セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

米中貿易摩擦渦中の一方、目を引く国際特許出願およびスパコン関連

米中貿易協議は北京での閣僚級協議を経て、首脳会談決着が模索されているが、合意時に関税を即時撤廃するよう求める中国側に対して、トランプ大統領は対中関税解除は議論しないと言明、先行き予断を許さない雰囲気が漂ってきている。元々は知的財産の盗用に端を発する両国間摩擦であるが、世界知的所有権機関(WIPO)の2018年特許出願件数データでは、アジアが初の5割超、中国が米国に肉薄、2年以内に抜く勢い。そして、スーパーコンピュータ性能ランキングでは5年首位を占めた中国から米国がその座を奪還したばかり。交渉駆け引きの一方、内実の競争模様に注目させられている。

≪交渉応酬および競り合いの実態≫

米中貿易摩擦のインパクトについて、中国人が数多い米国の大学における状況である。

◇「世界の頭脳」に米中摩擦の影、ファーウェイ協力見直し (3月17日付け 日経 電子版)
→米中対立の余波が米国の学術界にも及びつつある旨。中国企業による米国の先端技術窃取を警戒するトランプ政権と議会は、米大学と中国企業の産学連携や、増加する中国人留学生にも矛先を向け始めた旨。中国と蜜月関係を築く米大学には戸惑いもあり、行きすぎた規制となれば「世界の頭脳」として研究をリードしてきた米大学の競争力にも影響しかねない旨。
全米科学財団(NSF)によると、中国人が米国で博士号を取得してそのまま米国に滞在する割合は2017年で8割超。約5600人と国別ではトップで、シリコンバレーへの大きな人材供給源となってきた旨。過剰な規制は米国の産業基盤にも影響する旨。

中国による米国の製品&サービス購入を大幅に高める駆け引きが見られているが、米国半導体メーカーからは中国にいっそう縛られる結果になるとして対象からの除外を求めている。

◇U.S. Chip Makers Fear Trap in a Trade Deal With China-US chip firms want no part of a China trade deal -Proposed stepped-up purchases would give Beijing more control, semiconductor industry says (3月18日付け The Wall Street Journal)
→米国半導体メーカーがTrump政権に対し、自分たちの業界を中国とのいかなる通商合意展開からも除外するよう求めている旨。米国の交渉筋は米国の製品&サービス$1 trillion以上の購入について北京からのcommitmentを探っているが、半導体ベンダーはこのような取引では中国の半導体業界への制御をより大きくするようなものとしている旨。

米中貿易協議の方は、以下の通り北京での閣僚級協議を経て、首脳会談決着に至るかどうか、妥協点の模索が行われていく。

◇米中貿易協議、閣僚級で来週開催へ (3月20日付け 日経 電子版)
→米政府は19日、米中両政府が来週、北京で閣僚級の貿易協議を開くことを明らかにした旨。米中は合意事項を破った場合の罰則規定などを巡って対立しており、首脳会談での決着に向けて妥協点を見いだせるかが焦点となる旨。米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表とムニューシン米財務長官が北京を訪れ、中国の劉鶴副首相と会う旨。次の週には劉氏がワシントン訪問を計画している旨。合意時期の目標は4月末としている旨。

◇China says US officials to visit for trade talks -US-China trade talks to resume (3月21日付け The Hill)

トランプ大統領は対中関税解除については議論しないと言明、合意後も続くとして、先行き予断を許さない雰囲気が漂ってきている。

◇トランプ氏、対中関税解除「議論せず」、合意後も継続示唆 (3月21日付け 日経 電子版)
→トランプ米大統領は20日、これまで中国に課した制裁関税に関し「解除することは議論していない」と述べ、貿易協議で合意した場合でも当面継続する可能性を示唆した旨。中国が合意事項を確実に守るよう圧力をかけ続ける狙い。中国は合意時に関税を即時撤廃するよう求めており、来週再開する閣僚級の貿易協議で焦点となりそうな旨。

米中摩擦に関連する動きをいくつか。まずは、Apple対応はじめ受託生産の世界最大手、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が、摩擦で敏感になっているデータセンター関連機器の工場を中国ではなく台湾に建設するとしている。

◇鴻海、台湾高雄にデータ関連機器の工場建設 (3月17日付け 日経 電子版)
→電子機器の受託生産の世界最大手、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長は17日、高雄にデータセンター関連機器の工場を建設する方針だと明らかにした旨。鴻海は中国が主力生産拠点だが、米中貿易摩擦が激化するなか、データ処理に関わる敏感な機器の生産を中国の外に移す要請が強まっているもようの旨。

