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米中摩擦の渦中、Huawei取引禁止を巡るスタンスおよびインパクト

互いに譲らず、今月内の米中首脳会談が実現しなければ全輸入品に関税を課す「第4弾」を直ちに実施と中国に迫って、先行きの道筋が見えてこない米中摩擦の現時点。米国の事実上の輸出禁止規制に基づく措置の標的となっている中国の通信機器大手、Huawei(華為技術)を巡って、米国に従って出荷停止など取引を中断する動きが依然広がっている一方、Appleが機器生産を委託するFoxconnが生産について中国からの移転を図るなど波及するインパクトの様相を呈している。米国の度を増していく圧力と中国が自立化を図る動きには埋められない乖離があるだけに、落としどころに予断を許さないところがある。

≪米国の圧力と中国の自立化の狭間≫

G20大阪サミットでの米中首脳会談が模索されているが、まだ予定が見えず、双方の距離感に変化なしの現時点である。

◇U.S. Treasury's Mnuchin says Trump-Xi meeting has parallels to Buenos Aires summit (6月8日付け Reuters)
→非常に期待されているDonald Trump米国大統領と中国の習近平(Xi Jinping)国家主席の間の6月後半の会談は、昨年12月の関税を延期したBuenos Airesサミットでのお互いの距離が変わっていない、とムニューシン米財務長官が土曜8日福岡にて。

◇米中協議「予定なし」、米財務長官、早期解決難しく (6月8日付け 日経 電子版 14:09)
→ムニューシン米財務長官は8日、米中の貿易交渉について「現時点で閣僚級協議を開く予定はない」と記者団に述べた旨。トランプ米大統領は中国の習近平国家主席と月内に会談する意向を示しているが、貿易戦争の早期解決が難しいことを示唆した旨。同財務長官は「中国との取引が成立しなければ追加関税を発動する」とも改めて述べた旨。

トランプ大統領は制裁関税の正当性を主張、全輸入品に関税を課す「第4弾」がちらつかされている。

◇Trump defends tariff strategy, China says 'not afraid' of trade war-China pledges to "fight to the end" on trade (6月11日付け Reuters)
→Donald Trump米国大統領が火曜11日、通商戦略の一環としての関税の使用の正当性を主張する一方、中国は、米国が交渉継続の渦中で貿易摩擦エスカレートを強調すれば厳しく対応していく旨。

◇トランプ氏、首脳会談なければ対中関税「第4弾」 (6月11日付け 日経 電子版 05:19)
→トランプ米大統領は10日、月内の米中首脳会談が実現しなければ全輸入品に関税を課す「第4弾」を直ちに実施すると語った旨。首脳間で一定の合意に達することは可能だとも指摘し、中国に譲歩を促した旨。米中交渉が難航するなか、硬軟織り交ぜて中国を揺さぶる狙いがあるとみられる旨。

◇トランプ氏、対中関税「第4弾」発動期限を明言せず (6月13日付け 日経 電子版 06:18)
→トランプ米大統領は12日、すべての中国製品に制裁関税を課す「第4弾」の発動をめぐり「(判断)期限はない」と述べた旨。月内の米中首脳会談が実現しなければ第4弾を直ちに実施する構えだが、具体的な時期への明言は避けた旨。米中交渉が難航するなか、中国への圧力を強めつつも一定の余地を残して揺さぶりを続けている旨。

◇Craven High-Tech CEOs Mum on Trade War Depradation (6月14日付け EE Times)
→600の会社および業界団体が、Donald Trump大統領に関税を遺憾に思うTariffs Hurt the Heartlandと題するpublic letterを送った旨。署名者の中にはハイテクメーカーがほとんどまったく見えていない旨。

◇米、対中関税「第4弾」公聴会、17日から320人出席 (6月15日付け 日経 電子版 04:10)
→米通商代表部(USTR)は14日、すべての中国製品に制裁関税を課す「第4弾」に関する公聴会の詳細を発表、17日から25日まで平日計7日間開き、企業や業界団体から約320人が出席する旨。家電や衣料品、おもちゃなど幅広い業種の代表者が政府に反対意見を述べる見通し。政府は公聴会を踏まえたうえで発動を判断する旨。

Huaweiとの取引禁止を巡るさまざまな動きが並行している。

禁止措置は米国に跳ね返ってくるとの見方があらわされている。

◇Huawei Ban Could Come Back to Bite U.S.-Analyst: Huawei ban may hurt US vendors for years (6月10日付け EE Times)
→HuaweiはTrump大統領により損なわれていくが、長期的にはその行いは米国コンポーネントサプライヤにさらに多くの損害を与えることになる旨。
「スマートフォンメーカーなど中国のelectronicシステムに注目すると、向こう数10年見れる限り将来の設計のすべてが基本的に、新規設計に向かえばnon-USパーツを見ていくことになる。」と、IC InsightsのBill McClean氏。

