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4-6月の世界半導体販売高が1-3月比増加、後半盛り返しなるか

米国Semiconductor Industry Association(SIA)から月次の世界半導体販売高が発表され、今回はこの6月分、そして第二四半期、4-6月のデータが表わされている。世界経済の低迷、伸びの減速が覆うなか、6月の販売高は前月比1.1%増、4-6月の販売高は前四半期比1.0%増と、前よりはプラスになっているが、前年同月および同期と比べるとともに5.8%のマイナスとなる。前よりはプラスを繰り返して本年の後半は前半に対して盛り返すことになるかどうか、注目するとともに大きく期待するところである。

米SIAの今回の発表内容が、次の通りである。

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○第二四半期のグローバル半導体販売高が増加−第二四半期販売高が前四半期比1%増、前年同期比6%減 …8月2日付け SIAプレスリリース

半導体製造、設計および研究の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2016年第二四半期の世界半導体販売高が$79.1 billionに達し、前四半期比1.0%増そして2015年第二四半期と比べて5.8%の減少と発表した。2016年6月のグローバル販売高は$26.4 billionで、前月の$26.1 billionを1.1%上回ったが、2015年6月の$28.0 billionからは5.8%減少している。2016年前半6ヶ月の販売高累計は、2015年のそれを5.8%下回った。月次販売高の数値はすべてWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationのまとめであり、3ヶ月移動平均で表わされている。

「グローバル半導体販売高は、第一四半期から第二四半期へと僅かながら増加したが、昨年と比べると後れたままであり、大方はグローバル経済の不安定性および需要不振からきている。」とSemiconductor Industry Association(SIA)のpresident & CEO、John Neuffer氏は言う。「日本および中国への販売高が2016年途中まで輝くところとなっており、控え目ながら販売高の戻しが今年後半の間に見通されている。」

地域別には、6月販売高は前年同月比で、China(+1.7%)では増えたが、Asia Pacific/All Other(-11.0%), Americas(-10.8%), Europe(-5.5%), およびJapan(-1.3%)では減っている。前月比では、Americas(+3.0%), China(+2.2%)およびEurope(+1.7%)では増加したが、Japan(-1.0%)およびAsia Pacific/All Other(-0.6%)ではいくぶん減少となっている。

【3ヶ月移動平均ベース】
市場地域
Jun 2015
May 2016
Jun 2016
前年同月比
前月比
========
Americas
5.53
4.79
4.93
-10.8
3.0
Europe
2.83
2.63
2.67
-5.5
1.7
Japan
2.57
2.56
2.53
-1.3
-1.0
China
8.13
8.09
8.27
1.7
2.2
Asia Pacific/All Other
8.94
8.00
7.95
-11.0
-0.6
$27.99 B
$26.07 B
$26.36 B
-5.8 %
1.1 %
--------------------------------------
市場地域
1- 3月平均
4- 6月平均
change
Americas
4.89
4.93
0.9
Europe
2.67
2.67
0.1
Japan
2.59
2.53
-2.3
China
7.94
8.27
4.1
Asia Pacific/All Other
8.02
7.95
-0.8
$26.11 B
$26.36 B
1.0 %
--------------------------------------

※6月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.semiconductors.org/clientuploads/GSR/June%202016%20GSR%20table%20and%20graph%20for%20press%20release.pdf
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これを受けた業界各紙の受け止めが、以下の通りである。

◇Global semiconductor sales increase in second quarter (8月2日付け ELECTROIQ)

◇BRIEF-Semiconductor Industry Association says Q2 worldwide semiconductor sales reached $79.1 bln (8月2日付け Reuters)

◇SIA reports 1% June growth-June chip sales were up 1.1% from May, SIA says (8月3日付け Electronics Weekly (U.K.))

◇Global 2Q16 semiconductor sales fall 6%, says SIA (8月3日付け DIGITIMES)

これから盛り返していく見方の材料を求めると、まずは台湾・ASEの今年後半の同社業績の見方が次の通り表わされている。

◇ASE to ramp up capacity amid surge in demand-ASE to add 5% more capacity during Q3 (7月30日付け The Taipei Times (Taiwan))
→Advanced Semiconductor Engineering(ASE)が、需要拡大に対応、第三四半期の間にcapacityを5%加える計画、fan-out実装技術事業など分野のすべてからの需要増大を見ている旨。

◇ASE remains optimistic about 2H16-ASE sees revenue upturn through the end of 2016 (8月1日付け DIGITIMES)
→Advanced Semiconductor Engineering(ASE)が、2016年第四四半期まで同社連結売上げが前四半期比伸びると繰り返し言及、今年後半について依然楽観的の旨。

