personal assistant、AlexaなどAmazon製品を動かしている旨。
金融サービスになびくGAFAの動きを反映、シリコンバレーからニューヨークへのそれぞれ拠点移動が見られている。
◇人材求めるGAFA、NYに拠点シフト、facebookも新設 (11月15日付け 日経 電子版 11:30)
→巨大テック企業が相次いで米東海岸での採用拡大に動いている旨。グーグルやアマゾン・ドット・コムに続き、14日にはフェイスブックもニューヨーク市で大規模オフィスを構える計画が判明した旨。シリコンバレーは人材争奪戦が激しく、世界で最もIT技術者の給与が高いとされる旨。IT人材を多く抱えるウォール街などが、草刈り場となる可能性がある旨。
次に、中国・BATHについては、AlibabaとHuaweiの動きである。
Alibabaは、11月11日の「独身の日」セール最高取扱高の一方、規制の国内事情も見られている。
◇中国・独身の日スタート、アリババ、1分で1500億円突破 (11月11日付け 日経 電子版 01:53)
→中国で年間最大のネット通販セール「独身の日」が11日深夜0時(現地時間)に始まった旨。今年が11回目で、最もモノが売れる1日として知られる旨。最大手のアリババ集団はセール開始から1分で取扱高が100億元(約1500億円)を突破した旨。中国景気は減速感が漂うが、アリババの今年の取扱高は過去最高の4兆円を超えるとの予測もある旨。日本など海外から参加する企業の売れ行きにも注目が集まる旨。
◇Alibaba's Singles' Day sales hit $30 billion, on track for record-Alibaba's sales for Singles Day surpass $30B (11月11日付け Reuters)
→中国のretailer、Alibaba Group Holding Ltdが月曜11日、同社annual Singles' Day shopping blitz販売高が4:31 p.m.で$30 billionを越え、11年目最高記録に向かっている旨。
◇独占アリババに当局の目、「独身の日」取扱高は最高 (11月11日付け 日経 電子版 22:00)
→中国最大のネット通販セール「独身の日」が11日、実施され、1年で最もモノが売れる日として知られ、今年も最大手のアリババ集団の取扱高が過去最高の4兆円規模に達し好調だった旨。ただ人気のバーゲンセールの裏では、中国の規制当局がアリババなどを警告する騒ぎが起きていた旨。背景には中国景気の減速で、実際には思うようにモノが売れない、アリババの苦悩と焦りがあった旨。
Huaweiについてはいろいろな切り口の現時点。まずは中国国内でのスマホの活況ぶりである。
◇Worldwide Smartphone Shipments Rise by 0.8% in the Third Quarter as Huawei Went Full Steam in China, According to IDC (11月7日付け IDC)
→International Data Corporation(IDC) Worldwide Quarterly Mobile Phone Trackerからの最新データ。2019年第三四半期の世界スマートフォン出荷が前年比0.8%増、7四半期の低下を逆転の旨。該四半期全体では358.3 million台の出荷、前四半期比8.1%増、プラス成長に戻すに十分の旨。インドが全体として新興市場を引っ張り、中国トップbrandsはすべて11.11すなわち"Singles' Day"に備えて国内出荷を高めている旨。
他方、米国でのプレゼンス低下があらわれている。
◇Huawei's Bay Area presence down to 200 as the company awaits U.S. rules (11月11日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→7月に202人の従業員をレイオフしたテレコム装置プロバイダー&スマートフォンメーカー、Huawei Technologies(深セン)が11月19日に、Intel社, Google, Broadcom社およびCisco SystemsなどHuaweiサプライヤに向けた連邦政府の最終的な規則を聞く予定の旨。
新型スマホの我が国での発表、発売である。
◇ファーウェイ、カメラ5つ搭載の新スマホ発表、今月末発売へ (11月14日付け NHK NEWS WEB 17:26)
