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相次ぐ下方修正/グローバル雑学王−19

9月後半からの米国発の金融危機が世界規模に波及して、金融と世界経済の安定化策を話し合う緊急首脳会合(金融サミット)が招集されるに至っている。デバイス業界にもいろいろな場、切り口で具体的な下方修正、削減、鈍化、・・・などの形で見えてきている。

≪相次ぐ下方修正≫

直近の関連する動きを目に付く範囲で以下に示すが、業界のベテランでsilicon-on-insulator(SOI)応用ウェーハのサプライヤ、Soitec SA(Bernin, France)のpresident, CEO and chairman、Andre-Jacques Auberton-Herve氏の弁、次の通りである(11月14日付け EE Times)。
「今のこの事態は今までにある不況ではない。グローバルな経済低下サイクルだ。我々は未知の領域にいる。」端的な感じ方のコメントと思う。

◇世界のIT投資、2009年は2.6%増に鈍化、IDC予想。 (11月15日付け 日経)
→米IDC発。世界のIT投資に急ブレーキがかかる可能性が高まってきて、2009年の投資額の前年比伸び率を従来予想の5.9%から2.6%に引き下げた旨。9月に起きた金融危機を境に、企業などがコスト抑制に動いているのが背景の旨。

◇米インテルの10-12月期、大幅下方修正、7四半期ぶり減収に。(11月13日付け NIKKEI NET)
→米インテルが12日、10-12月期の業績予想を下方修正したと発表、売上高は前年同期に比べて13%-19%減の87億-93億ドル(8200億-8800億円)を見込み、7四半期ぶりに減収になる旨。MPUなどの需要が鈍化、ハイテク業界に対する世界景気減速の影響が鮮明になってきた旨。
10月14日に発表した従来予想は同6%減-2%増を見込んでいたが、1カ月で大幅下方修正に追い込まれた旨。

◇中国の工業生産、7年ぶり伸び1ケタ、10月8.2%増。(11月13日付け NIKKEI NET)
→中国の国家統計局、13日発。10月の工業生産は前年同月比8.2%増、伸び率が1ケタにとどまったのは2006年1月以来、工場稼働日数が毎年変動し単純比較が難しい旧正月時期を除けば2001年12月(8.7%増)以来、約7年ぶりの1ケタ増となる旨。鉄鋼、自動車などの減産が主因で、生産面での経済減速が鮮明になってきた旨。

◇ST chief calls for retrenchment, green investment in face of financial crisis-Far from warning of doom, STMicroelectronics' CEO Carlo Bozotti outlines the company's strategy of increased fiscal conservatism, organic growth, and reliance on creativity to "withstand the crisis and to fight back against it with innovation."(11月12日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Electronica exhibition(11-14日:MUNICH, Germany)でのSTMicroelectronicsのannual Electronica partyにて招待の聴衆を前に、STのPresident and CEO、Carlo Bozotti氏。年初からの業況は力強くきているが、業界は今や産業国家を苦しめる最大の金融危機なるものに直面している旨。

◇IDC sees U.S. tech spending growth at 0.9% in 2009 (EET)(11月12日付け EE Times)
→IDCが、2009年の米国IT spendingの伸長予測を、8月時点の4.2%増から、今回0.9%増に大幅下方修正の旨。

◇Analyst cuts estimates for Intel, AMD (EET)(11月11日付け EE Times)
→FBR Researchのアナリスト、Craig Berger氏。第四四半期PC販売数量予測、以下の通り。
            今回         前回(1ヶ月前)
 notebook  前四半期比5%増    同12%増
 desktop      同15%減      同6%減

◇Gartner cuts IC-assembly forecast (EET)(11月11日付け EE Times)
→Gartner社が、semiconductor assembly and test services(SATS)市場予測を下方修正の旨。
        2008年  2009年
6ヶ月前  4.1%増  14.1%増
前回    3.8%増   6.5%増
今回    1.6%増    4%減

◇世界の携帯電話機販売が急減速、7-9月出荷3.2%増。(11月11日付け NIKKEI NET)
→米調査会社IDC発。世界の携帯電話機販売に急ブレーキ、今年7-9月期の携帯電話機の出荷台数は前年同期比3.2%増の2億9900万台、同社が調査をはじめた2003年以来、最低の水準の旨。上半期までは新興国が牽引役となり、15%前後の高成長をみせていたが、金融危機による景気悪化で急速に伸びが鈍った旨。10-12月期は一段と減速する可能性がある旨。

◇中国の製造業経営環境急激に悪化(11月9日付け [13億人の経済ニュース](biglobe配信))
→先日開催された広州の交易会での玩具関係の輸出オーダー数が前年比80%下落した。一方、里昴証券などがまとめたデータによると、製造業の環境は3ヶ月連続で悪化し、10月は注文数、価格などで過去最大の下げ幅を記録した。