◇Huawei Ban May Prove to Haunt U.S.-Huawei will be crippled by Trump, but in the long term his actions might end up hurting U.S. component suppliers even more (6月11日付け EE Times India)

禁止措置の一部遅延が、White Houseの中で求められている。

◇Delay in Huawei ban is sought by White House Budget Office (6月10日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→White Houseのacting budget chiefが、中国のテレコム大手、Huawei Technologiesを狙った連邦対策の一部の2年遅延を求めている旨。Huaweiが標的の該対策は、今年度に向けたNational Defense Authorization Actに含まれたもので、政府機関のHuaweiあるいは同社の装置を用いる会社との契約を禁じている旨。

米国の禁止措置に従う各社の動きが、以下の通り広がっている。

◇Exclusive: Some big tech firms cut employees' access to Huawei, muddying 5G rollout (6月10日付け Reuters)
→本件事情通発。世界の最大手ハイテクメーカーのいくつかが、最近の米国のHuawei Technologies Co Ltdのブラックリスト載せに反応、従業員に対しHuawei担当者との技術および技術標準についての話し合いを止めるよう指示の旨。

◇Exclusive: Top Japanese chip gear firm to honor U.S. blacklist of Chinese firms - executive-Tokyo Electron will observe US ban on Chinese firms, exec says (6月11日付け Reuters)
→世界第3位の半導体製造装置ベンダー、東京エレクトロンは、ある中国メーカーへの製品供給について米国の禁止措置に従う、と同社executive。
「我々は、Applied MaterialsおよびLam Researchがビジネス対応を止めている中国のclientsとビジネスは行わない。米国政府および業界が我々を公正な会社と見ることが我々にとって非常に重要。」と同氏。

◇米ウエスタンデジタル、ファーウェイと協力中断 (6月11日付け 日経 電子版 11:55)
→米半導体大手、ウエスタンデジタル(WD)のスティーブ・ミリガン最高経営責任者(CEO)は11日、中国通信大手、華為技術(ファーウェイ)との戦略的協力を中断すると明らかにした旨。ファーウェイにはスマートフォン向けのフラッシュメモリなどを供給してきたが、一時的に取引も停止している旨。米中貿易摩擦の影響が大手企業に拡大している旨。

◇ファーウェイ向けチップ、NTT系が一部出荷停止、米規制対象 (6月12日付け 日経)
→NTT子会社のNTTエレクトロニクスは、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)との取引の一部を停止した旨。米国の事実上の輸出禁止規制に基づく措置で、規制対象となる通信チップの出荷を5月20日から取りやめた旨。NTTは海外事業の強化を掲げており、北米での事業展開に支障が出かねないことを勘案したもよう。ファーウェイとの取引を巡っては、米半導体大手のマイクロン・テクノロジーも取引停止を示唆している旨。

グーグルも、製品製造を中国から移している。

◇Google is moving Nest, server motherboard manufacturing out of China amid Trump trade war (6月12日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→unnamed筋引用、Bloomberg発。Alphabet社が、Trump大統領の中国との着実にエスカレートする貿易戦争のインパクトを避ける期待、Nest製品およびサーバマザーボードの米国向けラインの製造を中国から移している旨。

インテルは、トランプ大統領およびHuaweiの両方に打開に向けたアプローチを行っている。

◇Intel Cut Huawei Dealings But Believes Blacklisting Was Unfair-Intel exec questions US blacklisting of Huawei (6月12日付け Business Times (China))
→Intelのdeputy general counsel & vice president of the Law and Policy Group、Peter Cleveland氏。Trump政権にとってHuawei Technologiesを巡るセキュリティ懸念を取り扱う建設的な方法がさらにある旨。IntelはTrump大統領にアプローチ、そしてHuaweiのfounder、Ren Zhengfei氏とHuaweiブラックリスト掲載の代替について協議した、と特に言及の旨。

摩擦の市場へのインパクトであるが、米中間の直近の輸出入の状況である。
米国の中国からの輸入が落ち込む一方、中国への輸出は増加している。

◇Chinese exports rise amid tariffs, imports drop most in three years-Chinese imports at lowest point in 3 years (6月10日付け The Hill)
→米国と中国の間の貿易戦争がとことん行われて、中国からの輸入が約3年ぶりの最低点に落ち込んだ一方、輸出は5月について意外にも増加の旨。
5月の輸入は8.5%減、2016年7月以来の激しい低下の旨。しかしながら、中国への輸出は予想を上回るmarginsで増加の旨。