→中国の通信機器大手、ファーウェイは、今月末に日本で発売する新しいスマートフォンの機種を都内で発表、格安スマホの事業者や家電量販店などで扱われる予定の旨。ファーウェイが14日、発表したスマホはカメラが5つ搭載され、高精細な撮影ができるほか、30分で最大50%まで急速に充電できることなどが特徴の旨。市場想定価格は税抜きで5万4500円と、中位クラスの価格帯で、今月末から、おもだった格安スマホ事業者が扱うほか、家電量販店やインターネットでも販売する旨。一方、今のところ携帯大手3社の採用は決まっていないとしている旨。
米国の制裁の中、技術内製化を促す社員へのインセンティブである。
◇ファーウェイ、社員に報奨金、技術内製化促す (11月14日付け 日経)
→中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)が、自社の技術者などに総額20億元(約300億円)の報奨金を支給することが13日までに分かった旨。
複数の中国メディアによると、主に研究開発や部品調達の部門で内製化に関わった約2万人が対象で、1人当たり10万元という。同社は米国の制裁を受けソフトウエアや半導体の内製化を急いでおり、社員の奮起を促す狙いがあるとみられる旨。
最先端半導体の供給について台湾への確認である。
◇Huawei chip mission shows Taiwan economy gaining from trade war-Growth outpaces peers, but tech companies in tricky spot between US and China (11月14日付け Nikkei Asian Review)
→high-ranking Huawei executivesの小グループ一行が、先月台湾に行き、BeijingとWashingtonの間で長引く貿易戦争の渦中、重要サプライヤが中国ハイテク巨人の同社に最先端半導体を引き続き供給できることを確認する使命の旨。
インドへのHuawei製品の展開である。
◇Kirin A1-powered wireless Huawei products coming soon to India-Huawei to debut Kirin A1-powered wireless products in India (11月14日付け TechRadar (UK))
→Huawei Technologiesが、インドで同社Kirin A1チップセット搭載のワイヤレス機器をまもなく拡販、これらwearablesは、earphones, smart glassesおよびsmartwatchesなどの旨。
このような米中のIT巨人関連の動きを受けて、日本政府のGAFAへの意見聴取である。
◇政府、GAFAを聴取、市場ルール整備へ協力要請 (11月12日付け 日経 電子版 09:15)
→政府は12日午前、首相官邸でデジタル市場競争会議を開き、巨大IT企業による市場独占の規制策を検討するため、「GAFA」と呼ばれる米IT大手4社から意見を聴取した旨。菅義偉官房長官はデジタル市場のルール整備について「国が取引の透明性の大枠を示しながら、プラットフォーマーが自律的に取引環境の改善に取り組む新しい形でなくてはならない」と述べ、協力を求めた旨。
欧州での反応が、次の通りである。
◇Europe Says 'No' to Breaking Up Big Tech (11月12日付け EE Times)
→先週のWeb Summit conference(Lisbon, Portugal)にて、欧州のantitrust chief、Margrethe Vestager氏が、技術の将来、およびグローバル競争環境を保つために巨大ハイテク会社を規制する上での優先順位を議論の旨。
◇No Plans to Break up Big Tech in EU-European commissioner for competition Margrethe Vestager sees "no limits in how artificial intelligence can support what we want to do as humans on society." (11月15日付け EE Times India)
あまりに大きいGAFAであるが、日本での対抗の動きが以下の通り見られている。
◇ヤフーとLINE経営統合へ、ネット国内首位に (11月13日付け 日経 電子版 21:47)
→検索サービス「ヤフー」を展開するZホールディングス(HD)とLINEが経営統合に向けて最終調整に入った旨。LINEの対話アプリの利用者は約8千万人で、ヤフーのサービスは5千万人に上る旨。金融、小売りも手がける1億人規模のサービス基盤が誕生し、国内ネット産業の勢力図が大きく変わる旨。アジアを舞台に米国や中国のメガプラットフォーマーに対抗する旨。
◇ヤフー・LINE統合交渉、夏のトップ会談で動き出す (11月14日付け 日経 電子版 20:58)
