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韓国滞在中に見る世界の激動/グローバル雑学王−18

所用で訪れた韓国、滞在中の行く先々で見る米国大統領選挙の開票速報のニュース、そしてオバマ次期大統領誕生後の世界の反響である。先端技術には理解が深い一方、Fair Tradeには一層厳格、というスタンス評価を感じている。金融危機の波及が様々な業種に広がる中、世界の激動というものを随所で体感させられる昨今である。

≪韓国滞在中に見る世界の激動≫

半導体/デバイス業界への注目からは反れてしまうこと多々、それはご容赦願うとして、今回の滞在中に小生ながらに体感した世界の激動、次の通り。

ソウルに着いて客先に向かったのが開票の日。交通渋滞で足踏みの多いタクシーで耳に入ってくるラジオ放送、街中、そして待合所と方々で目に入るテレビ画面が刻々と結果を知らせている。ハングルは全く分からないものの、そこは日本語と同じ文法語順ということで、Obama氏が先に連呼されて後にMcCain氏の名が聞こえてくる雰囲気からObama氏の優勢ぶりが伝わってくる。

宿泊のホテルでその晩見るテレビは、Obama氏の勝利と世界各地の興奮溢れる反応で席巻されている。ハワイ、インドネシア、アフリカはじめObama氏の足跡のある土地、そして踊り喜ぶ人びとの画面を見ると、まさにグローバルな米国大統領が生まれたものという感じ方である。

翌日の新聞、THE WALL STREET JOURNAL -ASIA-に見る以下の見出しである。

・After historic win, Obama gets to work
 - U.S. president-elect starts shaping team as transition begins
  ⇒早く変わっていこうという空気が伝わってくる。

・Karzai seeks U.S. change
 - Afghan leader says Obama must end civilian casualties
  ⇒テレビでも中東の反応をしっかり報じていたが、ここでも求めている"change"。

・In Asia, vote spawns admiration, wariness
 - Obama excites many, but worries begin on trade policies
  ⇒変わることについては一喜一憂、なかなか難しいところ。この記事にある小浜('little beach')市のダンスグループ・Obama Girlsの写真が微笑ましい。小生の故郷は浜田市、「おっ!浜田」の洒落ではアピールは無理か。

・To Kenyan village, Obama is 'king of the world'
  ⇒Obama氏の父の出生地とのこと。ここはもちろんのこと、世界各地での黒人の人びとの反応ぶりには大きく打たれるものがある。

・Chicago thrills to milestone
 - Huge crowd cheers first black president as one of its own
  ⇒Jesse Jackson師の写真の喜ぶ表情が印象的。

・Obama victory draws cheers from Europe
・French politicians envy U.S. openness to black president

その翌日の同紙も余韻が引き続く内容に感じたが、半導体業界では事業再構築に向けた各社からの発表が増え続けてきている。直近で目にしただけでも、AMD、Cadence、IBMそしてST-NXP Wirelessと入ってくる。この余波を早く食い止めるよう、まさに"Change! Yes, We Can."といきたいし、いかなければならない。韓国で見ていても、世界の現状の激動に立ち向かう様々な方面での熱い思いが直に伝わってくる。

さて今度は、韓国への行き帰りでの現実的なお話。為替の大きな変動が時々刻々注目を集めているが、日本円と韓国ウオンの現状について、11月3日付け韓国・中央日報の記事から次の通りである。

※「韓国に行けば半値」…日本ショッピング族が押し寄せる
日本ショッピング客がまたソウルに集まっている。 円高で韓国訪問費用が昨年の5-7割水準に減ったからだ。このためデパートや免税店は久しぶりに笑顔を取り戻した。 日本人を対象にしたマーケティングも活発だ。
ソウル小公洞(ソゴンドン)ロッテ百貨店本店の食品売り場では最近、韓国語よりも日本語がよく聞こえてくるほどだ。 お土産に海苔・キムチを買う日本人観光客が増えているからだ。
業界では年末にかけて日本人の入国が増えると期待している。 実際、日本旅行協会(JATA)は11月中に韓国を訪れる日本人は前年同月比13%増、12月は同68%増になると見込んでいる。

実際、外換銀行の資料によると、10万円を韓国で両替すれば次の開きになるとのことである(月平均為替レート適用)。
2007年10月   79万 740ウオン
2008年10月  132万7100ウオン

今回、 行きの金浦空港で円→ウオン:1円=12.2ウオン、
2日後の帰りの羽田空港でウオン→円:1円=15.9ウオン、という両替レートとなっており、やはり激動、落ち着かない風情を感じている。


≪グローバル雑学王−18≫

白黒つけるのは大変、目を白黒、とか両端のイメージがある白色と黒色について、

『色彩の世界地図』(21世紀研究会 編著:文春新書 311)