当然ながら、半導体ウェーハ業界にもcapacity拡大保留のインパクトを生じている。

◇Trade war seen to halt silicon wafer capacity expansions in 2019-Sources: Wafer capacity expansions to slow due to trade war (6月10日付け DIGITIMES)
→業界筋発。米中貿易戦争が継続して、シリコンウェーハ・サプライヤがcapacity拡大を保留している様相の旨。半導体メーカーが昨年ウェーハ不足の間長期供給契約を固定させており、ウェーハの契約およびスポット価格の間の差の拡大につながっている、と特に言及の旨。

米中摩擦の最中、インドの半導体輸入の劇的な増大がみられている。

◇India's IC Imports Grew Dramatically in 2018, and U.S.-China Trade Tensions Could be a Reason (6月11日付け SIA Blog)
→米中貿易摩擦により半導体supply chainsが移行し始めて、その受益者の1つがインドの可能性の旨。United Nations Comtrade(UN Comtrade)データベースからのデータによると、2018年のインドの年間IC輸入が281%増の$8 billion。2014-2017年は$1.5〜$2 billionと一貫して控え目な年間輸入であった旨。

アップルも、貿易戦争が激化していけば、iPhoneの生産を中国から外に移していくとし、受託元のFoxconnが、十分なグローバルcapacityがあると以下の通り対応をあらわしている。

◇Apple is prepared to move iPhone production out of China if Trump trade war escalates (6月11日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→ここ数ヶ月、Apple社は、利益margin削減を脅かすTrump大統領の着実にエスカレートする貿易戦争を予期、iPhone生産の中国外への移行に静かに備えている旨。火曜11日の投資家conferenceにて、世界のiPhonesの大方を生産しているFoxconnのexecutive、Young Liu氏は、Trump政権が中国からのbillions of dollarsの輸入製品に新たな関税をかければ、iPhone製造を別のアジアの国にすばやくもっていけるとしている旨。「我々の生産capacityの25%は中国外にあり、米国市場におけるAppleのニーズに対応できる。我々にはAppleの需要に対応する十分なcapacityがある。」と同氏。

◇Foxconn says it can build enough iPhones outside China to meet US demand: Report-Foxconn ready to move iPhone production from China if necessary (6月11日付け CNBC)

◇鴻海、米へサーバーなど生産移転、中国からシフト-郭氏の後継候補、劉氏が表明 (6月11日付け 日経 電子版 21:23)
→台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は11日に投資家向け事業説明会を開き、2020年末までに米中西部ウィスコンシン州でサーバーや液晶パネルなどの量産を開始すると表明した旨。投資規模は14億〜15億ドル(約1600億円)になる旨。中国で大量生産したIT機器を世界に送り出すモデルで成長したが、米中貿易戦争の激化で生産拠点のシフトを進める。

◇Foxconn has enough global capacity to support clients amid trade war, says executive-Foxconn exec: We can move production out of China (6月12日付け DIGITIMES)
→Foxconnの半導体sub-group、general manager、Liu Yang-wei氏。Foxconnの生産capacityの4分の1は中国以外にあり、米中貿易戦争でのsupply chainの混乱に対応できる旨。顧客はこれまで中国からの生産移転を要求していない、と特に言及の旨。

摩擦インパクトは、米国への中国人旅行者数に次の通りである。

◇As trade war with U.S. grinds on, Chinese tourists stay away (6月12日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→中国人旅行者に長らく人気のLos Angelesのホテルが、昨年来訪23%減、今年はこれまでさらに10%減の旨。米国商務省のNational Travel and Tourism Officeからのfiguresでは、昨年の中国からの旅行者数が急激に減少している旨。

多彩な事業展開を繰り広げているBroadcomにも、Huawei締めつけはじめ業績見通しに影を落としている。

◇Broadcom cuts full-year outlook as trade war crimps demand (6月13日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→米国半導体メーカー、Broadcomが、2019年の残りについて売上げguidanceを下方修正、Huaweiへのコンポーネント販売締めつけが今年後半半導体分野での広範な盛り返しの期待に食い込んでいる最新の兆候の旨。近年買収を通して急速に伸びてきている多角化の同社は、full-year売上げを$22.5bnと予想、大方のアナリストの見方、$23bnを下回る旨。

◇Broadcom Raises a $2B Trade War Warning (6月14日付け EE Times)
→Broadcomが、米中貿易摩擦で同社2019年売上げから$2 billion切り取る旨。

インドの半導体輸入増大が上記にあるが、韓国のインドへの半導体輸出にも対応する見え方がある。

◇S. Korea's chip exports to India surge on strong smartphone demand (6月10日付け Pulse)
→韓国のインドへの半導体輸出が、今年1-4月で前年同期比約50%増、世界第2の人口の国におけるスマートフォン需要急増の旨。

