セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

Imec Technology Forumに見るIoTはじめ新基軸への転換&重点化

モバイル機器の伸びが減速して新市場、新分野への重点化が高まるとともに、半導体業界の水先案内として長らく親しんできているMoore's Law、そして半導体技術ロードマップがInternational Roadmap for Devices and  Systems(IRDS)の新たなスタートを迎えるなか、欧州のナノエレクトロニクス研究機関、Imecの恒例イベント、Imec Technology Forum(ITF:2016年5月24-25日:Brussels, Belgium)においても、IoTはじめ新基軸への転換&重点化が色濃く見られている。今後さらに強まっていく展開を予感させている。

≪敢えて違った視点で≫

今回のITFの基調トーンについて、ImecのCEO、Luc Van den hove氏が、次の通りIoTを基軸にした今後のエレクトロニクス・半導体業界の時代というものを表わしている。ITF自体のテーマも"敢えて違った視点で"と今こそ転換すべき重みを訴えている。

◇ITF2016: The Future Is Good, says Imec-Luc van den Hove, CEO of Imec, opened ITF2016 in Brussels this morning on the theme of ‘daring to take a different view’.-Microelectronics enables the IoT's disruption, imec CEO says (5月24日付け Electronics Weekly (U.K.))
→annual Imec Technology Forum(2016年5月24-25日:SQUARE Brussels Meeting Centre, Brussels, Belgium)にて、imecのCEO、Luc Van den hove氏。Internet of Things(IoT)が生じさせる保証は、microelectronics技術により可能になる旨。「我々は、環境を我々のニーズに適応させるIoTの前夜にいる。IoTこそdisruptionを引き起こす。IoTから革新が得られない業界というものはない。」

Imecは今回、Moore's Lawの提唱者、インテルのGordon Moore氏にlifetime achievement awardを授与、表彰しているが、ImecのCEO、Luc Van den hove氏がGordon Moore氏をハワイの自宅に訪ねて、インタビューを行い、それが今回の場でビデオプレゼンされて、以下の通りである。Gordon Moore氏のコメントに注目している。

◇Moore on his Law and More-Imec shares video interview from Hawaii (5月24日付け EE Times)
→Imecのchief executive、Luc Van den Hove氏が、Gordon Moore氏をハワイの自宅に訪問、lifetime achievement award表彰の一環、このときのインタビューが、Imec Technology Forum(2016年5月24-25日:SQUARE Brussels Meeting Centre, Brussels, Belgium)にてビデオプレゼンされた旨。「この来る10年間でscalingの終わりに至るとしても、まったく驚きには当たらないが、打ち勝ちがたい障壁のようなものを克服し続けているエンジニアには感銘を受けている。」と同氏。

今回のITFでの各社講演にて、Moore's Lawと今後の展開に触れた下りがいくつか見られている。

◇ITF2016: Learning curve goes on when Moore's Law ends (5月25日付け Electronics Weekly)
→Imec Technology Forum(2016年5月24-25日:Brussels, Belgium)にて、MentorのCEO、Wally Rhines氏。半導体習熟曲線は今まで考え出された最も完全な曲線の1つ、Moore's Lawがいつかはということで終わろうとも、習熟曲線は生き続ける旨。

◇ITF2016: Infineon CEO looks to progressive integration-Infineon CEO calls for "breakthrough innovation" in chips (5月26日付け Electronics Weekly (U.K.))
→Imec Technology Forum(2016年5月24-25日:Brussels, Belgium)にて、Infineon TechnologiesのCEO、Reinhard Ploss氏。Moore's Lawが避けられない終わりとされるなか、半導体製造技術には"ブレイクスルー革新"が必要である旨。「半導体業界は、ICs供給からシステム統合に進化している。革新的な統合に向かう駆動力の一部である。」

IoTを基軸にした今後の展開に向けた今回のITFにおける発表、動きの中から、まずはIoTに向けた5つのlow power wide area(LPWA)ネットワークスを束ねてサポートするsystem-on-a-chip(SoC)デバイスが以下の通り表わされている。