→検索サービス「ヤフー」を展開するZホールディングス(ZHD)とLINEは14日、経営統合に向けた協議を進めていると明らかにした旨。ライバル関係にあった両社を結びつけたのは、米グーグルなど「GAFA」と呼ばれる米巨大ITとの競争に単独では勝てないとの危機感。まず国内で「1億人経済圏」を握る対抗軸を作る。ただ、GAFAの規模は圧倒的で、その背中は遠い旨。
肝心の気になる米中貿易戦争であるが、変わりなしのTrump大統領のコメント、そして難航の最新交渉状況である。
◇米中「部分合意は間近」、トランプ氏、決裂なら関税上げ (11月13日付け 日経 電子版 04:54)
→トランプ米大統領は12日の講演で、中国との貿易交渉について「第1段階の合意は署名が間近だ」と強調した旨。両国は11月中に首脳会談を開き、農業や金融分野などに絞って部分合意する方向で協議している旨。トランプ氏は「合意できなければ関税を大幅に引き上げることになる」とも述べ、中国側に引き続き圧力をかけた旨。
◇米中協議、農業・知財で詰め、部分合意へ正念場 (11月16日付け 日経 電子版 19:30)
→米中両国が貿易交渉で目指す「第1段階の合意」が遅れている旨。農産物貿易の拡大や知的財産権の保護などで決着を目指すが、中国は制裁関税の大幅撤回を求めており、一致点を見いだせないため。合意文書の署名は当初想定した11月中旬が困難となり、米政権が予定する12月中旬の制裁関税第4弾の発動が迫る旨。
世界半導体市場の6割を上回る中国そしてAsia Pacific地域であるが、各様の現状および激変の市場対応が見られている。
中国半導体業界からは、中国が韓国、台湾および米国の半導体メーカーに追いつくには10年以上かかるとの声が聞こえている。
◇China's top chip maker urges U.S. firms to help ease tensions-Tsinghua Unigroup exec wants US firms to help relieve trade tensions (11月8日付け Reuters)
→Tsinghua UnigroupのChairman、Zhao Weiguo氏。アメリカの会社は、中国と米国政府の間のハイテクおよび貿易係争を和らげるのにさらに多く行える可能性の旨。中国は韓国、台湾および米国の半導体メーカーに追いつくのに10年以上必要と断言の旨。
◇China lags far behind in semiconductor battle-It could take China over 10 years to become relevant in industry:Tsinghua Unigroup chairman (11月9日付け Taiwan News)
メモリ半導体の低迷に苦しむ韓国であるが、底打ちの気配が次の通りである。
◇Korea memory-IC industry output value rises 5.5% in 3Q19, says Digitimes Research-Data: Korean chip industry grows Q3 output value by 5.5% (11月11日付け DIGITIMES Research)
→Digitimes Research発。韓国のメモリ半導体業界の2019年第三四半期生産額が、前四半期比5.5%増のKRW19.8 trillion($17.06 billion)。Samsungは第三四半期のメモリ売上げが第二四半期に比べて増加の一方、SK Hynixは下げ止まった旨。両社はまた、第三四半期のoperating marginsの減少速度がそれまでの四半期より落ちている旨。
台湾からは、最先端プロセスを牽引するTSMCによる押し上げがもっぱらである。5G、AIなど新分野への圧倒的な対応である。
◇Global Unichip, Alchip set to enjoy over 20% revenue growth in 4Q19-Sources: IC design firms to see +20% growth in Q4 revenue (11月12日付け DIGITIMES)
→市場筋発。IC設計サービスプロバイダー、Global UnichipおよびAlchipがともに、ASIC製品開発に向けた力強い受注が奏功、第四四半期売上げが前四半期比20%超増加の見込みの旨。Global UnichipおよびAlchipはともに、先端nodeプロセスの稼働率が高くなっているTSMCと連携している旨。
◇TSMC board approves US$6.6 billion for advanced process capacity-TSMC will spend $6.62B on advanced process capacity in Q1 (11月13日付け DIGITIMES)