米中摩擦の韓国へのインパクトが以下の通り、短期的には利益を受けるかもしれないが、長期的にはいろいろ負担が出てくるという筋で以下の通りである。

◇Korean firms dragged into U.S.-China trade war (6月11日付け Korea Joongang Daily)
→韓国の会社が米中貿易戦争の真っ只中にまもなく引きずり込まれる心配が、本当になってくる様相、トップ財閥が北京からの圧力を感じ始めている旨。土曜8日のNew York Timesによると、中国政府が先週主要ハイテクメーカーを呼び入れ、米国政府の中国メーカーへの技術売却禁止措置に協力すれば、"差し迫った成り行き"があると警告の旨。その中に、韓国の半導体メーカートップ2、Samsung ElectronicsおよびSK Hynixがいた旨。

◇ファーウェイ事態は諸刃の剣…サムスンが対応戦略の準備へ (6月12日付け 韓国・中央日報)
→ファーウェイ(華為技術)をめぐり米中間の冷戦が本格化する中、特に両国と緊密な供給体系を構築しているサムスン電子やSKハイニックス、そして韓国国内のIT企業が頭を悩ませている旨。米外交専門誌ディプロマットやニューヨークタイムズはこうした状況の中、「韓国企業に短期的に良い機会になるかもしれないが、長期的には負担になる」という分析を出している旨。一つの問題として中国現地工場。サムスン電子は昨年から7兆9000億ウォンを投資して西安のNAND型フラッシュメモリ工場を増設中。SKハイニックスは9500億ウォンを投入してDRAMを生産する無錫工場を昨年拡張した旨。両社のファーウェイに対する半導体売上高はそれぞれ約5兆ウォン。

◇韓経:「米中貿易紛争で韓国の対米輸出に利益」 (6月13日付け 韓国経済新聞/中央日報日本語版)
→米国と中国の貿易紛争が韓国の対米輸出に肯定的な影響を与えているという研究結果が出た旨。韓国貿易協会国際貿易研究院は12日、「米中貿易紛争の輸出影響」と題する報告書を発表、「制裁品目を基準として米国の対中輸入は前年同期より24.7%減ったが対韓輸入は25%増加した」と明らかにした旨。「米中貿易紛争が続けば自動車と半導体、家電、携帯電話など韓国製品のシェアが高い品目を中心に利益を期待できる」と予想する旨。

焦点のHuaweiの動きであるが、スマートフォンの販売目標が下方修正されている。

◇ファーウェイ、スマホ販売目標を下方修正 (6月11日付け 日経 電子版 12:20)
→中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)がスマートフォンの販売目標を下方修正した旨。同社の消費者向け端末事業グループの邵洋・首席戦略官が11日、「当初は10〜12月期に世界1位になる見込みだったが、現在の状況を見ると、もっと時間がかかるだろう」と発言した旨。トランプ米政権が次世代通信規格「5G」で友好国にファーウェイの排除を求め、米商務省は5月にファーウェイへの事実上の輸出禁止措置を発動した旨。一部企業がファーウェイとの取引の見直しに動いている影響がじわりと出てきているもよう。

もう1つ、米携帯通信最大手、Verizonに対して特許料の要求である。

◇ファーウェイ、米ベライゾンに特許料要求、米紙報道 (6月13日付け 日経 電子版)
→中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)が米携帯通信最大手、ベライゾン・コミュニケーションズに対して、特許使用料を求めていることが分かった旨。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)が12日、事情を知る関係者の話として報じた旨。

◇Huawei wants Verizon to pay fees on patents (6月13日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→中国ハイテク最大手の1つでnetworking装置の世界最大のサプライヤ、Huaweiが今春、Verizonを特許238件侵害と手紙の中で告発の旨。

HuaweiのPC事業への制裁インパクトがあらわれている。

◇ファーウェイ、新型PCの発売中止、制裁で部品調達できず (6月14日付け 日経)
→中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)が今夏にも発売する予定の新型ノートパソコンの発売を中止したことが、13日分かった旨。米国による事実上の同社への制裁で、パソコンに搭載するソフトウエアや部品が調達できなくなったためとみられる旨。全事業に占めるパソコン事業の比率は低く業績に与える影響も軽微だが、米制裁の影響が広がりつつあることが浮き彫りになった旨。

最後に、中国においてNANDフラッシュメモリに続いてDRAMの量産が年内にもとの動きが以下の通りである。米国からの増大する圧力を受ける中、半導体業界自立化に邁進する中国の取り組みが続いている。

