セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

前年同月比も増加、8月の世界半導体販売高、メモリで持ち直し気配

|

米国Semiconductor Industry Association(SIA)より月次世界半導体販売高が発表され、この8月について$28.0 billionと久しぶりの水準に達し、前月比3.5%増、そして前年同月比も0.5%増と1年以上ぶりのプラスとなっている。新市場、新分野の開拓が急がれる情勢のなか、当面パソコン、スマホはじめ既存市場は依然大半を占めるだけに両方の展開に注目せざるを得ない現状である。特に足元の年内は、ゲーム用のパソコン需要が旺盛でメモリ価格が上昇に転じ、半導体販売高が持ち直す気配が続いて見えている。

≪8月の世界半導体販売高≫

今回の米SIAからの発表内容が、次の通りである。

◯グローバル半導体業界、3年ぶりの月次販売高増加−8月販売高が7月に対して3.5%増、1年以上ぶりで前年同月比増加 …10月3日付け SIAプレスリリース

半導体製造、設計および研究の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2016年8月の世界半導体販売高が$28.0 billionに達し、前月7月の$27.1 billionから3.5%の増加、そして前年同月、2015年8月の$27.9 billionを0.5%上回った、と発表した。8月は、2013年5月以降最大の市場の前月比増加、そして2015年6月以降初めてとなる前年同月比の伸びを示している。月次販売高の数値はすべてWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationのまとめであり、3ヶ月移動平均で表わされている。

「低迷したグローバル半導体販売高の何ヶ月かを経て、該グローバル市場はこのところ戻す兆しを見せており、8月の堅調な伸びが締め括っている。」とSemiconductor Industry Association(SIA)のpresident & CEO、John Neuffer氏は言う。「Americas市場が特に元気づけており、約3年ぶりで6%を上回る前月比の伸びとなって、すべての市場市場を引っ張っている。
中国も目立っており、8月はすべての地域のうち遥かに最も力強い前年同月比の伸びを示している。累計ではグローバル販売高は昨年のペースから遅れているが、2017年が近づいてくるにつれ正しい軌道に乗るように思われる。」

前月比ではすべての地域にわたって販売高が増加、Americasが+6.3%, Japanが+4.8%, Chinaが+3.1%, Asia Pacific/All Otherが+2.7%, そしてEuropeが+0.7%のそれぞれ伸び率である。前年同月比での販売高は、China(+7.1%)およびJapan(+2.2%)が増加したが、Asia Pacific/All Other(-2.7%), Americas(-3.1%), およびEurope(-3.3%)では減少している。

【3ヶ月移動平均ベース】

市場地域
Aug 2015
Jul 2016
Aug 2016
前年同月比
前月比
========
Americas
5.60
5.10
5.43
-3.1
6.3
Europe
2.81
2.70
2.71
-3.3
0.7
Japan
2.67
2.60
2.73
2.2
4.8
China
8.23
8.56
8.82
7.1
3.1
Asia Pacific/All Other
8.57
8.12
8.34
-2.7
2.7
$27.88 B
$27.08 B
$28.03 B
0.5 %
3.5 %

--------------------------------------
市場地域
3- 5月平均
6- 8月平均
change
Americas
4.79
5.43
13.2
Europe
2.63
2.71
3.3
Japan
2.55
2.73
6.9
China
8.09
8.82
9.0
Asia Pacific/All Other
8.00
8.34
4.2
$26.07 B
$28.03 B
7.5 %

--------------------------------------

※8月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.semiconductors.org/clientuploads/GSR/August%202016%20GSR%20table%20and%20graph%20for%20press%20release.pdf
★★★↑↑↑↑↑

これを受けた業界各紙の受け取り方である。

◇August semi sales rose 3.5%-August semiconductor sales were up 3.5% on July's at $28 billion,says the SIA, but flat with August 2015.-Aug. chip sales hit $28B, SIA reports (10月4日付け Electronics Weekly (U.K.))