次に、低迷に浸かっているメモリ半導体業界からは、今が底でこれから立ち上がるという見方が発信されている。

◇Memory chip industry set for an uptick in 3Q16-Sources: Memory prices to rise after production cuts (8月3日付け DIGITIMES)
→業界筋発。メモリ半導体業界は、市場の在庫がここ2四半期でほとんど払底、2016年第三四半期には上向く見込み、価格上昇がさらに見えてきている旨。トップ3ベンダー、Samsung Electronis, SK HynixおよびMicron Technologyが第一及び第二四半期に行った生産削減で、commodity DRAM半導体の供給が最近引き締まって、契約価格が上がっている旨。


≪市場実態PickUp≫

【Samsungのスマホ】

アップル社iPhonesの低迷とは対照的にSamsungのスマートフォンが好調で頑張りを見せている。

◇Samsung smartphones shine as Apple's iPhones slip (8月1日付け EE Times India)

その製品の方も、目の虹彩認証など最先端技術による機能を満載した「ギャラクシーノート7」を打ち上げており、9月にも見込まれるアップルの新型iPhone登場を控えた前哨戦の様相が見られている。

◇Samsung Electronics unveils new curved-screen Galaxy Note phone in H2 sales push (8月2日付け Reuters)

◇サムスン、大画面スマホ発表、虹彩認証搭載 −最新技術「全部入り」 (8月3日付け 日経 電子版)
→韓国のサムスン電子が2日、スマートフォンの新製品「ギャラクシーノート7」を発表、大画面スマホの先駆けである「ノート」シリーズ初の防水仕様で、虹彩認証や急速無線充電、外部メモリにも対応。スマホの最新技術を惜しげもなく盛り込んだ「全部入り」ともいえる製品で、今秋登場する米アップルの新型iPhoneを迎え撃つ旨。

【M&A関連の動き】

引き続くM&Aの動きとして、いくつか買収、ないしそれに向かう内容が以下の通りである。

◇China's LeEco to Acquire Vizio for $2 Billion (7月29日付け EE Times)
→streamingビデオコンテンツ・サプライヤとして最もよく知られる中国のハイテクメーカー、LeEco(北京)が、米国televisionサプライヤ、Vizio(Irvine, California)を$2 billionで買収することに合意の旨。Vizioのハードウェアおよびソフトウェア事業が完全子会社になる一方、データ事業、Incscapeはprivate companyとしてスピンアウトされる旨。

◇Supply Chain Management: Avnet Ups its Bid to Acquire Premier Farnell-Avnet makes $765.7M offer to Premier Farnell (7月29日付け Electronics360)
→electronics distributor、Avnet社(Phoenix, AZ)が、同業distributor、Premier Farnell(英国)を買収する提示を増額、Datwayler Technical Components UK Limitedによる競合入札を押しのける試みの旨。新たにはPremier Farnellに対して約$765.7 million(約$2.05/株)のall-cashの提示、Datwaylerからの提示(約$1.83)を12.1%上回っている旨。Premier Farnellは、システム設計メーカーへのelectronicコンポーネントおよび関連製品のdistributorである旨。

◇Juniper Buys Aurrion for Silicon Photonics Technology-Juniper adds silicon photonics tech with Aurrion buy (8月2日付け eWeek)
→Juniper Networks(Sunnyvale, California)が、光receiversなどsilicon photonicsコンポーネントを開発するAurrion(Santa Barbara, California)を買収の旨。

◇TDK Bids to Buy MEMS Maker Tronics (8月3日付け EE Times)
→日本のTDK社が、上場MEMSメーカー、Tronics Microsystems(Crolles, France)の買収にEuro 48.65 million(約$55 million)を提示の旨。

◇ZF Closes Tech Gap, Buys Lidar Company (8月3日付け EE Times)
→車載サプライヤ、ZF AG(Friedrichshafen, Germany)が、Ibeo Automotive Systems(Hamburg, Germany)の40% stakeを買収、この動きでZFは、Lidar(Light Detection and Ranging)技術および環境認識アルゴリズムの分野におけるIbeoの相当なノウハウに参画する意向、ともに自動運転に向けて重要なbuilding blocksである旨。