デバイス関連で見ればこのような状況であるが、小生の近所のガソリンスタンド表示のレギュラーの価格が、この土曜日121円、日曜日119円と、これも急速な下がりようである。政治、経済と世界総出の修復策が施されている中、実態の推移をしっかり把握することと感じている。


≪グローバル雑学王−19≫

さて、どう役立つかはよく分からないこのコーナー、

『色彩の世界地図』(21世紀研究会 編著:文春新書 311)

から、締めの章として歴史の中での色、色彩、彩りというものが織り成す豊富なエピソードあれこれ、以下の通りである。

○歴史のなかの色彩地図

・「紫塞(しさい)」−万里の長城の八達嶺(北京から約75km)
 →緑の山肌に紫色の壁が印象的

[ロイヤル・カラー]
・ロイヤル(王家の〜)という形容詞がつく色名 →多くは、王家の服の色に由来。
 * 青、赤、緑系が主流
 * 中国の皇帝色である黄色
 * 日本の皇室の黄櫨染(こうろぜん)(黄褐色) →ミカド:mikado
・オレンジの色が国民の色と言ってもいいほどのオランダ
 * オラニエ公ウィレム(オレンジ公ウィリアム)…オランダ独立運動の指導者
 * 国際的なスポーツ競技では、オレンジのユニフォームが多かったり、応援席でオレンジの旗が振られる。

[血を吸ったノミの色]
・寝袋=fleabag(英語の俗語)
 flea=ノミ
・太古から続いていたノミとの戦い
 中世ヨーロッパの貴婦人たち →ゆったりと広がったドレスの下ではノミとの壮絶な戦い
・新しい色の誕生 ピュース:puce→血を吸ったノミの色:赤褐色
  「ノミの腹」
  「赤面するノミ」
 黄色系の新しい色も →「皇太子の糞:caca dauphin」
                「鳶の糞:merde d'ore」

[ミイラという色]
・失われた古代の遺産
 * エジプトに侵入してきたアラブ人にとって、建造物、装飾品、あらゆるものが交易に利用できる格好の宝物
 * 膨大な財宝がエジプトから流出
・ミイラが残らなかった理由:
 1.粉末にして顔料に →マミー:mummyという色
 2.万能の秘薬

[ヒツジ色とラクダ色]
・ラクダ →「ジャマル(ガマル)」(アラビア語) 
      →camel(英語)の語源、色の名前でも 
・漢字の「美」 →「羊が大きい」
 ジャミール(アラビア語の「美しい」) →上記のジャマルから

[オセロの眼の色は]
・シェイクスピアの四大悲劇のひとつ『オセロ(オテッロ)』から生まれた言葉:
 green-eyed(目が緑の、嫉妬に燃えた)
 green-eyed monster(嫉妬、ねたみ)

[ロビン・フッドと妖精]
・Lincoln green ⇒昔イングランドのLincolnで織った明るい黄緑色のラシャ。ロビン・フッド(Robin Hood)の一党、森の義賊の服の色。

[パープル・ハート部隊]
・アメリカ合衆国の最初の勲章 …purple heart(PH)
                    →名誉戦傷章:ハート形に紫色の綬
・1940年代の第100歩兵大隊 …別名「パープル・ハート部隊」、米軍史上、最高数の表彰

[紫禁城と紫宸殿]
・中国皇帝の祖先である天帝は、極北にもっとも近い星座(紫微垣[しびえん])にいるという、古代中国の考え方。
 * 皇帝の祖先を、天の中心的存在に置いた。
 * 天帝を象徴する色は紫。
・「紫禁城」…皇帝の居所。"禁"→奥深い宮中で、自由に一般の者が近づける場所ではないという意。
・京都御所の紫宸殿 →この"宸"も天帝がいる場所のこと 

[皇帝紫]
・purple(英語) →紫の染料をとるための巻き貝プールプラ:purpura(ラテン語)に由来
・赤系の紫であるパープルに対して、青系の紫がviolet(すみれ色)。
・Tyrian purple:皇帝紫、ティルス紫
 …古代ギリシア・ローマ時代に貝殻から採った紫色または深紅色の高貴な染料
・be born in the purple:「王侯の家に生まれる」という意

[アステカのコチニール紫]
・メキシコの古代アステカ文明やインカの人びとがもっていた鮮やかな赤紫の染色文化
  ↓
 コチニール:cochineal …コチニールカイガラムシ(エンジムシとも)とよぶ虫のメスを乾燥して抽出した色素

※色は、宗教、文化、国家などをともにする人びとのなかで、何か共通の意味を持つもの
  ⇒ 世界の色を客観的に見られるようになりたいもの

共通に感じるものあり、異彩を放つものあり、本当にグローバルな感じ方、受け取り方の達人の域に達するようになりたいものであるが、果たしてできるのだろうか。

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