→TSMCの役員会が、約$6.62 billionの投資適用を承認、2020年第一四半期に向けて新しいfab拠点の建設、先端技術capacity据えつけおよび先端実装capacity格上げ、並びにspecialty技術capacity据えつけ、およびR&D投資およびcapex維持に充てる旨。加えて、TSMCは顧客への技術サポートサービスに向け日本での完全子会社設立計画を披露の旨。
半世紀にわたるシンガポールの半導体業界からは低迷サイクルにはまっている現状があらわされている。
◇Is Singapore's semicon sector on the skids?-Beyond the current down cycle, can Singapore's key electronics cluster continue to be competitive? (11月9日付け The Business Times)
→ITは51年前にスタート、半世紀あたりを通してシンガポールの半導体業界はups and downsを経ており、現在は消費者需要鈍化の渦中もう1つのdown cycleの真っ最中にある旨。今回は米国と中国の間で続く摩擦から激化の旨。UTACおよびAMSなどシンガポールの半導体メーカーは、生産削減をおよびhundreds of jobsレイオフを始めている、と7月のメディア報道がある旨。いくつかの会社はまた、2つの経済的powerhousesが科すしっぺい返しの貿易関税により直接影響を受けている旨。一方、最新の業界生産の数字ではelectronics cluster全体およびkey半導体分野ともにシンガポールの工場outputの伸びがふたたび緩んでいる旨。9月ではelectronics clusterが前年比9.6%の低下、一方、半導体からのoutputは対前年13%の落ち込みの旨。
米中IT巨人の戦略的な動きの展開と特に中国そしてAsia Pacific地域の半導体市場の反応に今後注目していくところがある。
≪市場実態PickUp≫
【グローバルサミットから】
米中貿易戦争に一息入りながらも先が見えない中、2019 Global CEO Summit(11月4-6日:深セン)の概要&雰囲気である。
◇Movers and Shakers at Global CEO Summit (11月8日付け EE Times)
→今週のGlobal CEO Summit(中国・深セン)にて、5G, センサおよびAIに鋭い焦点が当てられた旨。中国が5Gネットワークスを構築、ハイテク各社は該技術をビジネスを築ける重要なインフラと見ている旨。
◇From 5G to climate change and back again (11月8日付け EE Times)
→2019 Global CEO Summit(11月4-6日:深セン)では単一なテーマはあらわれず、5G, および設計技術, Internet of things(IoT), センサ, virtual reality(VR), ubiquitous通信, そして - もちろん - AIについて話された旨。
◇Synopsys CEO Calls for a 'Shift-Left'-Live from the Global CEO Summit: 5G, IoT, and other trends will be transformative - for good or ill. High-tech companies need to choose. (11月13日付け EE Times India)
◇CEOs Skeptical About Rumours of an End to the Trade War (11月14日付け EE Times India)
→Global CEO Summit(深セン)にてハイテクリーダーは米中貿易戦争の休戦の可能性を歓迎したが、大方はそれは"フェイクニュース"と疑うに十分飽き飽きしている旨。
同じく深センでのGlobal Distribution and Supply Chain Leaders' Summitでは、Texas Instruments(TI)のディストリビュータ6社との契約解消が取沙汰されている。
◇Distributors Brace for Life without TI (11月12日付け EE Times)
→先週Global Distribution and Supply Chain Leaders' Summitにてballroomを埋めた人々は、distribution合意を解消するTexas Instruments(TI)の最近の決定について話が止まらなかった旨。TIの動きは、中国における販売およびfield application engineers(FAEs)の少なくとも1,000 jobsが失われることになる旨。