◇IoT Chip Supports Five Networks (5月24日付け EE Times)
→annual Imec Technology Forum(2016年5月24-25日:SQUARE Brussels Meeting Centre, Brussels, Belgium)にて。Imec research institute(Leuven, Belgium)が、Internet of Things(IoT)に向けた5つのlow power wide area(LPWA)ネットワークス(802.15.4g/k, LoRa, KNX-RF, SigfoxおよびWireless M-Bus)へのサポートを統合するSoCを開発、またこれとは別に、自動車用CMOS-ベース79-GHz radar半導体の開発でInfineon Technologies AGとコラボする契約を締結の旨。

◇ITF2016: Imec presents sub-GHz LPWA radio chip-Imec and Holst Centre presented a wide-area (LPWA) multi-standard radio chip today at Imec's annual technology forum in Brussels this morning.-Radio chip would be capable of sub-GHz LPWA transmission (5月24日付け Electronics Weekly (U.K.))
→imecとHolst Centerが、センサネットワークスに向けたlow-power, wide-area(LPWA)伝送が行えるsub-gigahertz radio system-on-a-chip(SoC)デバイスを開発、該SoCは、IEEE 802.l5.4g/k, KNX-RFおよびW-MBUS protocolsをSIGFOXおよびLoRaネットワークスとともにサポートする旨。

上記にもあるが、ImecがInfineon(ドイツ)とコラボして取り組む車載用レーダー半導体について次の通りである。

◇79 GHz CMOS RADAR Chips for Cars from Imec and Infineon (5月24日付け ELECTROIQ)
→annual Imec Technology Forum(Brussels)にて披露、Infineon Technologies AGとimecが、車載radar応用向けに高度に統合されたCMOS-ベース79-GHzセンサ半導体に取り組んでいる旨。完全なradarシステムの披露は、2017年始めの予定の旨。

◇Infineon, IMEC Collab on 79GHZ All-CMOS Radar (5月26日付け EE Times)

◇Machine-Learning Radars May Come to Automotive (5月26日付け EE Times)
→Imec Technology Forum(2016年5月24-25日:Brussels, Belgium)にて、IMECのperceptiveシステム、program director、Wim van Thillo氏。IMECはすでに車載レーダー市場リーダー、Infineon Technologies AGとともに28-nm CMOSでの79GHzレーダーセンサに取り組んでいるが、こんどはもっと短波長に進んで、センサのback endにmachine learningを加えたい旨。

マイクロソフトからは、augmented reality(AR)ゴーグルが披露されている。

◇Microsoft Shines Light on HoloLens-Custom Tensilica array drives headset-Microsoft gives sneak peek of HoloLens and Holographic Processing Unit (5月25日付け EE Times)
→Imec Technology Forum(2016年5月24-25日:Brussels, Belgium)にて、Microsoftが、同社の新規augmented reality(AR) goggles、HoloLensおよびそれを動かすHolographic Processing Unit(HPU)を披露の旨。

IoTに向けてはセキュリティ如何の議論が方々見られているが、今回の場でも以下の通りである。

◇IoT Security is Imec Target-Program develops lightweight embedded crypto -Imec aims for IoT security with lightweight embedded crypto tech (5月25日付け EE Times)
→Imec Technology Forum(2016年5月24-25日:Brussels, Belgium)にて、ImecのInternet of Things(IoT)におけるセキュリティの穴を埋める目標のプログラム打ち上げについて。Imecは2月に、ベルギーのソフトウェアリサーチグループで広く用いられるAdvanced Encryption Standard(AES)を開発しているiMindsを買収の旨。

◇Imec, Holst Centre and Barco Silex collaborate on data security for wearables and IoT networks (5月25日付け ELECTROIQ)
→nanoelectronicsリサーチセンター、imec、imecとTNOが設立したHolst Centreおよびmicro-electronic design houseでBarcoグループ傘下のBarco Silexが、wearable機器用センサおよびInternet of Things(IoT)センサネットワークスへのデータセキュリティ取り込みでコラボの旨。

今回のITF全体を見渡した概観が、内容項目として以下の通り表わされている。今まで長らくの取り組みにIoTを基軸にした新風が流れ込む現下の雰囲気がうかがえている。

◇15 Views from Imec Tech Forum (5月27日付け EE Times/Slideshow)
→Imec Technology Forum(2016年5月24-25日:Brussels, Belgium)の全体概要について、以下の項目内容:
 Event scans silicon road map, IoT as driver
 EUV is coming, really
 The road divides and divides again
 Scaling the silicon package
 Another go round for FinFETs
 Looking toward the 5nm horizon
 Here comes the Internet toaster
 Packing protocols for IoT nodes
 Packing protocols in a basestation
 Modular boards and code for IoT nodes
 Connecting Antwerp with LoRa
 Networked with IoT entrepreneurs