◇中国、悲願の国産半導体、CXMT、DRAM量産メド、ハイテク覇権争い激化 (6月13日付け 日経)
→中国で年内にも、中国企業により国産化した半導体メモリ、DRAMの量産が始まる見通し。国策会社の長〓存儲技術(CXMT)で量産のメドが立った旨。
中国企業による半導体国産化を巡っては別の国策会社(福建省晋華集成電路:JHICC)の計画が昨年、米国の横やりで頓挫したばかり。中国が悲願の半導体国産化に向け、手を緩めない姿勢が浮き彫りになった格好。米国との攻防激化は必至。CXMTは国策メモリ3社の一角で、中国内陸部の安徽省合肥市政府などの支援を受けて2016年にプロジェクトを立ち上げた旨。


≪市場実態PickUp≫

【インテル対Broadcom】

インテルがBroadcomに対抗、networking半導体startup、Barefoot Networks社を買収している。

◇Intel buys Santa Clara startup to better compete against Broadcom (6月10日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Intel社が月曜10日午後遅く、networking半導体startup、Barefoot Networks社(Santa Clara)を買収すると発表、Broadcom社に対する競争力を高めることを狙った動きの旨。該startupは、Stanford University教授、Nick McKeown氏が2013年に創設、もう1人の前Stanford教授, Craig Barratt氏が率いている旨。

◇Moving deeper into enterprise cloud, Intel picks up Barefoot Networks-Intel buys Barefoot Networks for enterprise cloud tech (6月10日付け TechCrunch)
→Intelが、Barefoot Networksを買収、価格は未公表、enterprise cloud computingに肝要となるnetworkingチップセットを獲得の旨。Barefootは、2016年に表舞台に登場、Alibaba Group, Dell Technologies Capital, Hewlett Packard Enterprise(HPE), Lightspeed VenturesおよびTencent Holdingsなどの投資家からprivate fundingで$155.4 million調達の旨。

Broadcomがサンプル配布の7-nmネットワークスイッチ半導体、Trident 4はBarefoot Networkとの競合が意識されている。

◇Broadcom Throws Programmable Switch-Trident 4 comes with open-source network language-Broadcom samples a 7nm programmable network switch chip (6月11日付け EE Times)
→Broadcomが、同社最初の7-nmネットワークスイッチ半導体のサンプル配布、該Trident 4と並んで、同社はstartup、Barefoot NetworkのP4との競合を避けるべくopen-sourceとして新しいネットワークprogramming言語をリリースの旨。

◇Trident 4 Comes with Open-Source Network Language-The Trident 4 switch for business networks comes with a new open-source programming language that Broadcom aims at the P4 from rival Barefoot Networks (6月12日付け EE Times India)

Broadcomには、Appleとの新たな契約で株価上昇の動きもみられている。

◇Broadcom shares jump on fresh Apple contract (6月11日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Broadcom(San Jose)社の株価が、火曜11日の取引開始時3.6%上昇、同社がiPhone, iPadおよびApple Watch向けに高周波コンポーネントおよびモジュールを供給する新しい契約調印を発表したのを受けて。

【アップルがインテルと買収交渉】

おおもとはInfineonのワイヤレス部門であるインテルの5G modem事業のドイツのoperationsを、アップルが買収に向けて交渉を重ねる動きが見られている。

◇Report: Apple Still Eyes Intel's Modem Business (6月12日付け EE Times)
→Appleが依然、Intelの5G modem事業のドイツのoperationsを買収する話し合いを行っており、たぶんに将来のAシリーズ・プロセッサに統合modemを設計していく旨。

◇Report: Apple could spend billions to buy Intel’s mobile chip business in Germany (6月12日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→The Information発。Apple社が、Intel社のドイツでのモバイル半導体事業operations買収についてIntelと数ヶ月交渉している旨。Intelは2011年に同社のドイツのモバイル半導体設計チームを買収、前Appleの半導体パートナー、Infineonのワイヤレス部門を$1.4 billionで買収した経緯。

◇Apple reported in talks to buy German part of Intel modem unit-Report: Apple may buy Intel modem unit in Germany (6月12日付け Electronics Weekly (UK))

◇Apple Reportedly in Talks with Intel (6月13日付け EE Times India)

【RaytheonとUnited Technologiesの合併】

防衛contractor、Raytheon社と宇宙航空産業大手、United Technologies社の買収&合併が、世界第3位の軍事/宇宙航空ベンダーになるということで業界各紙の取り上げである。

◇Raytheon & United Technologies to Merge (6月10日付け EE Times)
→いっしょになったentityは、BoeingおよびAirbusに次いで世界第3位の軍事/宇宙航空ベンダーとなる旨。