◇Distributors in China Are Bracing for Life Without TI (11月14日付け EE Times India)
→グローバルsupply chainは、top-tierプレイヤー、Avnet社, World Peace Group(WPG)およびWT Microなど6社のelectronics distributorsを落とすTIの決定のインパクトを依然吸収している旨。
【シリコンウェーハ出荷】
米中貿易戦争の影響からか、シリコンウェーハ供給の長期契約に弾みがつかない状況が以下の通りである。
◇Silicon wafer shipments in low gear for 4Q19-Sources: No pickup in silicon wafer shipments for Q4 (11月11日付け DIGITIMES)
→業界筋発。今年の第四四半期は、年末financial settlementsからシリコンウェーハ出荷が大きく戻す見込みはない旨。米中貿易戦争により、シリコンウェーハ顧客がウェーハサプライヤとの購買契約を無視するようになっている、と特に言及の旨。
◇Silicon wafer makers see chipmakers reluctant to strike LTA contracts-Sources: Chipmakers shy away from long-term deals for wafers (11月12日付け DIGITIMES)
→業界筋発。シリコンウェーハ供給に向けたlong-term agreements(LTAs)が顧客の間で支持を失っており、特に8-インチウェーハ以下についての旨。
長期契約の多くが2020年で期限切れであり、顧客がシリコンウェーハのサプライヤとのLTAs更新をためらっている、と特に言及の旨。
定例の四半期ごとシリコンウェーハ面積出荷のSEMIからのデータであるが、現下の市況を反映、4四半期連続の減少となっている。
◇Silicon Wafer Area Shipments Fall for Fourth Consecutive Quarter (11月12日付け SEMI)
◇Silicon Wafer Area Shipments Fall for Fourth Consecutive Quarter (11月12日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→SEMI Silicon Manufacturers Group(SMG)のシリコンウェーハ業界四半期分析。4四半期連続の減少、2019年第三四半期の世界シリコンウェーハ面積出荷総計が2,932 million平方インチ、前四半期の2,983 million平方インチから1.7%減、前年同期比9.9%減。
≪シリコン面積出荷の流れ:単位 million平方インチ≫
- 半導体応用のみ対象
1Q2018 | 2Q2018 | 3Q2018 | 4Q2018 | 1Q2019 | 2Q2019 | 3Q2019 | |
Total | 3,084 | 3,160 | 3,255 | 3,234 | 3,051 | 2,983 | 2,932 |
[Source: SEMI (www.semi.org), November 2019]
【5GおよびAI半導体】
SamsungとMediatekがQualcommのライバルとしてあらわれている5G半導体、そしてNvidiaに対してやり返しを図るIntelのAI半導体、それぞれの現況である。
◇Samsung and Mediatek emerge as Qualcomm's top 5G chip rivals in 2020-Qualcomm facing Samsung, MediaTek challenge for 5G chips (11月8日付け VentureBeat)
→Samsung Electronicsのall-in-one Exynos 980プロセッサが、インドのVivo製5G phonesに搭載され、Samsungが5G半導体供給におけるQualcommの席巻に対する主要な挑戦者になり得る指標の旨。これまたall-in-one 5GプロセッサをつくっているMediaTekが、来年中国ベンダーからビジネスを獲得する期待でSamsungに加わる旨。
◇Intel Fires Back At Nvidia With Nervana AI Chips, New Movidius VPU-Intel debuts Nervana AI chips, a Movidius VPU (11月12日付け CRN (US))