◇Global semiconductor sales rise 3.5% in August, says SIA (10月4日付け DIGITIMES)

◇Global semiconductor industry posts largest monthly sales increase in 3 years (10月5日付け ELECTROIQ)

このところメモリなどパソコン関連の需要が旺盛になって、Samsung、Micronと、厳しい環境のなか当面の業績見込みに以下の通り明かりが見えてきている。

◇Micron posts smallest revenue decline in a year-Micron beats estimates with revenue of $3.22B in Q4 (10月4日付け Reuters)
→メモリ半導体メーカー、Micron Technology社の第四四半期売上げが予想を上回って1年で最小の減少に抑えられ、pricingが改善、PC市場が戻す兆しを見せている旨。第一四半期には3四半期ぶりの利益を見込む旨。

◇At Samsung, strong Q3 chip sales to ease sting of Note 7 hangover (10月4日付け Reuters)
→アナリスト発。flagshipスマートフォンのグローバルな回収の傷跡が残るSamsung Electronics Coが、メモリ半導体およびディスプレイの健全な売れ行きがその痛みを緩和、第三四半期について利益が依然少し増える見込みと金曜に発表の運びの旨。

◇Price hike of memory chips to benefit Samsung, SK hynix (10月5日付け The Korea Times)

特にDRAMについて、高値に転じる状況が以下の通りである。

◇DRAM contract prices to rise nearly 30% in 4Q16, says DRAMeXchange (10月4日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange(TrendForceのメモリ&ストレージ部門)は、DRAM契約価格が予想より力強いnotebook需要から2016年第四四半期に約30%上がると見ている旨。

◇PC DRAM chip prices expected to increase-TrendForce revises DRAM prices forecast (10月4日付け The Taipei Times (Taiwan))
→TrendForceが、PC DRAMsについてのpricingを改定、notebook computers向け需要の高まりおよびlaptopsに入るメモリ増加から今四半期30%の値上がりとしており、前回予想は10%高であった旨。DRAM価格は、供給の制約から8月に対し9月は7.4%上がった旨。

◇DRAM価格、年初来高値に、パソコン用スポット (10月6日付け 日経)
→パソコン用DRAMの市場で5日、指標品であるDDR3型4ギガビット品のスポット(随時契約)価格が年初来高値を付けた旨。中心値は前日に比べて4%高い1個2.23ドル。年末にかけ世界的な需要期を迎えるが、今年は特にゲーム向けが旺盛の旨。

本年の世界半導体販売高はまたも前年を下回るという見方が有力であるが、既存市場の変動そして新市場、新分野の台頭の両方を見据えての今後の展開ということと思う。


≪市場実態PickUp≫

【グーグルのスマホ】

米国Googleが、新型スマートフォンや家庭向けスマートスピーカーなど戦略的なConsumer Electronics製品を打ち上げている。ポイントは、話しかけて操作する会話型人工知能(AI)「アシスタント」の標準搭載であり、以下の概要である。

◇Google Does Consumer Electronics-OEMs courted to embed smart assistant -Qualcomm rides, Samsung leapfrogged (10月4日付け EE Times)
→Googleが4日、San FranciscoのGhirardelli Squareでのpressイベントにて、2つのスマートフォン、smart speaker, virtual reality(VR) headsetおよびWi-Fi access pointを打ち上げ、そのPixelスマートフォンおよびHome smart speakerは、同社の最も戦略的製品、machine-learning Assistantを搭載している旨。

◇Google takes on Apple, Amazon with new hardware push (10月5日付け Reuters)

◇米グーグル新スマホはAI主役、話すとアプリ起動 (10月5日付け 日経 電子版)
→米グーグルが4日、新型スマートフォンや家庭向けスマートスピーカーなどを発表、話しかけて操作する会話型人工知能(AI)「アシスタント」を標準搭載した旨。AIを利用したサービス競争が激しさを増すなか、ソフトとハードの一体開発を強化し、同様の垂直統合モデルを強みとする米アップルに対抗する旨。

◇グーグル、新型スマートフォン「Pixel」「Pixel XL」を発表 (10月5日付け CNET Japan)
→Googleが米国時間10月4日、5インチの「Pixel」と5.5インチの「Pixel XL」という2機種のスマートフォンを発表、両製品は、同社の完全な管理の下で開発された初めての端末の旨。「Google Assistant」を搭載する初のスマートフォンでもあり、Google Assistantは、簡単な音声コマンドによって、音楽再生、交通情報の確認、特定の写真の検索、レストラン予約を支援する同社の新しいデジタルアシスタントの旨。

早速、台湾からこのスマートフォン出荷見込みが表わされている。

◇Digitimes Research: Google Pixel shipments expected to reach 3-4 million in 2016 (10月6日付け DIGITIMES)
→Digitimes Researchのseniorアナリスト、Luke Lin氏。最近発表されたGoogle Pixelスマートフォンは、2016年後半に3-4 million台の出荷に達する見込みの旨。iPhone 7出荷数に比べてこの全体の限界は年末まで見込まれる一方、この電話を作る台湾のスマートフォンメーカー、High Tech Computer(HTC)には依然大きな高まりとなる旨。Pixel出荷は、HTCのスマートフォン出荷の40-50%を今年後半に占める旨。