ITFに続いてこの7月に開催されるSEMICON Westでも、以下の通り急変する環境への対応が施されている。

◇SEMICON West 2016 expands technical programming by nearly 50% (5月26日付け ELECTROIQ)
→SEMICON West 2016(7月12-14日)が近づいてきて、electronics製造業界は破壊的な変化を受けており、"いつも通りのビジネス"が過去のものになっている旨。技術およびビジネスのprofessionalsがこの急速に変化する景観を乗り切れるよう、SEMICON West programmingが広大にアップグレードされて、今年は170時間から250時間に増やされている旨。


≪市場実態PickUp≫

【華為技術(ファーウェイ)関連】

スマートフォン世界3位、中国の華為技術(ファーウェイ)のプレゼンスの高まりを示す2件。元は同社のASICデザインセンターである完全子会社、HiSiliconの半導体需要の増大が、台湾のIC backendメーカーに力強く見えてきている。

◇Taiwan backend firms seeing robust orders from HiSilicon (5月25日付け DIGITIMES)
→台湾のIC backendメーカー筋発。グローバルスマートフォン市場で存在感を拡大してきているHuaweiの完全子会社、HiSiliconの半導体需要が、力強くなっており、重要あるいはtarget顧客の1つとしての中国のファブレスICベンダーとなっている旨。

もう1つ、4G通信技術などの特許を侵害として、サムスン電子を中国と米国で提訴する動きに出ている。以下の韓国での受け止め方に注目している。

◇Samsung Elec to defend interests against Huawei patent suits (5月24日付け Reuters)

◇韓経:【社説】ファーウェイのサムスン電子特許訴訟…来るものが来たという兆候 (5月26日付け 韓国・中央日報)
→韓国経済新聞発。中国・ファーウェイがサムスン電子を相手取り米国と中国の裁判所に特許侵害にともなう損害賠償訴訟を提起したことはそれ自体が衝撃的である旨。ファーウェイは「サムスン電子とその系列会社がファーウェイの技術を利用した製品を販売することにより数十億ドルを稼いだ」と主張した旨。これまでコピー品と呼ばれた中国企業の特許侵害訴訟であるだけに非常な注目を集めることになる旨。驚くべきことに韓国企業を狙った中国企業の類似の特許訴訟があふれる可能性も排除し難く、中国の追撃は恐ろしいほど、すでにあごの下にまで追い上げてきたという事実を語る事例の旨。

◇華為、サムスンを提訴、米中で、スマホ技術を「侵害」 (5月26日付け 日経)
→スマートフォン世界3位の華為技術(ファーウェイ)が25日、同社が保有する高速・大容量の第4世代(4G)の通信技術などの特許を、同首位の韓国サムスン電子が侵害しているとして、損害賠償の支払いを求め、同日付で中国と米国の裁判所に提訴したと発表の旨。ファーウェイの提訴は、ハイテク分野で中国のトップクラスの企業が日米韓などの大手企業にひけをとらない技術を保有している自信の表れといえそう、提訴で自社の技術レベルを誇示することによって、成長に頭打ち感が出ているスマホの販売競争を優位に運ぼうとの思惑もあるとみられる旨。

【CCIX Acceleratorコンソーシアム】

IBM, AMD, ARMなど半導体メーカー7社が、データセンターに向けていろいろなMPUsおよびGPU acceleratorsを搭載したサーバをつなぐfabricを開発するコンソーシアムを、以下の通り結成している。

◇Accelerators Unite ARM, IBM, X86-Seven vendors forge alternative to Intel, Nvidia (5月23日付け EE Times)
→半導体メーカー7社、Advanced Micro Devices(AMD), ARM, Huawei, IBM, Mellanox, QualcommおよびXilinxが、サーバacceleratorsに向けたCache Coherent Interconnect for Accelerators(CCIX, C6と発音)の定義づけ、cloud computingという熱い分野でIntelおよびNvidiaの代替となる旨。この活動は、ARM, x86およびPowerプロセッサに及ぶ最初のハードウェア・コラボの旨。該グループは、年末までに仕様案をリリース予定、しかしこれまでのところ技術あるいは財務的詳細はリリースしていない旨。