→Intelが、deep learning訓練および推論に向けたNervana NNP-T1000およびNNP-I1000半導体を投入する一方、2020年前半の間に次世代Movidius visual processing unitのリリースを置いている旨。該Movidius Myriad "Keem Bay" VPUは、computer vision, edge mediaおよびAI推論における応用向けの旨。「AIのこの次の段階をもって、computationalハードウェアおよびメモリの点から我々は限界点に達してきている。」と、Intelのcorporate vice presidentでAI Products Groupのgeneral manager、Naveen Rao氏が同社の新しいNervanaおよびMovidius半導体について。
◇Intel details Keem Bay, a next-gen Movidius Myriad VPU for computer vision at the edge (11月12日付け VentureBeat)
→Intelが、同社2019 AI Summitにて今朝、edgeでの推論tasksに最適化された同社次世代Movidius Myriad vision processing unit(VPU)、コード名Keem Bayの詳細を説明、該72-mm半導体は、64-ビットメモリバンド幅での新しいon-dieメモリアーキテクチャーおよび前世代の性能の約10倍を誇る、とIntelのvice president of IoT、Jonathan Ballon氏。
【Kioxia関連】
この10月から社名を一新、スタートを切った主に東芝ブランドのNAND型フラッシュメモリを製造する半導体メーカー、キオクシア株式会社(KIOXIA Corporation)の早々の動きそして業況である。
◇Displaced NOR Flash Finds New Uses-Kioxia debuts NOR flash memory for embedded applications (11月11日付け EE Times)
→NORフラッシュがscaling制約に陥って、東芝メモリとして以前知られる会社はplanar SLC NANDがいくつかの応用で良い代替になるとしている旨。
一方、NORは消えてはおらず、異なる用途の充足に動いている旨。今や正式にはその会社、Kioxia Memoryが最近、embedded応用向けSLC NANDフラッシュメモリ製品のファミリーを披露、flat screen TVs, プリンター,wearable機器, およびrobotsなど高速データ転送が求められる応用の旨。
◇キオクシアHDの7-9月期、営業赤字幅が縮小、メモリ販売好調 (11月15日付け 日刊工業)
→キオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)がまとめた2019年7-9月期連結決算(国際会計基準)。売上高が4-6月期比11.6%増の2390億円、営業損益が658億円の赤字(4-6月期は989億円の赤字)。NAND型フラッシュメモリの販売数量が増えたほか、一部の製品市況が底を打ったことで赤字幅縮小につながった旨。
【量子技術競争】
この10月23日、Googleが開発中の量子コンピュータマシンで「量子超越」を達成と世界を驚かす発表、一気に「量子技術競争」が市民権を得た感じ方があるが、余韻が続いて関連する内容&動きが以下の通りである。後半のNTTについては光半導体の取り組みも載せている。
◇GoogleとIBMの量子競争、日本突き放す知のコラボ (11月12日付け 日経 電子版 02:00)
→最先端のスーパーコンピュータをしのぐ性能を量子コンピュータで実証したと、米グーグルが英ネイチャー誌で発表、日本の第一人者、東京工業大学の西森秀稔教授が驚き、注目したのは論文の著者リストに並んだ研究メンバー約80人の顔ぶれ。米航空宇宙局(NASA)、スパコンで有名な米オークリッジ国立研究所、欧州を代表するユーリヒ総合研究機構……。2014年に研究室ごと引き抜いた米カリフォルニア大学の人材に加え、さまざまな組織の研究者が集まった旨。グーグル社内に閉じず、広範。量子オールスターズ。・・・グーグルやIBMの動きを遠巻きに眺めているだけでは、日本の研究力が細るばかり。
◇量子暗号の実用化へ前進、官民で機密保護強化-米中が先行、日本追う (11月13日付け 日経 電子版 02:00)
→光の粒子を使って情報をやりとりする量子暗号の実用化に向けた動きが世界に広がってきた旨。現在の暗号技術なら簡単に解読してしまう量子コンピュータが現実味を帯び、機密保護の抜本的な強化に迫られたから。国家を挙げて取り組む中国や米国が先行しているが、日本も官民を挙げて巻き返しを図る旨。