Appleの部品調達先を見ると、2018年は中国勢が台湾に次ぐ2位に浮上している。

◇アップルの部品調達先、中国勢が初の2位、日米抑え (3月18日付け 日経 電子版)
→米アップルの機器生産で、中国企業の存在感が高まっている旨。同社がこのほど開示した2018年のサプライヤーリストを分析したところ、中国(香港含む)勢の社数の比率は20%強と過去最高となり、日本と米国を初めて上回り台湾に次ぐ2位に浮上した旨。従来のコスト面での強みに加え、技術力の向上が背景にある旨。

TSMCはじめファウンドリーの2019年第一四半期が前年同期比16%減と、米中摩擦の影響がここでもあらわれる見方である。

◇12 inch foundry hit hard-TrendForce: Q1 foundry revenue to dip to $14.6B (3月19日付け Electronics Weekly (UK))
→TrendForceの見方。2019年第一四半期のファウンドリー売上げが$14.6 billion、前年同期比16%減。米中通商係争および12-インチウェーハ需要低下などの理由から、世界のファウンドリー・トップ10の大方が第一四半期売上げが低下している旨。

米中摩擦の発端となっている知的財産盗用の問題であるが、昨年の特許件数データについて、まず欧州特許庁(EPO)の報告書より次の通りである。米国が首位、中国は5位であるが、メーカー別で中国・Huaweiが2位となっている。

◇欧州で特許取得、日本企業2.1万件、昨年、過去最多に (3月13日付け 日経)
→欧州特許庁(EPO)が12日まとめた報告書。2018年に日本企業が欧州で取得した特許件数は2万1343件となり、過去最多となった旨。ソニーやキヤノン、パナソニックなどが牽引。日本企業による欧州での特許出願件数は2016年まで減少が続いていたが、エネルギー技術や半導体といった分野の出願が増えている旨。日本は国別出願数では米国、ドイツに次ぐ3位となった旨。

◇Automotive Drives European Patent Growth (3月18日付け EE Times)
→今月始めに発行されたEuropean Patent Office(EPO)の2018年annualレポート。昨年EPOでの特許件数は4.6%増の174,317件。国別では、米国がトップで全体の25%、次いでドイツ、日本、フランス、中国。メーカー別トップ3は、Siemens、Huawei、Samsungの順。

次に、世界知的所有権機関(WIPO)のデータを見ると、2018年の国際特許出願件数についてアジア勢が初めて5割を超え、中でも中国が首位の米国に肉薄しており、このままであれば2年以内に中国が米国を抜くという予測となっている。メーカー別では中国・Huaweiがここでは首位を占めている。

◇In Shift, Asia Grabs Lead in International Patent Applications (3月19日付け EE Times)
→国連の専門機関、World Intellectual Property Organization(WIPO:世界知的所有権機関)発。WIPOを通して出された国際特許出願の半数以上をアジアが2018年に初めて占め、"革新活動における歴史的地理的移行"と強調の旨。アジアからの国際特許出願の伸びは、中国、インドおよび韓国からの力強い増加が引っ張っている旨。

◇国際特許出願、アジアが初の5割超、中国が牽引−世界知的所有権機関(WIPO)調べ (3月19日付け 日経 電子版)
→知的財産権でアジア勢の存在感が増している旨。世界知的所有権機関(WIPO)が19日発表した2018年の特許の国際出願件数で、アジアの国からの出願が初めて5割を超えた旨。通信や人工知能(AI)関連などで中国の勢いが鮮明で首位の米国を急速に追い上げている旨。日本も存在感を保っているものの、米中2強が技術革新の主役を担う構図が鮮明になってきた旨。
世界全体の出願件数は前年比4%増の25万3千件と9年連続で増加し、過去最多を更新。出願の51%は日本を含むアジアからで、欧州が25%、北米が23%。
 国別トップ3: 米国  5万6142件  1%減
         中国  5万3345件  9%増
         日本  4万9702件  3%増
 メーカー別トップ3:  Huawei    5,405件
             三菱電機   2,812件
             Intel     2,499件