米国・GCSの中国・Sananへの売却は、米国政府当局により阻止されている。

◇GCS Holdings drops sale, announces joint venture-US regulators block GCS sale; semi firm sets JV with Sanan Opto (8月2日付け The Taipei Times (Taiwan))
→GCS(Global Communication Semiconductors, LLC) Holdings(California)の中国・Sanan Optoelectronics(Xiamen[福建省厦門市])への$226 millionでの売却が、米国・Committee on Foreign Investmentにより阻止されており、米国顧客へのGCSの軍事応用での半導体出荷を巡るセキュリティ懸念による旨。GCSとSananは代わりに、consumer electronicsおよびモバイル機器向け高周波半導体およびpower management ICsを作る合弁を設立する旨。

オランダ・ASMLによる台湾・HMIの買収提案について、HMIの株主はこれを承認している。

◇HMI shareholders OK acquisition by ASML (8月3日付け DIGITIMES)
→台湾のfab toolメーカー、Hermes Microvision(HMI)の株主が、ASMLが提案している同社買収を承認の旨。該取引は依然、台湾、米国および国際的regulatorsによる見直しなど慣例のclosing条件に従う旨。

【国内での事業撤退2件】

ソニーが元々作り出しているリチウムイオン電池事業から撤退、村田製作所に売却する動きが見られている。

◇ソニー、リチウム電池から撤退、村田製作所に事業売却 (7月28日付け 朝日新聞DIGITAL)
→ソニーが28日、リチウムイオン電池事業からの撤退を発表、2017年3月末をめどに事業を村田製作所に売却する旨。電池はソニーが世界で初めて商品化し、他社を含むパソコンや携帯電話に幅広く使われたが、近年は中韓勢との価格競争で赤字が続いていた旨。今後は経営資源を画像センサなどに集中させる旨。

◇Sony Sells Industrial Battery Business (7月29日付け EE Times)
→Sonyが、Murataに対し電池事業の大方を売却する予定、該取引には、Sony Energy Devices、中国およびシンガポールの製造工場、そして重要電池特許および研究者が含まれ、2017年3月末までに完了見込みの旨。Sony-ブランドUSB電池, buttonおよびcoin cellsあるいはalkaline電池は含まれない旨。

もう1つ、ルネサスエレクトロニクスがこれも歴史あるマイクロ波デバイス事業からの撤退を発表している。

◇Renesas to Exit Microwave Device Biz-Renesas will stop making microwave chips in 2 years (8月3日付け EE Times)
→Renesas Electronicsが火曜2日、マイクロ波デバイス事業からの撤退を発表の旨。

◇ルネサスエレクトロニクス、アンテナ向け半導体撤退 (8月3日付け 日経)
→ルネサスエレクトロニクスが、通信機器用のアンテナなどに用いる「マイクロ波デバイス」事業から撤退すると2日発表、微弱な電波を増幅するアナログ半導体で、同事業の年間売上高は50億円程度の旨。製品開発を中止して滋賀工場(大津市)での生産活動も2年後をメドに停止する旨。

【フラッシュメモリ関連】

これからの伸びに大いに期待のvirtual reality(VR)およびaugmented reality(AR)市場がNANDフラッシュメモリの増大にかかってくるとの見方が表わされている。

◇Growth Engine for Semiconductors: VR, AR Market to be Worth US$150 Billion in 2020 -Analysis: VR, AR markets could reach $150B by 2020 (8月1日付け BusinessKorea magazine online)
→Digi-Capitalによると、NANDフラッシュメモリの需要増大が、世界のvirtual reality(VR)およびaugmented reality(AR)市場が2020年までに$150 billionに達せられる急成長につながる可能性、一方、IHSはsmart carsが半導体需要を高めると見ており、該市場は2021年までに約$40 billionに達する旨。

このところSamsungと東芝の先陣争いの掛け合いが続く64-層3Dフラッシュであるが、今回は東芝から初のサンプル出荷開始である。

◇Toshiba Samples 64-Layer 3D Flash at 256 Gbit Density (8月3日付け EE Times)
→東芝が、stacked cell構造の同社BiCS FLASH三次元(3D)フラッシュメモリの最新世代を披露、初のサンプル出荷開始となる64-層デバイスである旨。該新デバイスは、3-bit-per-cell(triple-level cell, TLC)技術を取り入れ、256-gigabit(32 gigabytes) capacityを達成、東芝固有のアーキテクチャーの可能性を強調する進歩の旨。

【どこまで高精細に】

半導体微細化のMoore則が主に経済性から終わりが見えてきているとされているが、高精細画面の方は4Kの後の8Kが東京オリンピックに合わせてお目見えするとのこと。人間の目の識別限界はとうに超えているとされるなか、医療用はもちろん、どのような応用展開ロードマップとなっていくのか、注目である。