◇Raytheon strikes deal to be acquired by United Technologies (6月10日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→防衛contractor、Raytheon社が、宇宙航空産業大手、United Technologies社による買収および併合に向けたall-stock取引に合意の旨。これにより、今年の売上げが$74 billion規模、Boeing Co.に続く世界第2位の宇宙航空&防衛会社が作り出される旨。該新entityは、Raytheon Technologies Corp.と呼ばれる旨。

◇United Technologies, Raytheon to create $120 billion aerospace and defense giant-United Technologies to combine aerospace unit with Raytheon in $121B deal (6月10日付け Reuters)

◇Raytheon & United Technologies Merge Announced-The combined entity will be the third largest military/aerospace vendor in the world (6月11日付け EE Times India)

【Samsung Foundry関連】

サムスンのファウンドリー事業部門、Samsung Foundryが、AMDに続いてこんどはInfineonと連携、対応の幅を広げている。

◇Samsung Electronics in talks with Infineon Technologies for chip supply-Samsung Foundry could reportedly gain Infineon as a customer (6月11日付け The Investor (South Korea))
→グローバルnon-memory半導体業界の掌握を目指すSamsung Electronicsが、contract半導体製造に向けた連携を拡大、グローバルファウンドリー分野でのプレゼンスを高める活動を早めている旨。同社は、自動車用power半導体の展開で、ドイツの半導体メーカー、Infineon Technologiesと話し合いを行っている旨。このニュースは、Samsungが米国のグラフィックス半導体メーカー、AMDと協働するという今月先の報道に引き続いている旨。

Qualcommが、Snapdragonチップセットの製造発注についてTSMCからこんどはSamsung Foundryを選んでいる。

◇Qualcomm chooses Samsung to make the Snapdragon 865 chipset instead of TSMC-Qualcomm picks Samsung over TSMC to make Snapdragon 865 -The last chipsets Samsung made for Qualcomm were the Snapdragon 820 and Snapdragon 835. (6月12日付け Firstpost (India))
→Qualcommが、2018年の間のSnapdragon 845およびSnapdragon 855チップセット製造をTSMCで行った後、今年後半でのSnapdragon 865チップセット製造についてSamsung Foundryを選択の旨。Samsungは、extreme ultraviolet(EUV) lithography技術を用いて同社7-nmプロセスで該Snapdragon 865を作る旨。

【artificial intelligence(AI)関連】

米国のAI戦略の構築に向けて、議会での超党派法制化を後押しする米国・Semiconductor Industry Association(SIA)の論調である。

◇SIA Applauds Effort to Establish National Strategy for AI and Calls for Greater Emphasis on AI Hardware Research (6月10日付け SIA Blog)
→artificial intelligence(AI)が、社会を変える可能性の有望技術としてここ数年あらわれている旨。AI-関連の革新の心臓部には半導体技術がある旨。AIの開発&運用には、政府および業界が引っ張る整合された包括的アプローチが必要になる旨。SIAは、包括的な国家AI戦略の構築に向けて上院議員、Martin Heinrich(D-N.M.)氏, Rob Portman(R-Ohio)氏, およびBrian Schatz(D-Hawaii)氏が最近提出した超党派法制化を歓迎、議会が急ぎ承認するよう求める旨。

この1月現在でのAI技術関連の特許保有企業・トップ10が示されている。

◇サムスン電子、「AI関連特許の多い企業」世界3位 (6月13日付け 韓国・中央日報)
→サムスン電子が世界主要企業の中で人工知能(AI)関連の特許を3番目に多く保有していることが分かった旨。ドイツの市場調査会社「IPlytics」が、最近AI技術関連の特許保有企業の現況を調査した結果(今年1月現在保有件数)によるトップ10:

マイクロソフト
18,365件
IBM
15,046 
サムスン電子
11,243 
クアルコム
10,178 
グーグル
9,536 
フィリップス
7,023 
シーメンス
6,192 
ソニー
5,526 
インテル
4,464 
キヤノン
3,996 


≪グローバル雑学王−571≫

半導体業界からの米中摩擦の見え方として、昨年、2018年3月のBroadcomによるQualcomm買収に対して禁止命令を出すあたりから知財を巡る様相があらわれてきて、米中双方の応酬が引き続き拡大していく展開で現在に至っている。米国から見た米中経済戦争への取っ掛かりについて、