WIPOのガリ事務局長は「中国は国家主導で巨額の研究開発費を投じて、技術開発に邁進している」とし、「このままいけば2年以内に中国が米国を抜く」と予測する旨。

毎年春秋2回発表されるスーパーコンピュータ性能ランキングであるが、5年にわたる中国首位から昨年米国がその座を奪還したばかりである。

◇China plans multibillion-dollar investment to knock US from top spot in fastest supercomputer ranking (3月18日付け South China Morning Post)
→本件事情通発。中国の5年の席巻が終わり2018年は米国が最高速スーパーコンピュータのトップの座を奪取、中国が、それを取り戻すべくスーパーコンピュータ・インフラのアップグレードに向けてmultibillion-dollarの投資を計画している旨。

中国の巻き返しが注目される激しい凌ぎ合いの展開であるが、米国ではIntelとCray Computerによる1 exaflopの壁を打破するAuroraスーパーコンピュータの取り組みが以下の通りである。

◇Intel, Cray Win U.S. Exascale Deal-Aurora system will use new Intel accelerator (3月18日付け EE Times)
→米国エネルギー省(Department of Energy)が、3つのexascale-classスーパーコンピュータの最初の構築に向けてIntelおよびCrayと$500 millionを上回る契約の旨。Intelは、該システムは2021年末前に動作し、今後のXeonプロセッサ, Optane DIMMs, およびRaja Koduri氏(AMDの主要なグラフィックス技術のエキスパートからIntelに入り、コア・ビジュアル・コンピューティング担当シニアバイス・プレジデントを務める)が率いるGPUファミリー設計と思われるいわゆるXe製品を用いるとしている旨。
DoEは、該3つのシステムに総額$1.8 billionを充てる計画、IBMおよびNvidiaのチームがそれぞれ今後のpowerプロセッサおよびGPUsを用いて2つの他のシステムを構築するとまもなく発表予定の旨。

◇Intel claims Aurora will be the first U.S. supercomputer to hit 1 exaflop-Intel and Cray to build supercomputer capable of 1 exaflop (3月18日付け VentureBeat)
→IntelとCray ComputerがAuroraスーパーコンピュータを構築、2021年にArgonne National Laboratoryにて稼働する旨。該$500 million supercomputingシステムは、one exaflop, すなわちone quintillion floating point computations per secondの性能を誇る旨。

◇U.S. Enters Exascale Race-Race to build the worlds first exascale systems heats up as U.S. Department of Energy awards Intel and Cray a contract to build 3 exascale-class supercomputers. (3月20日付け EE Times India)

米中摩擦の政治的な駆け引きの動きに目を奪われがちになるが、技術の真価、実力の競り合いの実態に注目するところである。


≪市場実態PickUp≫

【Nvidiaの技術イベント】

Nvidiaのannualグラフィックスイベント、GTC(GPU Technology Conference) 2019(3月17-21日:SAN JOSE, Calif.)が開催され、以下目に入った範囲の取り上げである。最先端プロセス、7-nmでのGPUの取り組みは、今後どう出るかに注目である。

◇Nvidia launches GeForce GTX 1660-Nvidia debuts the GeForce GTX 1660 graphics card (3月18日付け DIGITIMES)
→Nvidiaが、GeForce GTX 1660グラフィックスカードを投入、該カードには1,408個のCUDA(Compute Unified Device Architecture:クーダ)コア、8 gigabits/secで動作する6 gigabytesのGDDR5メモリおよび1.8 gigahertzで動いているboost clockがある旨。GTX 1660およびGTX 1660 Tiモデルは、第12世代Turing graphics processing unit(GPU)アーキテクチャー・ベースの旨。

◇Nvidia Mum on 7-nm GPU-Annual event focuses on Turing systems, software-The network is the computer and the end of copper (3月19日付け EE Times)
→Nvidiaのannualグラフィックスイベント、GTC(GPU Technology Conference) 2019(3月17-21日:SAN JOSE, Calif.)は約8,000人の入場者。NvidiaのCEO、Jensen Huang氏は、グラフィックcomputingおよびAIで圧倒的な主導性を発揮するこのときに、high-endロードマップ、7-nm GPUについては黙っていた旨。約3時間の基調講演は、昨年8月発表の同社最新プロセッサに向けた新しいシステムおよびソフトウェアが盛り込まれた旨。皮肉にも最も興味深い情報は、Nvidiaの今までで最も安価なボードおよび光interconnectsについてのリサーチプロジェクトであった旨。

◇自動運転、仮想の走行試験、トヨタ・エヌビディア、開発加速へ協力 (3月20日付け 日経)
→米半導体大手、エヌビディアが18日、米サンノゼ市で開いた技術イベントにて、自動運転分野でのトヨタ自動車との提携を拡大すると発表、トヨタの研究開発子会社が仮想空間での自動運転車の走行シミュレーションに、エヌビディアが開発した技術を用いる旨。データセンター向けGPU(画像処理半導体)などが伸び悩むなか、トヨタとの協業をてこに自動車分野の底上げをめざす旨。