【M&A関連進捗】

Silicon LabsのMicrium買収、そしてX-FabのAltis買収が、それぞれ新たに発表されている。

◇For IoT, Silicon Labs Buys RTOS Vendor Micrium-Silicon Labs adds RTOS for IoT applications (10月3日付け EE Times)
→Internet of Things(IoT)の市場ポテンシャルに真剣に重点化、Silicon Labs(Austin, Texas)が月曜3日、embedded real-time operating system(RTOS)ソフトウェア・サプライヤ、Micrium(Weston, FL)の買収を発表の旨。

◇Silicon Labs acquires leading RTOS company Micrium (10月3日付け ELECTROIQ)

◇X-Fab to Swallow Altis Semiconductor (10月4日付け EE Times)
→アナログ、mixed-signalおよびMEMSファウンドリーグループ、X-Fab Silicon Foundries AG(Erfurt, Germany)が、Altis Semiconductor(Corbeil-Essonne, France)の資産を買収する運びの旨。Altisは、パリ中心から南約40km、前IBMのパリ地域ウェーハfabであり、約130-nm CMOSプロセスまで200-mm径ウェーハで運営の旨。

懸案のMicronによるInotera買収については、年内完了見込みがInotera側から示されている。

◇Inotera says deal with Micron to complete by December-Micron will wrap up Inotera buy by year-end (10月5日付け DIGITIMES)
→Inotera Memoriesは、Micron Technologyが12月に同社の$4.13 billion買収を完了すると見ている旨。Inoteraは、MicronとNanya Technologyの合弁であり、MicronがもっていないInotera株式の67%を買おうとしている旨。

【M&A合意取り下げ】

半導体製造装置業界のシェア模様を大きく変えると注目されたLam ResearchとKLA-Tencorの合併合意提案が、米国、韓国など司法当局の反対があって取り下げとなっている。Applied Materialsと東京エレクトロンの過去の例を思い起こすところである。

◇Lam Research, KLA-Tencor end merger, cite antitrust views-Lam, KLA-Tencor call off planned $10.6B merger (10月5日付け The Bismarck Tribune (N.D.)/The Associated Press)
→Lam Research社(Fremont, California)とKLA-Tencor(Milpitas, California)が、これら半導体製造装置メーカー2社を一緒にする取引に対してantitrust regulatorsが反対、合併合意を取り下げている旨。

◇Chip equipment maker Lam Research calls off KLA-Tencor deal (10月5日付け Reuters)

◇Lam/KLA Failure Cools M&A-Capital equipment to focus on collaboration (10月6日付け EE Times)

◇KLA-Tencor, Lam Research call off merger deal (10月6日付け ELECTROIQ)
→KLA-Tencor CorporationとLam Research社が、合併合意提案を取り消すことで合意の旨。米国司法省が同意判決(当事者の同意のみにもとづいて下される判決)をもってKLA-TencorおよびLam Researchに続行しないと勧告、両社は合併の追求がそれぞれのstakeholdersの最善の利益ではないと決めた旨。合併合意の取り消しに関連していずれにも解約金は支払われない旨。

【最先端製造プロセスの取り組み】

TSMCが、台湾の業界団体の会合にて3-nmプロセスへの本格着手を表明している。最先端に先行して飛び込む意欲の表れを受け止めている。

◇TSMC Staffing R&D for 3nm Process (10月4日付け EE Times)

◇TSMC、微細半導体の開発加速、「3ナノ」に最大400人 (10月4日付け 日経)
→半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が先端技術の開発を加速、300〜400人の研究開発部隊を投入し、回路線幅を3-nmまで細めた製品の開発に本格的に着手する旨。量産は2020年以降の公算、技術開発のスピードで韓国サムスン電子などのライバルを突き放す姿勢を示す旨。劉徳音(Dr. Mark Liu)・共同最高経営責任者(CEO)がこのほど台湾北部の新竹市で開かれた業界団体の会合に出席した際に明らかにした旨。

密接な距離感が一層感じられるSamsungとQualcommであるが、10-nmアプリプロセッサはすべてSamsungで製造と示されている。

◇Qualcomm to Consign All of Its 10-Nano AP to Samsung (10月5日付け ETNews.co.kr (South Korea))