◇IBM, AMD, ARM, Others Look to Unite CPUs, Accelerators-Tech vendors aim to connect different chips, accelerators (5月23日付け eWeek)
→Advanced Micro Devices(AMD), ARM Holdings, Huawei Technologies, IBM, Mellanox Technologies, QualcommおよびXilinxが、Cache Coherent Interconnect for Acceleratorsグループを創設、データセンターに向けていろいろなmicroprocessors(MPUs)およびgraphics processing unit(GPU) acceleratorsを搭載したサーバをつなぐfabricを開発する旨。該interconnect fabricは、PCI Expressおよび独自固有のinterconnectsの代替として役立つ旨。

◇AMD, ARM, Huawei, IBM, Mellanox, Qualcomm, Xilinx Form CCIX Accelerator Consortium (5月23日付け Forbes)

【ASEとSPILの経営統合】

台湾の半導体実装&テスト2大大手、ASEとSPILの間で繰り広げられていたM&Aの応酬であるが、ここにきて両社合併推進に向けた最後の頑張りで以下の通り、両社で新たに持ち株会社を設立、ともにその傘下で事業会社として活動していくという流れとなっている。各国の審査如何に今後の注目である。

◇ASE, SPIL halt trading pending release of material information (5月25日付け DIGITIMES)
→業界筋発。ASEとSPILは、Nasdaqに上場申請する業界holding companyの設立に合意する一方、それぞれのoperationsを継続、Taiwan Stock Exchange(TSE)上場を維持する旨。

◇ASE, SPIL in talks to form holding company (5月25日付け DIGITIMES)
→Advanced Semiconductor Engineering(ASE)とSiliconware Precision Industries(SPIL)が、業界holding companyを設立するfeasibilityについて協議している旨。

◇ASE, SPIL target holding company-Joint holding company might be formed for an ASE-SPIL merger (5月25日付け The Taipei Times (Taiwan))
→Advanced Semiconductor Engineering(ASE)社が昨日、Siliconware Precision Industries Co(SPIL)との合弁holding companyの設立に向けてSPILと協議しており、両社合併推進に向かって最後まで頑張る試みの旨。

◇Taiwan's top two chip test firms ASE, SPIL plan new holding company (5月26日付け Reuters)

◇ASE Agrees to Merge With Siliconware Through New Holding Company-ASE and SPIL agree on a $3.6B merger deal (5月26日付け Bloomberg)
→Advanced Semiconductor Engineering(ASE)とSiliconware Precision Industries(SPIL)が、新しいholding companyを通してoperations合併に合意、世界最大の半導体組立&テストサービス・プロバイダーが作り出される旨。ASEは、所有していないSPILの株式の67.71%買収に$3.6 billion支払う旨。

◇ASE, SPIL agree to set up JV holding company (5月27日付け DIGITIMES)
→Advanced Semiconductor Engineering(ASE)とSiliconware Precision Industries(SPIL)が、holding companyを構築する合意に達し、ASEおよびSPIL両方を所有する旨。該新holding companyは、Taiwan Stock Exchange(TSE)で上場、そのAmerican depositary shares(ADS)がNew York Stock Exchangeで取引される旨。

◇台湾の半導体検査大手・SPIL(セキ品精密)、ASE(日月光半導体)と経営統合、同業最大手、市場の3割握る (5月27日付け 日経)
→台湾の半導体封止・検査大手、ASE(日月光半導体製造)とSPIL(セキ品精密)が26日、経営統合で合意したと発表、世界シェア1位と3位の統合で、新会社は同市場の3割近くを握ることになる旨。経営効率を高めて台頭する中国勢に対抗、半導体業界の再編が一段と加速しそうな旨。両社は今後、新たに持ち株会社を設立し、双方が事業会社として傘下に入る旨。両社の売上高は2015年12月期実績を元に単純合算すると約3600億台湾ドル(1兆2千億円強)となる旨。統合実現に向けては台湾の公平交易委員会や米国、中国の各当局による反トラスト法(独占禁止法に相当)に基づく審査を通す必要がある旨。