【Micronの業績発表&予測】

Micron Technology社が2月28日締め第二四半期の業績を発表、現下のメモリ市場の落ち込みを映し出す内容であり、生産調整が打ち出されている。一方、今年後半には持ち直す予測があらわされている。

◇Micron Expects Memory and Chip Demand to Recover in H2 2019 (3月19日付け Market Realist)
→Micronは他の半導体メーカー同様、2019年後半までには在庫状況は正常化して末端需要が戻すとしている旨。

◇Micron sees memory chip recovery coming later in year, shares rise-Micron anticipates a memory chip recovery later in year (3月20日付け Reuters)
→Micron Technologyの2月28日締め第二四半期売上げが$5.84 billion、アナリスト評価平均を僅かに上回るが、前年同期の$7.35 billionを依然下回る旨。同社は第三四半期の売上げを$4.6 billion〜$5 billionと予測、メモリ市場状況はカレンダー2019年の後半に改善すると見ている旨。

◇Micron Says It Will Cut Output as Memory Chip Demand Stalls (3月20日付け Bloomberg)
→Micron Technology社が、中核製品の需要低迷に対応、生産を削減しており、売上げインパクト緩和に向けて素早い行動の旨。株価が取引延長で上昇の旨。同社はまた、製造改善投資を約$500 million削減する旨。

◇Micron to cut DRAM, NAND flash output 5% (3月21日付け DIGITIMES)
→Micron Technologyが、DRAMウェーハstartsの最大5%を止め、また2019年のNANDフラッシュウェーハstarts全体を5%ほど減らす計画を披露、一方、2019年度第三四半期の売上げperformanceについての注意をあらわしている旨。


Micronの後半回復の予測を受けて、半導体関連株が上昇、市場気分を映し出している。

◇Semiconductor shares rise as Micron predicts memory recovery (3月21日付け Reuters)
→米国の半導体メーカー、Micron Technology社が携帯電話需要が鈍化して供給過剰を背負うメモリ市場における回復を予測、木曜21日の世界の半導体メーカーの株価が上昇の旨。

【Qualcomm 対 Apple】

米国連邦裁にて、AppleがiPhoneでQualcomm特許3件を侵害、Qualcommに損害賠償$31.6 millionとの裁定が出されている。これで終わりというのではなく、来月半ばには次のさらに激しい対決が控えている。

◇Qualcomm Wins First U.S. Jury Trial Against Apple-Jury awards Qualcomm $31.6M in Apple spat (3月15日付け Bloomberg)
→米国連邦裁・San Diegoの陪審団が、AppleがiPhone 7, 8およびXにおいてQualcomm特許3件を侵害、Qualcommに損害賠償$31.6 millionと裁定の旨。
該係争は終わっておらず、両社は特許ライセンス&ロイヤリティを巡るずっとより激しい直接対決と予想されるもので、4月15日にSan Diego裁に戻ってくる旨。

◇Apple infringed three Qualcomm patents, jury finds (3月16日付け Reuters)

◇4 takeaways from Apple and Qualcomm's big patent fight (3月16日付け CNET)
→ここ2週間、QualcommとAppleはスマートフォンの心臓部での基本技術のいくつかを巡ってSan Diegoの法廷で戦い、金曜15日に陪審がAppleが問題の特許3件すべてを侵害としている旨。次のラウンドが始まる前に、ちょうど終わった対決から以下取り出し4点:
 1. The Arjuna Siva argument
 2. Apple alleged witness tampering. Judge said 'no evidence'
 3. Apple says this isn't about patents at all
 4. The big show is next month

◇U.S. Court Finds Apple Infringed Qualcomm IP (3月18日付け EE Times)

【300mm fabsの数】

IC Insightsより、300-mmウェーハfab拠点が、世界で今年121、2023年には138に伸びるとの見方があらわされている。今年稼働の新拠点が9つでうち5つが中国とのこと。生産マップのアップデートの必要を感じるところである。

◇Number of 300mm IC Wafer Fabs Expected to Reach 121 in 2019-Nine new 300mm wafer fabs scheduled to open in 2019, five of them in China. (3月15日付け IC Insights)