【MediaTelのHelio 30X】

MediaTekの次世代スマートフォンソリューション、Helio 30Xが、最初のTSMC 10-nm半導体になるとのこと。以下の展開となっている。

◇MediaTel Helio 30X to be first TSMC 10nm chip, says paper-Report: TSMC's first 10nm chip is a MediaTek IC (10月3日付け DIGITIMES)
→中国語・Commercial Times発。MediaTekの次世代Helio X30 high-endスマートフォンソリューションが、TSMCの10-nm生産ラインで展開される最初の半導体である旨。TSMCは、10-nmプロセスnodeおよびclientsにより検証されたcapacityを擁して、2016年第四四半期に10-nm生産を始める予定、MediaTekの2017年第一四半期末のHelio X30半導体正式打ち上げに道が開ける旨。

この半導体の組み立て、テストを受け持つ先が示されている。

◇SPIL, KYEC grabs orders for MediaTek 10nm chips-Sources: SPIL, KYEC to assemble the Helio X30 (10月5日付け DIGITIMES)
→業界筋発。Siliconware Precision Industries(SPIL)とKing Yuan Electronics(KYEC)が来年、TSMCが10-nmプロセスで製造するMediaTekのHelio X30モバイルプロセッサの組み立ておよびテストを行う旨。該Helio X30は、10個のコアがあり、すべて2 gigahertz〜2.8 GHzでの動作の旨。


≪グローバル雑学王−431≫

1970から1980年代、高度成長の波に乗って世界に進出、存在感を発揮した我が国であるが、近年は中国、そして韓国などの目覚ましい進出ぶりがよく言われるところとなっている。そんななか、日本人ならではの「個人力」、すなわちきめ細かさ、誠実さ、相手を真剣に思う心持ちを遺憾なく発揮して発展途上国で地に足がついた地域貢献を行っている日本人が確かにいる、と

『なぜ世界の隅々で日本人がこんなに感謝されているのか』
 (布施 克彦/大賀 敏子 著:PHP新書 1055) …2016年7月29日 第一版第一刷

にて紹介されており、目を通していきたいと思う。著者のお二方は以下の通りのキャリアをおもちで、小生今まで行ったこのとのない土地柄およびそこでの日本人の方の奮闘、活躍ぶりが興味深く綴られている。
 布施氏 長年総合商社に勤務、世界中を飛び回る
 大賀氏 ケニアの首都、ナイロビにある国際機関で勤務

≪まえがき≫

・海外から日本を見ると、日本ほどいい国はないといっていい
 →戦争で焼け野原となった国土を復興、高度成長を支えてきた先人たちの努力
・これからの日本について考えると、ふと不安に
 →昨今「ジャパン」は、目につきやすい表舞台から、後退しつつあるのでは
  →家電製品…ここ数年、中国製や韓国製ばかりが目立つ
  →世界のあちこち大規模な工事
   …以前は日本企業が多かったが、いまや圧倒的に中国の企業
  →政府開発援助(ODA)、日本はこれまで世界のどの国よりも熱心に、さまざまな途上国の開発を支援
   …昨今、新興国、ことにBRICSが、途上国のなかでもとくに貧しい国を相手に活発に進出−南南協力
  →人気のジャパニーズ・レストラン、著者(大賀氏)が住むケニアのナイロビでは経営者はいまやほとんど韓国人
  →途上国のハイ・ソサエティ
   …ひところは日本人客がほとんどだったが、いまや、中国人、韓国人の存在感のほうが大きい
・日本の存在感は、残念ながら、昨今、後退しつつあると言わざるを得ない
 →しかし、日本には日本らしい強みと良さを活かした、世界とのかかわり方がある
・現に世界のあちこちに、これからの日本と世界とのかかわり方を示唆してくれている日本人がいる
 →本書では、そのような活躍ぶりを、いくつか例を挙げながら紹介したい
 →折々の場面で、日本人らしい強さを活かし、日本人にありがちな弱さと闘ってきた
 →現地の人たちに一目置かれ、大事にされ、少なからず感謝されてきた人たち
・本書で紹介する人たちに共通するもの
 →志を高く持ち、やる気と元気を簡単には失わないということ
・本書が、これからの日本と日本人の進む方向を考える一助になれば

第1章 マーシャル諸島――金物屋のオヤジが環境問題と闘う

◆太平洋の真珠の首飾り
・早朝にハワイのホノルル発、約5時間のフライト、日付変更線を越えてマーシャル諸島の首都、マジュロに到着
 →マジュロ(Majuro)は、世界で一番早く一日を始める街のひとつ
・マーシャル諸島共和国(Republic of the Marshall Islands)
 →北太平洋のほぼ真ん中、ハワイとグアムの間にある島国
 →ネックレスのようにぐるりと連なる29の環礁と5つの島
  …「太平洋の真珠の首飾り」
 →人口5万3000人、国土面積が180km2、霞ケ浦ぐらい
・アマタ・カブア国際空港(Amata Kabua International Airport)
 →海風が通り抜けるままの開放的な建物、窓も壁も冷房もない
 →日本の地方都市のコンビニくらいの印象