(注)量子暗号…情報漏洩を完全に防げるとされる次世代の暗号技術。「量子」の代表格には電子や光の粒子(光子)がある。量子暗号では光子に暗号化や解読に使う「鍵」の情報をのせて送る。光子は誰かが不正に読み取ろうとすると状態が変化し、この兆候を検知することによって漏洩の危険性を取り除き、安全性を保てるとされている。
量子暗号や量子コンピュータは、相対性理論と並んで現代物理学の土台をなす量子力学を利用している。量子技術は人工知能(AI)などに続き、産業競争力や軍事の分野に広範な影響をもたらす可能性がある。
◇量子技術競争、日本も参戦、NTTがNASAと計算機 (11月14日付け 日経 電子版 21:10)
→NTTは14日、米航空宇宙局(NASA)や米スタンフォード大学などと共同で、光通信技術を応用した新しい方式の量子コンピュータの開発に乗り出すと発表、量子技術の開発では、日本は基礎研究では先行していたが商用化で後れをとった旨。グローバルな開発体制を整え、米グーグルや米IBMや中国勢などを猛追する旨。
◇充電1回で1年持つスマホ実現へ、NTT、光半導体で連携拡大 (11月14日付け 日経 電子版 02:00)
→NTTは光信号で情報を処理し、消費電力が従来の100分の1に抑えられる光半導体の開発で、米マイクロソフトなど国内外の65社と連携、2030年までに量産を目指す旨。次世代通信規格「5G」では中国など海外勢に主導権を握られている旨。5G後の「6G」を支える情報処理技術として、世界標準を狙った連合作りを進める旨。省電力の光半導体が実用化すれば、1回の充電で1年持つスマートフォンの実現も視野に入る旨。
≪グローバル雑学王−593≫
足元でも中国商務省が米中双方追加関税の段階的廃止で合意と発表した途端に、Donald Trump大統領はじめ米国政府高官の「合意していない」と打ち消す発言が続いているばかりである。中国に21世紀の世界の覇権を握られることはあってはならない、とその先兵役、ファーウェイ潰しに躍起のアメリカの対応事情を、
『ファーウェイと米中5G戦争』
(近藤 大介 著:講談社+α新書 711−2 C) …2019年7月18日第一刷発行
より2回に分けて見ていく1回目である。Trump政権には中国に対して「通商強硬派」と「軍事強硬派」の2つがあり、Trump大統領は前者で少しでも譲歩気味になると、後者が激しく尻を叩く構図のよう。目覚ましかった中国の台頭も伸びに陰りが見えてきている今、米中のパワーバランスに刻々注目していくとともに、5G技術の進展の推移に目を遣って、「米中貿易&ハイテク戦争」の正確な把握に努めていくことと思う。
第3章 中国の「5G制覇」に怯えたアメリカ …2分の1
■トランプ政権内二つの対中強硬派
・2017年12月18日、トランプ政権が、中国を競争者とみなす方針を初めて国家戦略として打ち出した
→68ページに及ぶ『国家安全保障戦略』を発表
→アメリカにとって中国は、「パートナー」ではなく「ライバル」であると規定
・その前月、トランプ大統領が北京を訪問、習近平政権から「国賓以上の待遇」
→2535億ドル(約27.4兆円)分ものアメリカ製品などを購入するという「ウルトラ・ビッグ・プレゼント」
・だが、ワシントンの「空気」は異なるもの
→大統領が中国に取り込まれてしまうことに対する懸念が広がり、巻き返しが起こった
・トランプ政権内には、中国に対する考え方に2つの派
→第1:貿易不均衡や雇用を是正することに主眼、「通商強硬派」
…トランプ大統領がその代表格
→第2:中国という台頭する社会主義国そのものが許せない「軍事強硬派」もしくは「理念強硬派」
…マイク・ペンス副大統領がその代表格
…英語を母国語とするわけでもない東洋の国(中国)に21世紀の覇権を握られてしまうことへの拒否感が強い
・貿易交渉の責任者、ロバート・ライトハイザーUSTR代表は、両派の中間に位置
→貿易交渉ではパワフルな存在に
・中国が2015年5月に発布した『中国製造2025』
→2025年の国家目標を明確に定め
→これらは、既存のWTO(世界貿易機関)の秩序から完全に逸脱しているというのが、「軍事強硬派」の主張
・21世紀に入ると、「中国式社会主義」が台頭
→そのシステムは、社会主義市場経済
…政治的には共産党一党支配を維持するが、経済的にはアメリカ式の市場経済を実践
→旧ソ連式とアメリカ式の"いいとこ取り"
→中国ではこれを「習近平新時代の中国の特色ある社会主義」もしくは「中国模式」(Chinese Standard)
・「中国模式」(Chinese Standard)
→もともとは小平が定めたもの、1992年の第14回中国共産党大会で採択
→中国は2001年、16年もの交渉の末にWTOへの加盟を勝ち取った
・21世紀に入った当時、中国のGDPはアメリカの8分の1の規模しか
→2010年には日本を追い越して世界第2の経済大国に