【7-nm関連】

最先端7-nmプロセスの取り組みについて、IBMの半導体製造部門を買収したGlobalFoundriesは、経験を積んできている人材の力に大きな期待を寄せている。

◇GloFo Looks For 7nm Leadership-A pretty big shift could be about to happen in the semiconductor industry - IBM's scientific prowess could be about to be unleashed on the market. -GlobalFoundries wants to lead on making 7nm chips (5月25日付け Electronics Weekly (U.K.))
→GlobalFoundriesのchief technology officer(CTO)、Gary Patton氏。同社は、プロセス科学技術者の深い層があることで、7-nm features半導体製造で業界リーダーシップをものにしたい旨。「IBM買収で、最先端開発の経験豊かな人たちを得て、45-nm, 32-nm, 22-nmおよび14-nmを開発した同じ人たちが7-nmに取り組んでいる。」

TSMCからは、今年のR&D投資を同社最高に引き上げていくとともに、7-nmの業界での先行度を以下の通り表わしている。

◇TSMC to spend US$2.2 billion on R&D in 2016, says co-CEO (5月26日付け DIGITIMES)
→TSMCのco-CEO、Mark Liu氏。TSMCは、2016年のR&D spendingを最高の$2.2 billionにもっていく予定、2015年は$1.067 billionであった旨。同社は業界で初めて、7-nmプロセス技術を認証しており、128MB SRAMについて現在30-40%の歩留りの旨。10-nmについては、2017年までに量産化する予定、台湾中部の同社12-インチウェーハfabにて製造する旨。

◇TSMC on track to be first to offer 7nm technology-TSMC aims to win the race to making 7nm chips (5月27日付け The Taipei Times (Taiwan))
→TSMCのpresident and co-CEO、Mark Liu氏。TSMCは、7-nm dimensions半導体の顧客認定を2017年第一四半期に完了、1年後7-nm ICsの量産予定の旨。7-nm半導体について"集中的設計契約"の20の顧客がある旨。

【中国による半導体M&A】

中国の投資家グループ、Fujian Grand Chip Investment Fund(FGC)によるドイツの半導体装置サプライヤ、Aixtron SEの買収が合意に至っており、アジア市場での売上げ拡大を目指している。

◇Chinese Group to Buy Europe's Aixtron for $752 Million-Aixtron to be acquired for $752M by Chinese investors (5月23日付け Bloomberg)
→中国の投資家グループが、ドイツの半導体装置サプライヤ、Aixtron SEの約670 million euros($752 million)での買収に合意、アジアでの売上げ拡大の機会が得られる旨。

◇China firm proposes to buy Aixtron (5月23日付け DIGITIMES)
→ドイツの半導体装置サプライヤ、Aixtronと中国のFujian Grand Chip Investment Fund(FGC)が合意に入り、FGCがドイツの間接子会社、Grand Chip Investment(GCI)を通してAixtronの事業を継承する旨。


≪グローバル雑学王−412≫

特に昨年来、半導体業界で猛烈に吹き荒れているM&Aの嵐や波に注目させられているが、M&Aの形態というものを

『M&Aの「新」潮流』
 (山本 貴之 著:エネルギーフォーラム新書 036) …2016年1月15日 第一刷発行

より、多様化する買収ストラクチャーそして各買収ストラクチャーのメリット・デメリットと分けてそれぞれの中身を確認方見ていくことにする。グローバルにいろいろなケースがそれぞれの経緯を孕んで進んでいる現下の市場状況であり、改めて当てはめて考えるところが随所出てきそうである。


第5章 買収スキーム

【多様化する買収ストラクチャー】

■買収ストラクチャーの全体像
・M&Aの形態は、会社法等の改正に伴い、多様化

■合併
 …複数の会社が、法定の手続きに従って、一個の法人格を有する会社となること
・1)吸収合併
  →当事会社の1つ(存続会社)が他(消滅会社)の全ての権利義務を包括的に承継し存続、他は解散する形態
 2)新設合併
  →全ての当事会社(消滅会社)が解散し、新たに設立される新会社(新設会社)が、解散する会社の全ての権利義務を包括的に承継する形態
・実務面では、ほとんどが吸収合併の形態