『軍事的視点で読み解く 米中経済戦争』
 (福山 隆 著:ワニブックス「PLUS」新書) …2019年3月25日 初版発行

より、なぜ今かを改めて辿っていく。経済成長が著しい中国に対して、世界覇権(パクス・アメリカーナ)を誇る米国の凋落にここで歯止めをというトランプ政権が仕掛ける先制攻撃の意味合いが以下にあらわされている。知的財産盗用に厳しい姿勢で臨むこの摩擦の発端であるが、好調な米国経済を背景に中国の台頭を抑え込むには今という仕掛けが次々と繰り広げられている。


第三章 米国側から見た米中経済戦争

〓フリードマンの予言――東アジアは21世紀の火薬庫

□フリードマンの『100年予測』
・「影のCIA」の異名、シンクタンク創設者、フリードマン (前出:グローバル雑学王−568)
 →第2次世界大戦時、ハンガリーから米国に逃れてきたユダヤ人
 →国際情勢を分析する視点は「米国側」
・2009年発行の著書『100年予測』
 →米国と中国、日本などの東アジア諸国との貿易問題についても分析
 →「東アジア地域が21世紀の火薬庫になるのは間違いない」
 →同書は、トランプが対中経済戦争を始めた背景について理解する上で好個の資料
・「対米輸出が全体の4分の1」と大きなウェートを占める中国
 →「米国が中国製品の締め出しや関税を付加すれば、経済危機に陥り予測不能な強引な行動に出かねない」
 →「他の市場の開放を求めて、場合によっては政治的、軍事的圧力を行使して、強引な行動に出かねない」と懸念
・中国が「強引な行動」に出た場合に採り得る対抗策
 →「軍事力をバックとした保護貿易の発動」
・「中国にとって、今後、1世紀の間に軍事力の増強を図るほか米国に対抗する道はない」
 →米中が相互に誤解・猜疑のスパイラルに陥る可能性

□トランプ政権が仕掛けた米中経済戦争――ペンス演説に見るその理由
・2018年10月に行われたペンス副大統領の反中国演説
 →「現代のハル・ノート(1941年11月、太平洋戦争直前の日米交渉の際に米国国務長官ハルが提示した覚書)」「中国共産党に対する宣戦布告」「鉄のカーテン演説」との評
 →米国No.2の副大統領が公然と中国を非難、トランプ米政権が、経済分野だけでなく安全保障分野も含め中国と「全面対決」することを公式に表明
・今回の米中経済戦争は米国が先に仕掛けたもの
 →戦争であれ交渉であれ、主動性すなわち主導権を握ることは、勝利・目標達成のために不可欠
・中国に対して、米国が先に仕掛けたことには、重要な意味
 →自然と中国にとって望ましくない決定を強いることが可能に
・ペンス演説の注目点
 [トランプ政権は対中新戦略を採用]
 →米国は2017年12月の「国家安全保障戦略」で中国に対して新しいアプローチ
  …「中国に対する対決姿勢を鮮明にする戦略」
 [期待していた自由中国は実現されず]
 →自由の夢は中国の人々からは遠ざかったまま
 [中国は米国の血を吸う"吸血鬼"]
 →この17年間で中国のGDPは9倍になり、今や世界第2の経済大国
  →米国の対中投資によるところも大きい
 [世界の最先端産業の覇者の座を狙う中国]
 →中国共産党は、「中国製造2025」計画で、世界の最先端産業のロボット、AI、バイオ産業などの90%を占めようとしている
 [中国の軍拡・対米挑戦の源泉は経済力]
 →中国は、その経済力を軍事力にも使用
  →国防予算は、他のアジア諸国のそれを合算したものに相当
 [中国は非民主主義国家――人権・宗教弾圧]
 →中国共産党は、自国民への規制、人権弾圧も強化
 [中国は公然と米国に内政干渉]
 →中国は、米国の大学、学者、メディア、シンクタンクへの影響力行使に向け、資金援助など
 →米国内の留学生や中国人団体等が中国共産党の諜報機関的役割を果たすことも
 [中国は米国選挙に介入]
 →共和党やトランプ大統領が勝利しないように、プロパガンダを仕掛け
 [トランプ政権の中国に対する対抗処置]
 →トランプ政権は、中国が公平、相互的かつ主権を尊重するように、さまざまな措置
 →米国は、決して屈することはない

〓トランプ政権が目指す経済戦争の目的・目標

□ギデオン・ラックマンのトランプ評
・2018年10月15日付け日経新聞のOpinion欄で、Chief Foreign Affairsコメンテーター、Gideon Rachman
 →「トランプ氏は、自分さえよく理解できないその時代の流れや力を体現し、それらを自分に有利に使える直感的な政治家なのかも」
・トランプは、実は米国が置かれた「末期的な状況」を直視して、大胆に捲土重来を画策している稀代の名大統領なのかも