から結構豊富なエピソードの世界に浸ってみたい。

○白い世界と黒い世界

・「エーゲ海の白い宝石」とうたわれるミコノス島の白い家(ミコノス、ギリシア)
…1885年のコレラ流行後、除菌と清潔さの持続のため、石灰を塗り続けているという。

[白いハトの伝説]
・「白」の字源 …皮をむいたドングリ、またはされこうべなどの説。
・ほとんどの国で白は、清浄なものに結び付けられて考えられることが多い。
・白いということで神聖視される動物 →白鳥、白ハト、白ネズミ、白ヘビ、白ギツネ
・日本書紀での話:
645年の大化の改新後、なかなか平穏な世の中にならなかった折、白いキジが天皇に献上
 ↓
吉兆という解釈で元号を「白雉(はくち)」に(650年)
・平和をもたらす使いというハトのイメージの原型は、聖書の「ノアの箱舟」に。
 →混乱や不安のあとの、平和な世界の到来を知らせてくれる鳥

[霊魂を死者の世界に運ぶ鳥]
・日本: ヤマトタケルノミコト(日本武尊)の白鳥伝説
 …白鳥に、白い清浄な魂が昇天するというイメージ
・古代インドの聖典『リグ・ヴェーダ』
 …白鳥は太陽にたとえられ、最高位の世界にいるもの
・ヨーロッパ: 古くから美の象徴
・ギリシア神話: 美の女神アプロディテの黄金の戦車を曳くのが白鳥

[白ヘビと白ゾウ]
・日本各地にいくつもある白ヘビ伝承
・釈迦が誕生する吉兆 …六本の牙をもった白ゾウが天から降りてきて右の脇腹から体内に入る、という夢
・敬虔な仏教国のタイ: 白ゾウが発見されると、すぐに国王に献上されることに。白ゾウの出現は、善政の象徴とみなされる。

[ホワイトハウス]
・白堊館 →昔使われていたホワイトハウスを指す言葉
・「白亜の殿堂」 …大きくて立派な建築物

[盗賊を白波という理由]
・白波(白浪) …歌舞伎で盗賊のこと。義賊という印象も。
・この語源は実は中国の地名に。
 →二世紀、後漢末期に登場した黄巾賊(貧民救済を旗印に掲げた行動)の残党が西河の白波谷を拠点にしたことから、当時の人びとがこの残党を白波賊と呼ぶように。

[白眼視と白羽の矢]
・「白い眼で見る」白眼視 …上目使いで見ること。七賢人のひとりである阮籍がとった態度。
・白羽の矢 …人身御供えにされる人の家に置かれた矢
         →その昔は不幸なできごと

[ウェディングドレスはいつから白くなったか]
・純白のウェディングドレスが登場したのは、18世紀後半のイギリス。
 白以前の色はというと、明るい炎の色に似た黄色。鮮やかな白が、そのイメージの清楚さで黄色に勝った経緯。

[中国と韓国では何の色?]
・古来の伝統を継承してきた中国も、洋服を受け入れると同時に、西洋の喪服の慣習も受け入れることに。
・韓国での白 …清廉潔白、太陽の明るさ、楽天的な感情をあらわす色

[黒ネコと魔女]
・黒ネコが不吉という迷信、欧米にも根強い。
・ネコを飼うという貴族的な趣味は、エジプト、ギリシア、ローマを経て、ヨーロッパ世界へ。
 中世ヨーロッパの人びとの魔女に対する異常な恐怖心 
 →ネコというネコが徹底的な目の敵に
・黒ヒツジも嫌悪の対象に: 
 the black sheep of the family 家族のはみ出し者

[松明の火と死]
・古来、野獣に襲われる危険の高い夜は、そのまま来世に向かう闇の世界と同じように考えられた。
 ⇒何をおいても必要だったのが、明かりとなる火、松明
・人の死に直面したとき、一般的には黒い衣装 
 →黒服は、ヨーロッパではローマ時代からの伝統
・葬儀 funeral(英) →funus(松明:ラテン語)に由来

[白から黒への大変化]
・契機: 明治30年1月に亡くなった明治天皇の母后、英照皇太后の葬儀
 →この葬儀以後、洋装の黒、和装では黒の紋付が、国が認める正式な喪服とされることに
・白から黒へ、喪服の大転換がおこったのは、太平洋戦争がきっかけに。

[化学の語源はエジプトの黒い土]
・古代エジプト時代、黒は豊穣の色、生命を育む色。黒はケム、耕地はケメトと呼ばれた。
 ケメト →ケミア(khemia:ギリシア語)
      ⇒alchemy(錬金術)、chemistry(化学)

[素人と新手]
・日本での「素」の文字 →飾り気がない状態、もとの状態
 「素人」、「素肌」、「素顔」
 →日本独特の表現であり、中国では「素」の文字を「白」と非常に近い意味で使用。
・中国ではアマチュアを「新手」という。
・「玄」…尊ぶべき黒い色 →日本人のいう「玄人」

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