◆小島嶼国と国際政治
・細長い国土、全体が海の中道
 →唯一の道路、端から端まで走っても約50km
・気候変動に伴う海面上昇と気象の変化が、どれだけ深刻で現実的な問題であるか
 →はっきりと実感できる
・この国は台湾と国交を持つ
 →台湾は台湾で、着実に途上国との関係を構築

◆世界のどこよりも厳しい楽園
・国内で採れるのはヤシ油と魚くらい
 →そのほかいっさいを輸入に頼り、たいていのものが割高
 →生の野菜も果物もあるにはあるがぜいたく品
・一番近くて経済的なつながりが深いのが、アメリカのハワイ
 →ほとんどの輸入品は船で、その寄港をまだかまだかと待つしかない
・SIDS(Small Island Developing States:小島嶼開発途上国)
 →マーシャルのような島国の開発途上国が構成する国連の地域グループ
 →気候変動の影響をまともに被る
 →広大な海は恵みのもとだが、同時に、海に隔てられていること自体がハンデ
・SIDSで暮らし、働き、人生を切り開いていくのは、ときにどこよりも厳しいものに

◆親日的な人々
・マーシャルは、第一次世界大戦から第二次世界大戦の間の30年間、日本が統治
 →年長者のなかには日本語を話す人も
・いまマーシャルに住む日本人は、大使館関係、JICA(国際協力機構)関係、事業をしている人たちなど合わせて50人程度
 →日本食材が、スーパーには当たり前のように置かれ、島全体が親日的

◆水がないのが何より困る
・マーシャルに住み、仕事をして33年になる日本人
 →山口雄一さん
 →マジュロの中心部に店舗を構えるハードウェア・ショップ(「金物屋」)のマネージャー
  →日曜大工グッズや水道設備部品を扱う
・「環境問題に熱心な日本人マネージャー」として知られる山口さん
 →節水型の水道設備の普及とレジ袋の追放
・2015年から2016年にかけて、世界はエルニーニョ現象に見舞われた
 →マーシャルでは、雨量の激減となって表れた
 →山口さんは、節水型のシャワーと節水型の蛇口の市場拡大に尽力

◆レジ袋を追放する
・マーシャルは、気候変動の影響を被る国のひとつ
 →気候変動対策に向けた国際協力は、外交の最重要事項のひとつ
・山口さんは、レジ袋すべてを紙袋に置き換え
 →4月22日のアース・デーには、リサイクル素材の買い物バッグを、買い物客全員に無料で配布

◆環境問題で再び犠牲にならないために
・マーシャルは、アメリカからの財政援助が政府歳入の約6割
 →国土の一部をアメリカ軍に貸与
・1946年からの12年間、アメリカはマーシャル諸島で67回の原水爆実験
 →第五福竜丸の被ばくにも
・2010年、ビキニ環礁核実験場が世界遺産に指定
 →マーシャルは、その島全体で、戦争だけはしてはならない、と次の世代の人類に訴えかけている
・山口さんが環境問題に真剣になる理由
 →半世紀ほどの間に、2度も環境問題
  →核実験のために罪もない人々が被ばく、いまだに農業も漁業もできない
  →いまは島全体が海面上昇の危機に

◆頑固なほど真面目なビジネス
・山口さんが最初にこの島にやってきたのは、高校生のとき
 →父が小さな水道設備会社の経営者
  →日本とマーシャルの関係にさまざまなビジネスチャンスを探った
・山口さんはここでいまの配偶者と出会い、結婚し、家庭を持った
 →マーシャル人の顧客を徹底的に大事に
 →品質管理を徹底、アフターサービスもとことん充実
 →「いいものを買うなら、山口さんのショップで」という信頼をマジュロの人たちの間に

◆ま、いっか
・山口さんは、いまはマーシャル・パスポートを持つマーシャル人
 →仕事でつながりが深いのはアメリカ、ビザなしで入れるマーシャル・パスポートのほうが便利
・日本旅券が失効
 →『ま、いっか』
・ここに来る日本人は、まずかならず山口さんに会いに来る
 →彼よりここに詳しい日本人はいない

◆28年ぶりの日本
・山口さんを導いてきた父が、一昨年に亡くなった
 →実に28年ぶりの日本
・山口さんの心のなかは、自分はマーシャル人、マーシャル人としてやっていくのだという自信と誇り
 →愛する家族の国

月別アーカイブ