□トランプ政権が目指すのは米国の世界覇権の維持と継続
・トランプが米中経済戦争で目指す目的・目標
 →「米国の凋落の流れを逆転させること」 or 「米国が中国の挑戦を退けて、世界覇権(パクス・アメリカーナ)を維持・継続すること」
・トランプが、「米国の世界覇権の維持・継続」という目的・目標を達成するために
 →1)米国自身の政治・経済・軍事・科学技術を世界一に維持するよう努力
 →2)中国の経済・軍事・科学技術の台頭を抑え込み、ひいては習近平の中国共産党の弱体化、さらには崩壊させること
・米国経済に明るい兆しが見えてきた
 →モノを扱う産業から知識集約型産業への転換、成功しつつある
 →米国の経済発展の鍵は「知的財産」
・経済戦争の主目的
 →中国が、不法な知的財産取得により科学技術の面で米国を追い越すのを阻止すること
 →中国の目論む産業革命ひいては永続的な経済発展にダメージを与えること
・トランプの「米国・ファースト」というスローガン
 →「米国最優先」
  「米国を世界No.1であり続けさせる」
  「米国の世界覇権(パクス・アメリカーナ)を維持・継続させたい」

〓なぜトランプは軍事作戦ではなく経済戦争を選んだのか

□対中国経済戦争の理論的背景はリデル・ハートの「間接アプローチ」
・トランプが中国に対して経済戦争を仕掛けた戦略理論的な背景
 →英国の軍事評論家、リデル・ハート(Sir Basil Henry Liddell-Hart:1895〜1970)の「間接アプローチ」
・「間接アプローチ」のポイント
 →第1:「目的達成のために要する人的・物的損害を最小化する」
 →第2:「何が可能か」
   …「現実的に、どのような策が中国に対して可能なのか」
 →第3:予備目標の準備と対応策の柔軟性
・トランプ政権は、経済戦争に代わる複数の目標や手段(対応策)を準備しているはず
 →中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・副会長兼最高財務責任者のカナダでの逮捕
  →米国の"選択肢の多さ"

□米中軍事戦争は双方に受け入れられないダメージをもたらす
・今日では中国も米国に甚大な損害を与え得る軍事力を保有するに至っている
 →米中が軍事力による戦争をすれば、双方が耐えられないほどの甚大な惨害
 →パクス・アメリカーナも中国が東アジアを支配するパクス・シニカも達成不可能に
・トランプとしては、「米国が甚大な損害を被ることなく、中国の経済・軍事・科学技術の台頭を抑え込み、ひいては習近平の中国共産党を弱体化し崩壊させること」ができる方策を採用する必要
 →米中経済戦争

□軍事力の源泉は経済力
・中国は、経済成長の成果を直ちに軍事建設に投入、国防費は極めて速いペースで増加
 →中国政府が発表した2018年度国防費予算案は約18兆4000億円、日本の防衛予算の3.7倍
・中国の軍拡の源泉はその経済力
 →米国が引き続き中国に対する経済的優位を維持・確保できれば、米軍は中国軍に対して軍事的優位を維持できる
 →今次、トランプが中国に対する経済戦争を仕掛ける理由

□冷戦時代の米ソ対立との違い
・米ソ冷戦時代には、米国による経済戦争・封鎖は有効な戦略・戦術にはなり得なかった
 →一方、米中は相互に最大の貿易相手国
  …2017年の統計:
    中国から米国への輸出 5065億ドル(約57兆円)
    米国から中国への輸出 1308億ドル(約15兆円)
・米中貿易について言えること
 →中国の対米輸出が約4倍と米国の対中輸出を圧倒的に上回っている
 →米国の貿易赤字の半分近くを中国が占めている
 →トランプは「25年間で米国は中国を再建してあげた」と皮肉を込めて不満

〓米国は、なぜ「今」対中経済戦争を発動したのか

□米国にとって「今」こそが将来の明暗を分ける"剣が峰"
・トランプにとっては、オバマが諦めたパクス・アメリカーナを回復できる最後のチャンス
・習近平にとっては、中国共産党独裁体制を堅持し、パクス・シニカに道を開くことができるどうかが決まる時

□トランプ大統領の登場は「天の配剤」か?
・トランプは従来の大統領の世界観から大きくはみ出した"型破りな大統領"
 →エリート層の間で合意されてきた過去のやり方とは完全に決別、米国の凋落を認め、手遅れにならないうちに世界秩序のルールを米国有利に書き換えようと努力

□兵は拙速を聞く(孫子)
・中国の野望に対しては、機先を制して速やかにこれを挫くことが戦いのポイント
 →孫子の兵法の1つ:
  …「戦いというものは、多少の問題があっても素早く一気に決めるものであり、長く引き延ばして成功したためしはない」

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