◇8K試験放送、NHKが開始、東京五輪までの普及目指す (8月1日付け 朝日新聞DIGITAL)
→NHKが1日、映像を表示する画素数が現在のフルハイビジョンの16倍と高精細な「8K」の試験放送をBSで始めた旨。受信機(チューナー)が市販されていないため試験放送を見られるのは当面、NHKが全国の放送局などに置く専用モニターになるが、今後技術の検証を進め、2018年に実用放送を始め、2020年開催の東京五輪までに本格普及させたい考えの旨。8Kは、解像度がフルハイビジョン放送(2K)の16倍にあたる約3300万画素と、人間の目では映像と現実を見分けられないほどの高精度とされる旨。


≪グローバル雑学王−422≫

1980年代後半から1990年代始めにかけて世界をリードした我が国半導体業界に身を置いただけに、その後の我が国の現在に至る経緯を踏まえて、次の新書に勢い注目させられている。

『世界に負けない日本 −国家と日本人が今なすべきこと』
 (薮中 三十二 著:PHP新書 1045) …2016年5月27日 第一版第一刷

著者は、北朝鮮問題対応の6ヶ国協議のTVニュースが特に印象深いが、我が国代表団としてよく名前を見聞きした方である。外務省で外務事務次官など歴任、現在は立命館大学特別招聘教授などに加え、私塾「グローバル寺子屋」を主宰とのこと。外交の豊富多彩な経験に基づく我々が今なすべきことに、じっくり目を向けていく。


≪まえがき≫
・本書の動機
 →今のままではせっかくのグローバル化に向けた取り組みも空回り、日本が世界に置いていかれるだけだという危機感
・たとえば英語
 →グローバル世界に立ち向かうための英語力が養われているとはとても思えない
・そして就活
 →個性豊かに自分の考えをはっきりと主張する、というグローバル世界で求められる鉄則とは正反対の方向性
・本書の趣旨
 →グローバル人材に求められる必須要件
 →グローバル化時代に展開すべき日本外交のあり方についても
 →今後、日本と日本人が世界で負けない力をつけるために、必要なことは何なのか

序章 「世界に負けない力」を身につけるために

■国内だけを相手にしては生き残れない
・なぜ、日本人がグローバル化に対応しなくてはいけないのか?
 →日本企業の活動が極めてグローバル化してきたことが最も大きな要因
 →日本企業が、持続的な成長を求めるならば、世界の成長市場に進出するのは至極当然のこと
・日本企業が海外への進出を加速してきた理由は明快
 →日本国内だけを相手にしていては生き残れない
・日本は、かつて1990年代はじめのこと、世界のGDPの15%を占めた時代
 →現在は3分の1の5%台に減少

■誇らしげに使われていた言葉「チョウドメ」
・かつて1990年代によく聞かれた言葉「チョウドメ」
 →その意味は「超ドメスティック」、つまり超国内派
・ついこの間まで、日本は「超ドメ」の人達が中核となって運営されていた

■グローバル化時代の到来
・2000年代に入り、世界の状況は大きく変化
 →グローバル化時代の本格的到来
・新興国家のGDPが世界の40%超に
 →一方、日本のGDPは5%台にまで低下
・21世紀、世界はインターネット革命で地球の隅々までネットで繋がる時代に突入
 →日本がNTT仕様に拘っている間に、世界はAppleやGoogle、Facebookの支配する時代に変貌

■立命館大学での授業
・グローバル人材育成の実践を目指して、(著者も)大学で教えている
 →立命館大学の国際関係学部、また、九州の大分には立命館が設立した立命館アジア太平洋大学
・(著者は)次のような授業
 →日本の直面する主な外交問題を取り上げ、学生が各自の考えを発表、さらに学生間で議論
 →学期末の筆記試験はなし。クラスでの議論への貢献ぶりが評価基準。
・日本語のクラスでも、英語でのクラスでも、いかにして日本人の学生に、どしどし、積極的に発言させるかという課題と格闘することに
 →最初の5回はダメ。6回目くらいからはだいぶ状況が改善。日本人学生の中から、積極的な発言。
・まだ心配なこと
 →今の日本の若者がグローバル世界に飛び出して行って、はたして堂々と渡り合えるかどうか

■グローバル人材を「寺子屋」で育てる
・大学での授業とは別に、(著者が)個人的に寺子屋をスタート
 →自然発生的にできてきた薮中塾グローバル寺子屋
 →月に1回、土曜日の午後の勉強会
 →学生の自主性を尊重
・立命館大学の学生や寺子屋の塾生のなかから世界に羽ばたき、堂々と世界で渡り合うグローバル人材が育っていってほしいと期待

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