■買収
・1)株式取得
  …買収側が被買収会社の株式を取得する方法
 →1)−1 既存株式の買収
   →未公開会社の場合、相対取引される場合が多い
   →上場会社の場合
    →証券会社等を通じて、株式市場で流通している株式を取得する方法
    →買収側が事前に株式取得の意向を公表し、証券市場外で株式を取得する方法
     …株式公開買い付け(TOB:take-over bid)
  1)−2 新規株式の取得(増資引き受け)
     …被買収側が、新規に株式を発行し、買収側に割り当てる方法
   →買収側にとっては、買収の対価を、被買収企業の成長資金として活用できるメリット
  1)−3 株式交換
     …被買収側の株主が保有する株式と、買収側企業の株式を交換することによって、被買収企業を100%子会社する手法
   →株式交換比率の算定が大きな論点に
  1)−4 株式移転
     …当該会社の発行済み株式の全てを新設する会社に取得させる手法

■資産買収
・2)資産取得
 →2)−1 現物出資
     …現金で出資するのではなく、不動産や事業等の現金以外の財産で出資を行うこと
   →原則として検査役による調査が必要に
  2)−2 事業譲渡
     …買収側が、必要とする事業資産の全部または一部を、従業員等を含めた事業そのものとして承継する方法
   →一定の営業権・のれんの価値が加味されて売買されるのが一般的
  2)−3 会社分割
     …被買収会社の有機的一体となった事業を切り分け、買収側に承継させる方法

■提携
 …2社以上の会社が互いに業務面・資金面で協力し合うこと
 →通常は狭義のM&Aの範囲に入らず、「広義のM&A」として取り扱われる場合も多い
・1)資本参加
  …一方が他方の株式を取得または株式持ち合いを行うことにより、業務提携関係をより強化する手法
  →相手側企業の経営権の取得を目的としていない
 2)合弁会社設立
  …2社以上の会社が、特定の事業を統合させる等によって、事業を更に強化していく手法
 3)業務提携
  …お互いの共同事業展開をより効率的、より強力に推進するための手法
  →研究開発、生産、販売等での提携

【各買収ストラクチャーのメリット・デメリット】

■資金事情から見たメリット・デメリット
・基本的に買収をする場合にはそれに対する資金が必要
 →ただし、株式交換や、株式移転を活用した経営統合であれば資金は必要としない

■M&Aによる潜在リスク要因から見たメリット・デメリット
・M&A後にそれまで隠れていたリスクが顕在化することがある
 →簿外債務や不良資産の発見
 →法的リスクの顕在化(製品の欠陥・労働問題に関して訴訟を起こされることなど)
 →環境リスクの顕在化(M&A対象企業の土地で有害物質が検出されるなど)
・リスクが顕在化したときの影響の大きさはM&Aの形態によって左右される
 →もっともリスクを低減できるのは事業譲渡
 →もっともリスクが大きくなるのは合併

■M&A実行の手続き面から見たメリット・デメリット
・M&A実行の上でネックとなるのは、株主総会で賛成を得られるか否か
 →合併や事業譲渡(規模の小さいものを除く)は、当事者双方が株主総会において特別決議で決定する必要
 →さらに合併においては、様々な債権者保護の手続きを要する
・株式買収は、株主総会の決議を経なくても有利な価格を提示すれば買収が可能
 →ただし、株式交換や株式移転を利用する場合には、やはり株主総会の特別決議が必要

■税務面から見たメリット・デメリット
・税務面のポイントは2つ
 →1)取引が実行される際の譲渡益に対する課税を避けられるかどうか
  2)相手の超過収益力・将来性・ブランド力を評価して簿価よりも高めの値段で買った場合に営業権を計上できるかどうか
・買収スキームを選択する上では、買収側、売却側、売却対象企業にとっての税務的影響を検討することが非常に重要

■M&A対象企業の株式取得割合による違い
・M&A対象企業の株式を何%取得することを目標とするか
 →実際にそれを達成できるかどうかはM&Aの方法の制約を受ける
・取得割合が問題となるのは株式取得の場合
 →取引の結果、買収対象企業が、持ち分法対象に該当するか否か、買い手としては基本事項として理解をしておく必要
 →買収後の「のれん」の扱いも、会計的な側面として充分な理解を持つ必要

月別アーカイブ