◇121 300mm fabs by end of 2019-IC Insights: 300mm fabs to total 121 by year's end (3月18日付け Electronics Weekly (UK))
→IC Insights発。9つの新しい300-mmウェーハfab拠点が今年稼働する見込み、うち5つは中国でオープンの旨。該新拠点で2019年の間の世界総数は121になる一方、2023年には138に伸びていく旨。

◇Number of 300mm wafer fabs to grow through 2023, says IC Insights (3月19日付け DIGITIMES)

【我が国の半導体業界関連】

1980年代後半から1990年代はじめにかけて世界市場を席巻した我が国の半導体業界であるが、その後の試練の経過は知る通りである。昨年のサプライヤランキング、今に続く問題提起、そして東芝メモリのIPO、と現時点取り出しての改めての注目である。

◇2018年の日本半導体企業ランキングトップ10 - IHS調べ (3月15日付け マイナビニュース)
→IHS Markitへの独自取材による2018年における日本の主要半導体企業のランキング、下記参照:
https://news.mynavi.jp/photo/article/20190315-789167/images/001l.jpg
 トップ10社中2桁の成長率を記録したのは1社のみ…首位の東芝メモリ
 日本半導体企業の総売上げの過半を占めるトップ3…東芝メモリ、ルネサスエレクトロニクス、ソニーセミコンダクタソリューションズ

◇ニッポン半導体、生き残れるか(複眼) (3月19日付け 日経)
→日本の半導体産業が存亡の機に立たされている。投資や合理化の遅れで地位低下が続く一方、中国が猛スピードで追い上げ、一部技術は日本を超えたとの見方もある。国産を維持できなければデータ経済の成長を取りこぼしかねない。空前の好景気も転機を迎える中、輝きを取り戻せるか。

◇Toshiba Memory IPO likely pushed back two months to November: source-Report: Toshiba Memory IPO may not come until November (3月20日付け Reuters)
→本件事情通、水曜20日発。米国buyout firm、Bain Capitalが、東芝メモリのIPOを約2ヶ月先延ばしする様相、今年日本最大のlistingsの1つが11月になりそうな旨。


≪グローバル雑学王−559≫

「世界3大投資家」と称される1人、ジム・ロジャーズ(Jim Rogers)による驚愕の未来予測の書、

『お金の流れで読む 日本と世界の未来 −世界的投資家は予見する』
 (ジム・ロジャーズ 著  大野 和基 訳:PHP新書 1172) …2019年1月29日 第一版第一刷

は、まず我が国、日本に焦点を当てており、今回はその前半である。日本はすべてがすばらしいが、借金と少子化から先々消えてしまうと悲観的な見方である。しかし、強みを最大限に発揮、伸びる分野に積極的に取り組めば、逆転は可能としている。外国人を排除し、門戸を閉じると国は衰退の一途というのが歴史の習い、いまの日本の状態は「紙幣を刷れば株価が上がる」という市場の原理に則っているだけ、移民を受け入れについていかに社会への影響をコントロールするかを考えること、と率直な意識、注意の喚起があらわされている。


第一章 大いなる可能性を秘めた日本 ―――前半

[訳者記]
・大の日本びいきで知られるジム・ロジャーズだが、日本の将来には悲観的だ。
・しかし、希望は大いにある。日本人の強みを最大限に活かし、これから伸びる分野に積極的に投資すれば、逆転は不可能ではない――

◎日本の未来を世界史から照射する
  閉じた国は亡び、開いた国は栄える――歴史の必然

〓「私がもし10才の日本人なら、ただちに日本を去るだろう」
・日本は、私が世界で一番好きな国の1つ
 →もちろん食べ物だけでなく、日本はすべてがすばらしい
・その日本が、50年後か100年後には消えてしまうのは心から残念でならない
 →借金と少子化、この2つがシンプルな理由
・2017年11月、アメリカの投資情報ラジオ番組での私の発言
 →「もし私がいま10才の日本人ならば、自分自身にAK-47(旧ソ連が開発した自動小銃)を購入するか、もしくは、この国を去ることを選ぶだろう」

〓犯罪大国になる「2050年の日本」
・30年後の日本、それだけ社会問題が深刻に
 →自分の身を守るため、あるいは革命を率いるための方法が必要である、と言いたかった
・日本に吹いているのは、追い風ではなく逆風