→2013年、習近平政権が始動、ユーラシア大陸全域にまたがる広域経済圏「一帯一路」(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)を掲げ、官民挙げて海外進出を加速
→2015年末、AIIB(アジアインフラ投資銀行)を発足させ、金融面でのバックアップ体制を整えた
・「中国模式」の拡大
→第2次世界大戦後のアメリカを中心とした国際秩序であるプレトンウッズ体制が後退していくことを意味
■中国式社会主義とAIの親和性
・さらに、「軍事強硬派」が強い危機感を抱いたこと
→「中国模式」とAI(人工知能)の親和性が極めて高いこと
・「中国模式」…国民の政治的自由を抑制、民主専制という、トップ(習近平総書記)に国民が政治的意思を委託するシステム
→14億国民のビッグデータを吸い上げてフル活用、AI大国になることを可能に
→「情報の壁」を国境に築くことで、アメリカの「GAFA」に対抗、「BATH」を育て上げた
「GAFA」…Google、Amazon、Facebook、Apple
「BATH」…Baidu, Alibaba, Tencent, Huawei
・「BATH」はじめ中国のIT企業の中核を担っているのは、「海亀派」と呼ばれる海外への留学組(特にアメリカ留学組)
→ファーウェイの本社がある深セン市では、2010年から「孔雀計画」と呼ばれる制度を実施
…海外に留学した優秀な中国人の若者をヘッドハンティングするもの
・中国は軍事面でも、ドローン爆撃機、衛星破壊ミサイル、無人潜水艦などのAI兵器、それにサイバー攻撃などの分野で、アメリカに匹敵する実力を身につけてきた
→こと東アジアに関して言えば、ほぼ同等の実力
・アメリカの「軍事強硬派」から見れば、こうした21世紀の覇権を目指す中国の「先兵役」と言えるのが、ファーウェイ
→「5G時代」を迎えた暁には、ファーウェイは急速に「独り立ち」、世界の覇権を握られてしまう
・4Gは2010年代の人々の生活を変えたが、5Gは2020年代の社会そのものを変えることに
→超高速、大容量、多接続、低遅延など
→多接続の例:自宅の部屋で100個の端末・センサが、インターネットに接続できるように
→本格的な「IoT時代」(モノのインターネット時代)が到来
→低遅延の例:ロボットなどの精緻な操作をリアルタイムで実現
・5Gによる技術革新は、第4次産業革命の到来を告げるもの
→AIが主役となって、IoT、自動運転車、VR、ARなどに5Gが応用されていく
→先進国を抑え込んで、一気呵成に主役の座に就こうとしているのが中国
→その中国を牽引しているのがファーウェイ
・近未来にはAI兵器が世界を制覇していくのは必至
→ここに、アメリカが何としてもファーウェイを排除しようとする真の理由
■アメリカで強まる対中警戒感
・2017年12月20日、18人の超党派議員が連名で、ファーウェイやZTEがアメリカで事業を展開することへの懸念を示す書簡を、FCC(米連邦通信委員会)に提出
→2018年1月、アメリカの大手キャリア、AT&Tが、ファーウェイのスマートフォンを取り扱わない決定
→ファーウェイは、アメリカでのスマートフォン販売事業から事実上、撤退へ
・2018年7月2日、アメリカ商務省からFCCに、中国通信最大手の中国移動(チャイナモバイル)が申請していたアメリカ国内での移動通信事業の認可を下ろさないよう勧告する書簡
→該認可は延々と引き延ばされ、結局2019年5月9日、FCCは正式に申請却下を決定
・FCCが懸念したのは、通信機器やネットワークでの「バックドア」(裏口)と呼ばれる細工
→データを盗まれたり、システムを破壊されたりというリスクが生まれること
・中国には、2017年6月施行、2018年4月改正の国家情報法が存在
→その第7条:「いかなる組織および公民も、法律に基づいて国家の情報工作を支持し、協力し、適合していかねばならない」
→また、アメリカの衛星通信システム「GPS」に対抗、中国は人民解放軍が深く関わる独自の通信衛星システム「北斗」を展開
→中国メーカーのスマートフォンは「北斗」に対応
→さらに、大陸間の情報通信を担う海底ケーブルの分野でも、ファーウェイは巨大な存在
■アメリカがクアルコムの買収を阻止
・2017年11月、シンガポールに本社を置く大手半導体メーカーのブロードコムが、アメリカ最大の半導体設計メーカー、クアルコムの買収に名乗り
→直ちにアメリカ政府のCFIUS(対米外国投資委員会)の調査対象に
→アメリカ側の懸念は、ファーウェイが一気呵成にアメリカの通信産業を乗っ取ってしまうこと
→結果として、「買収中止勧告」として、2018年3月、ホワイトハウスに報告
・2018年3月12日、トランプ大統領は、クアルコムの買収計画を禁止する大統領令に署名
→翌々日、ブロードコムは「クアルコムの買収提案を撤回する」と白旗