〓国の衰退の原因を歴史に見る
・人口が減少し、さらに移民を受け入れない国に将来大きな問題が起きるのは、歴史も物語っている明白な事実
 →例:西アフリカのガーナ共和国
    ビルマ→ミャンマー
    東アフリカのエチオピア
 →もう外国人はいらないと言って閉鎖した途端、完全に崩壊
 →いまや世界経済をリードする存在となった中国も、過去に同じ過ち
・外国人を排除し、門戸を閉じた国が衰退の一途を辿るということを、歴史は何度でも教えてくれる
 →国内で問題が起きて不満がたまってくると、何でも外国人のせいにして、やがては追放してしまう

◎日本の好景気はうわべだけ
  じきにこの国を蝕む重い病とは

〓経済学者はたいてい間違っている
・現在日本は、国と地方を合わせて約1100兆円、実にGDP比約2倍という目もくらむような借金
 →これだけ増やしても平気なのは、返済するのは自分の世代ではないと考えている証拠
 →50年前の日本は、貯蓄率世界一、国債もほぼゼロ、50年でがらっと変わった
 →いま10才の子どもたちが40才になる頃には、彼らの老後を保障する金は尽きている
・経済が活発化している国はどこも、インフレに依存していない
 →「インフレになれば借金は目減りするから問題ない」と言う経済学者は間違っている

〓うわべだけの好景気に騙されるな――「お金の流れの歴史」に学ぶ教訓
・アベノミクスによる金融緩和で、確かに足元の景気は良くなった
 →しかしそれは、うわべだけの好景気に過ぎない
 →いま日本株が上がっているのは、日本銀行が紙幣を刷りまくり、そのお金で日本株や日本国債を買いまくっているから
・1970年代のアメリカでも、お金の流れは同じような動きを見せた
 →多くの金が、株と金に流れた。石油にも流れた

〓いつか「安倍が日本をダメにした」と振り返る日が来る
・いまの日本の状態は、「紙幣を刷れば株価が上がる」という市場の原理に則っているだけ
 →アベノミクスが成功することはない。安倍政権の政策は日本も日本の子どもたちの将来も滅茶苦茶にするもの
・とはいえ、皮肉なことに私のような投資家にとっては、最高の状態と言える
 →株価が上がるので、投資家やストックブローカーにとっては好都合
 →日本の企業は保護され過ぎている傾向があるので、紙幣が刷られればそれだけ利益が上がり、株価も上がる

〓危機にこそ投資の機会がある
・私が最後にまとめて日本株を買ったのは、東日本大震災の前後のこと
 →日本は震災から必ず復興すると信じていたから、それだけ投資した
・危機が起きた時は、投資のために機敏に行動する時
 →たとえば、私がいま注目しているのは、ベネズエラとジンバブエ
 →混乱期にある中で、いい投資の機会になるかもしれない。少なくとも変化はあるだろう。投資家はこのように考える
・当然ながら、株価が落ちている時に買う方が、最高値にある時に買うよりも儲かる
 →私はかねてより、「世界中の市場が暴落しても、日本株と中国株、ロシア株は保有しておく。この3つは景気減速の影響を受けることが少ないから」と述べている

◎移民を受け入れる国は栄え、拒む国は亡びる
  いかに社会への影響をコントロールするかを考えよ

〓移民受け入れか、貧乏か
・「長期的な時間軸から、アベノミクスへの評価を」と尋ねられること
 →「このままでは、日本に長期的な時間軸はない」と答えざるを得ない
・少子化問題に対抗するには、移民を受け入れなければならない
 →日本人は外国人を受け入れるよりも生活水準の低下の方を選んだように私には見える

〓「移民受け入れは犯罪を増やす」のか
・外国人が罪を犯した時だけことさらに「外国人」であることを強調
 →外国人はみな犯罪者だという先入観を植え付けてしまう
・事実としては、移民として入ってくる人のほとんどは、勇気があるから自国を出てきている
 →勇気がなければ、クレイジーでなければできないこと
・移民は、はじめは異なる文化を持って入ってくるもの
 →それでもやがては移民先の国に同化するのが普通

〓EUの轍を踏まないために
・EUでも、確かに移民は必要
 →ドイツの企業には労働者が足りない
 →移民を受け入れるのが手っ取り早い
・2015年以降、ドイツが受け入れた移民の数は100万人以上とも
 →国民の約1.2%
・私が居を構えているシンガポールでも、あまりにも短期間に多くの移民を受け入れ過ぎた
 →この国は、これ以上移民を受け入れようとしない
・移民の受け入れ方をコントロールしなければならない
 →日本が移民を必要としていることは明白な事実
 →うまくコントロールしながら、徐々に移民を増やしていくしかない
・国を閉鎖して成功したという例を、私は知らない。まったくのゼロ

月別アーカイブ